紙の本
ネタバレ厳禁! <殺した>ではなく<殺す>というところにも重要な意味が。
2018/05/27 04:59
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一章のタイトル、<空港のバーのルール>からなんだか「おおっ!」と思う。そして登場人物の一人が読みかけていた本がパトリシア・ハイスミスの『殺意の迷宮』。そうなのよ、全編、ハイスミスっぽい雰囲気が(だからといってパクリなわけではない)。でもハイスミスがトリッキーな仕掛けであることを自覚しないまま書いていただろうけど、ピーター・スワンソンは自覚的に書いている。
4人の登場人物の一人称形式の章が順番に、ときにアトランダムに続き、章が進むごとに新しい顔があらわれ、「やっぱりそうだったのか!」から「おぉ、そうきたか!」まで様々な感情に翻弄される。
そりゃ一気読み必至!
まさに、“殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防”(←裏表紙のあらすじから)そのもの!
出てくる人たちはみな、それぞれちょっとずつ(人によってはちょっとではないが)、ずれている。そのずれ加減故に普通の人には感情移入しきれない人たちのはずなんだけど・・・不思議と、何故かちょっと共感してしまう部分もあり・・・ソシオパスに魅力を感じてしまうとはどういうこと!、という別の戦慄をも生むのである。
それが犯罪という厄介なものそのもの・・・人間誰もが心の奥底にある要素だからこそ犯罪は絶えない、という事実そのものなのだ。
あぁ、とても面白かった。
面白かった、と思うことが不謹慎であると感じるほどに。
紙の本
変わる語り手の妙
2021/08/14 04:57
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーランキング上位独占の傑作。その面白さを満喫!妻ミランダの不倫を目撃し、殺害を決意した夫のテッド。偶然テッドに出会ったリリーは彼に手を貸すことに。第一部はそのテッドとリリーが交互に語り手となって展開されるため、単純な倒叙ものかと思いきや、思わぬ形で第一部が終了。そして第二部は、語り手が変わり、今度はリリーとミランダ。この辺りから次の展開が読めず、俄然面白くなってきます。二人が接近する終盤に向かっては、語り手が交互に代わる手法がますます威力を発揮して面白さが加速します。そして最後の第3部は、また語り手が変わり、ここで正統派の倒叙かと思いきや、ラストの展開は予想外。キャラへの感情移入もでき、倒叙ものの中でも秀作です!
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始まりも、リリーがハイスミス『殺意の迷宮』を読んでいるのも、ハイスミスへのオマージュとなっているが、ラストも映画『太陽がいっぱい』のラストシーンを彷彿とさせる。
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読むなら今である。
まずとにかくタイトルがいい。
『そしてミランダを殺す』
このタイトルだけで色々想像させられる。
ミランダって、誰? ミランダなにしたの? ミランダどれだけ恨まれてるの? それとも、ミランダは不条理にひどい目にあうの? あるいは・・・・・・?
気になってつい読んでしまう人がいるらしい。
そして、その読後感を伝えたくなる人が、少なからずいるらしい。
とにかく評判がいいのだ。
それがたくさん目に入る。
問題は、評判というのは、どうしてもネタバレを含んでしまうということだ。
続きが気になりワクワクとページをめくりたい人は、さっさと読んだほうがいい。
いずれ、あなたは、ネタバレされる。
ネタバレを気にしないという人であっても、評判というのは聞けば聞くほど、塩梅を越えてしまうという点がある。
期待を高めすぎて、いざ読んだら「それほどでもなかった」とがっかりさせられたり、
あるいは、「ここまで皆が言うなら、もういいや」と、すれからしの達観に至ってしまったりする。
いわば旬を逃してしまう形だ。
そんな状況は、私には人生の歓びを欠くこととしか言いようがない。
発売されて、まだ日がたっていないこの頃か、
レビューを見てしまったこの時か、
なんにせよ、読むなら今なのである。
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読める展開もあったけど、全体的に
展開が読めない。
登場人物の視点の切り替わり方も
話を面白くするし
久々にハイペースで読んでしまった。
犯罪小説で、誰にも感情移入できないけど
あの人が、傷つかず静かに暮らしたい気持ち
なのはなんとなく感じ取れて
少し共感していた。
あとラストの展開の
放り投げられ方がすご!!
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面白かった。なんかこう作者の思惑通りに誘導されたのはすごく久しぶりでそのことに嫌だとも思わない。すっきりする。そしてこのラストの手紙がいい。すごくいい。映画化とのことだけど、リリーは誰が演じるんだろ。わくわく。
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テンポがとってもよくて、一気読みでした。場面転換が素晴らしいです。そして、実に余韻を残す映画的なラストです。彼女の表情まで目に浮かびます。解説によると、実際に準備中のようですね。とても楽しみです!
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2019.01.02.読了
買ってから、放っておいたんです。なんか面白そうだから、まだまだ読むのはやめようって。
で、せっかくの年末年始。1年の中で私が最も愛すべき季節と休暇。これはもう手を出しちゃおうって事で読みました。
おそるべしです。海外ミステリーはバズレを引くと読みにくく、言い回しやジョークが直訳だったりして、ストーリーが全く頭に入ってこない。そして挫折する。こんなことを何度も経験した私。ドラゴンタトゥーのミレニアムぐらいですかね?今までで楽しめたのは。。。
昨年、ピエールルメートルに出会って考え改めたわけです。ヴェルーヴェン刑事シリーズを読んでめっちゃくちゃ面白いじゃん!となったわけで。。。
前置きが長くて呆れた方、申し訳ありません。
ピータースワンソン、たまりません。引き込まれます。
若い作家さんなのか?作品はまだ2作目なのかな?
でも、内容はベテランの域に達してます。
どうにもこうにも主人公のリリーが切なくて、どうか捕まらないで!と肩入れしてしまいました。
デビュー作の時計仕掛けの恋人も即購入いたしました!
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第2部に入ると、全てを一変させるような展開があり、さらに、まさかそう来るか!のラスト。陳腐な不倫もの見せかけて、大どんでん返し小説だった。好み。
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裕福な実業家テッドは、空港のラウンジで、美しい女リリーに話しかけられる。
マティーニを挟み、2人は、しばし親密なひとときを過ごす。それは旅先のちょっとしたアヴァンチュールだ。スタイリッシュなバー。ほのかな恋の予感。アルコールのもたらす若干の高揚感。そんなとき、人は普段なら口にしないようなことをつい打ち明けてしまうものだ。
テッドは妻ミランダの浮気の証拠を掴んだばかりだった。「妻を殺したい」というテッド。驚くことに、リリーはそれを当然だと言い、手助けを申し出る。
原題は"The kind worth killing"。殺す価値のあるもの、つまりは殺されても仕方ないものというところだろう。
悪いやつなのだから、世の中に存在しても害となるだけだ。だから殺してしまえ、というわけだ。
浮気女と寝取り男への断罪を思わせるタイトルだが、それが後になって別の色合いを帯び始める。
物語の語り手は、章ごとに入れ替わる。
第1章はテッド、第2章はリリー。物語が進むにつれて、ミランダやその浮気相手のブラッドも語り始める。
入れ替わるモノローグの視点は、事件を別の角度から見せていく。しかも、その中には、いわゆる「信頼できない語り手」もいる。
叙述の手法も取り入れながら、狩るものはときに狩られるものとなり、サスペンスを孕んで物語は疾走する。出し抜くのは、出し抜かれるのは、誰だ。仕掛けがわかるまではノンストップだ。
中盤以降の眼目は、いかにチェックメイトに至るかだろう。事件の捜査に当たるキンボール刑事は、犯人を追い詰めることができるだろうか。
解説によれば、映像化権もすでに売れているそうで、シナリオは完成済みとのこと。
リリーやミランダのキャスティングが楽しみなところだ。
都会的な雰囲気に、ウィットの効いた描写、クリスティやナンシー・ドルー、ハイスミスなどへのオマージュ。
娯楽サスペンス映画としては、期待してよい作品だろう。
ラストは小説としては若干押しが弱いようにも感じるが、映像化の仕方によっては見事なエンディングとなりそうだ。
狩るものは、ついに狩られる。
逃げおおせたと思ったいちばん悪いものの悪事は、白日の下にさらされることになるのか。
見届けるのはあなただ。
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リリース:達也さん
テーマ:おすすめ本
ミステリー本をネタばれしない程度に上手く紹介しつつ
オススメしてくれた本。
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揺るぎない信念を持って殺人を犯すリリー.彼女の中の正義が1章,2章と凄みを増して終盤へと続く.シリアスキラーとはまた違ってとても不気味だ.
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そしてミランダを殺す、読み終わり。
すごかった、とにかく夢中で読んだ…なんだか惹きつけられる二人に、これからどうなるんだと思ったら第1章の終わりで、え、てなって、そのままノンストップ。
そしてこの終わり。
著者に手の上で気持ちよく転がされた。
彼女にはこのまま、となぜか願ってしまったのだけれど、それは、彼女が屈するのを見たくなかっただけなんだと気付かされた。この終わり、とても好き。とても面白かった!
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リリーがぶっちぎりサイコパスだってことに最後の最後まで気づかなかった。それくらいミステリアスで知的で淡々とした人物描写。やってることは冷酷で別に大したトリックとかがあるわけでもなく普通に殺して普通に隠してるんだけど、なんだかそれが当たり前のことみたいに思えてくる。狂ってるのはリリーなのか、世界なのか、分からなくなる。
これ好きな人は『アイリーンはもういない』も好きなんじゃないかな。
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フェイスとミランダが同一人物であることが早々に明かされ、おっと交換殺人じゃあないんだ…と、予測つかない展開で、どんどん読まされる!でも、オチはこれかあ。あら、あの井戸って、自分ちのじゃなかったのねー。じゃあそもそも全然ナシじゃんか、「死体さえみつからなきゃ殺人事件にならない」ってやつは。ぶー。