紙の本
500年に渡るヨーロッパの栄光と挫折の歴史を考察します!
2020/03/07 12:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、栄光と挫折を繰り返してきた近代ヨーロッパの歴史を考察した画期的な一冊です。ヨーロッパ諸国は、大航海時代の15世紀には世界に先駆けてアジアや新大陸に進出し、貿易戦争を掻い潜ってグローバル化を進めてきました。そして、その後、産業革命と帝国主義の台頭で世界の覇権を確立したものの、第一次大戦、第二次大戦で大きな打撃を受け、破局を迎えることになります。そうした過去の反省から欧州連合(EU)という国民国家を超えた地域統合の道を歩み始めるのですが、こうした500年以上にもわたる道程を丁寧にかつ詳細に考察したのが同書です。ぜひ、ヨーロッパの栄光と挫折の歴史を再考するために読んでいただきたい一冊です!
紙の本
近代ヨーロッパの覇権
2020/04/19 16:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヨーロッパが近代に至る過程を通史的にまとめている。世界史の参考書に出てくるような考察が出てきたので、参考書をみたら、参考書の参考文献にもなっていた。
著者はフランスのアナール学派の紹介者らしく、その影響もあるのかもしれない。
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ただ教科書的にイベントの羅列をするのではなく、誰もが知るような大きな出来事の背景を非常にわかりやすく解説してくれている。
長らくヨーロッパの帝国主義・植民地化の動きの背景となるマインドがわからずにいたが、産業発展・文明化されていない他国の啓蒙やキリスト教の布教という極めて一方的な理由であることがわかった。中には投資先の拡大という理由もあった。
「投資先の拡大」と書いて思ったけれど、
産業革命以前には、裕福な貴族と、家庭内手工業的な働き方だった市民や農民と明確に区別がなされ、その範囲内での経済活動であった。もちろん税金の免除など特例がなされていた貴族層に対して不満はあったにせよ、自らの意思で経済活動を行い、被支配感というのは大きくなかったのではないかと思う。
一方で、産業革命を経て資本家が誕生し、市民や農民は工場などに集められ(自らの意思でというよりも、雇用を求めて仕方ない部分が大きかったのではないか。現代でもそうだと思う)、聖月曜日も否定され、子どもも働かされるような、それまでの人権が一部否定されるような環境へと変貌してしまった。技術の発展に伴いあわよくば一般的な所得の人でも資本家へとなれる可能性は拡大した?かもしれないが、やはり相対的貧困やなんとなく感じる抑圧感というのは拡大してしまったと思う。
それは突然商品として売り出されることになった奴隷と近しいものに感じるし、現代社会も似たようなものだと思う。自ら企業するなりお店を経営することも可能だが、失敗することのリスクが大きすぎる。それであればある程度の自由や権利を削ぎ落としてでも、企業傘下で自らの時間と労働力を提供するほうが、経済的・社会的に安心を得ることができる。生きてはいられるけれども、保守的な社会。もっと人間的なるもの(創作や芸術活動や自分のアイデアをもとにした経済活動など)が爆発した世の中の方が楽しいだろうなと思う人は多いと思う。それと現実は異なるし、そのような社会が現実になったこともない(労働の価値が低かった古代ギリシャだってその背景には奴隷がいた)。そういった社会はどうしたら実現するんだろうなと思う。
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大航海時代中盤から第一次世界大戦までの間、世界をリードしてきた「近大ヨーロッパ」の覇権。
それが如何に発展し、そして終演したのかというお話。
未だに、「欧(米)」が世界をリードし、フォーマットをつくってきたことは事実だからなあ。(影は影として
やはり、欧州が如何にしてその地位を占めてきたのかについて学ぶ必要はある。それにしても、大英帝国。大英帝国に尽きる。
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15世紀から19世紀にかけての近代ヨーロッパが世界の覇権を握り現代世界のベースを造った歴史を概観する。文化的にも軍事的にも東洋に比べたら劣っていた中世の欧州が、大航海時代から世界を支配していく歴史はダイナミックでとても興味深い時代だ。
特に神が絶対であり、全てのことは神が造ったのだから、聖書に書いてあることが全てであるから、それと異なる考えを持ってはいけないという中世の世界からの脱却が興味深い。欧州は十字軍の時代にイスラム勢力に対して宗教に名を借りた虐殺・強奪行為を重ね、その後の宗教改革の時代では宗教戦争を繰り返した。その規模と期間は日本の戦国時代どころではないのだ。そのパワーで欧州の大航海時代からの世界征服が始まるのであるから、アジアやアフリカののんびりした国々はひとたまりもなかったのもやむを得ない。
興亡の世界史の中でもこの本は読む価値が高いと思います。