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ファンタジーの大作。この作品も、舞台が現実世界ではないというだけで、極めて現実的なテーマをつきつけてくる。民族問題、病気との戦い、身分。
「鹿の王」という言葉から想像していたのとはまったく違う「鹿の王」の意味するもの。ヒロイズムではない、どこまでも生々しい世界観が強烈に魅力的だった。
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おもしろい小説に出会うと、じっくりストーリーを楽しみたいという気持ちと先の展開が気になって速く読みたいという気持ちで葛藤します。
この『鹿の王』はその状態がずっと続いていた作品でした。
岩塩鉱で奴隷として強制労働させられていた「ヴァン」と、その岩塩鉱で突如発生した伝説の伝染病の謎を解明するために奔走する「ホッサル」という医術師の二人が主人公です。
ファンタジーだけども、医療モノなので話が少々複雑でしたが、ぐいぐいと上橋ワールドに惹き込まれ、あっという間に読んでしまいました。
上橋さんの作品に共通していることは、しっかりとした世界観です。
各土地の文化や風習が詳細に描かれているので、
実際にこのような国が存在し、人々が生活していたのではないかと想像させてくれます。
またファンタジー作品なのに魔法がまったく出てこず、地に足がついているというか「チート感」がありません。
どの登場人物にもそれぞれの立場や複雑な事情を抱えており、「悪者」を退治すれば終わりという単純な話でもありません。
むしろその「悪者」とは誰なのかさえわかりません。
各章ごとに主人公がかわるのですが、その章の終わり方が絶妙で、ドラマやマンガの連載もののように、ちょうど気になるところで終わる上に、次の章はもう片方の主人公の話がはじまるので、上手に読者を焦らしてくれます。
しかし結末は読者の想像におまかせするような感じの終わり方なので、ハッピーエンド好きな私にとっては「めでたし、めでたし」で終わらせてほしかったなぁと思いました。
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2017/9/12読了。
架空の国々を舞台とした作品で、その設定が作り込まれていて読んでいて楽しかったです。ただ、様々な人の名前や名称を、日常で使わない響きを敢えて使って表現していましたが、そのせいで中々頭に入ってこず、覚えるのに苦労した場面がいくつかありました。
また、戦争、移民、病気という現代の問題をこの架空の国々を使って自然に混ぜ込んでありました。ファンタジーながらもやけに現実的な世界観はこうやって出来てるんだなと思いました。
最後の火馬の民の計略、盛り上げて盛り上げてでそれ?って感じで物足りなかったです。
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深い原野の森、出自の違う人々、それを乗せる飛鹿、そして鹿の王。
結末に感じる哀しくも温かい気持ち、私や私の大切な人が夢となった後も続いていく生命への切ない思慕を、幸福と呼んでいいのだろうか。
自分の身体の輪郭を思い出させてくれるような読書でした。
群像劇なので一人一人の心情に深入りはしないのですが、魅力的な人物がとても多く登場するので、外伝がぜひ読みたいですね。
一人選ぶならリムエッルの話がもっと見たい。
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なかなか面白かったが、少し医療の話がくどかった。壮大なストーリーを読んだ後の供に旅を終えた感は得られなかった。
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2015年、本屋大賞第1位。
この作品、当時から気になっていて、ハードカバーで買おうかどうしようか、迷っていた記憶があります。
上橋菜穂子さんを読むのは本作が初でしたが、人気があるのがわかります。
物語としての完成度、架空の世界の設定の奥深さ、そして登場人物の造詣。どれをとっても間違いなく一級品です。
読み始めたら先が気になって仕方ないのですが、そこを我慢して、じっくりと時間をかけて読みました(^^)
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ファンタジー小説だと思ったら極真面目な医療小説だった。良い意味で裏切られた。上橋先生らしく丁寧な描写で、今にも猪の脂の良い匂いが漂ってきそうだった。正義や悪ではない人間そのもの、世界そのものが描かれた大人向けの児童書だと思う。大人にこそ進めたい。
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シリーズ最終巻。
黒狼熱を使った全ての企みに片が付いた大団円だった。
ファンタジーらしい展開を交えつつ、病と医療、生と死に深く迫った物語は登場人物達のそれぞれの思惑絡み合ってとても重層的で、読み応えがあった。
ただ読み終わった後の正直な感想は、実はちょっと物足りないかな。
たぶんそれは単純にワクワク感が足らないからだ。
前巻でヴァンとホッサルという二人の主人公が出会って、さて、本巻ではどうなるのか? と思って読み始めたわけだけど、二人の出逢いがなにかの事態を大きく動かすと言うことはなかった。
陰謀の阻止に向けて二人が協力し合ってと言うような展開にはならない。
そこがちょっと残念。
もちろん物語はそう言う次元ではない、生と死・病と医療の深みにまで迫っていくわけだけど、実はそのことが物語を医療分野に強く引きずった結果、物語としての単純な面白さを減じたとも感じる。
とはいえ、森の中に去っていったヴァンがユナとサエと共にその後の幸せな人生を送ってくれることを祈りたい。
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穏やかな生活を取り戻せると思った最中、次なる恐怖が巻き起こる。
その中で、主人公達は人々を病から解放したいと強く抱き、”鹿の王”の意味を吟味させられました。
ヴァンへの愛情をきっかけとした旅が始まる幕引きも、終わりとして相応しいものだと思います。
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よかったです。とても。
上橋さん独特の物語の世界観も楽しめ、それに医療という難しいテーマがうまく融合されていて、とても読み応えがありました。
いろんな立場の人たちが、それぞれ、必死に生きているのに
どこか切なさを感じました。
終盤はどこか哀しい雰囲気が漂う中、ユナやサエをはじめとする登場人物、ヴァンとの強い絆が読んでいて、嬉しくなり、胸が熱くなりました。
少し、時間をかけて読んだので、今度は、一気に読みたいと思います。
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キャラ読みだけでなんとか4巻まで到達。
最後すっきり終わったわけじゃないけど、
ほんのり希望の光が見えた感じで終わってよかった。
もうヴァンが一人になりませんように。
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複雑な民族間の考えや想い。
誰も悪くない。
ただ故郷を守りたいだけ。
やり方を間違えただけ。
壮大な物語でした。
そして結末は…。
私は暖かくてやっと落ち着ける結末を思い描こうと思います。
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壮大過ぎて最終的に展開から置いて行かれた……登場人物や国の情勢や歴史や位置関係をしっかり把握しきってから読めばもっと楽しめただろうと思うと非常に残念なので、そのうちリベンジしよう;
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明るい未来を予感させるラストなのに、なぜか気分は晴れなくて。
病については、地道な研究や偶然の発見から治療法が見つかる可能性がある。
しかし、領土を広げようとする争い、それに巻き込まれる民の悲しみや恨みは無くならないのか? 病より人間の方が、悪なのか?
そうじゃない世界であって欲しい。
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生きるということ。
群れの中で、個として、生命体として。
いろいろな、断面でもやもやしていることを、少しはっきり見えるかたちにしてくれる物語。