電子書籍
全米でも話題の物理学書
2019/12/23 12:56
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
・きわめて独創的。現代物理学が時間に関する私たちの理解を壊滅させていく様を紹介している。――「ニューヨーク・タイムズ」紙
・わかりやすく目を見開かせてくれるとともに、われわれの時間・空間・現実の見方を覆すような読書体験をもたらす。――「タイム」誌
・時間の本質へと向かう、実に面白くて深い旅。この作品を読む人すべての想像力をとらえて離さない詩情と魅力がある。――「フィナンシャル・タイムズ」紙
紙の本
秀逸な比喩と情熱に満ちた時間についての考察
2020/03/10 20:07
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去や未来については誰もが一度は考えたことがあるだろう。
タイムマシンや未来予言など、時間の流れは不可逆的で過去→現在→未来という流れであると誰もが信じて疑わない。
本作はその我々の時間についての常識をあっさりと覆してくれる。
しかも驚くべきことに難解な数式などを用いることなく、物理学に関してはド素人の私でも理解しやすい図や見事な比喩を用いてそれを成し遂げている。
時間は不変ではなく柔軟なものであるという話題からエントロピーについて派生していき、物理学がいかにして時間の流れの存在を否定しうるかを展開していく。
そこから時間が無い状態についての説明となり、最終的には私たちが感じている時間の流れについてに帰結していく。
個人的に最も感銘を受けた部分は、エントロピーの低い状態というものをカードで例えていた部分だ。
我々はエントロピーが低い状態から高い状態へと移行しているので過去と未来が別のものであると捉えている。
しかしながら、エントロピーが低いとみなしている状態(特別な状態)は我々が宇宙を近似的なぼんやりした見方で眺めているために起こりうる。
この様ないささか信じがたい事柄を著者は、物理学だけでなく数学や文学、詩などといった様々な学問を駆使して時間についての真相を明かしていく。
最先端の科学だからといって過去の物理学を無下にするのではなく、むしろ過去の偉人たちの考えを取り入れつつそれらを混合させることで新たな理論を構築する様は誰しもが見習うべき手法だと思った。
時間の新たなる真相を披露するだけで終わらず、その真相を知ったうえで我々が今後時間の流れにどう向き合うべきかという哲学の領域にまで本書は踏み込んでいく。
時間に恐れを抱くのではなく、貴重な時間を慈しみ自らの生を全うせよというポジティブなメッセージを本書は伝えてくれる。
また、学問に対するアプローチや理論や論理の根底には知識的欲求などの感情が必要不可欠であるということにも感銘を受けた。
紙の本
各国の有名紙も絶賛!!
2019/12/23 12:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
・スティーヴン・ホーキングの『ホーキング、宇宙を語る』以来、これほどみごとに物理学と哲学とを融合した著作はない。――「ガーディアン」紙
・日本のメディア(朝日新聞「売れてる本」、産経新聞「書評」、HONZ「おすすめ本レビュー」など)でも高評価!
紙の本
ムズかしい
2024/03/03 22:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なう - この投稿者のレビュー一覧を見る
物理学を大学で勉強していない人は多数いると思いますが、私もそのひとりであり、大変難しい本でした。
難しいながらもなんとなく読んでみてなんとなく自分なりに噛み砕いて理解に努めました。他にも物理や科学哲学の本を読んでからまた読んでみたいと思います。
最近嫌なことがあったので、時間が存在しないとしたらそれはいいことだなと思って読み始めたものの、物理学的には時間は存在しないが、人間の内側の意識としては時間が存在する…といったふうで物理学から哲学的なところまでさらえて楽しい反面、人間として生きているかぎり時間は存在するという感じかなと少し悲しくなりました。
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『時間は存在しない』という煽り気味のタイトルの本書は、最新物理学を解説したもので、とても売れなそうな内容ではないのだが、世界的ベストセラーとの謳い文句や前著『すごい物理学講義』などの影響でこの手の本としては日本でも異例の売上だそうだ。原題は”L'ordine del tempo” イタリア語で「時間の順序」である。この原題は、ギリシアの哲学者であるアナクシマンドロスの言葉から取ったものであり、本の内容にもリンクをしている。その観点では著者の意図を超えていじりすぎの邦題ではあるが、確かに『時間は存在しない』の方がある意味で中身を象徴しているし、もちろん読者の琴線に触れやすく、これはありかと思う。一方で、「時間」「存在」と言えばもうそれはハイデガーの『存在と時間』になるだろう。言ってしまえば、この本は時間とは何かという昔からの哲学の難題を、先端物理学の知見から解明しようというのだから、そこまで言ってしまってもいいのかもしれない。このタイトルを付けた人がどこまで意識をしたのかはわからないが、業界にいる人であれば、そこはあえて付けたと信じたい。
そう、著者は、量子重力理論を扱う物理学者で、ループ量子論と呼ぶいわゆる統一理論の研究を進めている。この理論は、超ひも理論に対抗する理論で、何も証明されていないが、世界について根本的な何かを見つけようとして一線級の頭脳と熱意を注ぎ込んで研究されている領域である。時空の中に多次元の超ひもがあって素粒子や力の性質を説明するというこじつけ感のある超ひもとは異なり、ループと呼ぶものが、シンプルに量子化された時空を生み出す源となるというものである。
「本質だけが残された世界は美しくも不毛で、曇りなくも薄気味悪く輝いている。わたしが取り組んでいる量子重力理論と呼ばれる物理学は、この極端で美しい風景、時間のない世界を理解し、筋の通った意味を与えようとする試みなのだ」
本書は、著者のこの立場を数式を使うことなく一般の読者に伝えようとするものだ。正確に言うと、おそらく伝えることは意図しておらず、感じてもらうことを願ったものだ。
本の構成としては、第一部「時間の崩壊」では現代物理学でわかった事実をもとにわれわれが感じている流れる時間という概念が実は正しいものではないことを示す。そして、続く第二部「時間のない世界」では、その結果時間という概念が成立しない世界とはどういう世界であるかを説明する。最後の第三部「時間の源へ」で、改めてわれわれの慣れ親しんだ「時間」がどのようにして眼前に立ち上るのかを説明する。そういった意味で、『時間は存在しない』というタイトルは正確ではなく、正しくは、失われた時間を再び再発見し取り戻すための物語と言うことができる。
時間については、現代物理学のほぼすべての理論では、ニュートンの力学においても、マックスウェルの電磁気学においても、量子力学においても、過去と未来が区別されないことから、なぜ時間が過去から未来に「流れる」のかの必然性は説明されない。さらに、アインシュタインの相対性理論においては、時間の流れる速度や「今」の同時性も異なる時空では成立しないことが示されている。相対性理論が時間の概念に与えた影響は大きく、もはや一様に流れる唯一無二の時間があるというような素朴な概念は成り立たない。また、量子力学によって明らかになったプランク時間に制限される非連続性をどのように捉えればよいのかも課題として残された。
「時間や空間そのものが、時間や空間のことなど知りもしない量子力学の近似なのだ。存在するのは、出来事と関係だけ。これが、基本的な物理学における時間のない世界なのである」
となれば、われわれにとって流れる時間とはどういうものでありうるのだろうか。そこで、基本的な物理法則の中で、唯一熱力学だけが時間の流れをその中に内包する物理法則であることが意味を持つことになる。熱力学第二法則であるエントロピー増大の法則だけが過去から未来に流れる時間を必要としているのだ。著者自らもっとも難しいという第三部では、エントロピー増大の法則から時間の流れが生み出される様子を描写する。
「時間のない世界にはそれでも何かがあって、わたしたちの慣れ親しんだ時間 - 順序があって、未来が過去と異なり、なめらかに流れる時間 - を生み出しているはずだ。私たちにとっての時間が、何らかの形でわたしたちのまわりに生まれているはずなのだ。少なくともわたしたちのスケールにおいて、わたしたちのために」
著者は、エントロピーの増大により時間の流れが生まれるということから、われわれにとって流れる時間の源はわれわれが世界について不正確な情報しか持っていないことから生じると説明する。われわれにとって世界の像がぼやけているがゆえに、われわれの世界で時間が流れるのである。
「基本的な相対論的物理学では、先験的に時間の役割を演じる変数は皆無で、マクロな状態と時間の進展の関係をひっくり返すことができる。時間の進展が状態を決めるのではなく、状態、つまりぼやけが時間を決めるのだ」
そしてもうひとつ重要なことは、過去にエントロピーが低かったという事実から、「過去と未来の違いにとってきわめて重要で、至る所にある事実 - それは、過去が現在のなかに痕跡を残す」ということが生まれるのだ。
また、時間の順序性の起源として、もうひとつ量子の関係依存性に言及する。
「おそらく相互作用の結果がその順序に左右されるという事実こそが、この世界における時間の順序の一つの根っこなのだろう。コンヌが提唱するこの魅力的な着想によると、基本的な量子遷移における時間の最初の萌芽は、これらの相互作用が(部分的に)自然に順序付けられているという事実のなかに潜んでいる」
著者の結論はこうだ。
「マクロな状態によって定められる時間と、量子の非可換性によって定められる時間は、同じ現象の別の側面なのだ。
思うにこの熱的にして量子的な時間こそが、この現実の宇宙 - 根本的なレベルでは時間変数が存在しない宇宙ー でわたしたちが「時間」と呼ぶ変数なのだ」
「物理学における「時間」は結局のところ、わたしたちがこの世界について無知であることの表れ」だという。そして、こうつなげる「時とは、無知なり」と。
著者は自らの提唱するループ量子重力理論について、「この理論がこの世界を正しく記述しているとい��確信があるのかと問われると、わたしにも断言できない」という。ただし、量子力学が明らかにした物理変数の粒状性(量子性)と不確定性とすべては他のものとの関係に依存するという量子の性質と両立するような「時空の構造を考え得る首尾一貫した完璧な方法」は今のところこのループ量子重力理論しかないと断言する。時間は、さまざまな近似に由来する多様な性質を持つ、複雑で重層的な概念であり、「ループ量子」という新しい概念から導き出されるものなのだ。われわれの前に立ち上る流れる時間は、われわれが本質的に世界に対して「無知」であるがゆえに生まれるものなのだ。
ループ量子重力理論がどのようなもので、将来的に素粒子の大統一理論のような形で物理学の世界において科学的パラダイムのひとつとして受け入れられるものかはわからない。その可能性はさほど大きくはないようにも思うが、そのことを判断する能力ももちろん資格もない。それでも、ここで語られる時間についての論考はある意味面白い。何か具体的な理論が理解できた、というものではないが、時空の相対性と量子性とそこからおそらくは認識するべきであろう帰結がぼんやりとわかったような気がした。ぼんやりとしたものなので、「時間」の経過によってそれは失われてしまうものかもしれないけれども(笑。
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題名はシンプルだが、内容はものすごく、深い。
時間とは、常に変化することなく進んでいくものだと思いがちだ。
物理学も、ニュートンの考える、他の影響を全く受けることなく、何もしなくても進む「固定された時間」が存在することを前提に、進められていた。
しかし、どうもそうではないらしいことが、現代物理学において、わかってきた。
時間は、出来事の連続であり、起こっている間に時間の流れを"感じる"ことができる。
すなわち、私たちが考える「時間」とは、主観的な感覚を定量化したものなのだ。
この本では、現代物理学、特にアインシュタインが予想した一般相対性理論を起点に、やがて、プラトン、アリストテレスなどの哲学の分野にまで話が展開されていく。
無学な私でも、わかりやすく説明されていて、また、日本語訳もかなりこなれていて、読みやすい。
ただ、内容としてはかなり難しい上に、実感がわかない。これはおそらく、使っている言語が、過去・現在・未来の時間軸に縛られているからのように思える。
最後に、話は人生観へと繋がる。
自分が信じているもの、特に自分の価値観に関わるようなものが崩れたとき、何を軸に生きていけばよいのか。
思うに、時間という基準があるからこそ安心できていたのだ。
足場を失った今、我々はどうすればよいのだろうかー。
いや、そもそも、最初から足場なんてないのかもしれない。
タイトルに惹かれるものがあるならば、間違いなく読んでみることをお勧めする一冊。
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著者は量子重力理論のループ量子重力理論の第一人者とのこと。
これだけで「ああ、むずかしそう」と思えてしまう。
ところが読んでみると、意外とむずかしくはなくてスラスラと入ってくる。
「ほほぅ、そういうことなのか、なるほどなるほど」って感じ。
そして読み終わって一息いれると、何が書いてあったのかをほとんど覚えていない。
僕がこの手の本を読むときはいつもこんな感じだ。
読んでいる最中は自分が非常に利口になったように錯覚する。
そして本のページを閉じると、途端に記憶力や理解力に難がある自分の脳の現状にぶち当たる。
だったら「読むだけ無駄じゃん」と思われるかもしれない。
でもそうじゃないんだ。
「わかっちゃいるけどやめられない!」
これこそが、この手の本を読む時の醍醐味なんだ。
少なくても僕にとっては(汗)。
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興味があったので読んでみた。
仕事疲れの頭で読んだせいか、全然頭に入ってこない。
2ページ読むと寝落ちの繰り返し。
うーん、一旦断念して、長期休暇で時間が確保できる時にじっくりと読み直すことにしよう。
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難解な数式は一切出てこないが時間とは何かを熱力学、量子物理学などにより解き明かす。受け入れがたいタイトルだが納得である。
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時間は外から与えられた絶対的なものだと認識していた。カレンダーや時計で計測でき、客観的なものとして自分の生活を管理しているように思っていた。本書は、そんな常識に対して物理学の権威の著書が疑問を呈し、物理学および哲学の観点から時間の認識を考察している。
過去から未来にエントロピーが上がっていると思われるのは、我々が過去のエントロピーが低いという特殊な判断をしたからである。この意味で、過去は物理学では存在せず、現在も定義できない。一瞬は流れ続けるので、我々は現在を泡のような存在で定義している。
特殊な判断で過去を作り、現在を定義したことで、時間という概念を我々は作った。過去から未来への時間の流れを記憶によって繋ぐ事で、人はアイデンティティを手に入れた。過去の出来事を記憶から思い出し、解釈をつけ、今の自分の思考を形成し、未来の選択肢を予想しているのだ。
時間は本来は存在しないし一様に流れるものでは無いが、時間は過去から未来への一方向に流れるというフィクションを人類は共有することで、個人のアイデンティティ、そして集団の意志を形成することに成功した。
物理学の観点だけでなく、哲学の観点からも時間について考察しており、とても面白かった
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「一般相対性理論」と「量子力学」は現代物理学の2つの大きな柱だ。
ところが困ったことに、この両者は互いに噛み合わない理論だということが分かってしまった。
ならば、「一般相対性理論」と「量子論」を融合させた理論(量子重力理論)はないかと考えるのは当然だ。
現在最有力視されている理論は「超ひも理論」だが「ループ量子重力理論」という有力理論もある。
本書の著者(カルロ・ロヴェッリ)は「ループ量子重力理論」に注力している理論物理学者だ。
「超ひも理論」は物理の根本原理として「時間」と「空間」があることを前提としている。
対して、「ループ量子重力理論」では、何かほかの根本原理(ループ?)から「時間」と「空間」が生じたとする。
つまり「時間は存在しない」という仮説が、「ループ量子重力理論」の根本原理となっている。
こういうわけで、本書は物理学的に「時間は存在しない」ということを解説した本ではなく「ループ量子重力理論」の概念を紹介した本だ。
子どもの頃よく「無とは何か?」と考えていた。(真空とか宇宙のはてとか)
現代物理学では「無」という状態が存在し、「無」から「有」という状態に遷移したりする。
ビックバンはそうして起こったと説明されている。よくわからないが、そういうもんかと無理やり納得している。
「ループ量子重力理論」では、「ループ」という要素が集まることで「時間」と「空間」が生まれるらしい。
ならば宇宙の歴史を逆にたどり最後の1つの「ループ」がなくなったらどうなるか?
本当に時間も空間も何もない、宇宙の仕組みを示す方程式もない、"真の無"になるという恐ろしい結果になる。
「ループ量子重力理論」のアイデアはとても斬新でおもしろいが"真の無"は容認できない。
時間については昔から科学者、哲学者、文学者に限らずあらゆる人達が考察してきた。
時間は次元の一つであり、我々は4次元世界に住んでいると言われれば信じてきた。
時間って毎日普通に感じていて物理的にあると思い込んでいる。
物理の超有名な法則 E=MC² の C って光速度のことだ。
1秒間に光が進む距離。ちゃんと時間が関係している。
時間を巡る微妙な議論に登場するのが「記憶」で、脳は過去の記憶を集め、それを使って絶えず未来を予測しようとする仕組みである。
自分に向かって石が飛んできた(過去の記憶)。このままでは大けがをする(未来の予測)。身を守るためによける(現在の行動)。
過去には戻れないので過去は存在しない。もしくは存在していたが消滅した。記録に残すことができるのだから過去はあった。
未来はまだ観察できていないので存在しない。
いつでも存在していて直接感じることができるのは(過去の記憶を含む)今だけだ。
私の結論:我々が生きている宇宙には「時間は存在する!」
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時間は存在しない
著作者:カルロ・ロヴェッリ
極めて独創的で現代物理学が時間に関する私たちの理解を壊滅させていく様を紹介してます。
タイムライン
https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
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「すごい物理学講義」でカルロ・ロベッリにハマりすぐさま「時間は存在しない」読みました。ほとんど数式の登場しない物理学の本です。唯一の例外はエントロピー増大の法則「ΔS≧0」のみ。この式は人間が時間を捉える感覚のベースになるものであり、カルノーからのクラウジウス、からのボルツマン、は前著ではあまり触れられなかった軸です。数式の登場しない物理学の本は、人間が何を感じて何を考えて来たかという歴史になり、それは哲学であり、また著者はそれを非常に詩的に表現しています。第11章でアウグスティヌス、カント、フッサール、ハイデガーを辿り、プルーストの『失われた時を求めて』にたどり着くのはこの本の領域の広さの証明です。広範、というだけでなく著者のバックボーンである「ループ量子力学」まで断絶なく繋がっているので最先端であるのです。結果的に「宇宙」と「人間」についての物語なので、本書では使われていませんが「人間性原理」に近いところにあるのでは、という読後感でした。ここらへんが微妙にモヤモヤも残っているので、もう一度読みたい気もしますが、いや、次の『世界は「関係」で出来ている』もすぐ読みたい!どっちだ?
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ループ量子重力理論のリーダーである、カルロ・ロヴェッリ博士の「時間は存在しない」を読了しました。
最先端の物理学が解き明かす時間の本質。
「この短い人生はさまざまな感情の間断ない叫びにほかならない。感情の叫び、それは美しく輝いている。あるときは苦痛の叫びとなり、あるときは歌となり。そして歌は、時間の認識なのだ。それが、時間だ。」
最後にこう結ぶ著者の生への歓喜。我々のいるのは、エントロピーが増大する極めて特別な世界。極めて狭小な窓からそれを認知した人間の脳に残った過去という痕跡。人間が、記憶を通じて時間を認識するから、四苦八苦が生まれる。という悟り切った結論に止まらないのが、本書の素晴らしいところだと感じ入りました。
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原書のタイトルはアナクシマンドロスの「時間の順序にしたがって」。
ハイデガーとライヘンバッハが時間に関する考察を進めたものの、二人の時間のイメージはまるで異質なものになった。
その理由を「二人は別々の問題に取り組んでいたからだ。一人は、目をこらせばこらすほどぼろぼろであることが明らかになっていくこの世界の実際の時間の構造を調べ、もう一人は、わたしたちにとって、つまりわたしたちの「世界内存在」という具体的な感覚にとって、時間の構造がどのような基本的特徴を持つのかを調べていたのである。」(197頁)という指摘が面白い。
アナクシマンドロスはハイデガーも触れており、これにつては國分功一郎氏の「原子力時代の哲学」で比較的詳しく触れられていたので、この本の著者ロヴェッリのハイデガー評も聞きたかった。