紙の本
信長の一生
2019/03/09 18:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
誕生から本能寺の変まで、信長の一生をさまざまな人物の視点から描かれてる。
奇行とも見える行動も信長独自の考えや思想に則っての事だった。ただ、理解できる人が少なかっただけ。
本能寺で物語もパスっと終了。まるで信長の人生そのもの。
電子書籍
変は必然か
2019/02/02 21:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
信長が人間をひたすら篩にかけていく物語はどこか寒々しいものがあった。
脱落していった者を無駄を許さぬ信長が省みるはずもない。
もし本能寺の変がおきなかったらなら無用の者であると全てを切り捨てた末何が残ったか、薄ら寒いものがある。
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垣根さんの歴史もの、好きだー。
ってそんな本。
信長の行動原理を描いている一冊。
幼少期に愛情をかけてもらうのって、大事なんだろうな。
それから光秀は運なくて。秀吉は運が味方したんだね、って思った。
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光秀の定理が面白かったのでこっちも読みたいと思って購入しました。
すごく引き込まれて2日で読み終えてしまいました。もっと浸っていたかった。
働きアリ、何となく働くアリ、働かないアリの割合が2・6・2になることに気づいた信長が、人間も同じなのではないかと考える。
内容に関しては帯に書いてあることが全てだと思う。
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★2019年1月12日読了『信長の原理』垣根涼介著 評価B+
小説のテーマは、実は「なぜ明智光秀は本能寺の変を起こしたのか」である。
その事件までには、織田信長を中心に、その優秀な文官、武官の思いが交錯する。
この小説では、光秀の謀反は、子飼いの部下でも、有用で無くなれば命さえを奪ってしまう信長の冷酷さに恐れを抱いたからという説プラス将来の敵となる徳川家康を殺害せよという信長の汚い謀殺命令に自分の未来を見たからという新説が面白い。
信長の原理とは、人が生きていく上で、最もやりきれなく、そして始末に負えないことは、その生が、本来は無意味なものだということに、皆どこかで気づいていることだ。そして、信長が裏切られても何度も許した松永弾正は、この虚無感すなわち人も虫けらも同じという無常観を共有しており、損得を超えて、信長を助けた希有の男が松永弾正だったからである。
また、人は、蜂や蟻と同様によく働くもの1、普通が3、怠ける者1であるということに気がついた信長は、そのことに納得がいかず、少数精鋭に鍛える部下達が次第に輝きを失って常に2割の人間しか使えない点に激しいいらだちを覚えていた。
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「ワイルド・ソウル」が永遠の積読となっている著者。大部だけれど興味深く読んだ。 時代物というよりは人間の心理を描いており、手触りは現代物やミステリーのよう。色々な歴史上の人物の内面描写がひたすらに続くが、終盤の明智光秀の「追い詰められ感」見事。フィクションとしての本能寺に至る説得感のある世界観を示している。
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蟻を用いた試みにより、信長は「ある原理」を確信し、秘かに危惧する。やがて案の定、織田家を裏切る者が続出し始め…。信長の内面と「本能寺の変」の真実を抉り出す。
「光秀の定理」に次ぐ垣根涼介の歴史巨編。「うつけ者」と蔑まれた信長が、矛盾にあふれた人格にもかかわらず天下統一を成し遂げたのはなぜか。作者は信長が蟻の行列を見て、後世の経済学者が発見したある法則に気づいたからという仮説で解き明かす。見事な作り話ぶりに感服。何らかの賞の候補作になりそうな佳作だった。
(A)
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どんな信長像を描くのかと楽しみに読んだ。
結果から言うと、凄く良かった。たぶん何度も読む。
近年最高の読書体験であった。
蟻がどうとかの話はともかくとして、諸説有る本能寺の真相はあんな感じだったのではないかと素直に納得した。
自分の敵は自分、信長の猜疑心が自らの陥穽を創り出し、光秀もまた自縄自縛に陥って行く様が納得のいく終章に収斂していく。
前後するが、信康の死の真相、そこから導き出された教訓から佐久間や林の追放劇など、信長小説の中では出色のエピソードではないかと思った。
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信長の話を軸にした組織論というか、組織運営論のような話。
ブラック企業のワンマン社長が組織を巨大にし、幹部の謀反で退陣させられるといえば、現代にも通ずるものともいえる。
蟻の逸話が本当ならば、パレートの法則は信長の法則と改名せねばなるまい。
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今年、いやここ数年読んだ歴史小説の中でも1番のおもしろさ。
信長の生涯と本能寺の変に至るストーリー展開の着眼点が素晴らしい。
たぶん今まで信長を描いた小説の中で一番腹に落ちた作品だと思います。
いわゆる「働きアリの法則」を見事に小説の中味に入れ込み、
それを元に信長、秀吉、光秀らの頭の中を色分けした筋よみは見事です。
あの信長後期の重役家臣たちの大量追放のワケもこれならうなずけます。
おもしろ過ぎて読むのを止められなくなる小説、587ページ一気読み、映画化を激しく希望します!!
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モンティ・ホール問題を小説に落とし込んだ「光秀の定理」から続き、二作目。
今作では、組織は二割の働き者とその他の八割に分かれるというパレートの法則を用いた組織論が展開される。
「武士など代わりはいくらでもいる。が、金を生む才覚を持つ商人は、なかなか得難いものだ」
武士をサラリーマン、商人をイノベーターと読み替えもできる。
この小説は、歴史小説というよりも組織論を説いたビジネス書に近い。
織田信長の家臣団の取り扱い方が秀逸だ。
そして、柴田勝家、木下藤吉郎、丹羽長秀、そして明智光秀ら家臣らの自己分析を主観的な語りにおいて、彼らが組織においてどのような役割を果たすかを説明している。
織田信長の生涯は明智光秀の裏切りによって潰える。
本書では、明智光秀自身に「昨夜の時点で謀反など望んでいなかった。それなのに、なぜこうなる。どうして、こうなってしまった」とラスト10ページ前に心情を吐露させている。
人間の社会を取り巻く法則によって、何故そうなるかもわからず、結果そうなってしまうという不気味な運命の存在が、この小説を面白くしている。
織田信長は幼少のころから、この原理を実感として持っていた。
曰く、戦にて二割の者はよく働き、六割の者はその場の時勢に応じ、二割の者はやる気がない。
この、よく働く二割のみを集めたとしても、何故か2:6:2に分かれてしまうのだ。
どれだけ鍛錬しても、戦前に活を入れても、全員が本気を出すことがないことに、怒りを交えつつ不思議に思っていた。
実感は織田信長に現実を突きつける。
やはり、登用した家臣においても、五人いれば一人ずつの落後者や裏切り者が出てくる。
かつて切れ者だった佐久間信盛も林秀貞も頭の切れが落ち、家臣で取り立てた荒木村重に松永久秀にも裏切られた。
かつて切れ者だったものも、手塩にかけて育てたものも、2:6:2の原理に当てはまっていく。
なんだ、この、道理のわからぬ原理は。
日本の国を併呑していく信長は、この原理から気が付いたいた。
織田家臣団の柴田、羽柴、丹羽、明智、松平の五人のうち一人は、確実に裏切ることを。
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著者の作品は初読。神仏は存在しないが万物をコントロールする見えざる何かは存在する、それを原理と呼ぶならば、その原理をとことんまで追及したある意味ピュアな一生だった、という切り口で書かれた斬新な信長論。蟻の例は企業論としても言われていることで目新しくはないが、信長・光秀・秀吉、更に松永久秀を通して語られる対比も含めて非常に読みやすく、かつ面白いので長編にも関わらず一気読みできた。
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史実を新解釈で照らした歴史小説というよりも、現代の企業組織論や効率至上主義のテーマを戦国時代、安土桃山時代を舞台に、織田信長と主要家臣たちを役者として演じさせてみたというように見える。
垣根涼介の、この「定理」「原理」シリーズでは、人智を超えて世界を覆っている摂理を理解しようとあがきながら、それに絡め取られ、どうしようもない流れに飲み込まれる人間を描いている。
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大学受験が終わり、勉強ではなく自分の好奇心で接することができるようになった時から、歴史はずっと接してきています。今では現代から古代、さらには日本だけでなくほかの国の歴史まで対象が広がっていますが、私の原点は、この本の主人公である、戦国時代の織田信長です。
特に、若い時に亡くなってしまった父の家督を継いだ時から、初めは一族の内部で、そして周辺諸国へと戦う範囲が広がっています。織田信長の特徴は、自分が成長するに従って、重宝する家臣が代わり、そして首にしてしまうことです。信長が家督を継いだ時の重臣がなぜ、追放されたかが、この本には詳しく記されています。
有名な戦いを解説した本はたくさんあるように思いますが、この本を読むことで、信長の一番苦しかったと思われる若いころにどう対応してきたかがわかりました。
また、この本を通して書かれている「ありの法則:2:6:2、すべてのグループは、優秀・日和見・だめ、に分かれる、優秀な人を集めても同様になる」は、とても興味深かったです。
この本には、本能寺の変の首謀者、黒幕がだれかについての議論はされていませんが、この本を貫く「ありの法則」によって、優秀な人(明智光秀、そして豊臣秀吉)ほど、自分の将来に不安になって行動を起こす可能性があるなと思いました。
織田信長の顛末を見ていた、家康がなぜ江戸時代の制度をあのようにしたのかが納得できたようにも思いました。
以下は気になったポイントです。
・いつも必死に戦っている者は、せいぜい全体の2割である、そして合戦は、春と秋を除いた季節に行われ、農繁期を避ける(p37)
・訓練の時は、申し分ない働きをしている者も、いざ戦いの開始となると、微妙に腰が引ける。そういうものが全体の6割、見方によっては8割いる、懸命な2割、漫然と働く6割、やる気のない2割(p59、6)
・勝家が思うに、自軍だけで勝てると思わなければ、戦いなど起こしてはならない、連携する勢力を頼みにして戦いをしかようなど考えが甘い(p106)
・およそ人の上に立つ者の資質で、愚かで軽率なことは、悪意よりもはるかに始末が悪い。悪意は、それを悟れば、態度や考え方を改めることができる(p122)
・桶狭間の戦い時において、信長の軍門に下っている尾張衆は、1万人ほどいるが、信用のおける弾正忠家系列の兵力は5千、最も信頼のおける配下は二千である(p133)
・名将とは、その根本の資質として、盛んに殖産を行い、何度でも戦を行える財力を蓄えていることである(p167)
・尾張は石高で言えば57万石であるが、商業で得た銭の貫高を石高計算して合わせれば、優に100万石以上の実力を有している、武田・上杉とそん色ない兵力を動員できる金銭的背景を持っている(p168)
・小牧山へ一族郎党をすべて連れて移転したものには、その旧来の所領の維持管理、年貢徴収を、織田家の文官が引き受けるという提示があった。織田家にとっては、彼らが個別に徴収していた年貢を織田家で一括管理できるようになった、岐阜城に移転したときには、文官・武官すべてを移住させ、完全な家臣化を進めた(p176、198)
・ダメな蟻でも、普通の働きの蟻でも、それだけを集めれば、必ずまた優秀な者が2割は出現する。どんな場合でも、何度やっても最後には、1:3:1となる(p213、218)
・思ったことが口から出るのではなく、口に出て初めて、実際にそれまで自分が考えていたことに気づく、およそ思考においては出てきた言葉が全てだ(p225)
・家臣を徹頭徹尾実力本位で扱うときは、相手に貸し借りがない場合である(p236)
・比叡山延暦寺の激烈な掃討戦には、二年前(1570)に凄絶な討ち死にをした森可成の仇を打つ意味も多分にあっただろう(p283)
・武田は徳川方の支城の中でも最も重要な二俣城を包囲した、この城を落とせば、徳川の本城である浜松城は完全に孤立するので、徳川は出陣した(p322)
・信長は、懸命に仕事をこなし、できる限り成功に向けて手を打ってきた人間には、たとえその結果がうまくいかなくても、あまり怒ることがない。その過程もちゃんと評価してくれる(p339)
・明智光秀が、堅田城を落としたやり方で、さらに大掛かりな仕掛けを行ったのが、長篠の戦(p373)
・1576年5月に、石山本願寺との戦いにおいて、塙直政が摂津での合戦中に討ち死にした、その余勢を駆って天王寺砦を1万五千の大軍で襲った。そこに明智光秀、佐久間信栄(信盛の子)はいた(p379)
・短期の集中決戦では、その兵の多寡以上に、軍を率いる総帥の資質がものを言う(p398)
・水野は、信長が尾張を統一する以前から、尾張と三河の国境周辺で24万石の所領を持つ大豪族であった、その意味では昔から自立した勢力(p376)
・効率をとことんまで極めていけば、人も草木も、ありとあらゆるものに効率を重視すぎると、全てが息をできなくなる(p435)
・人間、生まれ落ちる場所は選べない、しかし死に様は選べる、そういう死に方をするかだけば、およそ万物の中で人という生き物にのみ許された、末期の希望である(p438)
・石山本願寺の焼失により、広大な城郭・伽藍も全て灰燼に帰した、このような都市を形成するには、巨費と気の遠くなる期間が必要となる、なので信長の怒り狂いようは凄まじかった(p472)
・加増され、それを謹んで受けるということは、兵団の長として加増分の成功を、主君に対して先々で請け負うという契約に他ならない(p473)
2018年10月26日作成
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垣根涼介さんの「信長の原理」を読むきっかけは司馬遼太郎さんの「花神」をよみ「軍事の天才は1000年に1人か2人、大村益次郎、織田信長…」のような言葉が並び面白そうだなと手に取りました。
結論から言えば最高でした。織田信長の周りの人間模様を「働きアリの法則」から考察していきます。「人間余裕がないとダメだよ」とよく耳にする言葉ですがそれを軍事に天才の物語に合わせて展開されます。
幕末から維新の大きな転換期にもこの信長の行動を元にした反省と行動があったのではないかとも考えたりと楽しい読書体験にもなりました。
しかしながら、ラストの「神や仏などはおらぬ」と考えていた自分を知り自分で考えて行動する信長が「働きアリの法則」に並ぶ「生きとし生きる者」に対する大きな気づきを得ます。その気づきは全てを包み込むようなまさに「原理」となって現れます。
歴史小説ファンにとって科学的根拠のある法則と交えて展開される内容に読み応え抜群の1冊となりました。