紙の本
「扇野藩」シリーズ、最後の作品
2018/06/29 05:19
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2017年12月、66歳で急逝した直木賞作家葉室麟さんは生前「月刊葉室」と呼ばれるほど毎月のように新刊が出る人気作家でした。
ただ葉室さんの場合、単に人気作家というよりもデビューが遅かった(50歳からの本格デビュー)せいで自身書くべきことがたくさんあると生き急いでいた感すらあります。
葉室さん自身、こんなにも早く終焉が来るとは思っていなかったでしょうが。
没後も単行本化されていない作品がいくつもあって、この作品もそのひとつ。
2016年4月から2017年1月まで「小説野生時代」に連載されていた、「扇野藩」シリーズの最後の作品となったものです。
「扇野藩」が舞台となった作品は『さわらびの譜』『散り椿』『はだれ雪』、そしてこの作品となります。
主人公の矢吹主馬は、かつて扇野藩で財政改革を推し進めていた中老檜弥八郎の縁戚の下級武士。弥八郎がいわれのない罪により切腹を強いられたあと、その娘那美と結ばれることになる。
主馬は若い頃弥八郎の薫陶を受けており、その意思を継ごうとしている。
一方で弥八郎の息子慶之助は生前父と不仲で、それゆえに父の為したことを凌ごうと懸命であった。
そんな慶之助は弥八郎の実の子ではないとの疑惑が浮上し、若い慶之助は打ちのめされていく。
財政破綻寸前の扇野藩に生き延びる道はあるのか。
自身の命までをかけて彼らが守ろうとしたもの、葉室さんの筆はこの作品でも抑制が効いた重厚さを感じる。
やはり葉室麟さんがいないのは、さびしい。
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初出 2016〜17年「小説野性時代」
まだあった葉室燐の違作。映画化に合わせての単行本化か?
ただ、骨太の感動作とはいえない。
かつて抜擢された檜弥八郎が、藩政改革を目指したものの切腹に追い込まれるように仕組まれたように、利己的で他者を利用しては犠牲にする風土がはびこる扇野藩で、新藩主の側近として復讐に燃える息子慶之助と、遠戚で弥八郎から薫陶を受けた矢吹主馬が、対立を乗り越え、家老や富商たちの謀略と戦う物語。
強引に実行して切腹して責任を取るという、ワンパターンの発想にやや鼻白むものの、阿片中毒を克服して人への信頼を回復していく慶之助の姿には惹かれる。
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皆さんの評価が低いので気になりながら読んだけど、結構面白いじゃないの! 感動の度合いは大きくないかも知れないけど、民の為に藩政改革を志し、道半ばにして挫折させられた男と彼の息子 娘に彼の意志を継いだらしき若者の3人が織り成すストーリーは興味深い!私は躊躇い無く星4つを差し上げます♪そして葉室麟さんに合掌.....
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扇野藩シリーズ。
散り椿を思い起こす…
檜弥八郎の切腹。その子慶之助と、那美。
那美と共に檜家を継いだ矢吹主馬。
檜慶之助と主馬の、相容れぬ…展開では、ありませんでしたぁ。
近寄りがたい慶之助。反する主馬。
どんどん、とーくなるかと、思いきや。
距離が近くなると、いうのか。想いが重なる‼︎理解しあう‼︎
藩札 罌粟〈津軽〉
そして、慶之助の妾、力。
項羽と劉邦も読みたくなる‼︎
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冒頭から最後の最後まで、すがすがしいまでの武士の生き様が輝いていました。
那美殿の存在や言葉に対し、このような人が友人でも家族でもお近くに住まわれていたら、気持ちよく生きていけるなと思ったほど、好きです。
しかし、おおもとの凶行について捨て置かれたようで、切なく、やりきれない想いがわだかまりましたため、星4つといたしました。
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武士の生き方をしっかり描けている。危機的状況にあって、どうやって切り抜けていくのか、一気に読み通せました。
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おもしろかった。主馬のような人、好き。けど、この本の作者紹介で、すでに亡くなっていることを初めて知って、とても残念。
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奥方様、貧しいと言う事は苦しく、哀れなのものです。どうしようもないから何かにすがるようにして腹を立て、誰かを憎むのでございますよ
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何でもかんでも腹を切って解決しようとなさいますな。
方便として使うのはまだわかるけどさ。
獅子身中の虫を取り除くことの何と難しいことよ。
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財政危機に陥った藩を救うために、
二人の家臣が藩政改革を行う。
民の貧しさは、お上にはあずかり知らぬところで、
過去に起きた大飢饉すら、もはや当事者しか覚えていない。
そんな状況は、今も昔も変わらないのだろうか。
それにしても、「大阪の豪商」の、時代劇での悪役率の高さは凄い。
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扇野藩シリーズ第4作品
5年前の「お狐火事」が原因で、扇野藩の財政は破綻寸前であった。
藩主・千賀谷右京大夫定家は、檜弥八郎を中老に登用して藩政改革にあたらせた。
弥八郎が断行した倹約政策は「黒縄地獄」と忌み嫌われ、挙げ句の果て、家老らの陰謀により切腹に追い込まれた。
「それがしの後を継ぐのは、あの者であろうか」と言葉を残して。
3年後、新藩主の側近となった、弥八郎の嫡男・慶之助は、独自の財政政策を練り、父を陥れた家老らに仇を討つ機会を狙っていた。
家老らは、慶之助の行動を恐れて、弥八郎の娘・那美を、軽格の親戚である矢吹主馬と夫婦にして、檜家を継ぐ様に画策した。
慶之助と主馬との軋轢。
慶之助の出自と、苦悩。
主馬と那美との夫婦愛、心の交流。
弥八郎が最後に残した、「あの者」とは、一体誰の事なのか。
読み応えのある一冊。
葉室麟さんの、新しい作品が読めないのは、寂しい限りだ。
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2021.12.12
すざましき武士道!侮るなかれ商人魂!
共にすごい世界がある。著者の作品らしい1冊である。