紙の本
「絶望の期間」をどう過ごすかについて書かれた書です!
2020/06/07 11:22
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、文学紹介者という少し変わった肩書をもつ頭木弘樹氏の作品です。頭木氏はカフカやゲーテの作品の翻訳もあります。同書は、「絶望読書」というタイトルですが、タイトルだけからは内容が想像できません。絶望するための本とも解釈できますし、絶望から立ち治るための処方を示してくれる本ともとれます。しかし、実際には、そのどちらとも違います。同書は、絶望しあ人が立ち直りの段階の前の「絶望の期間」の過ごし方について書いた本なのです。頭木氏によれば、この「絶望の期間」をどう過ごすかが、実はとても大切なのだと言います。同書の構成は、「第1章 なぜ絶望の本が必要なのか?」、「第2章 絶望したときには、まず絶望の本がいい」、「第3章 すぐに立ち直ろうとするのはよくない」、「第4章 絶望は人を孤独にする」、「第5章 絶望したときに本なんか読んでいられるのか?」、第6章 ネガティブも必要で、それは文学の中にある」、「さまざまな絶望に、それぞれの物語を!」となっており、私個人的には、後半の第二部からがとても興味深く読めました。
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「部屋の灯りを消して、毛布を頭からかぶって、中島みゆきを聞きたい時がある」
学生時代、同級生の男の子から、こんな話を聞きました。
「…うーん。それって、ますます気持ちが沈まない?」
「いや、だから、いいんだよ」
相手の答えを、「そうなんだぁ」と受けとめつつ、
その時の私には、まったく分かりませんでした。
頭木弘樹さんの著書『絶望読書』を読んで、
頭から毛布を被って、中島みゆきを聞きたくなる瞬間がある人の気持ちが、
今なら、少し、分かるかもしれないと思っています。
著者の頭木さんは、大学生の時に難病を患い、その後、13年間闘病生活をされたそうです。
就職するか、大学院に進むかして、その後は、結婚して、子どももできて・・・などなど
ぼんやりと描いていた人生の「脚本」は、難病によって無理やり「書き換え」なければならなくなりました。
「絶望」は、人によって捉え方が異なるものかもしれませんが、
頭木さんの場合は、難病を患うことにより、「絶望」に陥いります。
絶望に陥っている期間を、どう過ごすか。
その期間に必要になるものが、読書だそうです。
本書では、「絶望」した時に、なぜ、読書が必要か。
その理由が説明されています。
また、「絶望」の期間には、前向きなことが書かれている本や、明るく楽しい本ではなく、「絶望」の本を読むのがよい理由と、著者が読んだ「絶望」の本も紹介されています。
頭から毛布を被って、中島みゆきを聴いていた男の子、
この「絶望読書」について話したら、
「やっと、分かってもらえた?」と返ってくるかもしれません。
本書(文庫)の帯には、こんなキャッチフレーズが書かれていました
「悲しいときには、悲しい曲を」
「絶望したときには、絶望読書を」
なるほどね。
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絶望した時に本を読むことの効用と、具体的な本の紹介本(小説以外にも、詩・落語・映画・ドラマもある)。
著者は、自分が重い病気に罹患した経験から、非常に平易かつ語り掛けるような書き振りで
①同じ物語をずっと生きられるとは限らないこと
②絶望の種類は多様で、誰かに分かってもらえるものではないからこそ、本による共感が大きな意味を持つこと
③絶望時に無理矢理浮上した気になっても、後から「遅延化された悲嘆」に襲われること(←超絶わかる)
④絶望は個人的なものであり、暗い道を一緒に歩いてくれる本が助けにになること
⑤読書とは、余裕がある人が美食をするようなものではなく、もっと切実な栄養補給であること
⑥ネガティヴな面にも目を向けて、それでも善く生きられることが本当の明るさであること
について説明する(かなり乱暴に第1部1~6章を一言でまとめてみた)。
実際そうなの?と聞かれたらやっぱりそうだなと思うところはある。夢を諦めたときとか、大恋愛が終わったときとか、様々な理由で潰れているときに自分の読書リストや日記を読み返してみると、なるほど似たような絶望を描いたともとれる小説を大量に摂取しているのだ。というか学校にも行かず半年くらい部屋に引きこもって本ばかり読んでた(2chもやってたけど)。
そこで自分が求めたものは、意識の上では絶望への対処法だった(メンタルがぶっ壊れた時には小説と並行して認知療法とかそういう新書を読みまくってた)けど、やっぱり共感したり、哀しみにじっくり沈んだり、そういう気持が根底にあったのだろう。
また、著者は繰り返し「私の絶望なんて大したことないですよ」と謙遜するが、そんなことは絶対になくて、『アンナ・カレーニナ』の冒頭じゃないが絶望の形は十人十色なのだ。私もどん底の頃に、V.フランクルの『夜と霧』を読んだことがあったが、本気で「いやでも考えによっては〇〇だよね。俺はそうはいかないもん」とか本気で考えてた。もちろん思うことも得たものも沢山あったが、あの物語を悼む余裕はなかった。
だから、人は様々な理由で傷付き壊れてしまうんだということを、理解とまではいかずとも、知るというだけでも、健康なうちに様々な絶望に触れることは意義のあることだろう。絶望が自分や誰かに降りかかったとき、きっと何かができると思う。
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自分は普段からなぜ本を読んでいるのかわかってなかったけど、「読書は命綱」っていう表現がなかなかしっくりきた感じがした。
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絶望の沼に沈んだ時の槍過ごし方を示した本。絶望から早く抜け出そうと無理に目の焼けるような明るさを取り入れるのではなく、自分の気持ちと溶け合うようなドブ川のような暗い物語を読む。絶望を咀嚼して吞み下すには、心地のいい仄暗さに浸ることが必要だと教えてくれる一冊でした。この本で取り上げられたカフカの作品にとても惹かれ、読書意欲も湧きました
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自分の力ではどうにもならない辛い状況になった時や精神的にどうにもならなくなった時に、読書が有効であると述べられている。そうだろうなと思う。まだ読書に救われたというまでの経験はないが、読書している時は自分の頭がゆる~いマッサージを受けているような心地よさを感じる。
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“本というのは、誰かひとりのために書かれているものではありませんが、不思議なほど、「これは自分のことが書かれている本だ」と思えるものです。”
“生存をおびやかされ、どうしていいかわからない、精神的に追い詰められたときこそ、本を読みたくなるのだと思います。
まだ名前のついていない現実をかいまみて、おびえて開くのが、本というものでしょう。文学はそういうときのためにあります。”
“私は、小さなことを、もっとじっくり味わうことが、それだけでも救いとなるのではないかと思います。
小さなことが、小さいけれども、とても切実だということを、深く実感することが大切なのではないかと。”
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絶望しているときに絶望の本を読むと効く!という絶望読書のススメ。
絶望しているときに本なんか読めるか!というのが最初の率直な感想。
でも、いわゆるどん底にいるときのことではない。沈みきった後、浮上していく途中、、、横這い状態のとき、、、絶望の‘期間’をどう乗り越えるか、という内容が第一部。
各界の偉人の名言、心理学などをひもときながら、本の有用性を語っている。
第二部は実践編。
頭木さんセレクトの‘絶望の本、ドラマ、映画、落語’の紹介。
紹介されているものは、太宰治/カフカ/ドストエフスキー/金子みすず/桂米朝/『ばしゃ馬さんとビッグマウス』/『愛すれど心さびしく』/向田邦子/山田太一など。
どれも頭木さんの個人的な体験から読んで、観て、聴いて「救われた」と感じたものばかり。
だったら他の方の絶望に効くのか、と思うけれど、効くのかもしれない、効かないのかもしれない。
でも効くかも、という‘期待’だけで当分大丈夫そうだと自分は思う。
また頭木さんは今現在、絶望していない方にも‘絶望読書’をすすめている。
いつかくるかもしれない絶望のために心の準備がしておける、と。
読書ってそういう‘使い方’もあるのだ。
解説は『人はなぜ物語を求めるのか』という新書がある千野帽子さん。
納得の人選。
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タイトルにひかれて読んでみた。
「絶望読書」=絶望した時にこそ読むべき本
作者が20歳の時に難病にかかり10年以上の闘病生活を余儀なくされ、どん底な気分から救ってくれたのがある種の本だったという実体験から書かれたものです。
確かに、困難な状況になった時や失敗した時、自分の過去のより悲惨な経験や苦労した偉人たちの伝記などと比べて、「自分はまだ大丈夫」と叱咤激励するのは効果的です。本書は、そうした状況に突然陥った時に、先人の知恵の言葉や物語を転ばぬ先の杖として準備しておくという常備薬的な読書のススメです。
もちろん、具体的な書名や作者も紹介されていますので、気になった方は一読をお勧めします。(ドストエフスキーの「死の家の記録」は衝撃的でした)
ここからは、私の個人的な読書経験からのお話です。私も、高校3年の時に2か月の入院生活を送りました。その時、看護婦さんから借りた本が「エリックの青春」で内容は白血病で死んでしまう青年の物語でしたが、「なぜ、入院患者にこの本を?」と疑問に思ったものです。とはいえ、当時大好きだったシカゴの曲「ビギニングス」がエリックの大好きな曲だったというエピソードもあり、エリックの闘病生活に比べればなんてことはないという気持ちになれたのも事実でした。反対に、あまり暗く哀しい小説ばかり読んでいると、「これは、小説の世界だからだよね」と現実とフィクションとの差に気づいて癒し効果が薄くなってしまう弊害もありそうです。
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絶望の時をやりすごす時、絶望から立ち直る時に読むべき本について。
難病と闘ってきた著者の実体験に基づいて、絶望の中での読書を語る。
番外「絶望するときに読んではいけない本」として紹介されていたディーノ・ブッツァーティという方の「七階」という短編が気になったのでポチッた。
今は絶望していない、ということだな。
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VILLAGE VANGUARDで気になって購入
辛いとき、苦しいとき、いつまでも塞ぎこんでいるのは恥ずべきことで迷惑なことであり
それらを乗り越え立ち直らせる為の様々な励ましや名言を目にする。
だが、それはその程度で越えれるほどの絶望に対してであり、他人の言葉ではどうにもならない大きな絶望には、ただひたすら孤独と共に苦しみ続けるしかない。
その期間絶望と真摯に向き合いどの様に過ごすべきなのかを真剣に考えたのが本書である。
エッセイであり基本的に著者の実体験に基づく理論なので説得力がある。
第一部では物語がなぜ絶望に良いのかを言及していて
「日常生活のウソは真実をかくすためのものですが、物語のウソは真実を描くためのものなのです。
」本文抜粋
この様に本来人それぞれで決して同じではない絶望を表す、共感出来る普遍性を持ったバッドエンドはフィクションだからこそ描けるという物語の特性の指摘も面白かった。
また文体と言うか言い回しが著者の人となりを感じるほどに柔らく丁寧で非常に読みやすい。
第二部では古典文学を始め、様々な作品の紹介へ続くがそちらも各作品とその著者に敬意を感じる文章で、どの作品も読んでみたいと思えた。
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絶望してたら本なんか読めないと思ってたけど、物語が心を救済してくれるという言葉が刺さった。言ってみれば、本の世界というパラレルワールドでシミュレーションしていろんな人生を追体験させてくれるところが本の魅力。オススメ本も色々あるので読みやすそうな金子みすずあたりから手に取ってみたい。
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著者の経験に基づいて、絶望に効く作品が紹介されていました。
古典作品は、ほぼ読んだことが無いのですが、読んでみたくなりました。
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私も絶望したときは明るい歌や話で落ち込むタイプなので、絶望したときには絶望に寄り添ってくれるものが効くっていうのはよくわかる。
カフカやドストエフスキーなどは元々好きなので、ここに挙げられていたドラマや小説はどれも面白そうだった。
それらを今度読んだり観たりしてみたい。
ところどころにある著名人たちの絶望名言的なものはどれも良くて、一番最後の太宰治のことばには少し泣きそうになった。
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確かに人間の思考には、もっと落ち込み状態でいたいという気持ちがわかるし、このようなおすすめ本を紹介しているのは他にはないと思うので、お勧め!