紙の本
これは、私たちの世界が変わることを予想した驚異の書です!
2017/11/28 11:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、有名な『時間かせぎの資本主義』を上梓した筆者による資本主義の終焉を語った驚異的な書です。16世紀から私たちが慣れ親しんできた資本主義が、今や終焉期に入っていることを同書は数々の実例を挙げて説明してくれます。この資本主義はどう終わりを告げるのか?それと共に、民主政治はどう解体していくのかをわかりやすく解説した、まさに私たちにとっては驚愕の一冊と言えるかもしれません。
紙の本
流行りの資本主義終末論
2018/02/07 15:46
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
民主主義と資本主義が次第に両立しなくなってきた現代につき、市場経済の拡大が資本主義社会を崩壊させ、新自由主義体制という民主主義を捨て去った規模の縮小を目指すような社会になるという非現実的な予言書。
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本書は、今後、テクノクラートが民主主義的制度を破壊する法案を通過させ、一方では国粋極右政党が次々と現われ、市民たちは、両者に挟まれ、極右政党を支持するだろう、と述べている。グローバル化した市場社会に負けた社会民主主義に見捨てられると感じているからである、と述べている。
この現象は、先進国共通の現象としてすでに現実化している。
ヒラリーを見限り、トランプへ投じた労働者はまさに「グローバル化した市場社会に負けた社会民主主義に見捨てられると感じているからである」である。
それはEUもそうだ。英国は、EUから脱退することで、「グローバル化した市場社会に負けた社会民主主義に見捨てられると感じているからである」を示したのである。
日本は、本来保守党でしかない自民党が延命のため、国粋極右政党と化したが、首相の公私混同ぶりがはなはだしく、自民党は軌道修正を迫られるが、野党への政権交代があるとも考えにくい。
つまり、本書のように「社会」を眺めることが、多大な幻滅を味わなくて済む。
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未来を考えようシリーズ。ドイツの経済学者による資本主義の行末を考察したもの。資本主義は、それ自体が究極的に進行することで、自らその体制を維持できなくなるという説。根拠として挙げているのが、解消されないほどの格差の拡大、寡占化による競争(神の手)の不在、低成長と過大な債務、民営化と政治の不介入など。これまでは戦争で”チャラ”になってきたが、戦争と格差拡大のどちらかを選ばなければならないのか。作者は欧州を中心にアメリカの状況にも言及しているが、程度によるが日本でも静かに進行しているものもあり、今後どうなるか。ただ、資本主義がなくなるのではなく、資本主義の恩恵で生きていく一部の富裕層と、"99%"の"無用層"に分かれるのではないか。それはどんな社会なのか。
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まだ読書中だが、現代資本主義社会をズバリ言い表した64pの文が素晴らしい。
ー64pから引用ー
今日、富裕な資本主義国における消費財市場が広く飽和状態であることは繰り返すまでもなかろう。そのような状況で資本家の利益を上げるために必要なのは、次々と(満足すればするほど)、新たな欲望が生じることを求めるような消費者を獲得することである。プロダクトデザインと広告はそのための道具であるが、現在はそこに低価格も含めることができる。最終消費者の視野に入らず、集団的連帯の手の届かない、現代の奴隷工場に作らせることで低価格が実現できるようになったからである。標準的な消費の基準がたえずつり上げられることに、消費者たちが盲従し、商品の購入を競うようになると、彼らは勤労意欲をますます高め、たとえ給料が変わらず、むしろ下がることになっても、現在の労働市場と労働環境の厳しい要求に従うようになる。その圧力は、彼らが最新式のテレビや自動車をクレジット払いで買うとしたら、更に強くなるだろう。この点で銀行は、雇用者と並んで、資本主義の労働規律を強化する役割を果たしている。さらに、買い物が友人や家族とのつきあい方を選択する行為となり、個人の社会的地位が消費者の経済的地位へと置き換えられると、そのとき社会関係は消費関係として再定義される。そのような状況で、製品の差別化ーこれは新たな生産技術と広告手法(とくに近年ではソーシャルメディアの利用)によって可能になったーにより、新種の社会統合が生まれている。つまり人々は消費者コミュニティをつうじて、自分の独自性と集団的アイデンティが結びついた感覚を抱くようになり、つねに個別化されアップグレードされる商品の消費に飲み込まれていくのである。
まとめると、ポスト資本主義の空白期間における社会生活と資本蓄積は、逆行や不確実性と戦う必要性から開放してくれる競争的快楽主義の文化を信奉する、消費者としての個人によって支えられている。低成長・格差拡大・債務増加に直面するポスト資本主義において、なお資本蓄積を継続するためには、そのような文化をつうじて希望や夢をもつことを人々の義務とさせ、その夢と希望を生産の維持と消費の促進のための燃料としなければならない。
ー引用以上ー