紙の本
荷風についての賛否
2020/01/28 20:35
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
永井荷風について、多くの文人や芸者、演劇人などが文章を寄せている。『漱石追想』や『芥川追想』がどうであったか覚えていないが、この本では荷風生前に書かれたものもいくつかある。
個人的に印象に残ったのは、谷崎潤一郎の「パンの会」でのはしゃぎっぷりが意外だった。それから、石川淳による晩年の荷風へのひどい言いようと次のページから始まる長谷川四郎が冒頭で「死人については、よきことのみを語れ」と書いている、この接続に笑ってしまった。
紙の本
多田蔵人先生!
2020/01/26 18:22
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投稿者:るい - この投稿者のレビュー一覧を見る
多田先生に三島由紀夫の作品について、お話を伺ったことがあります!
この本の事を他の先生に教えていただき、購入しました!
森 於菟さんの「永井荷風さんと父」から、読みました!
恥ずかしながら、永井荷風をよんでいない私!
この本から、永井荷風を知り、よんでみたいと思います!
演劇が好きな私は、久保田万太郎、松山省三、の文を読むことも楽しみ!
この本から、この本に文のある作家の方の本も読みたいと思います!
多田先生のお話を伺い、作中にある色から作品を紐解く読み方を教えていただきました!
多くの方に、多田先生の「荷風追想」を読んでいただきたいです!
紙の本
戦国武将、永井直勝の子孫だそうな
2022/06/06 03:05
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波文庫の「文豪追想物」の
四作目は永井荷風です。
谷崎潤一郎、幸田 文、
川端康成、石川 淳、
そして三島由紀夫ら59人による
回相談から立ち上る荷風の面影に、
酔いしれてみては。
ところで、「露伴追想」は企画されて
いるのでしょうか。
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時代・場所を異にし、近くから遠くから荷風について語る様々な回想を編んだ本書を読んで、荷風に対して持っていたイメージが随分変わった。あまり感心が出来ずに来た小説を、改めてもう一度読んでみようと思った次第である。
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他人から見た荷風先生というものがメチャクチャ沢山詰まってる。推し作家が荷風先生な俺にとってはこれ以上ない本。やっぱり敗荷落日は文のインパクトが強すぎる(好き)
容姿言及に重きを置いて読むとみんな「背の高い痩せぎすな面長の紳士」って感じの事を言っててなるほど……になった
それから森於菟氏の文の中に祖母から聞いた上田敏の荷風評「一番ハイカラな紳士と下町のいきな若旦那と一緒にしたような人です」というのがあって、それが妙にしっくりハマった
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荷風に近かった人遠かった人、明治大正昭和それぞれの時代に、荷風とすれ違った人達の回想59篇を収録。
こうしていろんな人が文章(メディア)に書き残すことで「荷風」というキャラクターのイメージが、実際の人物と切り離されて確立されていく様が垣間見られるようで、読めば読む程に「荷風」の実体が曖昧になっていくという、面白い読書体験でした。
これだけ沢山の荷風の事に触れている随筆を集めているのは流石ですし、巻末の注解と執筆者紹介がとても助かる(作家以外に舞踊家や学者に経営者など、知らない名前の人も多くて…)。そして柱のところに個々の随筆タイトルと一緒に、著者名をカッコ書きで入れてあるのがとても便利でした。(読んでる最中、「あれ、この文章書いてるの誰だっけ?」って時に目次に戻らなくて良い!)こういう編集での地味な心配りが素晴らしいです。
編者の多田さんによる巻末解説も、もちろん充実。
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生前の永井荷風に接した人びと59名が書いた回想録アンソロジー。荷風死去直後の雑誌の特集号に掲載されたものが多いようだ。
戦後の荷風は文学的には一気にかつてのみずみずしさを失って枯れた世界になっていくが、1959(昭和34)年、79まで長生きし、相変わらずの一人住まいの居宅中胃潰瘍から来る吐血で窒息死した。独居老人の孤独死である。女中さんが朝来たら、床にうつぶせになって冷たくなっていたそうだ。
本書を読んで驚いたのだが、当時この荷風死去のニュースがテレビで流れた時、なんと、その死体が転がっている室内の情景が映し出されたようなのだ。当時は死者へのマナーというものが、まだテレビ界に根付いていなかったのか。今ではあり得ない。
文壇から離れ隠棲を決め込んだ荷風は、あれだけ世間に批判的なことを書いていただけあって実際に「気難しい奇人」と思われていたらしい。本書では59名の筆者がそれぞれのコンテクストにおいて多角的に荷風の人間像を照らし出し、互いにイメージが食い違うようなエピソードもあるのだが、とても興味深く、面白い。特に私は荷風の日記『断腸亭日乗』を読んだばかりなので、そこに登場してきた人物らが本書にも姿を現しているのが実に楽しい。
中でも驚いたのは、関根歌さんの寄稿。この「お歌」さんは、芸者をしていたのを荷風が落籍して住居を与えて一時期囲っていた妾なのだが、1931(昭和6)年の日記によると彼女は発狂して入院してしまう。まだ若いのにかわいそうに、と荷風も胸を痛めるのだが、この関根歌さんの文章を読むとこれは実は「仮病」なのである。荷風があまりにも浮気っぽくてひどいので彼女は仕返ししようと思い、医者や周囲の全ての人を欺き、病気のフリをしただけだというのだ。荷風の『日乗』のその部分を読んで「もの凄くドラマチックな出来事だな」と感銘を受けていたので、この種明かしを読んで天地がひっくり返るようだった。
一見淋しそうなようでいて、孤独を極めているようでいて、その都度荷風はわずかながら人びととつながっていたように思える。一見無残な死に様のように見えるかもしれないが、独りで気ままに生き続けた荷風にとって、このような死も本望であったかもしれない。53にもなっていよいよ身体が老いてきた私にとっても、この荷風の枯れてゆく「老い」のイメージは痛切である。