紙の本
「救い」を感じる短編集
2017/06/01 23:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
一つ屋根の下にいるからこそ感じるもどかしさ、息苦しさ、苛立ち、諦めが印象的な短編集です。ただ、窪さんの作品らしく、先の見えない将来の中にも家族再生への光を見せる「救い」がありました。読んでいるだけで落ち込んだり救われたり、心が揺さぶられます。
それと、今回はとにかく登場人物がよく泣きます。「誰かに興味を持ってほしい」とか「愛されていると感じたい」とか、自分の感情を前面に出して泣きます。年齢を重ねるにつれ弱みを見せづらくなりますが、窪さんの小説を読んでいると弱みを見せてもいいような気がしてきます。これもある種の「救い」だと思いませんか。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族のカタチ
あるいは、
子育て奮闘記。
子どもができてからの、
新しい人間関係、
態度の変化、
立場の変化。
誰もがいままで、
もしくはいま現在、
そしてこれから。
携わるであろう人間関係の中で
悩みと、解放。
窪さんの本はいつも人間の柔らかいところをつついてきて、
それがそのまま泥沼になってもなぜかあたたかくなるのだけれど、
本書はひとつの明るい兆しを示してくれていて、
それはそれで、小説としてやっぱりいいものです。
投稿元:
レビューを見る
6つの短編集。ゲンノショウコが特に記憶に残ったかな。小さな娘に気づかされ、救われる感じ。
様々な悩みを抱えてて、何か答えを見つけるところところは、どの作品もすごいなって思う。
ちらめくポーチュラカ:おしゃれなブログを書くママ。
サボテンの咆哮:育児ノイローゼになった妻。妻の両親との同居の話が出て。
ゲンノショウコ:知的障害があった妹。娘と次に生まれてくる子の成長が気になってしまう。
砂のないテラリウム:妻とのすれ違い。誘いにのって参加してしまった合コン。
かそけきサンカヨウ:父が再婚し小さな妹ができた。同級生の陸と実母の個展を訪れる。
ノーチェ・ブエナのポインセチア:心臓が悪い陸。手術を無事に終えて、仕事で外国で暮らす父も帰ってきてクリスマスを迎える。
投稿元:
レビューを見る
突き詰めていけば、皆、同じような悩みを抱き、壁にぶつかるもの。自分だけと思ってしまうのは他人には弱さを見せないからだろう。そういう意味で本書は気持ちが楽になれる。苦難は絆を強くすると思いたい。
あらすじ(背表紙より)
セレブママとしてブログを更新しながら周囲の評価に怯える主婦。仕事で子育てになかなか参加できず、妻や義理の両親から責められる夫。出産を経て変貌した妻にさびしさを覚え、若い女に傾いてしまう男。父の再婚により突然やってきた義母を受け入れきれない女子高生…。思い通りにならない毎日。募る不満。言葉にできない本音。それでも前を向いて懸命に生きようとする人たちの姿を鮮烈に描いた、胸につき刺さる6つの物語。
投稿元:
レビューを見る
短編小説なんだけど、どれも夫婦や子供の気持ちがリアルに描かれてて、ハッとさせられるような場面もあり、いい本だった。
投稿元:
レビューを見る
傷ついた過去の影響で仕方ないのかもしれないけど、主婦の主人公たちのネガティブさが肌に合わなかった。とはいえ、自身の子どもの言動がきっかけで小さな光を見出す展開はよかったし、各話の家族がどう折り合いをつけていくのか先が気になっておもしろかったのも事実。
夫側の本音が興味深く、夫婦のリアルなすれ違いやじんと胸を突く場面が絶妙にミックスされた「サボテンの咆哮」が一推し。高校生が主人公の後半二編は気楽に読めて気持ちは晴れ晴れ。
桜沢さんや美子さんのような既にいろいろ乗り越えた母親の話も読んでみたかったなぁ。
投稿元:
レビューを見る
どんなに幸福に見えても本当の気持ちは誰にもわからない。
傷つかないことも、傷つけないことも多分不可能だけれど、そうしなければ得られない何かも確かにあるのだとおもう。
そして、好きと大切は多分違う。
投稿元:
レビューを見る
それぞれにそのお話を象徴するような植物の名前がタイトルに入ったお話しが6つ。
私には二つ目から四つ目の話が身に沁みた。
二つ目の話は、仕事で子育てになかなか参加できず、育児に壊れた妻と近くに住む義父義母から責められる男が、四つ目の話は、出産を経て変貌した妻に寂しさを覚え、若い女に傾いてしまう男が主人公。
こうしてみると、私が幸せな夫婦生活を送れてきたのは全くもって嫁さんのお陰だな。昔はあまり分かってなかったけど、今になって本当にそう思う。
彼女の我慢と献身がなければ、私のような人間が普通に社会生活を送れるわけがなかったのだ。
サボテンの目に見えない棘がチクリと刺さるような痛みもある一方、苔テラリウムがゆっくりとその命を伸ばしていくように過ごしてきた夫婦での年月をしみじみ思う。
三つ目の話は、我が子の成長の遅さに、知的障がいの妹の思い出を引き摺り疑心暗鬼になる女。
私の子育て、どこで間違ってしまったのかなぁ…。
長男も次男も30歳にもなろうとするのにそれぞれに問題を抱え、しかし、親として何もしてやれない。
この話を読んでいて、幼い子が母に妹をねだる姿に、次男が生まれた時の長男の様子や二人が一緒に並んでいる写真などが思い出されてきて、朝の通勤電車の中で涙が出そうになった。
どこかで間違えたのか、いや、最初から違っていたのか、どうしたらいいんだろう、今からでも修正できるのか。
小さい頃に注いでいた筈の愛情を、もう一度、時間を遡って注ぎ直してみたい気に駆られる。
巻末の対談で『どんな人でもふつうに暮らしていると言葉が足りないと思うんです』と語る作者は、『私はいつも小説で、本当はこう思っているんだよ、ということを書いているところがある』と続ける。
夫婦、父、息子、仕事、近所の人、友人…、色んな人間関係の中で、言いたいこと、聞きたいこと、聞いてはいけないと思って言いかけて止めること…。
どの話も息苦しくなるような話だが、最後には分かり合える端緒が垣間見え救われる。
私の家庭もいつか少しの光が見えるようになるのかな…。
息子と親の私たちに対する愚痴を言いに一人で家にやって来た長男の嫁に、読んでみたらとこの本を渡してやろうかと思ったが、到底同じ感性を持つとは思えず却って誤解されるリスクを考え、止めておいた。
そんなことを気にせず、気に入った本を薦める関係になりたいな。まあ、まず息子からだけどな。
投稿元:
レビューを見る
なぜかいつも手に取ってしまう窪美澄さんの本。
ぐっと引き寄せられる本のタイトル。
今回は 「水やりはいつも深夜だけど」
わたしはセレブママに見られたい主婦でもないし
妻や義理の両親から責められる夫でもないし
若い女に傾いてしまう男でもないし
義母を受け入れられない女子高生でもないんだけれど。
どの主人公とも境遇は違うけれども
きっと誰もが今まで生きてきた中で
言えなかったこと思っていたこと
嫌だったこと辛かったこと
それをしっくりくる真っ直ぐな言葉で
絶妙な心理描写を交えながら書いてくれるから
あのときのあの自分に共感してあげられて
そして救ってあげられる。
そんな素敵な小説でした。
窪美澄さんの本は、やっぱりいいなあ。
投稿元:
レビューを見る
いろんな本音を抱えながら生きてる。
人間関係は複雑。それが家族であっても。
いや、複雑に考え過ぎているだけなのかもしれない。
向き合うことが、こんなにも難しい。
でもだから、愛しい。
投稿元:
レビューを見る
「言わなわからん」が私の持論です。
この短編集の主人公たちは、察してもらえないからといっていらついているわけじゃないけれど、言えなくてつらい思いをしていたり、言ってもらえなくてもやもやしていたり。
表題作はなく、各短編のタイトルには話中に登場する植物の名前が付いています。それを上手くまとめているのがこの表題。
毎日におびえ、自己嫌悪しながら暮らす主人公たちが、心のうちを思いきって言葉にしてみることでちょっとだけ前を向けるようになる。
窪美澄の紡ぐ物語は、苦しくても絶望的ではなくて好き。やっぱり、言うてみなわからん。
投稿元:
レビューを見る
家族がテーマの短編集。植物の名前が各タイトルに入っているのが特徴。
以前読んだ窪さんの作品に、かなり刺激的な性描写があったので本作は少し意外な感じがした。でも、それぞれの家族のカタチを模索していく姿は共感できるし心に響く。切ない話もあるし、考えさせられる話もある。当然しょうもない登場人物も出てきたりする。でも、すべてをやさしく包み込み、それでもいいんだよと囁いてもらってる感じがした。
窪さんの心情の描き方や人間関係の紡ぎ方が好きなんだなと初めて自覚した。
投稿元:
レビューを見る
読み終わると少し心が軽くなるような短編集です。人はそれぞれ心にもやもやしたものを抱えながら生きている。しかしちょっとしたきっかけでその状態は変わらないままに心の持ちようが変わることで心が軽くなって生きていける、そんな物語たちです。いい話は苦手な僕ですが、いい読後感でした。
投稿元:
レビューを見る
傍目からは幸せそうにみえても満たされない焦燥感。他の作品にも言えますが、共感しすぎて読むことが辛くなる。共働き夫婦の話は特に。
投稿元:
レビューを見る
家族の中で言えない思いを抱えた短編集。
苦しいことはあっても
一緒に良い方向に進めていけたらいいんだよね。
時間がかかっても。