紙の本
不思議な場所
2020/11/03 19:02
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
本屋という不思議な場所で暮らす人々の権力闘争に倦厭した。しかも、どうでもいいような些末な事での争いにうんざりした。いい作品を書く事で競争して一人前に稼ぐようになってはいかが?とつくづく思った。
「 貧しい人々を見ろ、シングルマザーを、囚人たちを見ろ。文明を測る基準はそこにある 」と語るシェイクスピア&カンパニー書店の経営者、ジョージは、共産主義を信じている。それならば、パリではなく、そういう国で、本屋を開業するのが本望のように思える。
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舞台は、ヘミングウェイの『移動祝祭日』にも登場したパリの書店「シェイクスピア&カンパニー書店」から名前を受け継いだ実在の書店。つまり、これはノンフィクション。
コミュニストであり、理想主義者である店主ジョージ・ホイットマン(もちろん実在の人)の「見知らぬ人に冷たくするな。変装した天使かも知れないから」と言うモットーの下、店に住み着く若者たちが後を絶たず、この本の著者もカナダからたまたま転がりこんだ元新聞記者。
こんな若者が集えば当然悩む、共に悩む。恋、人生、さらに文学について。そして、もちろん、この風変わりな店主はその悩みに対して答えてなどくれない。
でも、えてして文学とはこんなところで生まれるのかも、そして、こんな風にして生まれた文学は実は結構タフなのかも。ふとそんなことを考えた。
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かつてヘミングウェイやジョイス等、英米人作家のたまり場で
あったシェイクスピア&カンパニー書店は、ナチスによる
パリ占領の際に閉店しました。
その店主シルヴィア・ビーチ同様、作家たちの拠点となる書店
(ヘンリー・ミラー、ギンズバーグ、バロウズ等が出入り)を
開いた、ジョージ・ホイットマンは、ビーチの死に際して
蔵書を買い取り、自分の店をシェイクスピア&カンパニー書店と
改名しました。場所は違えど二代目なのです。
店内ではお茶会や詩の朗読会等が開催される、生きた本の博物館。
書店なのに、貧しい作家のための簡易宿泊所であり、
一万冊以上の英米文学を閲覧できる図書室まで備えられています。
宿泊者のルールは店の手伝いと図書室にある本を一日一冊読むこと。
ほぼ無一文でカナダから転がり込んだ、元新聞社の犯罪記者の
著者が、ここで過ごした日々と、破天荒であり繊細な店主、
出会った人々、そして出来事を懐かしむように、綴っています。
店の存亡の危機、店のリーフレットの制作、店の有る建物の歴史、
執筆活動に恋、貧乏でも知恵と工夫の生活等々。
追い出される一歩手前の詩人が、アイルランド文学の祭典で
喝采を浴びるのは痛快でしたし、店主と娘の再会のも涙。
ほんの数か月の滞在が、なんて濃厚で深く心に刻まれるものに
なるという、不思議な書店の人間模様が楽しかったです。
ちなみに「岩合光昭の世界ネコ歩き」に書店入り口と
猫のキティ(二代目?)の写真がありますので、参考までに。
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シェイクスピア&カンパニー書店の日々を
元新聞記者が綴った優しく、温かい物語。
この書店存在はしっていたものの、
古く良き、伝統的なパリの本屋さんという印象しかなく
一文無しの書き手を何年も住まわせているなんて!
正直、清潔感たっぷり、お高く留まった本屋さんかと思ってたらびっくり!
内容としては、
あまりに短調かつ私的で最後まで読めなかったけど…
でも、この本屋さんのことを
これまで以上に知れたし、
面白いなあと素直に思えたので
この本との出会いは
わたしの人生において大きい気がした。
なので、★3!
この本屋さんのことをもっと知りたいと思った。
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本好きにはたまらない良書でした。言葉にすると、素晴らしさが半減してしまいそう!とにかく読んで欲しい一冊。実在するというのが、素敵です。この素敵な書店を私たちに向けいつも開けておいてくれる、ジョージに感謝を捧げたいです。
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パリのある有名な書店を舞台にした小説のようなノンフィクション。著者が滞在していたちょうど同じ時期に私はパリを旅していたのに、この店のことは全く知らなかったことが、今となっては悔やまれる。
店主のジョージをはじめ、何かしらの欠点がある癖者ぞろいの登場人物たちが、異国の地でなんとか未来への足がかりをつかもうと躍起になっている姿が興味深い。
書店を題材にした須賀敦子の「コルシア書店の仲間たち」よりもこちらの方が断然面白かったし、読みやすい。
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小説を読んでいるような気分になれるノンフィクション。振り返ったときに優しい時間だったなぁと思える過去や場所があるって素敵なことだよね、と思わせてくれるような、そんなお話でした。
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「見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かもしれないから」パリの伝説的な書店シェイクスピアアンドカンパニーの元店主ジョージのモットー。
ここに「住み込んだ」作家による、2000年ごろのルポルタージュだ。
ジョージはじめ、登場人物たちのキャラが際立っていてエピソードも奇天烈、小説のように楽しめる!
ああ楽しかった!
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行き場のない人々がたどりついた「居場所」は「見知らぬ人に冷たくするな。変装した天使かも知れないから」がモットーの店主が営業するパリの書店「シェイクスピア&カンパニー」。来る人行く人がここで過ごすつかの間の人生は、波乱万丈だったり、誰にでも訪れる恋だったり、嫉妬や友情だったり。本屋で生まれる優しい日々の物語は、人生捨てたもんじゃない、と思わせてくれる。本屋と本と、心打つ言葉と少しの友人がいれば、どん底だって楽しく生きる術がここにある。
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シェイクスピアーアンドカンパニーの風変わりな店主と、それを取り巻く風がりな人々の話。
事件が起きたり、恋をしたり、人生を憐れんだり、、
自分もそこの一員になったつもりで、パリの街の様子を思い浮かべながら読むと楽しい!
私もドヤドヤと観光客に混ざって、書店の前で写真撮りたいな。
:
「見知らぬ人に冷たくするな。変装した天使かもしれないから」
誰もに救いを与えるいい言葉。
本当にノートルダムの別館かも。
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小説だと思ってたら違くてびっくり笑
実際にこの目で見たら、どうなのか、書店の内部とそれ以外の乱雑さを夢想している。
訪れてみたい気もするし、この本の中に出てくる観光客の一部になりたくはない自分もいる。
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ジェレミー・マーサー(1971年~)は、オタワ生まれのジャーナリスト、作家。
本書は、著者が、2000年の初頭から半年余り、セーヌ川のほとりにある(世界中の本好きを自称する者で知らぬ者はいない)伝説の書店「シェイクスピア&カンパニー書店」に偶然住み着き、過ごした日々を綴ったノンフィクション『Time Was Soft There:A Paris Sojourn at Shakespeare & Co.』(2005年出版)の全訳で、2010年に日本語訳が刊行され、2020年に文庫化された。
初代のシェイクスピア&カンパニー書店は、1919年に米国人のシルヴィア・ビーチが開き、パリに滞在していたスコット・フィッツジェラルドら英米人作家のたまり場となった書店である。アーネスト・ヘミングウェイは、パリの思い出を綴った『移動祝祭日』の中で、この書店のことを「あたたかく陽気な場所で、冬には大きなストーブがあり、本を置いたテーブルや棚があり、ウィンドウには新刊書が並び、壁には有名な物故作家や現存作家の写真が掛かっていた。」と描写し、また、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』が次々に出版社から拒否されたときに、親しかったビーチが出版資金を提供したことは夙に有名である。
初代の書店は、1941年、ナチスによるパリ占領の際に閉店したが、その10年後に、ほど遠からぬセーヌ河岸に同じく米国人のジョージ・ホイットマンがル・ミストラルという似たような書店を開き、1962年にビーチが亡くなった後、ビーチと交流のあったジョージがビーチの蔵書を買い取り、1964年に店名をシェイクスピア&カンパニー書店と改めた。二代目シェイクスピア&カンパニー書店では、「見知らぬ人に冷たくするな、変装した天使かもしれないから」というジョージのモットーに基づき、貧しい物書きにベッドや食事を提供し、これまでに受け入れてきた人は5万人、ヘンリー・ミラー、アナイス・ニン、アレン・ギンスバーグらも訪れたという。映画「ビフォア・サンセット」や「ミッドナイト・イン・パリ」などにも登場する。本書の舞台となるのは、この二代目書店である。
私は、本好きの一人として、この書店のことを知っておきたいという理由で本書を手に取ったのだが、読了してみると、本書の一番の見どころは、そうした記録的なものに留まらず、ジョージというなんともエキセントリックで魅力ある人物と、書店を通り抜けていった人びとの人間模様の面白さであることに気付く。そういう意味では、著者の元新聞記者としての鋭い観察眼と洞察力、更にそれをいきいきと描き出す表現力が、本書の魅力を格段に高めていることは付言すべきだろう。
尚、同書店は、2006年にジョージの娘であるシルヴィア・ビーチ・ホイットマンが跡を継ぎ、2011年にジョージが亡くなった後も、ブックイベントのほか、シェイクスピア演劇にまつわるイベントなども開くようになり、更に活気を得ているという。次にパリを訪れる機会があったら、是非とも立ち寄ってみたいと思う。
(2021年1月了)
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ビックリ。この作品、著者の実体験に基づく実話なんですね。いやぁ、話があまりにもファンタジーなので、ウディ・アレンの映画『ミッドナイト・イン・パリ』みたいな作品だと思っていました。
それにしてもまぁ、不思議な書店ですね。物書きであれば、泊まる事が出来るなんて。衛生状態は、かなり微妙みたいではありますが。
書店はいまも続いている様です。泊まる気はありませんが、見てみたい気はします。
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旅してる気持ちになるよ、って進めてもらったこちらの本。
読み終わってから実話だと知ってびっくり!
本当に自分がパリで放浪してる気持ちになった。
読んでる途中、仕事してたり家事してたりすると、「あぁ、早く本の中に入りたい」みたいな気持ちになってて自分でびっくり。
本を開くたびにすぐパリに飛べちゃう。
ほっこりできて、旅してる気持ちになって、夢追い人の仲間入りもできる。
書店のオーナー、ジョージの考え方も本当に素敵。(変わり者だけど)
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たまたま深夜のBSで見た番組でこの書店のことがとりあげられていたので読んでみた。
作家を夢見る文無しの若者や、自称だけの詩人や、行きずりの旅人たちが自由に寝泊まりできる伝説的な書店。
文学を愛する店主のジョージ老人は、若者たちを支援する意図で来るものを基本的には拒まない。
「見知らぬ人に冷たくするな。変装した天使かもしれないから」
書店に掲げられているジョージのモットー。
こういう店、今の日本でやろうとしても眉を顰められてすぐに排除されるんじゃないかなとか思うんだけど、これがパリでは受け入れられて観光名所にまでなってる。
社会のどこにも居場所がない人たちをゆるっと包み込むような場所。
支援施設とかともまた違う距離感で。
多分だいぶ清潔感とはほど遠い感じなんだけど(というか南京虫とか相当ヤバそうなんだけど)その雑然がまたなんというか、昭和のトキワ荘とか、全共闘時代の学生寮みたいなイメージとちょっと重なったりしてまた面白い。
それぞれ事情を抱えた登場人物たちの恋や友情のドラマもあって、なんだか青春群像物語のような雰囲気もある。
まさに十人十色、それぞれの人生がある。
はみ出したり、適応できなかったり、自分さがしの途中だったり、とにかく型どおりの人生とは違うんだけど、それでもいいんだな、と思わせてくれる。
お金持ちになったり立派な家を持ったりしなくても、一人でだって人生は楽しめるし、愛すべきものは自分で見つけるしかないんだろうなとも。
ノンフィクションなんだけどすごく物語に動きがあって、エピソードもそれぞれ面白いので楽しく読める。
なんといっても舞台であるパリの街の魅力も大きい。
夢のようなパリでの時間、でもだんだん現実が迫ってくる。
いろんなままならないこともある。すれ違いもある。不運だってある。
だけど、ラストは映画のようなすてきな結末を迎えて、とてもうれしくなった。
ハッピーエンドまでの展開がすごくいいの。
パリには一度だけ旅行で行ったけど、古いものと新しいものが混在しているのが本当に魅力的で、さすが世界一の花の都、って印象だった。
見るものがたくさんありすぎて。
またパリに行って絶対この書店をのぞいてみたい!
と思いました。
いい本だったー。