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『侍女の物語』の続編。
ただし物語そのものは独立しているので、どちらから先に読んでも構わない。
侍女の物語は、1985年に出版、本作はその35年後(謝辞より)にして語られた、ギレアデ共和国が崩壊した「理由」である。
物語そのものは女性にとってはディストピアである。
(しかしこのリアルの世界であっても、ディストピアに近い生活を強いられている女性は多いに違いない)。
「アルドゥア・ホール手稿」の編では、仕事を持ち、誇りを持って働いていた女性たちの尊厳が次々に貶められる。
そこから逃れるには、女を見張る女でなくてはならなかった。
さもなければ、昨日まで同室だった別の女に、脳みそをぶち抜かれるだけだ。
それでもひたすらに暗くならないのは、幼子ニコールが語る物語に希望を見出せるからである。
また、女を見張る女である「小母」の名前が、かつての女性たちが愛用したものから取られている、なんてユーモアが混じっているから。
ヴィダラやメイベリンはヘアケアやコスメのあれ。
ヴィクトリアも、きっとシークレットなあれでは?
水面下で動く人々、折れない心を持ったり、真実を知るために動く人々。
彼女たちこそ、このガラスの天井も、閉じ込める壁も壊すに違いない。
いつかは、私が暮らすこの国も、近い未来きっと変われるはず。
ガラスの天井も、壁も取っ払って、男女関係なく、きっと自分らしくいられる社会が作れるはず。
自分のために、続く人々のために、未来のために、一読の価値がある作品だ。
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カナダのマーガレット・アドウッド作。2019年のブッカー賞。ギレアデ国。
侍女の物語はよんだことないけど、その続きの話らしい。
3人の女性の視点から語られるお話。
顔のない女性が表紙なのはキムジヨンにつうじるな。
証人の供述369Aの書き起こし
369Bの書き起こしなど27章あるうちの小見出しででてくるけどその人たちも記号でよばれている。
565pとシンポジウムで構成されている。
女性のつらさや抑圧、下に見られるとか脳が小さいからかんがえられないだろうとか、ディストピア小説でありながらもいまもどこかで起こっていることかもしれないし私のことかもしれない。
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前作『侍女の物語』は衝撃的な内容な上、淡々とした語り口ながら何とも重く陰鬱な雰囲気が漂っていた。
それに比べ今作品は、女性達の戦う姿勢が描かれており、希望が垣間見える。15年越しの続編だが、作者は前作の時から考えていたのだろうか。
ここに描かれているような世の中が来ないとは言い切れないのが怖いと思った。
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三人の語り手,時代の違いなど工夫を凝らしギレアデ共和国を浮かび上がらせる.そして,一人一人の運命が交差し,犠牲も伴いながら目標に向かって突き進む.ディストピア小説ではあるが,信念と友情と愛の物語でもある.
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600ページ以上の長編だったけれども続きが気になりすぎて延べ数日で読み終えた。
侍女の物語は閉塞感がすごくて読み終えて疲れたけれども続編である本作は小母、請願者、そしてギレアデ外からのそれぞれの視点で話が進行してハラハラしながら読んだ。作者がこれまで歴史上や現実社会に存在しなかったものは書いた事がないと述べたように本作は決してディストピア小説ではなくどこかで起きた・起きていることなのだと思う。読んでいてポルポト時代のカンボジアなんかも連想してしまった。
最終的には希望の物語なのだろうけれども、社会的地位も何もかも奪われて不本意ながらも究極こ選択をして、でも文字通り命をかけてやるべきことを成し遂げたリディア小母と、隠れたヒロインとも言うべきベッカの最後の覚悟にグッと来た。
1人でも多くの人に読んでほしいすごい作品です。
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侍女の物語から10数年を経た時代、つまりおそらく21世紀末ごろのギレアデ共和国が舞台。アメリカ合衆国の連邦政府に変わってキリスト教原理主義の政党(?)が社会を牛耳るっているギレアデ共和国の中心部(おそらくボストン)とトロントで物語が進行する。
「侍女の物語」は「司令官」の家に配属される生殖を職務とする侍女のモノローグ的な語り口だったが、本作の語り手となる3名の女性は年齢地位がそれぞれ異なるために雰囲気が異なる。特に語り手の1人であるリディア小母は権力中枢にいるため、ギレアデが置かれている状況(テキサスと戦争や、カナダとの関係など)も詳述され、状況設定が明確になりストーリーが格段に面白い。
登場人物の大半は女性。彼女たちの間の友情、妬み、家族の慈愛、殺意、師弟関係、成長といった関係性が織り込まれている。当初時間も場所もバラバラだった3名の物語が最終的に紡がれ、最後は「侍女の物語」の未回収風呂敷をあらかた回収される展開に。
寝る前を惜しんで隙間時間を全て投入する読書体験となった。超面白かった。
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女性蔑視国ギレアデ
3人の手記
女性最高幹部リディア小母
幹部の家庭に育ったアグネス
カナダで育ったディジー
アグネスの同級生ベッカが、泣かせる活躍。
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「侍女の物語」の35年ぶりの続編である.
前作は救いのない(といいつつ,実はオーウェルの「1984」式の救いはあるのだが)ストーリー展開で,息が詰まるような気持ちで読み進めたのであるが,本作は章ごとにリディア小母,アグネス,デイジーの3名の主人公それぞれの視点から描かれており,デイジーがギレアデに潜入を図る後半1/3はエンターテイメント小説となっており,一気に読み進んでしまった.
しかし,35年での両作の間のトーンの変化は,世の中のギレアデ化がよその世界の話ではなく,明日の我々に起こってもおかしくないという暗い予感の反映なのではないかと思ってしまう.
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『侍女の物語』の(ヒロインが変わり、少しあとの時代の)続編。
民主主義は「何も決まらない」先延ばしの根源である…ゆえに非常事態には向いていない。
放射能汚染や化学物質汚染で(清浄なはずの地域でも)、正常な出産が1/4以下、しかも受胎自体になった“お先真っ暗”状況が惹起した北米大陸で反動反発は超強力・女性の人権は完全抹殺、男性は厳しい身分制で特権としてごく部分的に維持…秘密警察と、隠れた悪徳が横行。絶対権力は、それに媚びへつらう追従があってこそ維持される…
映画で見たフランス・ヴィシー政権におけるユダヤ人虐待=検挙したユダヤ人をとりあえずアリーナの観覧席に押し込んで、一昼夜、飯もトイレも与えない…手始めはそんな感じで、だんだんエスカレートする。
体制に抵抗する男は死んで本望だが女子肉体損傷、処刑は酷い。
原題Testamentは普通は「遺言」「契約」だが、訳者は希望・祈願の意味を採ったという。
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一昨日、前作の『侍女の物語』を読み終え、そのすぐ後にはこの本が手元にあった。そして一気に読み終えてしまった。
ページを捲る手が止められない。こんなに先へ先へと読みたい衝動が止まらない作品は久しぶりだった。
前作では明らかにされなかったギレアデの内部構造はナチスドイツやスターリニズムを彷彿とさせた。まさに歴史は繰り返す。作者も後書きで書いているように、現実の歴史で起こらなかったことは書かれていないのだ。
とても素晴らしい読書体験だった。
惜しむらくは、誤植が多かったこと。これはいただけないので、増刷の際には是非とも修正してほしい。
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超有名な作品の続編で、ドラマ化もされて、下手な変な発言できなそうな雰囲気を醸しだしている。まーちゃん(作者)の作品は何冊か読んでるが、一番解りやすかったです。多分「世の中にズバッと物申したい」んだけど、やっぱオブラートに包まないと世間が許してくれないので、結果ディストピアになってしまっている感。こないだのピンチョンとかは、爺が若者ぶってサブい所があったけど、まーちゃんの凄まじい現役感。作家という点でも、フェミニズムとしても、(自分的に)間違いなく信じられる人物です。
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図書館で1年以上待って読みました。いやー面白かった。
リディア小母、アグネス、デイジー三人の物語が進行し、交わり、一つになる。
リディア小母の壮絶な過去、策略と、満願成就のギレアデの崩壊。表面上は体制に従い、トップの実力者まで登り詰めながら、虎視眈々と息の根を止めることを狙い続けていたなんて、その胆力に敬服してしまう。オブフレッドの時もそうだったけど、こんなにも力強く生きられるのかと、勇気をもらう。
アグネスも好きだったな...ベッカは悲しかった...
デイジー、ニコールの話はもちろん一番親近感があるのだけど、話自体は突拍子のなさも少し感じたので感情移入しきることはなかった笑
歴史として見るものと、実際に起きたことの温度差はこんな感じなのだろうし、小説だからこそ味わえる面白さであった。
間違いなく性別に関係なく読んで欲しいディストピア小説の名著であるl
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侍女の物語を読んだので、続編ということで読んでみました。侍女の物語より、明るさがあって読みやすかったです。とても面白かった。
本の最後に載っている解説も読んだんですけど、解説は読まなくても良かったなって思いました。小説は政治信条に関係なく、楽しく読みたいです。
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侍女の物語とはまた違って、展開がダイナミックになってこちらも面白かった。
脱出成功から最後のまとめ方がちょっと駆け足でわかりづらいかな?
侍女の物語と誓願の間、オブフレッドがニコールを産んでどうやってギレアデから逃げてきたのかももう少し詳しく知りたい。
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侍女の物語とあわせると結構な長編。
どっぷり浸かった物語、世界観の終わりに、寂しい気持ちになります…
男性による女性の抑圧だけでなく、抑圧される女性の中でもさらに抑圧や分断、対立がうまれる社会の描き方が、ゾッとするほどリアルで丁寧なものでした。分断は重層的で縦にも横にも入り組むものですね。
そんな分断を乗り越えた3人の女性の合流は感動的で、終盤の2人の国からの脱出の力強さと疾走感は凄かったです。
最終的にハッピーエンドになったのを素直に喜びました。最後まで強くあった女性達(と少ないながらもそれを支えた男性)の勝利に拍手しました。
国家の最期までを描いて三部作としてほしい。期待!