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愛と平和は雌竜が吐く霧によって保たれる
2020/03/21 23:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
愛と平和は、雌竜が吐く霧によって保たれている。夫婦の愛と社会の平和は、忘却によって保たれている。
雌竜の霧。いい表現だ。
それはともかくカズオ・イシグロが導き出す現実は、身も蓋もないぐらいに厳しい。『私を離さないで』を読んだ後、目の前が真っ暗になるような思いをしたが、この『忘れられた巨人』も同様の読後感を持った。アーサー王物語も古代ブリテンの歴史も知識がほとんどないまま、ファンタジー的な物語なのかと思って読み進めていたが、終盤の終盤に一気に心が鬱になりかけた。
夫婦の旅の目的地は、三途の川の向こうの死の世界だ、と私は読んだ。結局、死は一人で迎えるしかないものである。最後の場面、主人公の決断が胸に来た。
紙の本
ノーベル賞受賞の報を受けて
2017/11/18 16:27
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投稿者:やもり - この投稿者のレビュー一覧を見る
単行本化された際に英語版で買っていたが、全然進んでなかった。こんなことを思い出していたら、三省堂が記念セールをやっていた。平積みの中から抜き出して購入。
アーサー物語をバックボーンに話が紡がれ、読んでいないことを後悔するも、まずは面白い。カズオイシグロらしい哀惜を感じさせる語りで最後まで一気読み。ラストの悲しさと余韻もまた良い。
紙の本
事前にアーサー王伝説についての知識を持っておくとさらに面白くなる
2019/12/24 22:32
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまでに読んだ「日の名残り」(戦前に執事をしていた男の現在と過去のお話、主人公に都合よく語られて気がする)、「私を離さないで」(介護人として働く主人公の悲しい運命、内容はSF的でもある)とは全く違った内容で舞台はアーサー王逝去後のグレートブリテン、ファンタジー小説のようでもあるがその中身は複雑だ。最後に船頭がベアトリスだけを乗せて島に連れて行こうとする、アクセルは当然一緒に行こうとするがという展開があるのだが、このあたりはアーサー王がアヴァロン島という島で最期を迎えたという話を知識として持っていないと意味が分からないかもしれない。ベアリストとアクセルは霧が晴れて本当に幸せだったのか、忘れたい過去もあるから私はある程度は霧がかかっていてほしい
紙の本
龍の存在
2018/07/29 13:16
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投稿者:soprannome - この投稿者のレビュー一覧を見る
龍が殺されたことで人々の忘却が解かれ、また民族間の争いが始まるのだろう。
あれだけ愛し信頼しあっていた老夫婦も過去の過ちを思い出し、離れ離れに
なっていく。
過去の出来事を忘却の彼方に追いやり前を向くことができるのか? 考えさせ
られる物語です。
紙の本
深い物語
2017/12/12 17:27
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
霧に包まれるいにしえの時代のイギリス。アーサー王の活躍を知る者が老いて生きている頃、アクセルとベアトリスの夫婦は息子の住む村に行こうと決める。
何故か忘却が国も民も包み込む。
そういえばアーサー王が戦ったのはドラゴンや魔法使いばかりではなかった。ブリトン人、サクソン人、ピクト人、相争う民族がいた。
民族間や集落、果ては夫婦間が穏やかに暮らすには忘却が必要なのだろうか?
過去を忘れずに前進するのが、人間の叡智だろうか?
それを問う長編。
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カズオイシグロの会話文?が好きだ。「私を離さないで」がとても好きだが、これもなかなか良かった。
ファンタジーのようでミステリのようで哲学書のようだ。
大きな出来事がなくても、どんでん返しやトリックがなくても、とにかく読ませる。
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文庫化で再読。
本当は単行本で読んだので買う予定はなかったのだが、ノーベル文学賞というニュースが流れてきたので、記念に……。
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前情報なしに読んでみた。純文学だろうかななんて予想は綺麗に裏切られて、まさかのファンタジー。しかし、とても写実的。
長く語り継ぐことができる古典のような作品だと思う。誰が信じられるのか、何が本当なのか。何を覚えて、何を忘れるのか。
年月の経過が人を変えていく、あるいは変えられずに小さな歪みが積もり積もって思い出されていく。
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カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞した直後に文庫化されるっていうので話題になっていたので読んでみた。
舞台は6、7世紀のブリテン島で、アーサー王伝説が下敷きになっているので、そこら辺の知識に疎いのでちょっととっつきにくさは否めなかった。
章ごとに視点が変わり、時間も進んだり戻ったりする書き方に、引き込まれるものを感じた。
「忘れられた巨人」という何か違うものを想像しながら読んでいたけど、ちょっと、終わりがあっけない気もする。
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【人類と記憶と歴史】
忘れる。そのことが存在したこと自体を覚えていない。思いもしない。
存在した気がするが内容を思い出せない。
存在したことを信じているが全体的にぼんやりしている。
存在したことはわかっているが詳細が思い出せない。
大事な何かがあるはずなのに思い出せない。
一方で、記憶の風化を防ぐ、忘れてはならない、忘れたくない、ということもある。
良いことも悪いことも、全てを明確にいつまでも頭に、心にとどめていられたら、きっと人間はその時点を振り返り、立ち戻り、囚われて、前に進んでいくことにものすごい力を必要とするのだろう。
反面、思い出したくない、忘れたふりをする、記憶の奥底に追いやって目を向けない、なかったかのようにふるまう、そうやって現実を直視しない、自分を世界を偽っていれば、これまた本当に前に進むことはできない。
そして人は記憶(の取捨や解釈)で自分を偽ることができる。記憶と感情と知恵が絡んで厄介な存在だ。
どう付き合っていくのが幸せなのだろうと、問いかけられているようだ。
【老夫婦】
お互いを愛情深く思いやり寄り添いながら目的地を目指し、失われていく記憶を取り戻すこと、これ以上失わないことを目指すが。。。
全てが戻ってきたあとの、ラストは、第三者の目から描かれ深く静かな余韻に包まれ、その解釈は様々だろう。
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ノーベル賞を取るちょっと前に読んだんだけど、まあ、確かにもらってもおかしくないよね(ウエメセごめんw)。
インタビューでも答えてたけど「忘れるってことの意味」それも、個人レベルではなく、集団(国家)レベルで忘れるってことの意味が雌龍クエリグの比喩を使ってうまく表されてます。戦前の日本を忘れるとか、原発の危機を忘れるとかと通底する社会の問題ってか。
前半のペースがイマイチだったり、最後、渡し船の比喩もわかりにくいんだけど、奥さんがずっと胸を痛がってたからってのはなるほどです。長男の行く末もよくわからなかったけど。
イシグロさんのはこれまで「日の名残り」しか読んだことがないんだけど、次は「私を離さないで」かな。とにかく全部ジャンルが違うらしい。
わが村上御大は「偉大なマンネリ」ですが、イシグロさんはそれとは対極にあるようなので、楽しみです。
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なかなか難しいファンタジー。
ただ、カズオイシグロ好きとしては、その筆の海の中で世界観に浸れて気分良く読書体験ができるのだが。
しかし難解な作品だった。
ここまでくると、内容がどうとかじゃないような。小説という芸術性をひたすら楽しむのに尽きる。そんな高い感性を与えてくれるのだ、カズオイシグロは。
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よくわからなかった(笑)
愛しい想いでをなくすのは悲しいけれど
辛く悲しい想いでや憎しみは忘れていた方が
幸せだったかもしれない
ということか
やはり翻訳したものは苦手だ。
文章が読みにくい。
日本語として違和感を感じるところが多い。
まず、年老いた夫が妻を「お姫様」と呼ぶところ。
次に「鬼」という存在。
おそらくゴブリンと呼ばれるものかと思うが、
日本語に合うものが他になかったのだろう。
英語で読めればよかったのだが、能力が無いのでしかたない(笑)
最後は
結局彼らはどうなったの?という感じだった。
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グローバル化の深化と民族対立・宗教対立の激化という真逆の価値観が同時進行する世界を語る重要な作品になるのでは、、、と感じる。社会的意味合いで記憶される作品でしょう。
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ハッピーエンド希望!!二人で島で暮らせるのかハラハラする。
忘れるって大事だなと思った。大切な思い出すら、苦しませるものになったりする。
こういうファンタジーものは大好きで、一気に読みました。
そしてアーサー王の本を買いました。好きだなあ。
主人公夫妻の幸せを願ってやまないです。