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連作とはいえ短編集なので、スケールは小ぶりかな…と思いきや、良い意味で予想を裏切られた。
勘のいい人なら、薄々気づきながらの読書になるだろうが、それでも最後にやってくるほろ苦さは、読み通す価値があると思う。
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エラリー・クイン「Yの悲劇」、夏木静子「Wの悲劇」と来れば「Iの悲劇」も本格長編推理小説と思いきや、米澤穂信らしい(って言っても「本と鍵の季節」しか読んでいないのですが…)短編を重ねて、最終章に秘密を隠しておく、本鍵スタイル。目次の段階で序章 Iの悲劇で終章 Iの喜劇になっていることをオープンにしているので全体構成がポイントなんだな、と最初から匂わせています。もちろん、本としての構築もそうなのですが、それ以上に「本と鍵の季節」からの連続感は、主人公っていうか語り部の饒舌なモノローグに感じます。前著は、自意識過剰系高校生の男子のつぶやきに乗って進行していきましたが、今回は、超真面目気を使いすぎ公務員いじけ独り言が主旋律です。「甦り課」の主人公の痛々しい気働きと各章のIターン住民である登場人物の痛いキャラ設定が相乗して、悲劇といっても、もはや戯画化された悲劇の数々。なんか変、がじわじわくる奇妙な味を楽しみながらエピソードを積み重ねているうちに、その変な話が、なんか突然リアルに思えてしまいました。蓑石地区って日本の現在のミニチュアなのでは。社会とうまくコミュニケーションできない人々と仕事のための仕事に翻弄されるお役所の人。そう思うとこの悲劇って、本当に悲劇なような気がしてきたのです。そしてIの喜劇へ。一生懸命真面目くんをヘイスティングスとしてリクルーティングする陰に隠れているポアロ役の存在がやっぱりな。でもイノセントだったからこそのヘイスティングなのでは?と思うといいコンビにはなれないような予感。喜劇は悲劇へ、悲劇は喜劇な、なんともトリッキーなお話でした。
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Iターンプロジェクトの理想と現実を見事に表現している。
役所の登場人物や移住者達が巧く描かれており思わず入り込んでしまった。
このままプロジェクトが失敗に終わると思っていたら叙述トリックだったとは驚いてしまった。
刑事ものやミステリーとは一味違った作品であり印象に残る一冊だった。
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結局、最後の1行が書きたかっただけなのではないか、という疑念はぬぐえません。
Iターンをテーマにした連作短編集です。地方都市で住民のいなくなった集落に、再び人を呼び戻そうと、Iターン希望者を呼び込む物語。ミステリ成分はじゃっかん薄めです。テーマが重い分、時折ユーモアが混ざるとはいえ、全体的に暗いトーンです。個人的には「深い沼」が印象的でした。
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Iの悲劇のIはIターンの事である。知事がある提案をした事から始まっているが、中々人々は街に定着しない。最後にその理由がわかった。地方ならではの問題点であった。
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連作短編集だったので長編に比べて伏線を忘れにくく助かった。
タイトルにそれぞれ対義語を使っているのがおもしろい。
さて、最後に俺たちはグルだったと言われたわけだが、そんな組織ぐるみの陰謀なら万願寺君も最初から仲間に入れたげてよ! 真面目に新人教育して損したね。
で、20代も終わろうかという歳の万願寺君は、この先転属願を出すのか課長の元に残るのかそれとも役人を辞めるのか…しっかり先行きを決めてから終わってほしかった。迷うわけでもなく風景を眺めて終わりとは……。
仕掛けたというか種をまいたと言っていたけど、子供に防空壕を教えたのはどういう意図で? 下手したら死んでたかもしれない。それを想定していながら、その選択肢をとった最低すぎる課長。
まさか観山まで噛んでるとは思っていなかった。それぞれ個人で動いているのかと。結局トータル2年で済んだけど、何年までなら続けるつもりだったのか気になるところ。
ミステリについて。
【軽い雨】と【黒い網】は、そんなうまくいくか? とも、偶然うまくいったんだろう、とも思わせられる。上手い。
【白い仏】あの状況なら気圧のせいだとすぐわかりそうものなのに、頭のいい万願寺君が今回に限って鈍かった。でも最終章になって急に、俺知ってたもんねみたいに語るのでビックリ。でも観山が本当は何者か知らないけど「反対しました」というからには思いついたのは課長の方か、でも市職員が思いつくトリックにしては専門的……どこかで実験したことがあるとか貴志祐介の作品を読んでいたとか?
すぐ仏の本物を見つけちゃったのも都合がいい感じがした。
若田さん、小顔の美形という設定が活かせてなかったかな。それより20代の男が“美男”って遣うかな……
【浅い池】笑ってしまいそうなオチだけど、鯉に感情移入してしまいとても笑えなかった。牧野のアホ~!
【深い沼】万願寺君の「人はどこに生きてもいい~それを具体的に保証するのが俺の仕事だ」というセリフが格好よかった。「人生を賭けるに値する仕事」とか。役所の仕事に誇りを持っているのがすごく伝わって。
なのに、その逆をしてるのが“守護神”と呼ばれる西野課長……
彼も観山もやるべきことをやった。動機は役人の鏡というべきものだが、よくやった西野、大したもんだ観山、とは思えない。人を個ではなく集団で天秤にかけるのであればAIがやるのと変わらない気がする。そもそも役所は個人の都合が通らないところであるし、合理性を重視するのなら人間性など邪魔なだけなのかも。AIが一番向いているのは役所かもね。
滝山さん、あの事件のあと居続けていたのにその後出番なく退場していた。寂しい。
丸山さんは1ページほど登場、好川さんご夫妻においてはセリフすらなかったような? 全員のエピソードを読んでみたかった。
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ん〜・・・予想外の結末でしたが、今の時代に現実的な終わり方でした。
ただ、内容はさほどのめり込む程ではなかった。
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合併し、住民がいなくなった集落、簑石。
最後の住民が移住して、六年前に滅びた村に人を呼び戻すため、Iターン支援プロジェクトが実施されることになりました。
しかしせっかく移住してきた人は、事件が起こるたびに、一人また一人と、村を出て行ってしまいます。
何とか食い止めようと公務員らしい公務員の万願寺が奮闘します。
連作短編で、それぞれ読みごたえもありますが、全体を通すと、また新たなストーリーが見えてきます。
これは、日本全国にある、難しい問題でもあります。
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住民がいなくなった南はかま市蓑石に新たに住民を誘致し、蘇らせる「蘇り課」に配属された万願寺。住民の生活を支える中で起きる奇妙な事件と、それに対処するミステリー。いくつかの章に分けられ、短編が続くが、どれも最後の結末に繋がっている。
一つ一つの事件もさることながら、最後の結末の後味が悪い。米澤穂信さんらしいといえばらしい一冊。
それぞれの事件で楔のように散りばめられた絶妙な違和感が、最後の最後で真相究明に繋がっていくのは見事としか言いようがない。
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短編集で終わっていても四つ星と思っていたが、まさかこんな結末があるとは。しかも伏線の貼り方が絶妙でラスト数ページで全て回収してるのに脱帽。シリーズ化は難しい題材だがこのパターンでの次回作に期待!
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過疎化で無人になった村を復活させるプロジェクトにまつわる連作短編集。都会からIターンで新しい住民を呼び込み、地域を再生しようという市長。その施策を実行するのは市役所の「甦り課」の三人。出世が望みの主人公、さばけた後輩新人、やる気のない課長。それに対して癖のある移住者達。住民同士のトラブルや無理難題の注文…。主人公は解決に奔走するのですが…。地方行政に携わる公務員のままならなさがよく表現されています。登場人物も団体も架空のものなのにリアルに感じられるのは、似たようなことが全国で起きているから?そして衝撃のラストへ。
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これは面白い。私的には「満願」「王とサーカス」に匹敵する秀作だと思う。米澤氏らしいプロットと最後の寂寥感は他の追随を許さない。「深い沼」の兄弟の会話も秀逸。
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廃村と化した村を甦らせるプロジェクトに組ませられた市役所の3人の職員。中の1人の努力で順調に移住者は集まったが、彼らの間で大小様々な問題が起こる。それらを職員が何とか収めようと動き回る連作短編集。
犯人当ての様な謎解きの話もあったが、キレの良いミステリにはなっていなくて、今回は米澤さんらしくないなあと思って読んでいたら、最後にキッチリ帳尻を合わせられた。うーん。やはり油断が出来ない(^-^)。
全編に漂う不穏な空気も良かった。結果的にはこれも高水準な作品だった。
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Iターンで町興しする計画を地道に実行すると、限界集落に予算を喰われてしまう。
公務員として、人の心に寄り添って仕事をする主人公の葛藤が描かれている。
話自体は陳腐だが、これもありか?
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誰も住まなくなった限界集落「蓑石」に移住者を呼び込む市長肝入りのIターンプロジェクトが進む中、移住者にまつわる様々な事件が起こるという連作短編ミステリー。主人公は、Iターンプロジェクトを担当する南はかま市「甦り課」の出世を望む堅実な公務員・万願寺邦和。ほかの主要登場人物として、人当たりがよく、さばけた新人職員・観山遊香、常に定時退庁のやる気の薄い課長・西野秀嗣がいる。
オチの大筋の構造には途中で気付いたが、完全には読み解けず、最後に唸ることとなった。
限界集落をどうしていくべきか、Iターンは本当に進めるべきかといった「地方創生」をめぐる根源的な問いについて考えさせられる話だった。