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紙の本
物足りない十三湊安藤氏
2020/02/11 21:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
安部龍太郎が著わす太平記三部作の最新作である。前の二冊が佐々木道誉、楠木正成、前作が新田義貞を主人公としたものであった。三部作の最後の本書では、太平記ということで、鎌倉後期の津軽十三湊を舞台としている。とはいえ、当時のこの地に盤踞していた安藤一族に関わる物語である。
津軽では鎌倉幕府から蝦夷管領職がこの地方を仕切っていた。津軽、出羽の北部、北海道の南部である。この管領職に安藤氏が就いており、周辺の集落の長をその息子、弟、アイヌなどに任されていた。陸奥の国々が朝廷との戦いに疲弊し、最後は源頼朝に奥州藤原氏が滅ぼされてしまった時代である。
安藤氏は大陸、都との交易で豊かな暮らしぶりであったが、幕府の収奪などに苦しみ、朝廷、この場合は護良親王、北畠親房などの大物が登場し、討幕共闘を誘ってくる。管領職の安藤氏もそれに乗るのだが、親王や親房はなかなか動かない。主人公は安藤氏管領の息子であるが、主人公の描き方にやや難がある。新田義貞、佐々木道誉、楠木正成などの太平記でお馴染みの武将達とは異なり、線が細く、強力なリーダーシップで軍や民を率いるという描き方をしていない。
加えて、都の親王や公家もとうとう動かず、この津軽、出羽の領民をどうすべきかがよく分からないままであった。陸奥については安倍貞任、宗任などの安倍氏、あるいは清原氏などは朝廷との戦いで苦杯を舐め、黄金楽土は夢となってしまった。しかし、そのさらに北に住む蝦夷等の活動はあまり知られていない。蝦夷の活動が知られていないだけでなく、幕府の統制がどの程度及んでいたかもよく分からない。
時期的には執権北条高時の時代なので、幕府崩壊も近かったはずで、親王や公家が動かなかったというのも納得できない。力量のある主人公がいなかったのか、やや期待が外れてしまった。太平記にこだわり過ぎて、管領職安藤氏の挙動自体が疎かになってしまったような気がするのだが。
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