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読んでる途中で感じる小さい違和感を、しっかりと回収する貫井徳郎らしい作品。
登場人物の人生を振り返るように綴られる、それぞれの人生に暗い影を落とすエピソード、そして心の底に溜まっている澱は、自分の中にもあると気付かされる。
全体的に地味で、やり切れないストーリーではあるが読後感は悪くなく、伊苅という寡黙な人物に引き付けられる。
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第4章まで読み終えた段階では、貫井氏の作品としては、やや物足りなさを感じていた。しかし、第5章を読み終え、伏線の回収の見事さにも感心したが、それ以上に、伊苅の生き方に強い感動を覚えた。一体、どれだけの人が伊苅のような生き方ができるだろうか。
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最後まで読まないとわからないが、最後まで読むと面白い。
現実でこういう人がいるのか!ってくらいの優しい人。
こういう人になれるのは、素晴らしいことだと思った。
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小さな田舎町で自分の家の壁に絵を描く伊苅。
しかも、その絵は幼い子供が描くような下手な絵。
どうしてそんな絵を描き続けるのか…
その理由が深い。
2022.4.20
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最初に提示されるちょっと不思議な現象。なにそれ?そんなことある?いったいどうしてなの?と感じる読者。そして、その読者を納得させるためだけにあの手この手で延々と語られる物語。如何に読者を納得させられるか、に挑戦した小説。
そんな印象。
貫井さんの巧みな語り口は素晴らしく、なんていうか、するすると読めてしまう。いつの間にか引き込まれ、感情移入してしまっている。今回もまんまと術中にはまってしまった。
流れに身を任せて読むのが良い。素直に感情移入するのが良い。そして行き着く先で、心に灯をともそう。
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なるほど
すべての謎が最後一気に解き明かされる爽快さは殺人事件がなくても味わえる。スカッとする読後感は最高だ。と言いたいのだが、主人公が背負う重さがそれを許さない。
非常にシンプルなストーリーだけに、重さが際立つ物語だった。
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自分でも意外なのだが、この作者、初読み。
北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた子供の落書きのような奇妙な絵が評判となり、その不思議な絵を描く伊苅という男に、ノンフィクションライターが取材を試みるのが話の始まり。
ノンフィクションライターの存在は話のひとつの切り口でしかなく、伊苅の実像はライターの取材とは全く別に三人称で語られる話で徐々に明らかになる。
第一章、伊苅が絵を描き始め、それが町に広がっていった経過が語られる。予断にとらわれたノンフィクションライターの思いとは全く異なる経緯で、そのすれ違い様におかしみあり。
ちょっと風変わりなお話という印象だったが、ここから話が進むに連れて重さが増す。
難病に侵された娘との闘病の記録、妻との馴れ初めと別れ、子供の頃の父母の姿と友に嫉妬する自分の姿。伊苅を今の姿にした過去が描かれる。
最終章、子会社の社員である澤谷と交友を深める話がどこに向かっているかが見当がつかなかったのだが、二章三章でさらりとスルーされた妻との関係の違和感がここでこんなに効いた結末なるとは恐れ入った。
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2021.04.18.読了
時間の無駄。
妻、梨絵子の人格形成やその母親についての設定があまりに安易でバカバカしい。
友人夫婦の生い立ち、死因、も取ってつけた様でいただけない。
まず、読み始めてすぐこれは面白い展開にはならないでしょ。。。と感じ、そこから読むのが軽い苦痛になった。ほんの少しの期待で最後まで読了することができたが、ここまでつまらないとはまさに時間の無駄。
そもそも、結末まで読んでみて、イカリが村の壁に下手くそな絵を描き続けた理由がよくわからない。
村の人々がイカリに絵を描くことを要求した意味も曖昧で決定力にかける。
貫井徳郎氏の作品は良いものも勿論たくさんあるが、時にガッカリする作品も多々ある
要注意
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Twitterで見かけて気になって予約した図書館本。1ページ目から引き込まれてぐいぐい読み進めた。予想以上に面白かった!!
家の壁に絵を描く男の人生を取材側から追う話。全五章からなる男の半生がとにかく波瀾万丈?でページを捲る手が止まらなかった。
以下ネタバレ。
笑里ちゃんの話して、伊刈と梨絵子で温度差があるなーと思い、なおかついくら回復したとはいえ、再発の恐れがある状態の我が子を置いて家を出る母親ってなんだよってモヤモヤしてたら、ラストでストンと納得できた。
笑里ちゃんは伊刈の友人の子だったんだね。だから付き添いも離婚後の引き取りも全て伊刈だったんだ。
読み返したらほんま、梨絵子の一歩引いた態度はまさにそれで、なんかもうすごいなって。伊刈は赤ちゃん時代から笑里を見てるから我が子みたいなもんやけど梨絵子にしたらたまに見かけた彼氏の友達の子を養子にして一緒に暮らす……その状況でその子が小児がんって、うん、ああいう対応になるのもわからんでもない。
他にもいろいろあるけど、とりあえずラストで泣いた。うわぁぁぁ!ってなったわ。
貫井徳郎さん、他も読んでみよう。
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孤独な男の半生と隠された真実が、ひとりのノンフィクションライターの好奇心から少しづつ明らかにされていく…
こんな風に、扉が次々と開けられていくような物語をこれまで読んだことがない。
そして最後に、どうして彼が上手ではない絵を描き続けたのか、その絵に魅力される人が増えていったのかという秘密が明かされた。
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貫井徳郎の作品を初めて読んでからもう20年は経つだろうか。毎回斬新なミステリ、仕掛け的な文章構成に驚かされる。
一人の人物をここまで深く描き、なおかつ語られない部分を想像力で膨らませてくれる、素晴らしい作品だった。
読後、放心状態になること間違いなし。
逆に下手な映像化だけはやめてほしい。
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伊苅がどうして、小さな集落の家屋に稚拙で奇妙な絵を描き続けたのか、どうして金銭の見返りも求めないのか、どうしてその稚拙な絵が多くの人の胸を打つのか、言葉に表すとなんだか嘘っぽくなるけれど、その根っこにある大きな愛情と悲しみが胸を打った。
各章に渡ってこれまでの伊苅の歩みや選択、彼を取り巻く人々が時系列バラバラに描かれるのだけど、そのちょっとした違和感がどんどん後の章で明らかになり、深いヒューマンドラマとミステリが組み合わさったような読みごごちだった。
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切ない。読んでいて辛かった。
人って色々抱えてるのかな。
人間の価値について久々に感がさせられた。
才能の有無ではなく何をしたのか。
とても深い悲しみを抱えて、ひたすらヘタクソな絵を描く伊刈が胸に刺さる。
家族のことを改めて大切にしようと思った。
ありがとう。
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凄く良かった。
章が進む度に伏線が回収され、最後に全てが腑に落ちる。人間の感情のあらゆる部分が繊細かつ丁寧に描かれていて、主人公の人柄がとても愛おしく感じた。
⭐︎を5つ付けたかったが、あまりにも悲しく辛い主人公の半生だったので4つにした。
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集落の壁に奇抜な絵を描き続ける男の話。
章を読み進めるたびに主人公が壁に絵を描く謎が解明されていくので夢中で読んでしまった。
特に「人と人との間にわだかまりを作るのは才能の有無ではなく、劣等感」という箇所があるのだが、伊刈が人生において抱えている罪悪感のかたまりを表していると思う。
病気や離婚など暗い話ではあるが、読み終わりはなぜか心に温かみを感じる話。