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「ファーストラヴ」という今では使い古されて心に何も残してはくれないような言葉を、読後改めて目にするとゾワリと身の毛がよだつ。これほどまでにぴったりなタイトルはないと思った。
「今」は今の中だけじゃなく過去の中にもある。
大人になって、何かのきっかけでふと気付くことって誰にでもあるんじゃないだろうか。あのときのあの言葉、あの現象。その意味がわかってしまったときの気持ち悪い感覚。
当時は押し黙ることしかできなくて、気付いたとしても誰にも言えなくて、そんな汚い泥水のような思いをみんなひた隠しにしているのだ。
この本は、そんな過去の記憶を呼び覚まし、訴えかけてくる。「本当はこうなのかもしれない」と気付かせてくる。意図してもしなくても、そういった意味で読み進めていくのがたまらなくしんどい。
最後、たっぷりとページ数を使って語られていた彼女の過去は、わずかな期間で急速に収束していくのだが、それがこの物語のすべてを表しているように思えた。本人にとっては大きな傷でも、誰かにとっては何てこともない。ばーか、そんなことで傷ついてるんじゃないよ、って言われそうな。そこがすごくリアルに感じてひりついた。
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タイトルの付け方が秀逸。島本理生さんでタイトルが「ファーストラヴ」とくれば当然のように恋愛小説だろう(少なくとも恋愛要素がキーになるストーリーなのだろう)と思って読み始めたが、これは家族の物語だった。子どもの幼少期の生育環境がその後の人生や価値観に与える影響の大きさについて考えさせられる。
語り手の主人公と環菜の半生がシンクロした深みのあるストーリー展開で、4,5時間で一気読み。特に裁判のシーンはおそらく相当下調べ(裁判傍聴など含め)されたのだろうなあと思わされる臨場感で、読み始めたら止まらず。島本理生さんの小説は15年ほど前からよく拝読しているが、こんなに子どもをリアルに描かれるようになったのは、やはりご自身が母になられたからなのかな。
映画化にあたり北川景子さんが長かった髪をばっさりカットされたというニュースを聞いてすごく気合が入ってるんだなと当時は思ったが、本を読んで彼女のショートカットという要素は外せないアイテムだとわかった。映像化が楽しみ。
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どんな人間にも意志と権利がある、と言った環菜。
こんなことはおかしいと言っていいんだと世の中に訴えていきたい、と言った由紀。
程度や種類は違えど、幼い環境内でおかしいことをおかしいとさえ思えない子供たちがたくさんいる。
今ならそれおかしいよ!と声を大にして言えることが私にだってたくさんある。
それを大人になってまで持ち続けないように、どこかで手放せるように。
「今」は今だけじゃなく過去の中にもある。
子育てをしていると、過去の自分にたくさん出会う、
それは今ともつながっているんだと気付く。
やっぱりわたしは娘たちに育てられている。
初めて読む作家さん、これからもっと島本理生さんの世界を知りたいと思った。
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家庭環境が複雑で読んでいて苦しいんだけど、読み進めていく手が止まらなかった。そうだ、彼女はアナウンサーを目指していたんだ、と我に返らせてくれる場面も。愛情を求めていたんだよね、そのために気をひいたり。一番欲しかったのは…。
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映像化も話題の第159回直木賞受賞作、初めての島本理生。
父親殺害の容疑で逮捕された女子大生の殺害動機を探るために奔走する臨床心理士の女性ノンフィクションライターを、旧知の弁護士との交流を軸にミステリタッチで描いています。
前半はもどかしい感じで進みますが、後半の裁判になってからのスピード感は秀逸!クライマックスまで一気読みでした!
これを堤幸彦監督が映画化・・・ちょっと楽しみです(^^♪
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ストーリーの途中
疑問や矛盾がいっぱいあった
結末を読んだ時納得する部分と
やはり環菜にはまだ正直に
話してない部分はあるようで
スッキリしない結末
我聞さんは良い男だった(笑)
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大人は子どもにとって脅威で、親は子どもにとっての絶対だ。人の一生が80年以上あるとしても幼少期なんてたかだか10年程度。それでも人の一生の中で濃いであろう10年間、親から満足に愛されず大人からの好奇の目に晒された少女は、自分に周りに嘘をつくことでしか周りから守ってもらえなかった。
同意の上だった、嬉しそうに見えた。だってそうしなければあなたはそばにいてくれなかったから。
環奈ほど壊れていないにしても、男性を相手にしたときのその感情は少しわかってしまった。拒絶することは自分の命を脅かすこと。さすがにそこまでに思わなくても、相手から醸し出される不穏な雰囲気を出来れば感じずに、そうするためには自分が少し我慢すればいい。そう思うことは少なくなかった。
この小説は、父子・母子・対男性・対大人を巡るかつての少女への物語だ。確かに環奈のように周りから見たら異常に思えるような環境に身を置いていないにしても、女性であれば誰かしらとのエピソードに共感せざる終えないのではないのだろうか。
それほど、女は同じような境遇に合っているのかもしれない。
この小説の唯一の救いは、ボロボロに傷ついた彼女たちをそっと包み込んでくれるような人が現れると表現してくれたところかもしれない。
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殺人事件の物語だと思って躊躇しながら読み続けると、なんと純愛物語。
家族の問題を取り上げながら自分自身の恋愛や家族の問題も。
我聞さんがとっても素敵。
一人一人の人物像がしっかりしていて、読み応えたっぷり。
解説の朝井リョウさんも とっても良い感じ。
複雑に絡み合うストーリーの構成も素晴らしく、最初は頭に素直に入らなくても、後半は素晴らしい展開に。
是非読んでもらいたい一冊です。
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父を殺害した女子大生のメインストーリーも面白かったが、迦葉と由紀の交わりそうで交わらなかった恋愛?友情?模様も、妙に病んだ大学生そのままリアルに表現していてとても良かった。サスペンスや推理物として見るなら(そもそも違うか)山谷は少ないけど、不安定な人間の心の動きを細かく表現していてかなり好きだった。もう一回読んだ方がよさそうだな〜
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明日早いのに思わず一気読みしてしまいました。 本当に酷くて辛い話なのに、暖かくて、希望があって、ほっとする物語でした。 島本さん初読みでしたが、ストーリー構成や言葉遣いが、自分の好みに合ってて、読むのを止められませんでした。
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子どもってどんな親でも受け入れる愛情深い存在。家族に愛されない女の子の気持ちを考えると切なかった。
親として自分の子どもを愛せているかな、 と考えさせられた。
続きが気になって一気に読んでしまった。
かしょう。名前がはじめ全然覚えられなかった。笑
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読み終えたとき、題名の意味がすぐにはわからない。なぜこの題名か、説明できるにはもう少し時間がかかるかな。
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この物語は例えると、動物園で育った動物が子供を育てることができないということ。
日本は戦争・内戦がなく平和でいいと言われるが、資本主義の波に飲み込まれ、貧富の経済格差が大きくなり、ストレスも増している。多忙の中での子育てはうまく行かなかったり、連れ子に虐待したり、援助交際、買春(国内・国外)が
稀ではなくなってきている。
これは日本だけのことではないが。
そのような経験をした子供たちは大人になっても変わらず、子供に同じことをしてしまう。
現代社会の闇を恋愛に絡めたもので、やはり直木賞に値する作品と感じた。過去の作品は女性向きに偏向が強い気がしたが、この作品は性別を問わず、考えさせられる。
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直木賞受賞作。
私は恐らくこの手のタイプの小説が好きなのだと思う。殺人事件が絡むから推理ものでもあるのかもしれないけれど、要素としては、心理的な色のほうが強い。
事件を起こした女子大生の環菜だけではなく、その事件を解き明かすために奔走する臨床心理士の由紀も、そして彼女の大学の同期である弁護士の迦葉も、皆それぞれにインナーチャイルドと闘いながら生きている。
由紀にはパートナーがいるし(そこにもなかなか複雑な事情がある)迦葉は破滅的にも見える女性関係がある。2人の間にあるのは恋ではないけれど、恋よりも強い、だけど危ういものがずっと漂っているように見える。
推理要素もあるので事件にはあまり触れないでおくけれど、犯罪に手を染めた環菜の、それなのに清純、みたいな描写がすごかった。
男を引き寄せるのは天性のものなのか、それとも後天的に、彼女自身が無意識に身につけていったものなのか。
映画化が決まっていて、由紀役は北川景子であることは発表されているけれど、個人的にはこの環菜の役が誰なのかが気になっている。20歳くらいでこの役が出来そうな女優さんが、なかなか思い浮かばない。
島本理生さんと言えば恋愛小説の名手というイメージがある。この小説はタイトルはファーストラヴだけど、恋愛の要素はそれほど濃くはない。
だけどどんな小説よりも人の恋愛感情のようなものが強いようにも思える。
人に惹かれたときの些細な感情の描写がとても巧いと思う。理屈じゃないのに、時に脳みそを使って整理しようとしたり、だけど湧き立つ感情に脳みそは追いつかなかったり。
読んでいてとても心地よかった。島本さんの小説はこれでたぶん3冊目くらいだけど、ガツンと恋愛要素が濃い作品を読んでみたくなった。
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フォロワーさんのレビューを読んでとても気になっていた作品。
臨床心理士の由紀は、出版社から最近話題になっている
美人女子大生 環菜が父親を刺殺した事件を本にしないかと持ち掛けられた。
逮捕後の取り調べでは「動機はそちらで見つけてください」と警察に話したと伝えられ、
ワイドショーなどで大きく報道されていた。
この事件を担当する弁護士は、偶然にも夫の弟の迦葉だった。
迦葉からも協力を請われ、由紀は環菜に接見するも、何故父親を殺したのか?
簡単に動機には辿り着かせてもらえない。
環菜から話しを聞き、母親から、親友から・・・と少しずつ
環菜の周囲の人からの話を聞き集める由紀。
物語の紡ぎ方が非常に興味深く、一気読み必至の本。
「そんなの親に虐待されてたんじゃないの?」
という私のありきたりの予想は当然しっかり裏切られ、
もっともっと緻密なストーリーだった。
たくさん本を読んでいるわけではないが、自分が読んだ本の中では
こんな雰囲気の本は読んだことが無かったかなぁ??と思う。
この作家さんの表現の仕方は私はとても好みだなぁ~と思う(*^-^*)
また別の本も読んでみたい♪