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會舘が建て替えられてからの物語。
旧館をなつかしく思い、亡くなった夫のことを思い出す老婦人の話「金環のお祝い」と、若い頃通ったクッキングスクールで仲良くなった女性たちが、震災の日に會舘で夜を過ごす「あの日の一夜に寄せて」が特に良かった。
「あの日の〜」は、スクールでの話も面白かったし、それを踏まえた上での、カレー香るラストシーンにはじんとした。多くの人が不安な気持ちを抱いた一日だったからこそ、文佳の震えと安堵と祈りが我がことのように感じられるのではないだろうか。
最終章「また会う春まで」に、静子と“コインをもらった子供”が時を渡り再び現れるのも、嬉しかった。
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素敵。
世代を超えて人の思いや縁をつなぐ場所。
そして、そんな場所にするために受け継がれる矜恃。
関わる人と共に育つ場所。
そんな場所はもうすでに生きていますよね。
東京會舘に行ってみたくなりました。
心温まる良い小説です。
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旧館から受け継がれてきた人とおもてなしの大団円が感慨深いです。東京會舘には行ったことがないけれど、上巻とこの下巻を読んでいる間は身近に感じられるくらい引き込まれました。全部素敵な話でしたが、『金環のお祝い』が一番沁みました。普段は認識出来ないけど、ひとつの場所を中心に大正、昭和、平成、令和と人の繋がりが続いてるって凄い。
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上巻では東京會舘が生まれ、関東大震災で破壊され、第二次世界大戦時に軍に接収され、GHQに接収され、また日本人の手に戻りその歴史を積み上げてきた旧館が、新館に生まれ変わって以降の歴史です。
こういった高級な場所には縁が遠いため一生訪れる事が無さそうな気がしますが、本書を読んでいると正装して訪れてみたいと思いました。
その価値に見合う中身を磨き上げる為に研鑽した人々が、訪れる人たちに思い出と夢を与えてきたのだと思うと、こういった荘厳な場所というのはとても重要だし人々の支えになるものなんだなと感じました。
越路吹雪さんのクリスマスライブや、頑固一徹のパティシエが練に練り上げたお菓子や、クッキングスタジオで花嫁修業をした老婦人たち。そして親元を飛び出し、最終的に直木賞をとることになった作家。そして新館すらも建て替えになる時間の流れ。
色々な思いが詰まった場所はこの會舘以外にも沢山あります。豪奢でなくとも沢山沢山ありますが、色々な人が通過していった場所、建物には特別なものが宿っているような気がします。東京會舘という特別な場所はこれからも新たなランドマークとして新たな思い出を刻んで行くのでしょう。
全然建物を知らない僕にも會舘へのノスタルジーを掻き立てさせる佳作です。素敵。
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単行本で読んだものの再読。
昭和46年、新館への建て替えを経た東京會舘。緊張で肩を震わす舞台女優、東日本大震災の日、直木賞受賞を知らされた父子…。東京會舘の歴史を下敷きとした、やさしさと慈しみに満ちた物語。
前の東京會舘の面影を残しつつ建て替えられた。前の東京會舘を知っている人には嬉しいだろうなぁ。
印象的なシャンデリアは、昭和46年、平成31年、と建て替えられても残されていて、そこにロマンを感じた。
第八章 あの日の一夜に寄せて
東日本大震災とクッキングスクールのエピソード。泣いた。
第十章 また会う春まで
親子四代で東京會舘で結婚式だなんて素敵だなぁ。変わらずそこにあるからこそ、出来ることだよね。
「東京會舘とわたし」
いろんな“わたし”の物語か読めて幸せでした!
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上巻から続く短編集の中で少しずつ繋がっていく内容。
人は変わっても東京會舘に受け継がれる意志、想いは変わらないというところが感動的でいい話しだと思えた。
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第六章 金環のお祝い
新館に建て替わりました。
第七章 星と虎の夕べ
下巻で一番好き、だが、越路吹雪と岩谷時子に負う部分がある。
第八章 あの日の一夜に寄せて
実話に近いのだろうが…
第九章 煉瓦の壁を背に
何か楽屋ネタっぽい。
第十章 また会う春まで
設定が何か浮世離れしている。
新章 「おかえりなさい、東京會舘」
再度建て替わりました、の〆。
尻すぼみかな。一・ニ・四・七・九の五章立てプラス新章で一冊にまとまっていたら弛緩ない仕上がりになっていたと思う。
ライフ南津守店書籍コーナーにて購入。
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東京會舘をめぐるオムニバス。
第9章 群馬県庁に努める頑迷な父の反抗して、直木賞を受賞した作家の家族との確執。ありえそう。
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人生の節目で「そうだ、會舘に行こう!」と利用者に思ってもらえることが最高の存在価値。亡き旦那さんの回想のため、東日本大震災の際に東京駅に居たため、小説家を目指し芥川賞・直木賞受賞式参加を夢みるため、代々の結婚式を行うため、多くの人の人生の節目に東京會舘とつながっていく。東京會舘は脇役でありながらも凛として存在する。今後もそんな存在であって欲しい。多分、私自身一回も訪れていないので、その存在感を今度妻と確かめに行こう。とても良い思い出になりそうです。この本で2度ほど涙腺が崩壊。心からお薦めします。
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人の想いが積み重っていくのを伝統というのかもしれない。この積み重ねを知ると、もっとその場所が愛おしく思えてくるの確かにあるなーと思い、行ったこともない東京會舘にすでに愛着がでてきた。
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新館に建て替わってからの東京會舘とそこに集う人々のエピソード。
上巻で描いてきた積み重ねがあるからか、断然下巻の方が涙腺が大変なことになった。。。
【第6章】金環のお祝い(昭和51年1月18日)
夫を亡くしてからというもの、自宅にこもる生活をしていた芽衣子のもとにきた新年会のお誘い。
久々の着物を身にまとい、美容室で髪を整え、参加してみる気になったのは、その会場が東京會舘だったから……。
その日は生きていれば、金婚式を迎えるはずだった日。
東京會舘は夫婦の思い出の場所だった。
下巻の1話目から大号泣しました。
1基だけ残されたシャンデリアの飾り、その上に描かれていた天井の絵がレストランのコースターに描かれていると気づいた時。
給仕の渡邉が夫の分の席を用意してくれた時。
食べ残したステーキを夫の分として盛り付けてくれた時。
さり気ないサービスが素晴らしい。
また、最後に息子と嫁、子供たちが迎えに来てくれる件も。
自分は食事をするわけじゃないのに、よそ行きのワンピースを着てくるお嫁さん可愛らしい。
【第7章】星と虎の昨夜(昭和52年12月24日)
若手のボーイ志塚は、先輩の原田にこれからコンサートを行う越路吹雪さんのマネージャーを探してくるように頼まれる。
越路さんは、マネージャーの岩谷さんに「虎を描いてもらわないと困る」と言っているらしいが……。
この虎のエピソードも東京會舘でこれがあったかは別として実話っぽい(どっかのインタビューとかにありそう)。
常に堂々としているように見える大スターの素顔が描かれた一篇。
【第8章】あの日の一夜に寄せて(平成23年3月11日)
時代は一気に平成23年へ!
東日本大震災の一夜を東京會舘で過ごした4人の女性の物語。
4人は東京會舘クッキングスクールの卒業生だった。
料理教室を舞台に描かれるガールズ・フッド・ストーリー。
当時は結婚年齢が今より低かった、ということもあるかもしれないけど、二十歳を超えて結婚してから生涯の友を得られるなんて、羨ましい限りである。
そして夢中になって学んだことというのは、どんなことであれ決して無駄にはならない。
そして娘から「『東京會舘のクッキングスクールに通ってくれ』なんて、時代錯誤」と言われてしまった夫が、実はクッキングスクールの現役生だった!
かつての恩師からは、夫が家では料理をしない驚きの理由が明かされる。
疲れ切った文佳が翌日家に帰ると、懐かしい“若鶏のカレー”の香りがするというラストも見事。
自分も震災の夜には不安な一夜を過ごしたので、非常に感慨深い一篇だった。
【第9章】煉瓦の壁を背に(平成24年7月17日)
小椋真護は第147回直木賞の受賞連絡を受け、記者会見の会場である東京會舘に向かう。
東京會舘は、かつて十代の自分が「直木賞の時に帰ってくる」と誓った場所であり、作家として生きていくことを決意した場所だった。
こちらも号泣必至の一篇。
そしていよいよ、この長い上下巻の種明かしというか、構造が露になってくる。
第147回直木賞、そしてその前年の吉川英治文学新人賞は、実際に著者である辻村深月が受賞している。
小椋の半生はどこまでか分からないが、このキャラクターには著者自身が少なからず投影されていると見ていいだろう。
そして、東京會舘の本館建て替えのニュースを知った彼は、東京會舘を舞台に小説を書くことを決意する。
【第10章】また会う春まで(平成27年1月31日)
建て替え前の東京會舘最終営業日、最後の新郎新婦となる里田・中野家の披露宴を描いた一篇。
新婦優里は母・祖母と何代にも亘って東京會舘で挙式をしていた。
そしてラストに明かされる事実とは?
待ってた!
上巻の3章で結婚式を挙げた静子さんがどうなったか、ずーっと気になってた。
なんと、静子さんは優里のひいおばあちゃんという……。
当時、手を握り力強い言葉をかけてくれた三代目遠藤波津子のエピソードを、今のハツコエンドウ美容室のスタッフたちが驚きをもって聞くのだ……。
【新章】おかえりなさい、東京會舘(平成31年1月8日)
『東京會舘とわたし』を上梓した小椋真護のその後が描かれるエピローグ。
10章まででも充分感慨深いのだが、この文庫版刊行にあたり加筆された新章でこの小説の“作中作”が完成する。
そして著者による謝辞と、巻末の解説まで読むと、作中で出てくる『東京會舘とわたし』が本当にこの小説そのものであると実感する。
もう、とにかく構想が素晴らしいの一言。
そして綿密な下調べと取材に裏打ちされた、歴史小説といっても過言ではない物語であった。
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おもしろかった!
クッキングスクールに通いたい。通おうかな。
レストランでお食事もしてみたいし、お土産のお菓子も買ってみたい。
ほんとおもしろい良い本だった。
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東京會舘と人々の縁の物語・後半。
陰の主役は、シャンデリアの装飾かも。
なじんだものを慈しむ心を大切にしながら、次の作品を生み出すこと。
それが、歴史や伝統を作るということかも。
その新しい作品を慈しむ人が、また、生まれてくる。
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素敵な物語だ。
3.11を題材にするものには、どうしても心が動かされてしまう。ところが、この物語は決して後ろ向きではなく、未来へと向かう心温まるエピソードだ。
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やっぱり最高!「下」の現代版になって作家さんらしい心を震わせる話が連発銃のように放たれて、読むのが辛いくらいでした。久しぶりに、高級レストランの美味しいフルコースを頂いた満腹感です。