今や生活に欠かせないインフラと化した物流の将来像を描きます!
2018/12/22 15:23
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、今や私たちの生活に欠かせないインフラとなった物流の苛酷な現状とその将来を描いた作品です。アマゾンなどのインターネットを通した商品販売で物流業界は非常に苛酷な状況となっています。何しろ、扱う商品数が従来の10倍、100倍と跳ね上がっているにも関わらず、労働者の数やそれを扱う業者の数はそれほど変わらないからです。ヤマト運輸や佐川急便などの労働者の苛酷な労働条件を分析しながら、物流の将来について考えていきます。
中小の運送事業者が危機を自覚していないことが真の危機かも
2019/10/13 23:07
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投稿者:せきた - この投稿者のレビュー一覧を見る
トラックドライバーの労働問題の流れが整理されていて、まとめて理解するのに便利。
全国津々浦々のドラッグストアーで箱ティッシュ1ケース200円切る、カップラーメン100円未満とか、運送業者の犠牲のうえに成り立っていることが分かる。今の利便は3、4年経てば当たり前でなくなることに自覚的な人は少ない。
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今や社会問題である物流危機。「即日・無料配達」といった利便の陰には、働けど働けど暮らしは一向に良くならない労働者(トラックドライバー)の実態があった。サービスといえば無料のことだと理解されがちな日本では、労働者が質の高い仕事(サービス)を提供すればするほど生産性は上がらない。サービスに正当な商品価値を与えるにはどうしたら良いか。著者は、賃金は運賃と異なり、独禁法で規制されず、一企業を越えた産業全体での引き上げ(賃金カルテル)が可能であり、社会的連帯を強化し、今ある労働のあり方を見直す必要があると主張する。
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学生の卒論参考資料として入手したが、自分自身の参考になりそう。
労働環境という切り口はありそうでこれまでなかったかも知れない。
しかし、最も重要なポイントを押さえているのではとも思う。
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労働組合や労使関係の専門家による運送業の問題に関する本。なんとなく論理が発散していて、説得力が低いと思う。運送業の実態は、統計データやアンケート結果、聞き取りなどで行われているが、人手不足と言いながらも、少ない荷物を奪い合っている状況とも書かれており、矛盾点が見受けられる。聞き取りもドライバーや作業員に対し行われており、業界の実態をどの程度反映しているのかが不明。また、解決策も、国の力で強制的に運賃や賃金を上げるとか、労組の活性化であるとか、規制の強化などが主であり、根本的な経済理論からはかけ離れている。運賃や賃金が低すぎるというのであれば、なぜそうなっているのかを示さなければ、解決できない。なぜ生産性が低いのかも同様。料金は、顧客と企業との契約で決定されるのであって、物流でも基本は需要と供給で決まることに変わりない。それに基づかないのであれば、まずそれはなぜなのかを追求すべき。荷下ろしなどの不当サービスも同じ。労働と賃金が不釣合いならば、市場原理では是正の方向に自然と動くはず。不法であれば罰すればよく、不適当レベルであっても市場から退場となるなど生き残れない。そのあたりを明らかにしないと、業界の方向性は見えてこない。生き残りのために真剣に努力をしていない企業は倒産するのが原理であって、著者はただ、淘汰されるべき弱小企業の生き残り策を述べているように思えた。
「トラック業界では、延着(荷物の到着が遅れること)は、絶対に許されないことであり、ドライバーにとってこれほど恥ずかしいことはないと考えられている」p59
「(パレットを使いたがらない理由)積載量が減るから。パレットが戻らないと困る。(荷主は)必要性を感じない」p64
「(日本郵便)何年も赤字を垂れ流しながらも、決してつぶれない企業と戦ったら、どこの企業だって負けちゃいますよ」p133
「(トラックドライバー)1990年代:きついが稼げる、今:きついし稼げない」p162
「(電通過労自殺事件の公判の冒頭陳述)「クライアント・ファースト」が浸透し、深夜残業や休日出勤も厭わず働く環境があった」p197
「日本では高いサービス品質をもつサービス商品が割安な料金で提供されており、その結果、労働生産性が低くなっている(深尾京司・池内健太)」p215
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「私たちが得ている「安さ」や「早さ」が、働く者の長時間労働や過労死と引き換えに存在するならば、それは果たして社会的公正に適うのか?」こういった問題意識を持たなくては働く人の環境は変わらないと思いました。
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ドライバーは大変な仕事だ…。
「効率的な生産システムや商品管理の裏で、トラック業界は一手に非効率を引き受けてきた。」
便利な暮らしに慣れ過ぎている日本人の意識の低さも問題だと思う。ほっときゃ解決されるだろうなんて他人事でいるのもおかしい。
ブラジルのようなストが起こったら本当に大混乱になるし、幼い子供を育てている身としては命の危機になってもおかしくない。一刻も早くドライバーの待遇改善をして、まわりまわって皆が働きやすい世の中にすべき。
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消費者としての我々が低価格や利便性を追求し過ぎて労働者としての我々を苦しめる関係について、改めて考えさせられた。
トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』にも同様のことが書かれていたことを思い出した。。。
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公開されている統計データを基に物流業界で働く人が置かれている状況が分かってよかった。もう一歩、例えばデータを年代別に見るとか、インタビュー結果を入れるとか、著者独自の切り込んだ分析があると良かった。
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労使関係の専門家が、現在の「物流危機」をもたらした原因を労働の観点から明らかにしている。ドライバーの過酷な労働環境や運送会社の苦労を再認識した。
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物流危機に関する主に労務面からの解説になっている。
小規模会社が多く、荷主との力関係で料金があげられず、そのしわ寄せがドライバーの賃金に来ているようだ。
小規模会社では労組もなく、賃上げは難しい。産別労組でない日本では、非正規中心のサービス産業では労組もなく、雇用者側の言いなりになるしかない。
日本では生産性が低いと言われるが、その解決には料金の引き上げによる賃金の改善が必要で、日本人の作業性が低いわけでは決してない。
要はサービスに見合ったお金を払っていないことが問題で、高級レストラン並みのサービスを要求するなら、それなりの金を払うことが必要。ファミレスの値段なら、それなりのサービスしか受けられないのが当然と思わないと、従業員はやってられない。
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物流危機が叫ばれる昨今。
本書では、なぜそのような危機に陥っているのか構造的に解明している。
事業者のみが悪いわけではなく
荷主のみに責務があるわけでもない。
我々一般消費者もその負のスパイラルに加担している、ということを訴えかけるメッセージが
構造を解き明かしていく中で随所に現れる。
物流に限らず、過当競争に陥り表面上のサービスが向上し、かつ価格が下落するという現象の先には破局しかない。
他人事とせず社会の一員として問題と向き合うべき、そう考えさせられる。
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どのようにして現在のような物流危機が生じているかの経緯がよくわかったが、一方で今後どうなりそうかについてはあまり示唆が得られなかった
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20191019 中央図書館
物流を支えるのは形式的には「インフラ」だが、実際には「人」であるドライバーだ。インフラの痛みに対して、消費者は残酷になれるものである。
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総務省の労働力調査での男性の年間就業時間は2232時間、長時間労働が問題になっている教員は2459時間、トラックドライバーは2684時間(いずれも2017年)。政府が進めている働き方改革の時間外労働の上限規制も、運送業は建設業ととともに、「5年後の施行」と猶予期間が設けられるとともに「年960時間」、一般労働者よりも240時間長く設定されている。「荷主に対する指導の徹底と取引環境の改善が必要」とのトラック協会等の意向が踏まえられたもの。長時間労働はトラック業界の常識も一般の非常識。賃金もかつての相対的な優位性は、もはやなく、若年層の成り手がなくなりつつある。
ドライバーの仕事は、本来貨物を運搬すること。しかし、貨物搬送の前と後には必ず「附帯業務」と言われる荷役作業がある。荷積みや荷卸しだけでなく、仕分けや棚入れ、ラベル貼り、検品、資材・廃材の回収、場合によれば商品の陳列作業もある。業務契約がないにも関わらず荷主優位の商慣行が蔓延し、サービスとして提供され、その負担をドライバーが担っている。納品場所での長時間待機が余儀なくされる場合もあれば、所定納品時間との関係で休憩時間の取得ができない場合もある。これらトラックドライバーには責任のない「無償のサービス労働」の是正が進まないと、ドライバーの労働時間の実質的短縮は実現できない。
これらのサービスの実施の背景には、業界の過当競争がある。1990年施行された物流二法で規制緩和が進み、事業者数はその後15年で1.5倍に増加。貨物輸送量が増えない中で、トンキロ当たり運賃が大きく低下。ジャストインタイム、少量多頻度納品等のサービス水準のアップの中で、積載率は1990年の49.3%から2015年には36.3%まで低下。ドライバー数が増加しない中で、事業者数が増加し、何層にもわたる下請け構造の中で、車両10両以下・従業員10名以下の事業者数が増加。零細性の強い産業特性が過当競争を助長し、実勢運賃の下落と杜撰な労務管理をもたらしてきた。
かつてドライバーの平均年齢は38歳強と男性労働者の平均より若かった。それが2001年に逆転し、2016年の大型ドライバーの平均は47.7歳と5歳弱高く、一般より高齢化が進んだ。有効求人倍率は2.33倍も、宅配便ドライバーはネット通販で需要が増えたことによる人出不足、大型・中型を中心とする貨物トラックは成り手が減ったことによる人出不足と、背景が違う。配達員の新規求職者数は0.76も、貨物自動車運転者は0.38。かつ新規求職者の2人に1人は45歳以上。従事する男性の84.4%が中卒・高卒者。高校を卒業して就職するものの率は1990年には35.2%も2016年には17.9%。若年労働力人口の減少に加え、中卒・高卒労働力の不足が、成り手の不足に拍車をかけている。女性の就業者数が極めて少ないのも大きな特徴。
かつてドライバーは「きついが稼げる仕事」だった。ただ、今日は所定内給与は平均男性の7割ほど。求人側が提示する賃金(求人賃金)の最高額が、求職者が望む賃金(求職賃金)の平均賃金額に達していない。20代前半の賃金は一般労働者より高いものの、かつては30代半ばまで優位だったのが20代後半で追いぬかれる状況。生涯賃金の獲得の展望もない。
トラック協会の調���では「収入が増えるなら、本当はもっと働きたい」と答える長距離ドライバーは58.6%もいる。「労働時間が短くなれば賃金が減ってしまう」と考えているから。一方「収入が増えたとしてもこれ以上は働きたくない」と答えるドライバーも37.9%と増加傾向。厚労省の「雇用動向調査」では、2000年代前半まで仕事を辞める理由は、労働時間・休日よりも給与の割合が高かったが、労働時間を上げる比率が徐々に高くなり、2010年代に入り労働時間・休日の方が上回るようになっている。賃金より労働時間を重視するようになりつつあり、それが転職行動にも表れている。共働き家庭の増加といった社会構造の変化がある。
ボストンコンサルティング・グループは、荷物増、積載効率の悪化、労働環境改善(超過労働時間50%削減)等で、2027年には、96万人のドライバー需要に対し72万人と24万人の不足と想定。物流業界はまさに「絶滅危惧業界」。
業界の構造的な問題は、是正は容易ではない。しかし、構造の是正へと進まないと物流危機は終わらない。「この業界では経済的規制の緩和が優先され、社会的規制の確保が後回しにされてきた。業界自体の存続が危ぶまれる中、社会的規制を機能させるため、経済的規制を強化することが考えなければならない」との著者の指摘は問題の核心をついている。
労使関係の研究者が、物流の現場で起きていることを労働問題としてとらえなおし、労使関係の観点から「物流危機」をもたらした原因を明らかにし、その解決策を考える。物流危機の背景を理解するために、読んでおくべき書。著者はまだ40代、今後の活躍に大いに期待。