紙の本
マンケルの純文学小説
2024/02/28 16:33
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴァランダーシリーズで90年代のスウェーデン社会を描いたマンケルのシリーズ外作品。
紹介文からは、孤島で一人暮らす引退した外科医のもとへ40年近く前に棄てた恋人が訪ねてくるという導入から、何かミステリー的要素があるのかと思ったが、読み進めてみると、主人公ヴェリーンの魂の彷徨の物語であり、人が自ら選んだ隠遁からいかに再び他人との関係に踏み出していくのかという道筋を描いたものだった。
医師時代に大きな過ちを犯し、荒涼たる孤島に隠れ住むヴェリーンと存在すら知らなかった娘ルイースとのやりとりが、どこかヴァランダーとリンダのそれを思い起こさせる。
さらに舞台に選ばれたのが、確か『背後の足音』で描かれたバルト海に浮かぶ厳しい自然に晒された群島のひとつというのが、ヴェリーンの内面を表現して余りある設定だ。
読み進めていくにつれ、ヴェリーンはとにかく面倒ごとから逃避する典型的タイプで、最後には社会生活からも完全に撤退してしまう、よくいる人間だということが分かってくる。
そのくせ、他人の手紙を盗み見たり、会話を立ち聞きするなどしており、全く他人に興味がないとはいえない面ももっている。とにかく複雑でちょっと面倒な人物なのである。
そんな彼が、12月の寒さの中歩行器で現れた昔の恋人ハリエットに驚き、余命僅かな彼女の最後の願いを叶えるべく、12年ぶりに島を出ることを決断する。
その旅の途中で、飼い主の孤独死を知らせに来た犬に出会ったり、湖の穴に落ち死の淵を覗いたりと様々な出来事を経て、自分の閉ざされた心を徐々に生きた現実の中に開いていく。この過程が結構なカウンセリング効果になっていることに気づき、こちらの心情もゆっくりほぐれてゆくのが心地よい。
そしてついにヴェリーンは、自らを生ける屍にまでしてしまった「大惨事」に向き合う決心をする。診断ミス、連絡・確認ミスの重なった重大な医療事故で片腕を切断されたかつての患者女性に謝罪と贖罪をすることで、自分を解放しようとするのだ。このシーンの描写が意外とあっさりしていたのが正直物足りなかった。これだけ逃げ続けてきた彼なら、彼女と向き合うにはもっと抵抗と躊躇いがあったはずだが・・・。
その後、アグネスという元患者が自分を立ち直らせるために様々な経験をし、最後に自分以上に傷つき、助けを必要としている少女たちを援助することにたどり着いた姿を目の当たりにして、ヴェリーンもその手助けをしようと一歩を踏み出すところで物語は一応の区切りをつける。
この間、ハリエットや難民の少女シマの死を見届けることで、誰もが避けられない死というもの、そこから限りある人生の価値と可能性を再び信じるようになったヴェリーンの今後に興味がつきない。
近年、ひとは他者の痛みや死から目をそらし過ぎているのではないかという疑問がわく。いずれ人生のどこかで接近遭遇しなければならないそれらは、恐怖だけでなく初めて別の世界を見せてくれる。その時少しでも、過去に見過ごしてきた人たちの心に近づけることができれば幸いだ。ヴェリーンのその後を描いた作品も翻訳されているようなのでぜひ読みたいと思う。
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スウェーデンにある群島の中の1つの小島に1人暮らす66歳のフレドリック。若い頃に恋人の前から逃げ、その恋人が40年ぶりに目の前に現れたところから始まる。自分勝手で不器用で人との付き合いもほとんどない生活が変わり始める。孤独と生きてきた生活と死を意識し始め後悔を見つめること。そこからこれまで知らなかった感情に出会っていく。不器用な男が晩年にたどり着いた場所。マンケルのこういう作品を読むことができるとは思わなかった。ずっと読んでいたいと思うほどだった。ヴァランダーシリーズとはまた違うマンケルがいて、でもマンケルの作品らしさがあって嬉しい。大好きな作品になった。
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作家が58歳の時に、66歳の主人公の小説を書くということはどんな感覚なのだろうか。既に人生を終えつつあるが、死ぬことは恐怖であり、外科医であった人生にある大失敗を犯し、世間からも自分からも罰せられ地の果てのような孤島に世捨人のような人生を送る主人公を。
一年で最も夜が長いスウェーデンの冬至を孤独に過ごしていた彼のもとを、過去に無言で別れてしまった女性が訪れる。2歳年上で、氷の上を歩行器で歩いてきて、しかも末期癌を患って。
孤独な15年にも渡る孤島での一人暮らしの中で、出会う人間は数日おきにやって来る郵便配達夫だけだった。郵便は来ない。ただ郵便配達夫だけが世界との繋がりのように訪れる。そんな日々が、かつての恋人の登場
によって終わりを告げる。森の中の湖に連れてゆくという人生で一番美しい約束を果たしてもらいにやってきたハリエットの登場によって。
ヘニング・マンケルがこういう小説を書くなんて知らなかった。まるでスウェーデンの村上春樹みたいだ。村上春樹は、どちらかと言うと情より知で味わう部分が大きいけれども、ヘニング・マンケルは知で始まりすべて情に行き着く感覚だ。どちらもいずれ劣らぬ読書の歓びを与えてくれるものの、凝縮された緊張感のようなものは、マンケルに軍配が上がる。
物語全体を独白体で綴る主人公フレドリックは、とても難しい人間だ。恐ろしい罪悪感と、恐ろしいエゴイズムを併せ持ち、年齢の割に、周囲の人物たちに愛情表現より、むしろ感情抑制のできぬ自己本位な言動をぶつけてしまい、後悔を繰り返す。孤独に追いやられやすい体質の人間なのである。読んでいて許しがたい性格は、読者をも遠ざけることがある。
しかし人生をどのように終わらせたら良いのか、迷い続ける主人公の黄昏の日々は、たとえ彼がどんな人物であろうと、我々の心に共通の物語として響いてくる。愛情を注ぐ相手が人間であったり、犬や猫であったりしても、その愛情はなけなしの命のひとしずくである。
15年間隠遁していた彼を襲う激動と出会いと離別の一年間を描いて、非常に静的でありながらダイナミズムを感じさせるこの作品は、ミステリーでもハードボイルドでもない。フィヨルドや深い森と厳しい季節の変化を背景に、凄まじく美しい、人間たちの物語である。叙述の素晴らしさに魅かれ、作品世界に否応なく惹き込まれる小説というものが、存在するのだ。改めて、驚きと、作家の天賦の才とに、物語の豊かさに、読書の時間が満たされる。
周囲の登場人物を含め、それぞれの老若男女が活き活きと個性的で、印象的で、忘れ難い物語を抱えたまま、主人公と対峙する。時には優しく。時には獰猛に。だからこそ、世界は生きて動いているように見える。読書が旅であるとするのなら、この作品ほど果てしなく遠いところへ連れ出してくれる物語は、そうそう見当たるまい。忘れ難い雪と氷の孤島の物語がここにある。
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本年最高の一冊。今の私が読んで一番大きな感動を得る。多分マンケルのベストの一冊。
本を人にすすめるという暴挙は犯したくない。
その人のその本を読んだタイミング、心の状態、年齢、その他の多くの条件で感動の深さがきまる。私自身でもこの本を10年前に読んだならば同じ感動を感じただろうか。
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ヘニングマンケル氏の最新作。とはいえご本人がすでに亡き人なので思うところは多いが…。
病気を抱えたハリエットの描写などどうしてもマンケル氏本人の病気と重ね合わせてしまい辛くなる。この本はこれまでに無く凄惨な事件などひとつも起こらない(医療ミスはツラいが)それなのに、マンケル氏らしさがよくでているのはスウェーデン情勢や北欧の風景の描写がいつも通りであることは勿論なのだけれどそれを抜きにしても人間の個々の心の闇の深さや暗さなのかと思う。
人生の、愛の、そして命の深みをのぞき込み、人と人との繋がりの不思議さがこれまでにないマンケル氏の小説にまた新しい気持ちを抱かせてくれる。ヴランダーシリーズも楽しみだけどこの続編の存在を知りこちらもまたすぐ読みたい。
飽くなき読者の欲求にぜひ柳沢さんには応えていただきたい。
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スウェーデンの冬は寒い。海まで凍りついてしまう。毎朝、島の入り江に張った氷を斧で叩き割って穴を開け、その中につかるのが「私」の日課だ。寒さと孤独と闘う、と本人はいうが、自分に課した懲罰のような行為だ。元医師のフレドリックは六十六歳。昔はストックホルムを臨む、この群島に五十世帯もの家族が暮らしていた。今は七人だけだ。自ら望んで島流しのような暮らしをするにはどんな理由があるのだろう。
ある日、水浴を終えて家に帰る途中、歩行器に頼って雪の上を歩く女の姿を見つける。どうやら、この島を訪れる唯一の訪問者である郵便配達夫ヤンソンがハイドロコプターに乗せてきたらしい。近づくにつれ、それが昔捨てたハリエットであることが分かる。元恋人は癌に侵され余命いくばくもなかった。死ぬ前に昔の約束を果たせと言いに来たのだった。
刑事ヴァランダー・シリーズで知られる北欧ミステリの雄、へニング・マンケルによる新作。つかみはばっちりという発端だが、これはミステリでもサスペンスでもない。いや、もちろんドキドキハラハラはさせられる。秘されている事実があるからだ。「私」はなぜ、こんな孤独な暮しを自分に強いているのか。ハリエットは、なぜ別れて四十年も経つ今頃になってフレドリックに会いに来たのか。
孤独な隠遁生活を送る老人という設定だけで、読みたいと思わされる。他人事ではないからだ。我が身を振り返れば、主人公と同い年の今も、妻や子に囲まれてひとつ家に暮らしてはいるものの、これは単なる偶然に過ぎない。もともと、家族を持とうなどとは考えてもいなかった。もとより自分から動くタイプではない。出会いというものがあり、相手の意思というものがなければ、どうなっていたかは分からない。
家族を持てば、責任がついて回る。自分勝手な生き方を送りたいと思っているものには、それは桎梏でしかない。おまけに、現に生きている世の中は自分が生きていたいと思うものでもなければ、自分の子を住まわせたいと思う世界でもなかった。主人公は何故、絶海の孤島で孤独な人生を送ることにしたのか、その訳が知りたいと思った。
この歳になると、結婚も二度や三度の経験があるのが西欧の常識らしい。この前読んだデニス・ジョンソンの『海の乙女の惜しみなさ』にも、別れた元妻が死ぬ前に電話をかけてくる話があった。人の死を前にすると、誰しも敬虔な気持ちにさせられる。振り返りたくもない過去を振り返る気にさせられるのだ。
ミステリではないので、ネタバレを心配することもないのだが、これから読む読者のことを考えると内容を詳しく書くことはできない。主人公が外科医で、自ら孤島に引きこもっているというなら、その原因は自分がおかした誤診のせいでは、と推察できる。足の不自由な老女が、連絡もなしに、突然氷に閉ざされた絶海の孤島にまで足を運ぶのは、有無を言わさず、相手をそこから引っ張り出す目的があるからだ。
主人公は過去の不幸な出来事を「大惨事(カタストロフ)」と呼んでいる。被害者意識から自分の行為に対して直面することを避け、病院を飛び出して外国に逃げた。故国に舞い戻ってからは祖母の家があったこの島に世間から逃げるようにして隠れ住んでいる。四十年ぶりに突然現れた元恋人が、彼を世界に引っ張り出し、連れまわることで、結果的にフレドリックは世界との関係を作り直すことを迫られる。
帯に「孤独な男の贖罪と再生、そして希望の物語」とあるが、それは主人公の側に立った視点でしかない。客観的に見れば、主人公の行為は利己的で、無責任。それ以上に他者に対しての思いやりというものを徹底的に欠いている。捨てた女のいうことを聞いて、旅に出たのはいいが、過去を責められると、また女を振り捨てて島に逃げ帰る。古傷に向き合いはしたが、相手が責めないのをいいことに、再び傷つけるような行為に及ぶ。
どうにも救いようのない男なのだ。犬や猫、鳥を相手にしている時だけ人間らしさが垣間見える。そう考えて、思い至った。三十年以上、誰ともつきあって来なかったのだ。人間とのつきあい方などとうに忘れていて当然ではないか。そんな「人でなし」が、死を前にした昔の恋人の手で、人の世の中に連れ戻され、情けない目や、怖い目にあわされ、しだいに人間性を回復してゆく。これはそういう物語なのだ。
「贖罪」というのは、まだ納得がいかないが、「再生」の物語というなら、なるほど、と思わされる。ミステリの大家らしく、読者を物語世界に誘い込む手立ては巧いものだ。イタリアの名工の注文靴に対する蘊蓄など、枝葉末節と見誤りがちだが、冒頭から結末に至るまで、ちゃんと主筋にからみついていて、最後にきちんと回収される。どれだけ逃げ回っていても、最後には勘定を合わせるために、見たくない真実に直面させられるのが人生というものなのだろう。たまには自分の人生について振り返ってみるのも悪くない。そんな気にさせられる物語だ。
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医療過誤から医師を辞めたフレドリックは、祖父母の残した離れ小島に犬と猫と暮らしていた。週に数回郵便物を運んでくるヤンソンが昔の恋人ハリエットを運んできた。病におかされたハリエットの望みをかなえるため、フレドリックが子どもの頃訪れた湖へと二人で向かう。
生涯孤独に島で暮らすであろうと思っていたフレドリックの人生が、思いもしない方向へ走り出す。
なんと個性的な女性たちよ。そして、フレドリックの周囲の友人たちは、皆優しい。
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逃げ続ける男とそれを許さない女たち。思いがけない様々な出来事を経て、姑息で身勝手な主人公が行き着く先に温かな光が見えるような作品。
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離島に一人で暮らす元医師66歳。37年前に捨てた女性が突然やって来た。不治の病いに冒されているらしい。彼女は彼が昔連れて行くと約束した湖に連れて行けと言う。他人との関わりを極力避けてきた彼が、他人と関わるうちに・・・
他人の手紙を勝手に読むようなダメ人間が、段々と変わって行く。ダメ男の再生を静かな筆致で描く。なかなか良かった。
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ヴァランダー警部シリーズの作者だったので。
できるだけ事前に情報を得ないようにして、
本を読むようにしている。
その方が純粋に楽しめるような気がして。
島に一人で住む元医師の男性が、
人生を取り戻す話だった。
捨てた恋人、誤った手術、拒絶している人との交わり。
楽しい話ではなかったが、最後の方の夏至祭りのシーンは美しかった。
あと、ハイドロコプターにのって氷上を移動したい。
そして、誰も殺されないならあらかじめ言ってほしい。
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生きている事を確かめるため、冬の凍った入り江に穴を開けて裸で浸かる日課
徐々に拡大する台所の蟻塚
毎年直そうと眺めるだけで変わらない、シート下のボート
島に立つリンゴの木と渡り鳥の凍った死骸
スゥエーデンの森と湖、凍てついた風景
用もないのに立ち寄る人と、用がない事をいう為に待つ人
突然氷の上に歩行器に頼って現れた、元恋人
凍った湖の穴に落ちて、余命僅かな元恋人に助けられる男
道端でたたずむ犬と、その飼い主の老女が孤独死していた現場
お互いの存在を知らなかった父と娘の戸惑いと、黙って眺める母
自分のせいで片腕となった女性のもとへ、15年経って初めて訪ねる男
いつも日本刀を裸で持ち歩いている、国籍も生い立ちもわからない少女
逃げる弱さと、不器用なやさしさ、不自然な会話
これからこの物語を読む人、または今読んでいる人へ、どうか主人公を「嫌な奴」の一言で片付けないで欲しい。
世の中には主人公と似たり寄ったりの人は大勢いて、多くは何も感じずに平然と世間に溶け込んでいる。
彼はあまりにも弱く不器用で、「逃げる」ことしか思いつかなかった。でも、逃げても心の底で怯え続け、無かったことにはならなかった。
「弱々しいほどの優しさ」のひとつ。
自分では「孤独」と思っていても、周りは彼のことを理解していた。それは夏至のパーティーのこと。
老いは醜い。
少しづつ死が身近になってくるとき、美しい死などは願望の中にしか存在しない。
身近な人が死に向かっているさまを間近で見ているとき、自分の死もまた同様であろうことを恐れ、嫌悪する。年齢も生活も近ければ近いほどそう考えてしまう。
死は怖くない。老いて死ぬまで死を思い続けていることが怖い。
心温まる物語ではないが、心に残る物語ではある。
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スウェーデンの離れ小島で、名前のない犬と猫と共に暮らす66歳の男。12年もの間、人とほとんど交わることなく生きてきた彼に転機が訪れる。それは過去に葬り去ったはずの人々との再会だった……。正直なところ、この主人公にまったく感情移入できず、読むのがしんどかった。それはもしかしたら自分にも似たところがあるとわかっているからかもしれない。さて、これから先の人生をどのように生きていくのか、真剣に考えなければ……。
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傑作ミステリー・ヴァランダー刑事物の作者によるカズオイシグロ著「日の名残り」を思い起こさせる作品。過去の出来事への悔恨から世捨て人になっていた65歳の男に思いもよらない形で人生の転換期が訪れる。
遺作となった続編をすぐにでも読みたいところだが、あとがきで訳者曰く、ヴァランダー・シリーズ最終巻とどちらか先になるかということだったようで、「苦悩する男」が今月刊行されるらしいから、英語版 ”After the fire” を取り寄せるしかない…
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我儘な男の生き様 嫌な時は嘘を吐いてでも逃げる卑怯者と呼ばれても仕方のない気弱な男 最後まで真の愛を知ることなく孤独に生きるしか無くなる
可哀なのは一心に待ち続けた恋人の心境
子供ができたことも知らせる事が出来ず一人で苦労して育てた だが子も何処か父親に似て孤独、独創的で単独行動を好む、人を信頼できない性格になる
「思いやり」「家族の絆」を忘れない人生が楽しく嬉しいものだ
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北欧ミステリーでは最も好きなヴァランダー警部シリーズの作者であるマンケルのノンシリーズ作品。ミステリーではなくマジックリアリズム的な文学。
ヴァランダー警部の父親は、ひたすら同じモチーフの油画を描き続け、時に突然エジプトに行きピラミッドに登ろうとして逮捕されてしまうような不思議な存在。この作品の登場人物に通じるものがあるな。
普通ならベストセラー作家の「異色作」というマニアックな存在になりそうなのに、これがフランスやイギリスでも高く評価されたというのはふかかいだな。3.2