紙の本
この巻もまたいい短編ぞろい
2018/08/16 15:21
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンフィクション作家沢木耕太郎さんによる山本周五郎の短編選集の、文春文庫オリジナルの2巻め。(全部で4巻になります)
この巻の巻末に収められた沢木さんの「解説エッセイ」で、沢木さんは自身と山本周五郎の縁について書いていて、それは沢木さんが30代になったばかりの頃、新潮社から出た全集の山本周五郎の巻に「解説」を書いたという。
当時沢木さんは新進気鋭の書き手ではあったが、解説に沢木さんをあてた選抜はかなり勇気がいったのではないだろうか、それにしても当時の新潮社の編集者は先見の明があったといえる。
それからたくさんの水が橋の下を流れ、沢木さんはこうして山本の幾多の短編小説から名品といわれる作品を選んでくれているのだから、読者にとってありがたいかぎりだ。
この2巻めでは、掲載順に「ちいさこべ」「法師川八景」「よじょう」「榎物語」「裏の木戸はあいている」「こんち午の日」「橋の下」「若き日の摂津守」の9篇の短編が収められている。
よく知られた作品としては「ちいさこべ」や「よじょう」、表題となった「裏の木戸はあいている」があるが、沢木さんはこれらの9つの短編が「意地を貫いた」作品群として括られるのではないかとまとめたようだ。
もちろん、男女の愛の機微として「法師川八景」や「榎物語」などは読むことができるし、「よじょう」はよく言われているように作品の完成度がとても高い。
私はこの巻の中では「法師川八景」が好きだ。突然の男の死で婚家にも入れず、幼児を抱え生きていくことを決意した女、そして彼女を密かに支えるかつての婚約者。
仕合せの予感を残して作品が終わるところがいい。
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【没後五十年、今なお輝きを放つ短編傑作選。全四巻の決定版!】膨大な山本周五郎の短編群から選びに選ばれた名品――「ちいさこべ」「法師川八景」「榎物語」「こんち午の日」「橋の下」等九編。
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「山本周五郎名品館Ⅱ 裏の木戸はあいている」山本周五郎 (編:沢木耕太郎)
山本周五郎の短編集。
相変わらずのクオリティ。
「ちいさこべ」。火事に焼かれて家屋敷と両親を失った大工の若棟梁。同じ火事で行き場を失った孤児たち、その面倒を見る娘さん。
三つ巴それぞれの事情が描かれるだけなんですけれど、こういうお話しが染みてくるのは、世界には理不尽な都合で孤独になったり死んでしまったり不遇になったり、自力でどうにもならないことが多くある、まあつまり人生は運不運次第の受け身なゲームである、ということが感じてくる年齢以降なんだろうか、改めて思いました。
「ちいさこべ」は何度もドラマにもなっているらしく、最近は現代に置き換えてマンガにもなっているそう。マンガをちょっと読んでみたい気もします。
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沢木耕太郎セレクション「山本周五郎名品館2」.
色んなパターンの9編の短篇が収録されているが,どれも味わい深い.ハッピーエンドでない話もあるが,主人公はどれも不器用な人達である.
最後の「若き日の摂津守」がスカッとするなあ.
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国民的作家山本周五郎の珠玉の短編集。選者はあの沢木耕太郎。これが面白くないはずがない。様々なテーマ、舞台。山修の守備範囲の広さには驚かされる。
直木賞ほか文学賞を全て辞退したという山本周五郎。没後50年が過ぎても今でも多くの作品を簡単に入手することごできる。作品数から言えば司馬遼太郎と並ぶ国民的な作家であろう。
「ちいさこべ」「法師川八景」「よじょう」「榎物語」「裏の木戸はあいている」「こんち午の日」「橋の下」「ひとでなし」「若き日の摂津守」
本書は、沢木耕太郎が4巻に9作品ずつ合計で36編の短編小説を選んだもの。さすがにいずれもレベルが高い。映像化するなら「ちいさこべ」が良くまとめられている。
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いいです。勧善懲悪、予定調和ながら泣かせる。日本人のベースは、こういった物語で作られていったのだろう。テレビドラマでもよく見られるわけだ。
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何度読んでもそのたびに、江戸時代の情景が光や影の様に眼前に広がり、想いを異なった形で伝えてくる。
秀逸と思う。
一時、江戸時代の鎖国が今の閉鎖的な日本人の原型を作ったのかなと感じ、嫌になった時間が有った。
しかし、歳を重ねて人生を歩んでくると、嫌でも「自分に流れて居る血」は日本人そのものだし、自然の風景は人口の手になるモノ以外は縄文弥生時代からの山地。
周五郎がが描く世界は ほんとにちっぽけ・・今のIC,ネット社会が生んだ利器の社会と比べるととるに足らない空間かもしれない。でも人間が持つ力は大きく変わっていないことに気づかされる。
執念・怨嗟・憎悪・仁徳・孝養・・・ひとかけらの温もりが人の心を変える事が有るし、当てのない想いが数十年経って開花することもあるだろうし。。
最も自分が若い頃は、そう思ったが今の若い人は生まれた頃からネット空間が有った。その空気を知ってこの作品を読みこなせるのは稀有かもしれない。
今回は「若き日の摂津守」・・知的障害を演じるように教え込まれ、自らの武器とし はびこる周囲の静観し続けた結果が面白かった。