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ラストに向けて小さな事件やエピソードが丁寧に描写される。だんだんとホラー感が醸し出される。それで読者を引っ張り込む。プロローグとエピローグ(はっきり書かれてないが)は繋がっていると思った。「了」からまた同じことが始まってもおかしくないとも。「習わし」は人間の業のような根源的なものと関係あるのだろうか? ないのだろうか?
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第159回 芥川賞受賞作
今回はノミネート内1作が盗作問題があり、真に「送り火」が選ばれたのかはよく分からない。
主人公は転勤族の中学生・歩。最後の転勤地になろう、青森での話し。田舎の学校では生徒数も少なく、人間関係が固定化されやすい。かつていじめられていた子は、いじめっ子の卒業とともに、いじめっ子になる。
自分がやられてきたことだから、フェアにするために他人にもしてしまう。自分が悪いわけじゃない、と自分を守るために。
やられている人を常に見ていたから、自分に矛先が向かないように、口出しをすることが出来ない。
自分はやられてきたからやってもいいが、他の人が手を出すのは許せない。というある種人間らしい偽善。
自分は何もやっていない。でもそれは近々その地を離れ、彼らとの関係もそこで切ればいい、と思っているから。その場だけ上手く納めれればいい、と思っているから。
個々のキャラクターはよかったが、伏線が伏線として生かされず、描写は少し面倒で、方言は正しく理解できず流してしまい。そして他の人も言っているが、最後がもっともわからない。もっと丁寧に書いて欲しかった。
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田舎に転校してきた中学生が
クラス内のいじめに見てみぬふりで当たる話
彼はそれを処世術と考えて
まったく良心に恥じることもないし
むしろ自分を、いじめっ子にもいじめられっ子にも公平な
いちばんの善人であるとすら考えている
しかし夏休みの終わり、頭のおかしい卒業生連中につかまって
シャレにならないゲームをやらされる中
ついにぶち切れたいじめられっ子から、その偽善を糾弾されるのだった
全体的には悪くないけど
最後の最後で幻想小説的なオチをつけたところはよくない
芥川賞らしい日和見っちゃそうなんだが
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田舎の子どもたちの窮屈な世界が描かれている。主人公はその世界を客観的に見ていたものの、周りはそれを偽善だと見ていたのだと思わざるを得ない出来事に出くわしてしまう。
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芥川賞受賞作品て個人的には例年あんま相性よくないんですけど
あと方言もの
うう~~ん、イジメに暴力・・・怖いなあ…
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東京から東北の村に転校してきた中学三年生の歩は、
その村の中学生6人組と行動を共にするようになる。
リーダーの昇が稔をパシリに使いいじめが常態化していた。花札を使ったブラックジャックのような遊びで、
首を絞めたり、硫酸を使ったロシアンルーレットが行なわれていた。ある日、卒業生を踏まえエスカレートした遊びに、稔が爆発し流血騒動となる。
田舎の土俗的な因習的な雰囲気がよく描かれている。
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田舎の中学生の生活が主人公の性格に合わせてか淡々と語られていく。閉鎖的な社会の中に溶け込む暴力の芽、気づいていそうで何も関与しない表面的には善人そうな教員、こないのこれら悪しき因習を引き継ぎ卒業後も強要する先輩など一つ一つはそれ程珍しい話ではなく、程度の差こそあれ中学位ではよくある話の気もするが、これが都市の多人数の学校と異なり廃校寸前の少人数に凝縮されると見え方が変わってくる。
しかしこれ程の田舎なら親同士も知り合いだろうにこんな荒んだ状態になるものなのか?それともこれらは何らかのメタファーでありリアリティの問題は関係ないのか。
送り火の習わしや言葉が漂うといった心に掛かる言葉が結局何を意味しているのか読み取れず、またラストシーンも何故憎悪があの場では共通の敵であるはずの先輩ではなく晃でさえなく歩に向かうのか?など何だか釈然としない…
全体に気が滅入るような話の流れに加えて殊更に難しい漢字遣い、いまいち説明の少ない方言、とちょくちょく読みにくいがそれもこの作品の味なのか。
あるサイトの書評では、描写の濃密さへの評価に加えて「部外者が人間がコントロール不能な“外部”の不条理性に囚われていく瞬間」がよく描けているとの事。そう言われれば確かになぁ…とも思うが、作品を読んだだけではそこまで読み取れないのは自分の読解力のなさのせいか。精進します。
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芥川賞受賞作。
廃校間近の中学に転校した主人公と地元の同級生との関係性を描いている作品でした。
自分は転校経験はないけど、高校や大学などで新たな人間関係を形成するのに神経を使った覚えがあります。
ラストのいじめられっ子の暴走とそれに巻き込まれる主人公の展開はホラーチックでもあり、不条理感が漂うところは芥川賞的な終わり方と思いました。
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第159回芥川賞受賞作。受賞≒発行直後に図書館で予約して、2巡目くらいで回ってきた。
東北地方への転校生の話という程度しか予備知識を入れずに、お盆休みの週に「送り火」読むのは丁度いいなくらいに読んだんですが、後味悪かったですね。
途中の平川の牧歌的な風景の描写には心惹かれたんですが、晃にやばそうなものを感じ、そして、更に予想を超える展開。
閉鎖的な環境だと、悪習が残るんですかね。でも、こんな狭い環境で、後輩ボコッたって、すぐばれて面倒なことにならないのかなと思ったけど、それどころじゃない結末ですからね。まあ、芥川賞っぽい作品と言えば、芥川賞っぽいですね。
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読み終わりました。これが芥川賞受賞作なんですか〜?
厳しめの意見が多いようですが自分も同じく、いや〜なにこれ?って感じです。
結構ドキドキしながら読んでましたが、終盤の嫌な感じ、そして終わり方・・。
他の方もレビューしてましたが、芥川賞はもういいかなぁ・・こんなのが受賞するのですね。
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救いのない暴力を描き切ったと賞賛された受賞作。
以下はネタバレあります。
選考委員で唯一受賞に反対したのが高樹のぶ子氏です。
その選評では「作者の的確な文章力は、鋭利な彫刻刀として見事に機能している。その彫刻刀が彫りだしたものに、私はいかなる感動も感嘆も覚えず、むしろ優れた彫刻の力を認める故、こんな人間の醜悪な姿をなぜ、と不愉快だった。文学が読者を不快にしてもかまわない。その必要があるかないかだ。読み終わり、目を背けながら、それで何?と呟いた。それで何?の答えが無ければ、この暴力は文学ではなく警察に任せれば良いことになる」
選考委員の中に普通の感覚を持った人がいたことが唯一の救いですが、それにしてもこの作品が伝えたいメッセージって何だったんだろうという答えが私にも最後までわかりませんでした。
堀江敏幸氏は「では、主人公の受難と陰惨な場面の先に何があるのか。それを問うことは、この作品においてあまり意味がない。異界のなかで索敵を終えた主人公の、血みどろになって遠のいていく意識の中で、シャンシン、シャンシンというチャッパの音を聴きとることができれば、それでいいのだ」と都合よく賛美しています。
小川洋子氏に至っては、「(納屋で見つかった木槌に彫られていた言葉)豊かな沈黙という一言が本作についてのすべてを語っているといっていい。語り手の視線には豊かな沈黙が満ちている。あらかじめ用意された言葉ではなく、純粋な無言によって世界があぶりだされていく。ラストの暴力シーンでさえ、奥底に沈む沈黙の方がより明らかな響きを持っている。言葉を発することと無言でいることが、この小説では矛盾しない。作者の言葉は、言葉の届かない場所へ読者を運ぶ。そこは小説でしかたどり着けない場所なのだ」と自己流の勝手な発見に喜んでいる始末。
そもそもラストシーンでの、なぜいじめっ子ではなく主人公に殺意を抱いていたのかという肝心な説明さえ省略されているのでは、言葉の届かない無意味な場所に読者は右往左往するばかり。
小説がどんなメッセージを読者に伝えたいのかという最低限の務めを放棄したら、それは「散文」であって「小説」ではないと思う。
いつから芥川賞は、選考委員の思い入れだけで起承転結のない小説を評価するようになったのだろう?
これ以上、芥川賞を貶めないためにも、選考委員の総入れ替えも検討してほしいものです。
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父親が転勤族の息子である中学生の歩。転校先が青森の過疎の村であり、そこで有意義な暮らしをしているかのように見えた。花札のようなゲームで物事を決めるなど、その土地での習わしのようなものがあり、歩もそれに従う。同級生の稔が晃に理不尽な仕打ちを受けるのも、その土地特有の出来事であり、何ら問題ないようにも錯覚する。
恐ろしいのはラストだ。歩はその土地の風習ではすまされない状況に陥る。意外なラストであるが、それが何を意味するのだろうか。余所者は関わるなということだろうか。土地の風習の基で人が人に対してどこまで恐ろしいものになれるのかどうかなのか。負の連鎖は永遠に引き継がれていくということなのだろうか。人間と土地に根差す業のようなものを感じた。
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青森へ転向した男子中学生の話。親が転勤族のため、転校を繰り返しており、社交性や柔軟性をもった少年。
同級生男子が6人しかいない環境でもすぐ馴染みそつなく何でもこなすが、遊びかたに危うさを感じる。万引き、特定の子へのいじめなど。読んでいて、いつ矛先が変わるかはらはらした。
最後はそのいじめられていた子に自分が憎まれていたことを知り、必死に逃げて傷ついている場面で終わる。苦々しい読後感が残った。
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芥川賞受賞作品。
薄い本だが、空気は重い。
最後どうなったか書いて欲しかったが、そこは読者が考えてもよいのかな。
人に勧めないし自分も2度は読まないけど、この本と知り合えてよかった。
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転勤の多い父をもつ歩は、中学三年生となり、津軽地方の平川に越してきます。そこで、リーダー格の晃、損な役を押し付けられる稔を含めた同級生男子6人に出会います。
田舎の、のどかで美しい情景と空気のなかで、晃による狂気の出来事が引き起こされます。人殺しまで犯しそうになりながら“子供の眼”をする晃に、ぞっとしました。
その反面、稔をからかう同級生に対して正義を振るうこともあり、晃がよくわからなくなりました。
小さな社会での残酷で恐ろしく、だけどどこか美しさも感じてしまう世界でした。