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まっすぐで正しくあろうとするのに、その重みに耐えきれない、脆くて儚い主人公の気持ちが痛々しいほど描かれていて、苦しかった。強くありたいという気持ちは、何よりも確かで、遠回りしたとしても、いつか前進のきっかけになるんだなあ。
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祖父の残した鎌倉の古民家で、蔵書を裁断し「自炊」をする、作家千紘のお話。彼女は、過去のトラウマを抱えているあまり、自分から傷つきにいってしまって、読んでいて痛々しい。第一編の表題作「夏の裁断」でかなり圧倒されてしまい、第二編以降を読み進める気にならなかったけれど、秋、冬、春の書き下ろしによりどことなく希望の見える終わり方で良かったと思う。
彼女を支えてくれる人(作中で言うと猪俣くん)もいるし、「あの人はやめとけ」って言ってくれる人もいるのだけど、行ってはいけないところへずんずんと行ってしまう、もどかしくもありつつ女ってこうなんだよな、と思った。島本理生の書く女性っていうのはどこかに影があるというか、読んでいてすごくリアル。
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小さい頃に大人からいたずらをされ続けた主人公がそのトラウマを抱えながらも受け身の恋愛に翻弄されていく。そのトラウマが気まぐれで刹那的な決断をし、自由奔放に男と交わるようになるのかとイマイチ納得いかず、最後まで感情移入出来なかった。
男女関係にだらしいない人たちが交わる、まぁこんな人もいるんだろうな、と無理やり納得しようと考えている自分がいる。
自炊をする程本の中身を手元に置きたいのか、何でフォークを突き刺す衝動が起こったのかともやもやしつつ読了。洒落た表現力に一瞬酔うものの恋愛物はしばらく遠ざけたい気分になる。
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前回、読み難い作品に手出してたので…
中休み的なストーリーと思い、購入。
小説家の日常を描写した感じだけど、
季節毎の内容。
夏から始まり、春で終わる。
分類すると恋愛小説だと思う。
だが、簡単に恋愛小説とも言い難い。
文章で、景色、背景、風景、人物が見えるって思えた。
私的には、こうゆう感じ…案外、好き。
'19.02.02読書完了
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旅行に鈍行で行く事になり、暇だから本でも読もうと手に取ったのがこの本でした。
直木賞受賞という安直な理由で購入したのですが、とてもタイプな本でした。
千紘の元教授の言葉には意味がたくさん込められていて、考えさせられました。
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なかなか難しい千紘。それは過去に体験したことが原因でもある。
「本来なら定まりきらないものを許容できないあなたが、定まりきらないままに受け入れようとするなら、それはきついだろうけど、同時に、とてと意味のあることかもしれない」
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ハードカバー持ってるからと安心してたら描き下ろしが加わって文庫化してたなんて知らなかった… 以前読んだ時は晩夏に読む作品だなと思っただけだったけど今改めて読むと「波打ち際の蛍」や「君が降る日」に通ずるものがあって苦しくて良かった。あと追加された短編がとてもよいのと、表紙もよい。ハードカバーの装丁も好きだったけど、文庫の写真のほうがより近しい視覚化な気がする。あと相変わらずわたしは島本理生が描く"敬語で話す不安定な男性"が好きすぎて困ります
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ここ最近、ずっと本が読みたかった。
島本りおさんは、高校の時に出会って、図書館で受験勉強の合間に読んでいた。
その頃は、綺麗な文章を書くひとだなぁ、っと正直そのくらいの印象だった。
短編の綴りに、ここまで心奪われるとは!
夏の裁断、だけど、秋の夜長のこの時期に、あえて胸が切なくなるこの時期に読むのにぴったりだった。終わり方も、大好きだった。
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初めは主人公が自覚していたように、「重い」と感じたけれど、それを克服したくて主人公がもがく様、心情が優しかった。
きっとこの作品に救われる人は多いと思う。
たとえ今の自分が嫌いでも、自分を変えたい、変えようと思って、それを曲がりなりにも行動に移していれば、いつか報われる日がくるんじゃないかと感じさせてくれる。
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表紙の蝉が止まったガラス越し?に、裸足が見える写真が小説にマッチしていた。フラフラ傷ついていく千紘にハラハラしてが、千紘が居場所見つけてホッとした。時折関わる教授の言葉が鋭い。
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「僕にはたぶん破滅願望のようなものが潜在的にあるんです。人を傷つけたいし、自分を破壊したい」
主人公も、それに関わる男たちも皆社会的には自立しているのに、精神的にどこか欠落している人達ばかり。
「たしかになにもくれないけど、奪わないんです」
という主人公の気持ちに共感できず、
最低男の柴田さんへの嫌悪感が募った。
短期間で出会う男の数や、どこかが欠落した男たちばかりなのにも驚くし、それだけ主人公には女としての魅力があるのか、会ってみたいなぁ〜とも思わされた。
2020年読了、34冊目。
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本のタイトルが意味深い。
書き手は30歳になろうとしている作家で、恋愛の盛夏の時を過ぎようとしている女性。恋愛にいつも戸惑い、失敗するのではないかとおびえている。男性との出会いにぎくしゃくし、ためらうのは子供時代に辛い性的虐待を受けていたから、そのことから立ち直れるのか、断ち切れるのか。
衝撃的なのは本の「自炊」に使う裁断機の登場。「自炊」というのは本をバラしてスキャン、電子データにして保存すること。その本をバラすときに背表紙を切断する道具。ちょうど事情があり謹慎中だった書き手「千紘」は祖父の遺した大量の書籍を、娘である母に頼まれてやることになる。
本という物を大切に思うものにとっては身を切られるようなことだ。まして「千紘」は作家である。このつらい作業を虚脱してか、あるいは身をさいなむようにして、祖父の遺した鎌倉の古民家で、夏の間続ける。同時に自分のトラウマをも断ち切りたいと苦闘すように、祖父のだった書斎作業場へ、男性を次々と招じ入れ奔放に恋愛に耽る行動をとる。時が過ぎていくままにやがて変化が。本の裁断をする作家という、気狂いにも似た行為に意味があるとしたら何だろう。
女性の心理を只々わかってないと声高に言うのではなく、あたかも自身の性格のように扱いながらも他者との関わりからくるもの、男性遍歴のように積極的に挑んでいるようでも、おびえて模索している微妙な心理を描き、今回も昔に読んだフランス文学を彷彿させた。
続編「秋の通り雨」「冬の沈黙」「春の結論」を書き下ろし付け加えたのが、なお「夏の裁断」を光らせているかと思う。
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主人公は自分に自信が持てなくて他者の言いなりになってしまう女性。自分と重なる部分があり、彼女に降りかかる出来事に心が痛くなった。
自信がないというのはやはり他人から見てもわかるのだろうか。彼女に近づく男が揃いも揃って嫌なやつばかりだった。自信のない人はつけ込まれやすいのだろうか。それとも闇を抱えている人は、また闇を持つ人に惹かれるのだろうか。触ったら切れるような人との恋愛だった。そんな男やめておきなよ!と何回も思った。でも自分がこの立場になったら、穏やかな恋愛が幸せと頭ではわかっていても、惹かれてしまったら抗えなくて離れられないかもしれないと思った。タイトルのように、ナイフの鋭く冷たい切れ味が話の全体を覆っていた。
裁断を自傷行為に例えていたのが印象的だった。
「誰にも自分を明け渡さないこと。選別されたり否定される感覚を抱かせる相手は、あなたにとって対等じゃない。自分にとって心地よいものだけを掴むこと」
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再度後の感想
とても好きな小説
たぶん「夏の裁断」だけだったら好きになってなかったかもしれません
「秋の通り雨」「冬の沈黙」「春の結論」という主人公の変化が見れたのが良かったです。
戸惑いを隠せない事も多いけど彼女には不思議な魅力があると思いました。
親しみやさに似た何か。
これも好き嫌い分かれそうですがわたしは好きな小説です!
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夏だから、という理由で再読。
夏の裁断は苦しかった。
今と過去とをいったりきたりするから、余計にぐるぐるする感じ。
秋、冬、春があってよかった。
どこへでも行けるのだ。って気持ちになれるの、すてき。