ふたつの時代を股にかける
2020/05/19 10:27
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふたつの顔を持つイブの、ふたつの戦争を挟んだ変わりようにビックリです。理不尽な暴力に晒されながらも、いつの時代も逞しく生き抜く女性たちに励まされます。
人生は選べるのか
2019/07/04 07:48
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投稿者:あゆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりの洋書 名前や話の展開など、自分の頭が物語に慣れるまで、時間が掛かるのではと心配してたけど、あっという間に、本の中の世界に入っていました 女性の生き方は選べるのか、何が幸せなのか、戦争に対して、女性はどう関わり、どう影響し、向き合い、生きてゆくのか、考えさせられる話でした
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興奮さめません。ドキドキの連鎖反応。
第二次世界大戦が終わって数年後が現時点でアメリカ人のシャーリー・セントクレアが主人公、第一次世界大戦のときはイギリス人のイヴ・ガードナーが主人公。二人の追いかける悪魔のような男がひとつに重なって行くところはほんまにドキドキする。第一次世界大戦のことはあまり知らなかったから、読んでよかった。北フランスがドイツに侵攻されて酷い目にあっていたこととかは、第二次世界大戦のときのことしか考えたことなかった。ナチスが台頭するまでそんなに酷いことがあるなんて考えたこともなかった。実在したアリス・ネットワークの女スパイたち。戦争は本当にろくなことがない。大切な誰かの大切な人の命を奪うだけだ。フィン・ギルゴアが収容所を開放したときに酷い有り様を見てから悪夢を見るようになったこととか、シャーリーのお兄さんがトラウマから死を選んでしまったこととか、たくさん辛くてでも最後がめちゃくちゃ気持ちよいのでぜひ一気読みを!!
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1947年、戦中に行方不明になったいとこを探すためにロンドンへ渡ったシャーリーとそこで出会ったイヴという女性。1915年第一次大戦のなかにいるイヴ。この2つの時代の物語。戦中、戦後の時代は違うけれど厳しい日々を生きている2人。シャーリーとイヴの目的。1915年からイヴに何があったのか。そして1947年に行動を共にする2人。戦争の恐怖、スパイとしての日々、死がすぐ近くにあること。イヴの過ごしてきた戦中の悲惨さが描かれている。スパイ活動の緊張感、シャーリーとイヴの間に芽生えてくる友情のようなもの。復讐を果たすことで救いはあるのか。色々なことを問いかけてくる。600ページを超える物語だけれど長さが気にならないくらい面白い。
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最初に手ごわそうな予感。一見して、気難しい貴婦人のように見えるこの物語は、大抵の魅力的な女性がそうであるように、時間とともにようやく心からの笑顔を浮かべ始める。最初の100ページは、とりすましたよそ行きの表情を浮かべるばかりか、興が乗らないでいると、今にも、構えたルガーの引き金を引きそうな、緊張感に満ちた険悪な悪女との出会いといったところだ。しかし、とっつきくい女ほど、後になって味が出てくる。そして情が濃い。本書はそんな、ファム・ファタルみたいな、いい女を思わせる、とても魅力的で奥深い作品なのだった。
第一次大戦時、ドイツ占領下のフランスで、深く静かに潜航しつつ情報を収拾する、女スパイのネットワークが存在した。実在の人物を交えつつ、1915年のリールのレストランで、スパイ活動に携わるイヴの物語が語られる。
さらに第二次大戦後、空爆の爪痕の残るロンドンに渡った、19歳で妊娠中のヤンキー娘シャーリーが、戦時中フランスで行方不明になった親友ローズの行方を捜すロード・ノヴェルが、もう一つ併行して語られる。彼女の随行者は、30年後の変わり果てたイヴと、その雇われ運転手フィン。用意された車はポンコツのラゴンダ・コンバーチブル。ちなみに1940年代のラゴンダは、なかなか趣のあるクラシックカーとして、今もインスタ映えのする画像をネットで散見することができる。
暗い時代の息詰まるスパイ活動の描写と、戦後の明るいティーンエイジャーの妊婦率いる、ポンコツ車での三人旅が、交互に語られ、回想と旅とは徐々にひとつの物語に束ねられてゆく。フランスの風光明媚な土地巡りの途上で、戦争に巻き込まれたローズの足取りを追うにつれ、イヴの回想に現れる雇用主ルネの悪党ぶりも際立ってゆく。スパイ活動でイヴが味わわされる臍を噛む想いを、シャーリーの明るさで中和しつつ、ポンコツのラゴンダで運ばれる物語は、次第にギアを上げてゆく。
さて、フィリップ・ノワレに泣かされたというフランス映画ファンは少なくないだろう。ロミー・シュナイダーに泣かされた方も。二人とも、重要な反戦映画にいくつも出ている名優である。二人の共演作である『追想』を観てから半世紀近くが経とうとしている。だが今も、そのときのショックは忘れ難い。ナチによる無差別虐殺で絶滅した村が、オラドゥール=シュール=グラヌである。あの映画を観た方は、この小説で、あの現実にあった物語とその現場に、否応なく再会することになる。詳しくは村名で検索をかけてみるとあまり伝えられてい藍歴史的事実が改めてわかる。
シャーリーたちが辿り着く重要な地点の一つとして描かれるその村。そして南仏リビエラ地方の香水の都グラースに旅は終わる。物語も、もちろんここで。陰惨な戦争という大きな絵巻物語で語られたのは、とりわけ女スパイとして送り込まれた者たちの勇気と代償。また、何よりも彼女たちの生き方である。そして戦争の犠牲者たちへの悼みと、生き残った者たちの、再生の物語である。女流歴史小説家による重厚なテーマの大作ではあるが、読後感は、優しさと光に満ちている。
実在の人物が多く起用された、ほぼ9割方歴史的事��に基づく魂の滅びと救済の物語を、一人でも多くの、特に女性にお読み頂きたいと、そう願ってやまない。
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第一次大戦中の女性スパイもので、傑作らしいと聞いて読んでみた。
作者あとがきに詳しくあるが、史実に基づく部分も多く、また資料のかけらからの創造も良くできていて、魅力的な人物も多く、ふたつの時代を行き来する展開も、今ここにいる人物の過去の謎に迫るので緊迫感があり読ませてくれるのだが…
いかんせん私にはロマンス色が強すぎて苦手な感が。題材がとても面白いので、ロマンス抜いたら半分くらいの頁数かな、とか思ってはいけないのでしょうね。
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1947年、アメリカからシャーリーは戦時中に行方不明になったいとこのローズを探しにフランスにやって来た。手がかりを辿り、出会ったのは英国の元スパイのイヴだった。第一次世界大戦のとき、ドイツ占領下のフランスでスパイとして過ごしたイヴの壮絶な過去と、第二次世界大戦中の話が交互に描かれる。
これは凄まじく面白かった。
イヴはフランスにおけるスパイのリーダーアリスのもとで働くのだが、このアリスネットワークは実在したものなのだそうだ!(わお) また、第二次大戦中のドイツによる信じられないような虐殺事件も実際にあったそうだ。他にも何人もの登場人物が実在したと著者あとがきに書いてある。
イヴがスパイとなり、潜入していく様、情報をとるため危険な目にあう様、読んでいてヒリヒリする。
650頁もあるので、余程の好き者でないと手に取らないかと思うが、好きな人には堪らないご馳走だった。
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第一次世界大戦中、ドイツ占領下のフランスで連合国のためにスパイ活動をしていた女性たち<アリス・ネットワーク>に迫る物語。
スパイ物ということで、ものすごくシリアスで陰鬱とした、それでいてハードな物語を想像して読み始めたのだが、読み終えてみれば意外な読後感と結末だった。
<アリス・ネットワーク>の一員として活動していた若き日のイヴの物語と、第二次世界大戦中に行方不明になった従姉をイヴと共に探すシャーリーの旅が並行して描かれる。
1917年の、青い情熱を燃やし厳しい任務に没頭するイヴが、1947年には変わり果てた姿になっているのを見ると、1917年の物語の結末が過酷なものであることが想像出来て、読み進めるのに勇気が要った。
一方で1947年の擦れ切れたイヴが、お嬢様育ちだがコンプレックスと自暴自棄の末に望まぬ妊娠をしでかし、救えなかった兄の代わりに行方不明の従姉を探し出すことで救われたいと願うシャーリーと徐々に友情のような絆が出来ていくと同時に生気を取り戻していくところは興味深いところだった。
もう一人の旅の同行者・フィンも興味深い人物だ。手が不自由なイヴの世話役兼運転手、スコットランド出身で前科者という以外なにも分からない。
だがシャーリー、イヴ、フィンという三人の関係はなかなか上手く行っている。
実際にあった<アリス・ネットワーク>の女性たちの物語に作家さん流の肉付けをして出来たのが本書だが、個人的には先に書いたような方向性を期待していたので、ハリウッド的な展開と結末にはガッカリした。
こういう明日をも知れない状況下だからこそ生まれるロマンスには理解出来るものの、感情に走ってしまえば『だから女は使えない』と言われてしまっても仕方ないのではないのか。
どうせならリーダーであるリリーや、女性ではないけれどアントワーヌを主役に持ってきて徹底的に硬質に描いてくれた方が個人的には好みだったかなと思う。
それから尻切れトンボ的になってしまったシャーリーの従姉ローズの人生ももっと掘り下げてほしかった。
ダスライヒの残虐行為を描くためだけに持ち出されたようでちょっと残念。
ひとつネタバレしてしまうと、ルネはマルグリットを愛していたんだろうなと思う。その形は決して美しいものではなかったけれど、愛していたからずっとマルグリットを待ち続けていたのだろう。
もう一つ、女性たちが命がけで掴んだ情報を信用しないで終戦の機会を二度も逃すって、報われない…。
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「リリー」イヴは衝動的に尋ねていた。「怖いと思ったことはないんですか?」
リリーが振り返る。傘の縁から滴る雨粒が、彼女とイヴのあいだに銀色の幕を張る。
「あるわよ。誰だってそうでしょ。でも怖いと思うのは、危険が去ったあとーーー危険が迫っているときに怖いと思うのは、自分を甘やかすこと」彼女がイヴの肘に手を絡ませた。
「アリス・ネットワークにようこそ」(P.117)
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第一次世界大戦の最中。ドイツ占領下のフランスで、連合軍のためにスパイ活動をする女性たちの組織、「アリス・ネットワーク」。超敏腕スパイ、コードネーム=アリス・デュボア(本名=ルイーズ・ド・ベティニ)が作り上げた組織だ。ルイーズ・ド・ベティニを筆頭に、登場人物の多くは実在の人物で、この作品は、著者の脚色はあるものの、基本的には史実に則った歴史小説である。
物語は、二つの時代と視点から描かれる。一つは、第一次世界大戦中、アリスの後輩スパイだったイヴリン・ガードナー。アリスや同僚のヴィオレットと共に、スパイ活動に心身を捧げた時代が描かれる。アリスは「リリー」という愛称で呼ばれ、数数のエピソードでその敏腕さが伝えられる。
もう一つは、第二次世界大戦終戦直後のイギリス。戦時中に失踪した従姉妹を探していた女子大生のシャーロットは、ヒントを求めて訪れたロンドンの古い住宅でイヴリンと出会う。二人の物語は時代を超えていつしか交錯し、クライマックスに向かって加速する。
歴史小説とは知らずに、完全なフィクションとして読んでしまった。あとがきを読んでアリスが実在の人物だったと知ったときの、衝撃たるや!なんだかもう、表紙を見るだけで震えが来る。アリスは一体どんな気持ちで日々を送っていたんだろう。いつも危険と隣り合わせで、生き延びるためにできることはなんでもして、常にマニュアルのない臨機応変な行動が求められて・・・いま私が最も愛している「リラックスして心置きなく眠る」から最も離れたところにある日々。誰かに心を許すことも、ネットワークのメンバーにさえ本名を明かすこともできない、たった一人で戦い続ける毎日。怖い。その孤独を想像するだけでゾッとする。
海外小説は読み慣れない。というか、今までハリー・ポッターシリーズくらいしか読んだことがない。日本純文学特有のあの、世界に一つに表現を求めてあらゆる単語や文章をこねくり回すまどろっこしさと美しさに酔いしれるスタイルとは真逆の、スピーディにどんどん進んでいくストーリー展開を楽しむことに重点を置くスタイル貫く海外小説には、あまり魅力を感じてこなかった。が、「2019年度 本の雑誌が選ぶ文庫ベストテン」第1位獲得という文言につい惹かれ、アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」と一緒に読んでみようという気になった。
凄まじい読み応え!読み応えが「ある」とかじゃなくてもうこの本自体が「読み応え」そのものだと思う!(私は何を言っているんだ?)
こんなに分厚い本を読み切れる気がしなかった。でも読んでいたら、特に中盤以降、それまでのストーリーに散りばめられていたいろんなピースが徐々にハマっていって、その心地よさに踊らされているうち、あっという間に時間がすぎていった。
同じ長編小説でも、村上春樹や江國香織を読み終わったときの達成感(あるいは疲労感)とは全く違った、物語のスケールのあまりの大きさとその圧倒的な重厚感からくる達成感(あるいは疲労感)を得た。読んでよかった。これは文句なしに100%人に勧める。
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第一次世界大戦のリールには女性スパイのネットワークがあった。リーダーはアリス。イブリンはそこに配置されレストランで寛ぐドイツ兵をスパイする事になる。
第一次世界大戦中のイブを語り手としたストーリーと、第二次大戦後のイブに親友探しの協力を求めるシャーリーのストーリーが重なり合う。
女性スパイのネットワークは後書きによると実話らしい。そこに創作のキャラクターを入れて戦争中と戦後の悲惨さを軽快に描いている。感じるのは逞しさであり前向きで読了感も良い。難点を言えば分厚いページ数だけ。
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オススメ文庫王国から。2019年度第一位。同誌のチョイスはやっぱり間違いないよな、と思わされるに十分な高品質作品。実際の史実が絡むと、重要人物は登場させておかないと的意図が生じがちなのか、やたら出てくる人が多くなりがちな気がするけど、本作はギュッと絞られていて、非常に好感が持てる。更にはそのおかげで、アリスその人の存在感が大きく立ち上がっていて、そういう意味でも成功と思える。
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第一次世界大戦のスパイ小説?とナメた姿勢で読むと本作はヤバい!
「第一次大戦時のスパイ活動」と「行方不明の従姉妹を探す旅」の2つの物語が同時進行するスパイ歴史小説。
「妊娠中の女子大生」「アルコール依存症の女の元スパイ」「キレやすい元兵士」3人のロードムービーの中に、大戦中の事実・理不尽が明らかになっていく過程が面白い!
緊迫の情報収集、吐き気を催す拷問、そして、戦争犯罪を糾弾されずに巧妙に逃げ回った悪党、読むほどに謎が結びつき、読者を腹落ちさせるのが堪らない。
フェミニズムの目覚めも教える。
登場人物は、解説によると日本では無名だが実在の人物らしい。本作は考えさせる歴史小説なのだ。
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偶然にも似たような小説に連続して出会うことが時々あるのだが、今回もそう。
こないだ「コードネーム・ヴァリティ」を読み終わった後すぐに本作である。
女性主人公2人目線、主人公は女スパイ、舞台はヨーロッパ戦線。WW1とWW2の違いがあるとはいえ、敵役はドイツ(とそれに加担する組織や個人)
読んでいけば、味わいの違いはすぐに分かるのだが、なんという偶然か?それとも翻訳小説界ではこの辺のテーマがブームなんだろうか?どちらも傑作だというのがまた偶然。
読み始めは、なんだか貴族系上流階級女子のとっつきにくい話だなぁ、今更亜流の「風と共に去りぬ」でもあるまいし…と正直ちょっとペースも遅れ気味だったんだが
二人の主人公の動きが徐々に関連づいてくるにつれて、ぐいぐい話に引き込まれていく。しかも史実に基づいた部分が非常に多く、ノンフィクションを史実に編みつけていくテクニックの上手さは読みどころ核心!
物語の終焉も綺麗に整っていて、余韻が少々苦い「コードネーム・ヴェリティ」よりこっちのほうが俺は好みかな。
それにしても、2つの戦争の結果、ドイツって国はとんでもなく大きな負債を背負ってしまったものだ。現代において、EUであれだけ大きな貢献をしていても、いまだ悪役まっしぐら。きっと日本だって欧米から見ればそういう国なんだろうなぁ。ほんま戦争はあかん。
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1947年、戦争中に行方不明になったいとこを探すシャーリー。手がかりは一人の女性・イヴ。尋ねてみると、イブは酔いどれ、しかも指は潰れたいた。イヴは元スパイだった。第一次大戦中、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入。凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。イヴの過去、いとこの運命は? 傑作長編!
アリスは実在したスパイらしいです。そのアリスやオラドゥール=シュル=グラヌの悲劇とか初めて知ることが多く、歴史的なものでも私は圧倒されました、知識を得ながら興味深く読めました。タイトルはアリスなんだけれど、シャーリーとイブ(イブの活躍した過去のこと)の二人のお話で進んでいきます。絡み合って、それでそれでとページが進みました。最後の方の二つの物語があったところは、もう息をつくのが大変。女性たちの力強さ、生き残ったものたちの心情、そして、明るい兆し、読み応え十分。登場人物は皆魅力的で(悪役ルネは悪い度合いがうまく出てて)そういった面でも楽しめました。
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第一次大戦中のドイツ占領下のフランスにおける女性スパイ網を描いた、史実に基づくフィクション。
主人公は想像上の人物だが、そこここに史実に基づくエピソードが挿入されているという。
第二次大戦後のフランスで、行方不明の従姉の足跡を追う米国女性の主人公が追体験する第一次大戦中の女性スパイの体験と、主人公自身の体験が徐々にシンクロしていきクライマックスに突入する。
サスペンスとしても良く書けている。