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紙の本
絵師が見る世界
2023/03/31 17:06
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸中期、狩野派の門弟として出発しながら、今は江戸の狩野派とは一線を画し、京で一流派を築いた京狩野派は、若き六代目絵師狩野永諒の時代を迎えていた。
彼の短くも情熱的な生涯を描いた本作は、作者の持ち味である幻想的な雰囲気を散りばめながらも、他人にはうかがい知れない絵師の境地を精緻に描き、狩野永徳が描きたかったであろう「狂神」となった虎図を完成させて永諒がその画業を完遂するまでを見事に描き切っている。
作中でも言及されているところだが、京狩野派は永徳の弟子筋であり、豊臣秀吉が没したのちは多くの狩野派門人たちが宗家とともに江戸へ下るなか、ひとり上方に残り秀頼に仕えたため、幕府から嫌疑をかけられるという不遇なスタートだった。
しかし、その後公家等のとりなしもあり狩野宗家とは袂を分かち、苦境のなか京で一流派を築きあげるという波乱ある経過を辿った。
そして200年ほどの時が流れ、実子に恵まれなかった五代目永博の養子として六代目を継いだのが作中では諒として登場する永良だった。実際はどうだったかはわからないが、江戸狩野派からは目の上のこぶとして目を付けられ何かと横ヤリを入れられながら、流派のさらなる興隆をめざして諒の難しいかじ取りがつづく。
その諒には幼いころ両親が謎の死をとげ、その現場に居合わせながらもはっきりした記憶がなく、ただ恐怖を払うため無心に流れ出る両親の血を使って襖に芍薬の絵を描いていたというトラウマがある。さらにその出生には謎があり、そのせいで婿となった妻・音衣とは当初からうとうとしい関係だった。
とにかく20代の若さで流派の総帥となっただけでも、相当な重荷なのに私生活でもこれでもかというほどの因縁にがんじがらめにされている。
そんな折、初代山楽が大坂落城の際に持ち出したとされる貴石「らぴす瑠璃」(おそらくラピスラズリのことか)が、京狩野家に秘蔵されているという噂を聞きつけた江戸派が将軍家に献上せよと迫るなか、諒は絵師としての矜持をかけて「らぴす瑠璃」をつかった群青の闇の中を舞う虎図を完成させることで流派を守ろうとする。
読み終わった後は、眼裏に実際の虎図が見えるような感覚が抜けず、ミケランジェロの天井画を見たような壮大な思いを味わった。それは物語の始まりの子猫が水の中をのぞいて見た白群色の空と見事に対比された、諒の画業の集大成といえるだろう。
文庫書下ろしながらとても贅沢な気持ちにさせてくれた作品だった。
紙の本
芸術家の業
2021/06/19 14:06
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
「狂花一輪」が良かったのでこちらも。こちらの方がより重苦しく辛い感じがしました。目の前に絵が浮かんでくるような描写は素晴らしく、芸術家の業というものをまざまざと感じさせられました。
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