電子書籍
数値データを用いて解析
2022/01/01 17:33
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
★★★★
歴史上の有名な出来事について可能な限り数値データを用いて解析してゆくという手法はたまに見かけるが、本書ほどその手法を主要テーマとして上げている本は少ないと思う。古い時代の話である一話目の元寇の話と、二話目の中国大返しの話は非常に面白かった。特に中国大返しの解析をそのまま信じると、本能寺の変は秀よしの陰謀である、という結果になってしまう可能性があり 大変に興味深い。著者は三話目の戦艦大和の話に力を入れているのだが、こちらの方はそれほどでもなかった。
電子書籍
物理的なリアリティをもって歴史を見るという視点
2020/11/03 18:03
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投稿者:かもちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
従来より歴史研究は文献を最重視してきたが、本書に筆者は、蒙古襲来、中国大返し、戦艦大和と3つの具体例を挙げながら、物理や数学の観点も歴史研究にとり入れることによって、歴史上の未解決問題の謎解きが進むとの期待を述べている。確かに、歴史が人類の活動の記録である以上、自然科学の法則を超えた行動や事実はあり得ないわけで、本書はそんな当たり前のことに気付かせてくれ、歴史を見る新たな視点を提供してくれる。ただ、自身が述べているように、筆者は船の設計者であり歴史の研究家ではないので、歴史的事実に関する記述にところどころ誤記がある(たとえば、戦艦大和が「おびただしい数の砲撃を受け」て沈んだとあったり、「巡洋艦」と「巡洋戦艦」が区別できていなかったり、など)。こうした誤記は本書のテーマである「リアルな感触を大切にしながら歴史を見なおす」ことの価値を損ねるものではないが、残念に感じた。
紙の本
従来にないユニークな視点からの歴史解釈
2020/10/08 22:30
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
長年、船の基本計画に携わっていた著者が造船技術者の視点から日本史(蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎)についての解釈を試みたものであり、歴史学者をはじめとする文系学識者の著作とは趣を異にする。土木技術者の元建設省河川局長の著作『日本史の謎は「地形」で解ける』と相通じるものがある。
蒙古襲来では、当時の博多湾の水深から蒙古軍の船の停泊位置を想定、1隻当たりの停泊(投錨)必要面積に基づく上陸想定地点における船団の配置状況から兵士全員が上陸するまでに10時間を要し、戦力の逐次投入が敗因であったと分析している。梅雨時の秀吉の大返しでは、全軍2万人が8日間で全行程を踏破することは、雨中の野営などを考慮すると不可能、一部は瀬戸内海の水運を利用したことも考えられるが、当時の船の大きさやその数から全員の輸送は不可能と結論付けている。戦艦大和では、この巨艦を登場させた背景がよくわかる。
ただし、船舶の設計では、類似船を参考に排水量の1/3乗比で長さ、幅、深さを決めるらしい。蒙古軍船の大きさもこの手法で想定しているが、各々の船の排水量が表記されていない。日本と蒙古の武器の比較として、蒙古弓の重量50gより和弓は重いらしいが、肝心の和弓の具体的重量の記載がない。秀吉の大返しでは、食料(米)・水・馬の餌・武具から移動中の馬の必要数を算出しているが、燃料は現地調達できるのかなど若干説明不足と思われる箇所も散見される。また、戦艦大和の章で、<零戦の開発過程で解明されたことが、新幹線の高速運転中に後部が横振動を生じる問題の解決につながった。>という趣旨の説明があるが、これは後部の横振動ではなく、各車両の台車の蛇行動といわれる振動現象の解決に寄与したものであり、この解説は誤りと思われる。
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歴史上の事象を、科学の目で新たに切る。
面白い。
元寇は、果たして一方的にやられたのか。
ンなのは、考えづらい。
秀吉は、果たして大返しに成功したのか。
成功したのは事実だが、その形は思っていたものと違ったのでは。
大和は、果たして無駄だったのか。
活躍の場なく、沈んだが、戦略のまずさでは。
歴史を考えるのに、こうした視点を取り入れるのは大切なんだろう。
難点は、エピソードが三つしかないところ。
続編が欲しい。
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このサイトでのプレゼント企画に釣られて購入。船舶設計をされている著者が、その独自の視点から「蒙古襲来」「中国大返し」を考察した前半と、戦艦大和についての持論を展開した後半に分かれる。特に前半部分は面白く読めた。これらの考察から「兵站」ってこうやって考えるのかと、色々と勉強になった。戦艦大和については、個人的には同意できない部分もあるが、こういう考え方もあるのかという意味で参考になった。
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本書は歴史家ではなく船のエンジニアの方が書かれたもの。「蒙古襲来」、「秀吉の中国大返し」、そして「戦艦大和」をテーマにそれぞれの通説を工学的な見地から検証、批判している。蒙古襲来については、文永の役においてなぜ蒙古軍は突然船に引き上げてそこで遭難したのか、大返しについてはは本当に可能だったのか、可能だったとすればそれはなぜか、戦艦大和は無用の長物であり、本当に時代遅れの大艦巨砲主義による失敗だったのか、という疑問である。
謎解きは本書を読んでもらうしかないが、それぞれ非常に説得的であり、面白かった。個人的にはやはり戦艦大和の話で知らない話も多く、タメになった。戦略論的、戦術論的に戦艦大和の意義を認めつつも、それを使いこなせなかった日本軍の問題点にも鋭い指摘がなされている。(海軍は合理的であったという通説も成り立たないように思うが、そこはあまり深掘りはされていないのがちと残念。)
文献には必ずしも寄っていない仮説と科学的な見地からの実証を、歴史家はもっと重視すべきという指摘はごもっとも。そうした観点から一次資料の批判も深められるであろう。
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<目次>
第1章 蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか
第2章 秀吉の大返しはなぜ成功したのか
第3章 戦艦大和は無用の長物だったのか
<内容>
歴史の専門家ではなく、造船の技術者の本。通常こうした趣味の本は、独りよがりな荒唐無稽なものが多いのだが、さすがに講談社のブルーバックスだけある。きちんとした考証(というか計算)がされている。3つの話ともに、専門の船に関することを組み入れた考証となっている(第2章は、秀吉が武器や荷駄と共に船で船坂峠を越えたという話)。第2章は「面白い」だけで終わりそうだが、第1章はかなり信憑性がある。第3章は、当時の日本軍の勘違いを指摘したもの。最近よく見られる太平洋戦争の敗因を分析した話を、技術的に裏付けている(大和の性能自体はとても良かったとする)。
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ブルーバックスのラインナップの中でも異色の一冊になるのではないか。「元寇」「秀吉」「大和」の三題で、歴史上の「通説」を、エンジニアリングの眼で、ロジスティクス、プロジェクトコントロール、ストラテジーなどの観点から、物理法則に則った数値シミュレーションで検証するもの。古今の英雄譚も、人やモノを実際に動かすにあたって必要なカロリーや時間を真剣に評価してみれば、別の解釈が浮かび上がる。人文畑の研究者には一般的でない視点であろうが、教科書や人の話を鵜呑みにせず、自分の頭で可能な限り検証することの大事さを若い世代に伝えるこのうえないテキストだ。
終章を読み終わって、つくづく思い出されたのは、いろいろな危機に際して「できることは何でもやれ!」と安易に吠えることがリーダーだと勘違いしていている人が多いということ。この本に示されたような考え方の基本を身につけていない、勢いだけの人や熱意だけの人では、真の危機は乗り越えることはできないだろう。
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最近歴史の調査が進んでいることもあって、以前にがっこうで習った有名な事件の真相が一般の本でも紹介されるようになってきました。とても興味深く読んでいます、それらを読むと当事者である武将も、私が理解できる考え方や行動をしていたことが徐々にわかってきました。
さて、この本は新聞か何かの広告で見つけて興味を持ったものですが、海上自衛隊で船の設計などに関わった方が、サイエンス(様々な計算など)を通して、歴史上の有名な3つの事件、事柄(3つ目な戦艦大和の存在意義)について述べています。
どれも素晴らしい視点で歴史の事件を捉えていていますが、本人は歴史学者じゃないのでと謙遜していますが、本を読み限り、歴史書もかなり詳細に研究されているようです。特に、第一回目の元寇である文永の役にて、日本の騎馬武士たちも集団戦法を使って戦っている絵(p58)は驚きともに、なんだかホッとした安心感がありました。最初はともかく、最後まで名乗りを上げた戦いをしたなんて、信じたくなかったので。
この本は著者である播田氏の一冊目のようですが、今後も続編を是非出して欲しく思いました。
以下は気になったポイントです。
・高麗は元からの命令(6か月後に軍船建造)を間に合わせるために、伐採・輸送に大人数をかけて期間短縮をし、かつ原木の乾燥を省いて生木のまま加工を始めた、生木を使うと曲がりや歪みが生じて水漏れの原因となるが(p25)
・実際に戦ったのは蒙古兵の中の、雇われ高麗兵が多数混じった寄せ集めの歩兵集団で、騎馬兵は指令官クラスで3%程度、いまでも対馬、壱岐には「モッコリ(蒙古)」「コックリ(高麗)」と言うと子供が泣き止むという伝承が残っているといわれる(p38、39)対馬海峡を横断するには海流の2倍の速度(2−3ノット)は必要となる(p45)
・竹崎季長は肥前の御家人・白石勢のおかげで九死に一生を得た、日本の武士団はけして一騎討ちに固執していたわけではなく、むしろ集団騎兵による突撃戦法を多用していた、白石勢の騎馬軍団が蒙古軍を蹴散らしている絵はほとんど知られていない(p59)
・蒙古軍の上陸地点が息の浜でなかったとすると、文永の役の全容も全く異なってくる、宮崎宮は炎上したものの博多の街は燃えなかった可能性がたかい、博多の街は何度も燃えているので発掘からはどの時代のものか判別が難しい(p63)
・近年の研究では鎌倉時代でもじつは一騎討ちなどは稀であり、ほとんどが集団で戦っていることが明らかになっている(p76)
・蒙古軍5000と武士2000人の日本武士団は集団騎馬攻撃で武器効率をあげるランチェスター第一法則に基づいた戦略で戦ったことにより、歩兵5000人の蒙古軍と互角に対抗した。蒙古軍の死者は半数の2500で壊滅状態、日本武士団も半数の1000を失ったが、騎馬は740が残存という結果となる、日本側の文献と数字が合う(p82)
・二重構造の日本刀は振り降ろして相手の剣に当たった時に、硬鋼の部分は圧縮力が加わることで大きな衝撃、軟鋼の峰部分は延びて引っ張り力が働き���衝撃を吸収する、軽量ながらよくしなって曲がらず折れずよく切れる日本刀は接近戦最強の武器となった(p85)
・世界の剣の多くは単層の硬鋼製で、衝撃で折れなくするため、刀身は厚く、重量は重く、おもに突きと、腕力で叩き切るために使うが、湾曲した日本刀は引き切る力が主体で、突きも可能。湾曲している日本刀は馬上から振り降ろしても食い込んで落とすことはない(p86)
・蒙古軍は上陸に時間がかかって全軍が一度に進軍できず、小刻みに兵員を増やすという最悪の逐次投入となって失敗した。博多の戦いで蒙古兵の戦死者を5000とすると、全体の約19%となり軍事セオリーからは撤退しかない(p87)
・蒙古軍が恐れたのは日本軍に援軍がくることと、北西風が吹き始めること、旧暦11月になると吹き始める季節風で、これが吹くと玄界灘は大荒れとなり当時の帆船では渡れなくなる、高麗国王の死により出撃が3か月延びたことが決定的な遅れとなり、これが謎の撤退の直接の理由である(p88)
・戦国時代の部隊は、上級武将を指揮官とする部隊(100名程度)を一つの単位として構成していた。馬上侍10、長槍20、旗指物20、弓10、鉄砲10、小旗1名、小荷駄隊(食料、武器を馬で運搬)20−30、2万の兵隊ならこれが200組(p105)
・英雄と呼ばれる人々には、決してギャンブルに運命を委ねず、リスクを小さくする努力を最後まで怠らない共通点がある、桶狭間の戦い、関ヶ原の戦いも準備は周到極まりなかった(p144)
・砲弾の威力は砲弾の容積で決まり、それは弾径の3乗に比例する、なので41センチと46センチ(18インチ)では、威力は1.41倍となる、パナマ運河を渡る必要から運河の幅を考慮すると、アメリカは41センチ(16インチ)の主砲が最高であった(p159、165)
・戦艦大和の貢献として、1)日本の重工業や機械工業の基盤作り、造船業はあらゆる製造業が集約した総合産業、造船が戦後に興隆したのは、大型ドックとブロック工法による、2)大和の巨大な測距儀は、レンズから機械式計算機を使って距離を計測するもので、カメラ、精密機器の発展に貢献した(p219)
2020年10月8日作成
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エンジニアの視点から歴史を読み直す。ブルーバックスの異色のテーマ。日本史とサイエンスのコラボから生まれた傑作。
筆者は艦船設計の技術者。映画「アルキメデスの大戦」では製図監修を担当している。
・蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか。
・秀吉の大返しはなぜ成功したのか。
・戦艦大和は無用の長物だったのか。
日本史における謎をエンジニア視点から考え直した一冊。縦割り行政と同じように学問を縦割りでなく横糸から見ると今までと違ったしかも説得力のある理屈が生まれてくる。
元寇についていえば、蒙古軍の船の隻数や建造に必要な材料、人足の数。実際の運用、錨泊位置など専門的な視点から見つめ直し、神風が吹いたからという偶発的な理由ではない撤退の理由を論じている。
中国大返しも同様。秀吉の兵力数、必要な糧食とさらにそれを運ぶ人足、道程と兵の疲労など、具体的な数値を挙げて検証している。
戦艦大和については筆者の正に専門分野。最先端の技術と戦後日本への貢献について、また日本海軍の艦船に共通の設計上の欠点などを述べている。
何より絶品なのがそうまとめの章「歴史は繰り返される」。数字のリアリティの重要性、ものづくりの力。日本人が陥りがちな目的と手段の乖離など、筆者の経験も踏まえて語る。この章だけでも次回の著作を期待したい。
本書を通じて流れる筆者の思想は科学的な視点の重要性。理科の授業や理系教育が次第に減っている日本の現状。単に歴史ファンの作品でなく、歴史を繰り返さないため未来を見た視点が結論の作品。
ブルーバックスとしては異色の作品。今後同様な分野の作品が増えることを期待したい。
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歴史の疑問を現実的数値から読み解いていくのはとてもわくわくしました!証明問題は苦手だったけど、こういうのはいいと思います!
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サイエンスと言いますか,工学的な知見で,日本の歴史上の主な三つの出来事について書かれている本です.特に秀吉の大返しについては,本当にそれが現実的に可能であったかを,様々な観点で数値的に見積もり,真偽はともかく,興味深く読める本でした.歴史は,古文書だけを頼りにするのではなく,このような工学的知見での検証も,有用なのかも知れません.
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数字という嘘のつけない根拠を基に、歴史上の伝説とも奇跡とも思える通説に疑問点を投げかける本作。理工系の老舗新書のブルーバックスから、何故日本史の本が?と思ってたが、読んで納得の内容。
鎌倉時代の元寇、戦国時代の秀吉の中国からの大返し、第二次世界大戦の巨大戦艦大和の存在意義についての3本立て。
どれも日本史における大きなポイントではあるが、共通点はなかなか思いつかない。
それは、著者は、長年の造船に関わったエンジニアという経歴によって明かされる。
歴史学者では無いが故、通説と言われた内容でも、実現不可能なものを客観的に疑問に感じての検証となったのだろう。なるほどなあと唸る内容。
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日本史サイエンスを読んで思った事を以下に記載する。
播田安弘様のことは存じ上げておりませんでしたが
、今回の本を読んで衝撃を受けました。
・蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか
タイトルの内容に対して物理学、気象学、統計学を用いて、いかに数字的に難しかったか理解できます。
・秀吉の大返しはなぜ成功したのか
秀吉がどのようにあらゆる戦略を練って、物理学の観点からシュミレーションをして不可能に近い事を成し遂げだ知恵や、卓越した分析能力に驚かされます。
とにかく、昔の有名な武将は、最後まで戦略を練りに練って、不確実要素を排除してきたか分かります。
・戦艦大和は無用の長物だったのか
同じく大和自体が無用ではなく、その後の日本経済の発展として造船技術にどれだけ貢献したのと、それだけすごい物を造れる技術が日本にあることがどれだけ日本人の精神的な支えになったの理解できます。
最後に、播田様も仰っていますが理科系の能力は落ちてきてると思います。私も、今後の科学技術日本を復活するために、数理系の授業時間は増やした方がいいと思います。
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船の専門家の立場からの、元寇、中国大返し、戦艦大和の検証を試みた本。いずれも数字を交えて実現可能性を考慮しながらの考察ですんなりと受け止められた。面白い本なのでおすすめ。