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住民投票により、ウクライナ領であったクリミアがロシアへ併合された。アメリカはロシアを盗人と罵り、19世紀の帝国主義的センスだと非難した。しかし、歴史的にみると、スターリン時代の粛清と大飢饉で酷い目にあったウクライナに対して、フルシチョフがその償いとクリミアを贈ったらしい。だから今回の再併合は、もとの鞘に収まっただけ。それを盗人呼ばわりするとはあきれる。メキシコやハワイやパナマを強引に奪っておいて、何様だ!盗人猛々しいとはアメリカ!お前のことだ! と著者は言いたいらしい。短いコラムだけど、その歴史的経緯もまあまあ分かり易く書いてある。
沖縄密約に関するコラムも面白い。かつて毎日新聞の記者が外務審議官付きの秘書と懇ろになり、沖縄返還の裏取引の情報をスクープしたことがある。山崎豊子原作のドラマでは本木雅弘と真木よう子が演じた関係だ。ただし正確に言うとスクープではない。なぜなら記者は新聞でスクープ記事として掲載する前に、当時自民党と対立していた最大野党の社会党に情報を渡し、国会審議の場にいきなり持ち込んで大騒ぎさせてから、記事にしたからだ。この記者に対しても怒り心頭の著者は、てめえ、情報源は明かすし、記事にする前に国会に持ち込んで倒閣をはかるし、何様のつもりだ!ジャーナリスト失格だ!という感じで怒っている。
うん、確かに。言われてみればその通り。生まれてないから当時の騒動はわからないけど、ドラマを観ていても、真木よう子かわいそう、モっくん酷い、と思ってた。情報源を守らないなんて、記者としてサイテー。
この本は週刊新潮の連載コラムをまとめたものらしい。面白いか面白くないかと聞かれれば、面白い。酒場で語るオヤジの時事談義としては最高レベル。ただ真偽を確かめるほどの知識がないので丸飲みは危険。政治評論を生業としている人が巻末解説を書いているが、その人も著者の原稿を読むと「これは裏がとれてるのか? ホントの話か?」と疑うらしい。てっきり、その後自分で調べてみたら裏が取れたとか言ってくれるのかと思ってたら、取ってない。
意味ないじゃ~ん。
この本を読むときは、週刊新潮は報道誌じゃなくて、文芸誌ということをお忘れなきように。