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こいつは大物になる
そう思って、一目置いてた同僚は
かねてからの想像どおり、より大きな世界を求めて退職していった
しかし次の職場で、厳しいノルマに追い立てられ
みるみるうちに性格がきつくなっていった
それで疎遠になったのだけど
あるとき、震災津波で彼が行方不明になったことを知らされた
その後実家を訪ね、彼が父親に勘当されていたことを知った
この父親の、性急な判断の是非をどう捉えるかは人それぞれだろう
事実を除けばすべて憶測にすぎないのだから
いずれにせよ本当のところ
彼が何を考えて生きていたのか、もはや誰にもわからない
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短い。ミステリーのようなそうじゃないような……。意味ありげな和哉、震災、東京と田舎のモチーフ。たぶん大津波に感銘を受けた日浅が震災に乗じて山奥で魚の養殖やってるんじゃないかと思う。日浅のそういうところに気づけなかった「わたし」は利用されたんだなぁ…というオチなのかもしれない。
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淡々と進んでいく話の中に、少しずつ変わっていく人間模様や、どことなく漂う不穏な感じが面白い一冊だった。元同僚であり友人の日浅のもう一つの顔が徐々に浮かび上がってくる様子が、日常の中にうまく描かれていてぺージをめくる手が速まった。若干文章が私には難しかったが、再読していくともっと楽しめる話かなとも思った。
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雑誌文藝春秋で書評と一緒に読んだ
小説は、綺麗な読みやすい文章で
あ、この人の小説はきっと好きだなと思う
短い小説で、ここで終わっちゃうのかと思ったが
その余韻がいいなと思えるお話だった
読み終わった後、選考委員の書評を読んだけど
みなさんバラバラのご意見で、
人間臭さを感じて、少し笑ってしまった
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岩手で読もうと決めていた。描写が美しくて、涙が出るほど。目に映るものをこんな風に著すことができたら、日常が絵画のようになるだろうと、心底感服した。しかし、これほど後味の悪い小説を久しぶりに読んだ。描写の美しさと内容の不気味さのアンバランス、そしてスケール感の伸び縮みが、黒板を引っ掻く音のように気持ち悪い。
主人公の今野、同僚の日浅。今野の内観描写は、田舎に住む者の倦みをよく表していると思った。そして自分にとってのマイノリティーは誰かの日常であるということに気付かされた。日浅は「ある巨大なものの崩壊に陶酔しがちな傾向」がある。3.11以来、行方がわからない日浅。震災がもたらした崩壊に、日浅はどこかで陶酔しているのかもしれない。自分の状況にも気づかずに。
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デビュー作で芥川賞。
これは業界的にも宣伝になる。 その宣伝に乗ってみた。
あまり響かなかったけど、芥川賞はその時代の雰囲気が分かればいいと思って読むので、内容まで期待してない。前回の「しんせかい」よりは、文章の巧い、次はまた別の作品でお目にかかりたいなとは思えたかな。
釣りのシーンの描写は見事だ。その他、自然を表現したいくつかの文章に、「そうそう」と思った部分があった。こうした風景、情景描写の中に、登場人物たちの心理も隠されているのだろうなと、意外と、古風な表現が意外と小気味よかった。読んでいて、リズム感なども悪くなかったかな。
短編の芥川賞作品なだけに、他にも例はあるが、どこか尻切れトンボな感は否めない。この先、日浅という友人を失ったあとの主人公の行動をもう少し読んでみたい気もした。
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非常に静謐な筆致の、純文学らしい作品。
震災、クィアが出てくるからといってそれがテーマではないし、単に確率として出てきているだけというような態度に、なびかせやすい物語や警句に頼らない著者の誠実さを感じた。
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いろいろな固有名詞が出てきて懐かしい。
震災の前後の出来事を書いているが、震災そのものは淡々と描かれている。ただ、それに身近な人が巻き込まれているかもしれないと知った時の焦りの描写は、自分自身覚えのあるものだった。
とはいえ、震災の小説というわけでもなく。基本的には友人にまつわる物語だが、そのほかの人物や出来事(たとえば元恋人のこと)がどういうふうに物語に絡んでいるのか、よくわからなかった。
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文藝春秋で読んだ.批評欄でどなたかが書いていたように芥川賞としては珍しく短篇である,だが,描写が綿密で語彙も豊富で読み応えがある.”烏滸がましい”は読めなかった.木の名前だと思ったが「水楢」のイメージが湧かない.川魚の名前も山女魚位しか知らない.最後の場面で主人公が日浅の父を訪ねるが「電光影裏斬春風」という額が架かっている.題名もここから来ているのか.日浅は一体何者だったのか.副嶋和哉,鈴村早苗,井上喜久雄など特異なキャラクターの持ち主が登場するが,彼らももっと活躍して欲しいと感じた.続編があるのかな?
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居場所を探している、無意識の孤独を感じました。
この時代、この世界にいる。
とにかく、盛岡の里川、釣りの描写が丁寧で語句の選び方も素晴らしい。
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文藝春秋に選評とともに掲載されているものを読みました。
きれいな自然の描写や生き生きとした釣りの様子がありながら、どこか不気味な人物の言動が描かれていたり、重大そうな要素がさらりと書かれていたりして、物語の雰囲気を感じとっているうちに最後まで一気に読めてしまう作品でした。なるほど純文学、なるほど芥川賞と思わされます。人によっては受け入れづらかったり読みにくかったりするでしょうが、こういった作品が好きな人も間違いなく多いはずです。
おもしろいなと読んでいながらも、こんな文章を書ける沼田真佑さんに嫉妬してしまうくらいに魅力的な作品でした。続編、もしくは新作も読んでみたくなります。
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第157回芥川賞受賞作。
出向先での釣り友達との出会、別離、再会、喪失の物語ですが、夢の世界のような雰囲気が芥川賞作品らしいです。
後半の東日本大震災後での友人の喪失やホモセクシュアルであることなど、直截的に物語ったらかなりインパクトがあるようなエピソードもオブラートに包まれたように語られることで、寓話的にも捉えられます。
物語として面白いかというと判断が難しいのですが、このような純文学は何度も読み込んで味が出てくるものだと思います。
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初出 2017年「文學界」
芥川賞受賞作
異動先の岩手で同僚と釣り友達、飲み友達になるが、同僚は突然転職し、震災で行方不明になる。
実家を訪ねると父親から衝撃的なことを告げられた。
小版94ページで短く、色々伏線があるのかと思ったがそうでもない。私の読み込みが浅いのか何が評価されたのかよくわからない。
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芥川賞。フシギ人物の話。その友人も当人も。
で、日常ホラーのカテゴリーに入れてしまったが。
芥川賞選者の奥泉氏の選評の「これから日浅という謎の男を追う主人公の物語が始まるのではないか」という展開だとおもしろい。日浅という男の今後を見てみたい。もちろん生きてるんだろうなと確信。
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最初は主人公と釣り仲間との友情の話だったが、転職後から友達がいなくなり、3.11震災後に友達の秘密が、、、