紙の本
原発事故
2018/05/06 17:07
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投稿者:カピバラさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
当時、1号機で水素爆発・その後3号機でも同じように水素爆発。さらに4号機でも建物建屋が爆発・2号機でもメルトダウン。燃料デブリを取り出すのは、2021年から。廃炉作業には30・40年はかかる。現場作業では2人の作業員の尊い命が失われ、吉田所長もガンで死去。当時の吉田所長の判断は正しかったのかが分かる1冊。
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福島第一原発事故の転換点となった事実に迫る1冊
2018/05/01 18:59
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
3基もの原子炉がメルトダウンした福島第一原発事故において、事態の悪化を一気に加速させたきっかけは最初に水素爆発を起こした1号機でした。1号機の冷却には「イソコン」と呼ばれる非常冷却装置があったのにも関わらず、事故当時その設備が稼働していなかったという致命的な誤認がありました。1号機運転開始から約40年間、「イソコン」を訓練でも実際に稼働させてこなかったことが原因でした。なぜ原子炉冷却に最重要な設備の訓練が実施されてこなかったのか、関係者への取材と資料をもとに追及していきます。
後半は膨大なテレビ会議の記録から、なぜ「イソコン」の稼働状況を誤認するに至ったのかをAIを用いて解析した結果を報告しています。
NHKスペシャル取材班による丹念な取材を新書1冊にまとめた福島第一原発事故の記録です。NHK記者による執筆だけあって、文章が非常にわかりやすく読みやすかったです。
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失敗の本質は大東亜戦争失敗と同じ
2018/01/04 16:02
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投稿者:nobita - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすがNHKの分析力。現場・現実・現物で判断。コミュニケーションミス、自己防衛、思い込みなどいつの時代でも通ずるミス。今の愚かな政治家どもが読んで熟知してほしい。でも、今の知的レベルでは無理か?
吉田所長さんが生きていれば、もっと再発防止策がわかったかもしれない。
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福島第一原発事故は、東電だけでなく、われわれ日本人の問題だ
2019/09/05 13:20
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投稿者:ぱぴぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今更だが、読んで良かった。これまで自分は「この東京電力め!」という気持ちが強かったが、この本を読んだら、そんな気持ちは失せ、東京電力でなくても、他の多くの日本企業でも、こうなっただろうなと他人事には思えなくなった。
ひとつは、日本人特有の危機管理の考え方。事前の準備を綿密にすることによって、大事故は起きないという想定で動くことによって、実際にリスクが起こったとき、リスクに対応できない。そこには、小さなリスクにも、いちいち待ったをかける日本人の国民性の問題もある。これでは、事業主は、大きなリスクに備える訓練ができない。結果、ますますリスク管理の実地訓練が遠のく。また、細かいことにいちいち待ったをかけるのは、マスコミも我々市民も科学的知識が圧倒的に不足しているからだろう。反省したい。はたまた、組織の情報共有の問題。情報は、混乱を招かないためにもある程度一本化されるべきで、そのため縦の流れが強くなるのは仕方がないが、そのために横から重要な情報が来ても共有できない。しかし、横からの情報をなんでも取り入れればいいかといえばそれは難しい。横からの情報も、玉石混交だからだ。大切なのは、縦も横も情報が共有ができて、しかも重要な情報だけを選び取れる知性。簡単なことではなかろう。さらに、圧倒的に優秀なリーダーがいても、一人のリーダーが働き続けられる限界は72時間。だから、そうしたリーダー並みの第2、第3の責任者がスタンバイできる状態にしておかなければいけないが、果たしてあなたの会社はそうなっているだろうか。これら以外にも、う〜んとうならされてことは、たくさんあったが、上記を知るだけでも、多くの日本人のサラリーマンは、福島の事故がとても他人事とは思えなくなるはずだ。
原発に興味ある方にもない方にも、一読をすすめたい。尚、事故後、東電は、これらの反省の上に、情報共有の仕方に変更を加えたらしい。何事にも完璧はないと思うが、そうした姿勢は、評価してもいいのではないか。
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#fb 統計的有意性とかどうなのか、とかいう面から学術的議論に耐えられるかどうか良くわかんないけど、ガッツフィーリングっていう面からはこの手のデータ分析は便利だよなぁ、と思う。今現在の費用対効果はともかく。しかし、あの状況のデータをよくハンドリングできるところまで持って行ったなぁ、と感心する。何人工かかったんだろうなぁ。
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福島原発事故の本は数多く読んでいたので、殆どの事象は知っていたと思っていたが、事故後5年以上たっても「新事実」が出てきているとは驚きである。
「情報共有の欠如「ロジスティックの欠落」ともに重い考察だ。原子力発電には、今後も絶え間ない調査と検証が必要と思った。
それにしても日本人は、危機時の組織の作り方が実に下手だ。福島原発事故で現場の吉田所長が「6日間で5時間の睡眠!」と孤軍奮闘する姿は、旧日本軍の最前線で補給も撤退もなされず「玉砕」するしかなかった姿と重なる。
まだまだこの事故の考察は興味深い内容が多いと思えた。
2017年10月読了。
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3基もの原子炉がメルトダウンした福島第一原発事故において、事態の悪化を一気に加速させたきっかけは最初に水素爆発を起こした1号機でした。1号機の冷却には「イソコン」と呼ばれる非常冷却装置があったのにも関わらず、事故当時その設備が稼働していなかったという致命的な誤認がありました。1号機運転開始から約40年間、「イソコン」を訓練でも実際に稼働させてこなかったことが原因でした。なぜ原子炉冷却に最重要な設備の訓練が実施されてこなかったのか、関係者への取材と資料をもとに追及していきます。
後半は膨大なテレビ会議の記録から、なぜ「イソコン」の稼働状況を誤認するに至ったのかをAIを用いて解析した結果を報告しています。
NHKスペシャル取材班による丹念な取材を新書1冊にまとめた福島第一原発事故の記録です。NHK記者による執筆だけあって、文章が非常にわかりやすく読みやすかったです。
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福島第一原子力発電所の事故について調査報道を続けているNHK
スペシャルだが、本書については少々まとまりが悪いかなと感じた。
全電源喪失の状態から原子炉の冷却を続ける為に取られた海水注入。
しかし、事故の陣頭指揮にあたった福島第一原発の吉田所長も本当
に1号機の原子炉に海水が十分に注入されているかには早い段階で
疑問を抱いていた。
事故当時、日々報道される福島第一の状況を見ていても、いくら水を
入れても満水にならないのはどこかで漏れているのではないか?と
素人でさえ思っていた。
唯一、電源がなくても原子炉を冷却できる非常用冷却装置イソコンが
起動していなかったこと。また、イソコンが起動した際の排気口から
排出される蒸気がどのような状態なのかの実際の訓練をしたことの
ない運転員。
そして、次々に起こる緊急事態への対応・判断が吉田所長ひとりに集中
した結果の、極限的な疲労。複合的な結果だと思うんだよね。
NHKでは東京電力のテレビ会議の模様をAIに解析させているけれど、
吉田所長だけではなく、最前線で事故を最小限に抑えようとしていた
現場の人たちは、誰もがみな持てる知識と力を存分に使って、極限状態に
置かれていた。原子炉の暴走が止められなければ、真っ先に命を落とす
ことになったのは彼らだったのだから。
本書では1号機の中央制御室と免振重要棟の間で十分な情報の共有が出来
ていないことを挙げている。ただ、それに「失敗の本質」を求めるのは
どうだろうかと感じた。
あの事故を検証することは大切だと思う。しかし、その事故に至るまで
日本の原子力発電所では過酷事故は起こらないとし、全電源喪失の可能性
までを否定して来たことから検証しなければならないのではないか。
「原発は安全です。クリーンです」。この原発安全神話を信仰して来た
結果が、あの過酷事故ではなかったかと、原発事故関連の作品を読むたび
に私はそこへ戻ってしまうんだよな。
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驚きの連続でした。事故から6年経過しても発覚する新事実に複雑さと問題の根深さを感じました。NHKの人的及び経済的リソースありきのドキュメントですが、取材班の迸る熱量が行間に溢れています。イソコンの歴史的経緯や1号機海水注入が12日間出来ていなかったこと、Watsonによるテレビ会議分析、疲労の数値化等々どれもスクープと言ってよい内容です。事故を風化させない意味でも貴重なノンフィクション作品です。
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NHKスペシャルを見ていなかったので、本書の事実に驚愕。
・冷却装置イソコンを40年間動かさなかった
→イソコンが動いていると勘違いにつながった。
→訓練でイソコンを動かすと原子炉に影響を及ぼすリスクがある。
→ 小さなリスク回避のために、大きな事故につながった。
・事故発生から12日間原子炉に届いた冷却水はほぼゼロだった。
→吉田所長にすべての責任が集中。
→ 人間、正しく判断できるのは72時間が限界。
→ セカンドチームが必要
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感情論ではなく、事実に基づいた科学的見地からの分析は、この出来事を未来への教訓として活かすためには重要になる。緊急時の対応について、ことわざで言うなら「備えあれば憂いなし」か。
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NHKの取材執念とかドリルダウンの迫力が凄いことはよく伝わる。
ただ、F1の一番の本質がイソコンなのかどうかは、この事故全体をシステム的に捉えている人であれば疑問に思うのではないか。どちらかといえば枝葉末節にいたずらに詳しいフォーカスを当てているような気がする。
TV会議録の自然言語解析という手法は、いろいろな組織において今後の危機管理体制のあり方について、貴重な知見をもたらす可能性があるだろう。
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・実動作試験には、設備のメンテナンスとしての機能チェックだけでなく、もう一つ大事なのが「運転経験」。作動するとどうなるのか自体を正しく把握する。
・イソコンはこれができず、作動していないのに、作動していると勘違いしてしまった。
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本への期待
事故の真相について
有事の適切な組織や対応について
読書後
日本では重大事故は起きないという前提で作られたマニュアルでは、想定外だった事がいくつも重なっていた。
また、リスク判断を見誤り、大切な訓練の一つも行われていなかった。
これらは、よく言う安全神話から来るもので、アメリカとは真逆の考え方だ。
最後の、吉田所長の一言が、凄く身に染みました。
決して同じ過ちは繰り返してはいけないと強く心に思った一冊です。
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まず、その取材力に驚いた。深堀りし続ける探究心と熱意。未曾有の事故を何とか教訓として次世代に活かし、同じような災害を招いてはいけないとの思いがひしひしと伝わってきた。
その中で導き出されたポイントを自分なりに噛み砕いたものとして簡単に列挙してみた。
①日本人らしい特徴なのか知識のみの机上の空論が主体となりやすく、一方で職人気質の経験のみに頼ってしまうという2パターンに陥る傾向にある。そのため、不足の事態に対して経験がないから動けない。もしくはブラックボックス化した属人性のみでしか対応できず、チームで動くことができないため、軋轢や混乱が生じる。まず、精緻なマニュアルもしくは履歴を残し、知識として伝達していきながら組織として定期的に訓練もしくは練習の必要がある。
②アメリカは国民性なのか取り敢えずやってみるといった経験による伝達、継承。文章で残すといった情報の共有及び見える化がしっかりとなされている。それは、多民族国家であり契約社会の国だからかもしれない。
③組織の反省点。今回はいくらリーダーが優秀であってもそれに頼りすぎであり、そもそも仕組み自体が1人に情報と判断が集中化されリスク管理が不十分だったことが浮き彫りになり、その先には精神論が重視されていたようにも感じた。実際に人間は72時間で気絶し、36時間後に体力、集中力の限界を迎えると言われている。今後の対策の一つとしてオンラインの活用含めてツールをうまく使い複数人での対応ができるように仕組みを考えることが必須であり、また、不慮の事故にも対処できるようなシフト体制も重要になってくる。合わせて、他部署、本店、支店と違った視野からの意見も取り入れることができる体制がリスクヘッジとなり不可欠だと感じた。
最後にこういった問題点は通常の会社業務においても大なり小なり共通している課題であり、解決するヒントとして大変参考となる内容だった。
とにかく、現場のリーダーであった故人の吉田所長に対してご冥福をお祈りしたい。