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チャールズ・ディケンズの代表作であり、新潮文庫のStar Classics 名作新訳コレクションの1冊として発売されたばかりであり、セレクト。
ディケンズは『クリスマス・キャロル』と『オリバー・ツイスト』しか読んでいなかったのだが、両作にも共通するように、ストーリーテリングの巧みさが際立っている。特に本作『大いなる遺産』では、主人公の少年ピップが冒頭で巻き込まれる脱獄囚との恐怖に満ちた出会いが彼を奇想天外な運命へ導く下巻のドライブ感が素晴らしい。
点在する登場人物の関係性が最後には綺麗につながっていきながら、早く続きを読みたいという思いに駆られていく古典的名作。
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母は亡く年の離れた厳しい姉と優しいその夫に面倒を見られている少年。脱獄囚に脅されて犯した罪を抱えて成長する。弁護士がやって来る。大いなる遺産についての知らせを持って。貧しい生活から都会へ、彼の思いはどう変わっていくのだろう
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両親がなく鍛冶屋に育てられていた主人公の少年ピップが、突然お金持ちの相続人になると言う幸運に恵まれ、ロンドンに出てくる。少年の純な性格はおかしな方向に進みそう。2020.8.8
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笑うところではないんだろうけど、所々ツッコミをいれたくなるシーンがある。
ピップの心に少しずつ変化があるが、財産を得てピップは何に気がつくのかが気になる。条件の「ピップと名乗り続けること」の理由が分からない。続きが気になる。
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まず率直に感想を言いたい。結構、面白い!すんごく超絶面白い、というわけではありませんが、150年前に英国で書かれた本であることを考えると、時間的・距離的な隔たりを越えてもなお、人間というものは変わらないのだなあと感慨深く思いました。
さてそもそもの出会いですが、息子が外国の学校に通っているときに、中学2年の文学の授業で取り扱っていました。ディケンズも大いなる遺産も聞いたことはありましたが読んだことがなかったので、では買ってみようとなり購入、息子も私も積ん読を決め込み、その一年後、私だけがこの度ふと思い出し読んでみたものです。
超絶端折ったあらすじを申し上げます。幼少時に父母を亡くした貧乏なピップ、ふとしたことから謎の人物より遺産を差し上げる(予定の)旨打診される。これを受け入れ、貧乏な田舎暮らしを脱し、都会にて「紳士」となるべく修養を積むが、忘恩と高慢を助長しつつ成長する。成人後、謎の人物がとうとう現れるが、まさかの人物であった。その人物に対し、ピップの心は次第に変化してゆく。。。とまあこんな感じです。
はじめにどうしても気になるのはその訳です。初版が1951年ですから今から70年前です。紅蓮、羅紗、満願成就、鸚鵡返し、青豚亭、など今であればきっとそう訳さなかったと思うような箇所が多めです。ただこれは訳者のせいではなく時代のせいです。私は常時金欠なので中古を購入しましたが、Amazonで検索するともうこのバージョンは出てきませんね。今はもっと良い訳があるのだと思います。
ちなみに英語版は無料で読めますので、Kindleをお持ちの方は比較して読んでみても面白いかもしれません。ダウンロードまでして結局私も読んでおりませんが笑
時代背景を読み込むと、少し違った見方もできます。
物語の描かれた1860年前後とは大英帝国が産業革命を成し遂げ、世界へ進出しはじめたころ。国としては躍進中も、市民生活は寧ろ資本主義社会の本格的な到来により二分されたように思えます。都市労働者がジンなどの安い酒で憂さ晴らしをするというのが当時の慣習であったと世界史で習いましたが、本作でも酒場でジンを飲むという場面がよく出てきます。また、主人公を紳士(After遺産)と鍛冶工(Before遺産)という対極的に描くさまは、当時のイギリスで「二つの国民がいる」と言われたことと符合します。
カール・マルクスが『資本論』を書き上げたのが1867年。市場経済に任せる自由放任・レッセフェールの対してカウンタカルチャーが産声をあげようとする社会情勢とは、まさに大多数の市民が貧困や困窮にあえぐような社会であったのだと想像します。
・・・
改めて申し上げると、産業革命後のイギリス庶民の生活状況も分かる、歴史的にも興味深い本でした。話のプロットもなかなかツイストが利いている。結論を予想させない展開は今読んでも古びていない。エンターテイメント小説としても当時バカ売れしたのだろうなあと想像しました。
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ディケンズは中産階級の底辺から這い上がった。安サラリーマンだった父はお人好しで経済観念がまるでなく、一家は路頭に迷う寸前まで行った。少年ディケンズは教育らしい教育を受けられず、12歳で靴墨工場で働き、これをかなり屈辱的体験だと捉えていた。これはのちの『デイビット・コパフィールド』に反映されている。
やがて事務員として働きながら速記術を学び、記者として新聞や雑誌に記事を寄稿し始める。的確な観察を記事にまとめる際、ユーモアとペーソスをたっぷり交えて記述するのが得意だった。
ディケンズは飽かせぬ天性のストーリー・テラーだった・ただし、小説のプロット構成が巧みだったのではない。
全体の構成がバランスを欠いていたり、気になるところがあるが、部分部分を面白く仕上げることは抜群であった。
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新潮文庫のものですが、山西英一さんの翻訳のものを読みました。ディケンズのものは初めて読みますが、著者も書名も有名なものなので、どんなに深い話かと期待して読みました。しかし、内容的には大味な印象を受けました。
鍛冶屋で養われていた孤児の主人公が、何者かによる莫大な遺産を受け継ぎ、激動の人生を歩んでいく20年あまりのお話。
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先日読んだ「20の古典で読み解く世界史」で紹介されていたうちの1作品
主人公ピップは幼い頃両親が亡くなり、20以上年上の意地悪な姉とその婿である鍛冶屋のジョー(こちらは良い人)に育てられた
ジョー以外ほとんどの大人がピップをサンドバッグかのように当たり散らし、意地悪を言い、傷つける
結構読んでいくのがしんどくなる
ここまでみんなで意地悪をする場面を描く必要はあるのか?と素朴な疑問が浮かんでしまう
どうやらディケンズの両親が金銭的にだらしなく一家が破産し、ディケンズは靴墨工場で働いていたようなのだが、そこでの仕打ちはひどく、かなり精神的ダメージだったようだ
そんなことも影響しているのかもしれない…
それでもジョーだけが強い味方で何度も助けられ支えられ、それなりになんとかやっていく
退屈であまり愉快とはいえない日常に変化が…
クリスマスイブに脱獄囚と出会う
脅されながらも食糧を渡し、誰にも話さないことを約束
これを皮切りにピップの身に次々と変化が…
その中でも一番の出来事はお金持ちハヴィシャムの屋敷に招かれ、美しく誇り高いエステラと出会ったことだ
しかしエステラはピップを軽蔑し、ひどいことをたくさん言い、ピップは辱めを受ける
自分が下等で情けない暮らしをしていることを嫌と言うほど思い知るのだ
そしてハヴィシャムはエステラに言う
「男の心をずたずたにしておやり」
(そうハヴィシャムは過去に婚約者に裏切られひどい目にあっているのだ)
今までジョーを誇りに思い、ジョーの徒弟になるのを幸せなことと思っていたのに…
ピップの中で何かが変わっていく…
心の葛藤が生まれる
ジョーとの単調で貧しいながら、人としての誇りを持つ暮らし
一方、新しい都会での生活に憧れ立派な紳士を夢見るピップの気持ちは痛いほどよくわかる
(若い頃はそういうものだと言ってしまえばそれまでなのだが…)
どちらも気持ちも正直なピップの心だ
揺れ動きつつももう後ろを見たくない前のめりな若さの勢いが加速する
一見シンデレラストーリー(少年版)かに見えるがそんな一筋縄ではいかなさそうな意味深なことがあちこちに潜んでいる(ワクワク)
誰にも内緒に食糧を渡した脱獄囚、彼とはまた再会の予感を示唆している…
一体姉は誰に襲われてしまったのか 再起するのであろうか?
ハヴィジャムはピップに何を仕掛けているのか
(ピップ及び一部の人間は彼女から遺産を引き継いだと思っているが、密かに違うと思っている…
では一体誰が…)
エステラは人間らしい感情が芽生えるのか ピップに対する気持ちに変化は起こるのか
はたまたピップはエステラを愛し続けるのか
ヒディに対する気持ちはどうなるのか?
そして、ピップは与えられたこの環境でどう成長していくのか
そうそう新たに出会う友人となるハーバートはとても粋で心暖かい青年
彼との友情シーンはポッと明かりが灯りホッコリする!(数少ない癒し場面)
イジメられたり、ひどい扱いを受けてばかりいるピップ
それでもストーリーが暗くならないのはウィット感に溢れる文章のせい
ジョークにイギリスらしさが溢れており、テンポの良さがジメジメさせない
そしてあまりに個性あふれる登場人物たち
しかしアクが強過ぎ…みなさん
この時代の英国って???
下巻で張り巡らされた伏線がどう回収されるのか楽しみである
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現代でいう異世界転生ものやタワマン文学などにに共通する,孤独な人間の隠れた僻みを感じさせる。枯れた皮肉をどう読むかで印象が変わると思う。
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上下一括感想
下巻にて
私にとっては
エステラは“グウィネス・バルトロー”
“イーサン・ホーク”や“ロバート・デ・ニーロ”
そう、1998年アルフォンソ・キュアロン監督の映画『大いなる遺産』は、不思議な色彩に溢れた物語だった。
でも、できるだけ排除して読んでみている。
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イギリス文学を代表する作家ディケンズの『大いなる遺産』でっか
先日読んだカルロス・ルイス・サフォンの『天使のゲーム』で主人公ダビッドの人生を変えたともいえるこの名作
本当にそこまで魂を揺さぶるようなお話なの?ってことで確かめてみることにしました
出来れば光文社古典新訳文庫で読みたかったんですが、ラインナップにないものはしょうがない(『クリスマスキャロル』『二都物語』『オリバー・ツイスト』はある)
と思っていたら新潮社がわいの大好きな加賀山卓郎さん訳で新訳版を出してるじゃないですか
やるな新潮社
まぁ今回ばかりはいい仕事したなと認めてやろう
さて中身の方はと言えば加賀山さんらしからぬちょっと古めかしい訳、新潮社に飲まれたか?いや元のディケンズの文章がかなり腫れぼったいんだな
いや「腫れぼったい」ってどういう文章よ?って思われるかもしれないが、自分としてはかなり的を射た表現なので説明しない
そして何より主人公のピップがぜんぜん好きになれない
莫大な遺産を相続することになった幸運をさも当たり前のように享受し、浪費して、これまでどんなときでも味方になってくれ、愛情深く育ててくれた義兄で田舎の鍛冶屋ジョーを恥ずかしいと感じて粗末に扱う
かなり最低な奴
子どものころは心やさしいいい子だったのにすっかり変わってしまってがっかりりな上巻
ふふふふふ
でも分かってますよ
分かってますとも、これってあれでしょ?ディケンズが仕掛けた巧妙な罠なんでしょ?読者を一回嫌な気持ちにさせといてからのーなんでしょ?
間違いないでしょー!
さて下巻や如何に?!