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ホラー感が強そうで躊躇したんですけど、そこまでおどろおどろしい感じじゃなくて良かった、面白かったです。実際にこんな事に巻き込まれてしまったら、という現実的な怖さはありましたが。
前の話の登場人物のその後の様子がわかる話もあって、異世界に取り込まれてしまったわけじゃなかったんだな、となんだかホッとしました。
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やっぱり恒川光太郎さんは面白い。すごいなぁといつも思う。
この本は犯罪というものについて書かれたいくつかの話が収められている。加害者となってしまった人やその家族の側から書かれ、私が日頃から世間やマスコミに対して言いたいことに近くて、それを公に書いてくれて嬉しかった。
最近母が運転中に脳梗塞になって事故を起こした。母は幸い誰も殺さずに済んだけど、車に追突せず歩行者に突っ込んでいたら大量殺人犯になって私は殺人者の娘になっていたかも知れない。
母は元々頑張り屋で弱音を吐かず、具合が悪くても言わないタイプだからいつから体調が良くなかったのか家族でも分からないし、忙しいから短くちょこちょこ寝るし、元々話はポンポン飛ぶから周りにいる人が変調に気付きにくい。でも誰かを轢いてしまったらそういうことは関係なくなってしまう。魔女狩りみたいになる。私や旦那さんの性格も引き合いに出されるだろうし、まさにこの本の「やがて夕暮れが夜に」みたいになる。
母が殺してしまった人を生き返らせることは不可能だし、もうどうすることもできない。私が死んで生き返るなら私は死ぬけど、私の死はマスコミや世間に都合良く使われるだけで残った家族はもっと酷い目に遭う。母が重篤だったら私は母に死んで欲しいと思うだろう。死ななくていい人を殺して人生を終わらせてしまったのだから、仕方がない。母の人生も一緒に終わらせるべきだと思う。突然家族を奪われた被害者家族の深い悲しみは何があっても消えることはないし、怒りも消えない。でも母も死ねば少しは楽になるのではないかと思う。片方だけの人生が奪われるなんてあまりに不公平だ。私は酷い人間なのかな。
私は事件などの報道を目にするといつも加害者のことを考える。事件の内容や概要からどうしてそうなったのかと想像する。そして勝手に共感したり、どうすれば防げたか(救えたか)を考えたり、その家族を心配したりする。でも言わないようにしてきた。だから、こういう本を世に出してくれてとても嬉しい。
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五つの短篇集が収録されており、人の心の闇の部分に怖さを感じました。ただ、そこには、全て「犯罪」が関わっていることが、気になりました。
何かはっきりした線引きのようなものは、無いとは思いつつも、罪を犯すことで、闇の境界線に入ってしまうのではないか。そして、それに関わった人達を、非日常的な恐怖に陥れている。それは単純に、犯してしまったことによる、無自覚な精神的動揺を含んだ幻想かもしれないが、そうではないかもしれない。この辺り、物語の書き方が巧いと思いました。
例えば、「やがて夕暮れが夜に」の場合、弟が殺人を犯し、加害者になったことで、世間は姉を含んだ家族に、中傷混じりの暴言や嫌がらせを浴びせ続けて、やがては理不尽な暴力に発展していくという、加害者の出た家族の悲劇をテーマにしているのかと思いきや、展開は思わぬ方向に行き、最後は何とも言えない別の恐怖で終わる。結末に驚いてしまう。
ただ、怖さだけではなく、犯罪をした後の人間の、本当に駄目な、しょうもない部分に、滑稽さや哀愁といった、何か心底憎めないような人間らしさも感じられるので、それらが一緒くたになると、本当に不思議な感じになります。恒川さんの魅力だと思いました。
あと、何気にそれぞれの短篇の舞台設定が繋がっているようで、「アキ」のその後の人生って、もしかしたら、と思うと、嬉しかった。
「ずっと昔、あなたと二人で」の結末が切なくて、気がかりだったので。
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「夜市」や「神家没落」からイメージされる静謐な静けさを伴った暗さと比べると、この短編集は人間の欲や犯罪などが絡むためか、透明度の低い重たい黒を感じる暗さだ。5つの短編はすべてが被害者としてではないが、何かの犯罪に巻き込まれてしまった人の物語。彼らの葛藤や悲しみ、そして思い切りにじっくり思いを致していると、ふっと現実ではない世界に連れていかれる。そして読み進めるうちにこれらが少しずつ重なっていることに気づくのだ。暗さの種類が違っていてもやっぱり恒川さんらしい作品だと思う。「人」を描くこの独特の世界が好きだ。
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待ちに待った恒川光太郎の最新作。連作短編というほどでもないですが、ちょっとしたつながりがあったりするようです。
面白いっちゃ面白いんですが、なんともこう陰鬱な雰囲気があるような。元々「この世ならざる」暗さみたいなものを持ち味にしていた作家さんだと思うんですがこのところちょっとこう暗さの質が変わってきてるような。このあたりは好みでしょうけどね。
それでも物語にぐいぐいとひきこまれていく感じは健在。次回作も楽しみにしています。
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久しぶりの恒川モノ。入っている5編総じていつも恒川さんに有ったと思う「日本の情」が皆無だった気がする。現代を舞台にするとそうなるのかと思う平成令和の時代の香り。
「ずっと昔~」の老婆
「母の~」の母
「やがて~」のエリオ
「さまよえる~」のKEN
「真夜中の~」の希亜
ラストは「真夜中の闇のかなた」へ行ったっきり。
殆どの展開は「どっかで見たような劇がコミック的に始まるのだがそこから先は、夢も救いもないような現実の刃がグサグサ・・犯罪めく、人の道から外れた、そんな人格がむき出しの場面があちこち
○○の人格は細かい砂になって飛び散り死者に恋する隠者の△△が現れ‥という具合だ。
読み終えてみると「人」が一番怖い、それに妄想が過去のフォルムに絡みついてぐるぐる回り始めると、どうしようもない恐怖。
ひところの小説・・特に日本モノは「優しさ、救い」と言った安っぽいほどの受け皿をラストで用意して、読み手の心を救い上げるのを真骨頂としていた記憶があったけど、恒川さんの最近の変化は何かしら心境からくるものかな。
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作者の作品といえば、日常から一歩踏み出した非日常の世界を淡々と的確に描くというイメージを個人的に持っているのですが、この短編集はどちらかというと、非日常な要素よりも人間の憎悪や愚かさ、儚さを死者を通して描いているように感じました。
母の肖像、という一編ではネグレクトを受けた息子が母を回想するかたちで物語が進むのですが、恐ろしさの矛先が徐々に違う方向へ舵を切り、言いようのない人の心の底知れなさを感じました。そうして、その茫然とした恐ろしさもそのままに、ぽんと物語が結末を迎えてしまうので、寄る辺のなさに背筋をうすら寒さを覚えさせるのです。
ほかのどの短編も、はっきりとした「解決」はせず、靄の中に取り残されたような感覚を残します。その感覚を好むか好まないかは分かれそうな気はしますが、私は好きでした。
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予想で勝手にすんごい暗い話と思って読み始めたが、そんなでもなかった。
どんな境遇に置かれても死人よりは生きている者の方が強い。
読み終わってそんなことを思った。
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恒川光太郎さんの著書は初期の頃猛烈に好きで虜になったのだけれど、その後だんだん好きと思えない作品が続き、けれど金色機械でまたガツンと心をつかまれ、その後また「もういまのじぶんが好きと思えるものは書かれないのかも…」と思ってしまう良くないファンだと自覚していたけれど、本作はとても好きでやはり読み続けてよかったと思った。面白かった。
サスペンスっぽい要素に頭を持っていかれつつ不可解な現象がぞわぞわとおそってきて、読み終えるとき不安や肌寒さが残る感じがとても好き。登場人物がさりげなく交差しているのもよかった。面白かったです。
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さまざまな問題を抱え、「普通の」生活から外れてしまった人々。彼らがたどり着いた安息の地は、現実なのかそれとも……? ゆったりとひっそりと闇に包み込まれるような、少し怖くてだけれど穏やかな気分にもなれる幻想的な短編集。
彼らの行く先にあるのは闇であり怪異であるはずなのですが、それ以前の現実の方がずっと恐ろしいし痛々しくて苦しいものなのですよね。だからこそ、闇も安らぎであると感じられるのです。だけど生きていくには現実の世界に戻らないといけないのが、安心するような残念に思うような。ただし、現実も絶望ばかりでないと信じたいです。
お気に入りは「やがて夕暮れが夜に」。こういう加害者家族のシチュエーションって本当につらい。何の責任もないのになぜこんなに苦しまないといけないのか、そして無関係な人たちからの理不尽な攻撃がとにかく怖いです。だからこそこの「怪異」のある意味の優しさが一番沁みました。
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『三体』あの1巻で頭が疲れて、軽いものが読みたくて読んだ。面白かった。
連作短編集。微妙にキャラクターが繋がっていて面白かった。
表題のものは無いけど、テーマとしての「真夜中のたずねびと」。真夜中にやってくる来訪者というのは不吉さしか感じ取れない。良くないもの。そんな雰囲気が全編漂っていた。
『ずっと昔、あなたと二人で』
少年の姿をしていたが、女性だった。デートのくだりでやっとわかった。
アキについては、最初は異形の存在かと思ったら普通に人間の子供だった。それが流れに流れて占い師のおばあさんのところへ。リョウコとの会話のところが良い。もしかしたら、流浪しているうちにあちら側にいってしまったのかもしれないなあとか考えられる。
『母の肖像』
ワクワクした。家族の話で、母親が中心のような。お話のようにうまくいかないよねえっていうリアルさのような。「ファーゴ」を思い出した。
死体が喋るのはなんかとってつけたような不思議さで笑える。
『やがて夕暮れが夜に』
加害者一家の不幸。可哀想すぎる。巻き込まれ事故すぎる。悪意やら憎しみやらの権化が実態を伴っているのか、人間によるものなのか。まあ両方だよな。正義だと、理由があれば人は残酷なことが出来てしまう。被害者のエリオを忘れないというのがそれから抜け出す道だったのかな。
『さまよえる絵描きが、森へ』
自己欺瞞の文章。すごい。付き合わされる一馬が可哀想というか、彼は聞き役でしかないのかな。母の話を聞き、絵描きの話を聞く。絵描きだったのなら、自画像を描いて終わらせれば良かったのに。
『真夜中の秘密』
山奥の民家となるとやっぱり、『秋の牢獄』に収録されている『神家没落』を彷彿させる。死体埋めに来る人もいるし。生者か死者か曖昧になるところが良かったし、全ては過去として流して、葉書が来ないところもいいな。
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『生と死が交錯する闇に迷い込んだ人達の物語』
恒川さん初読み。ファンタジー色無く、ミステリー・ホラー寄りの短編5編。あれ、この人は生きてるの、死んでるの?と疑問に思うほど、死者が現世に溶け込んでいる、不思議な世界観だった。
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題名がカタカナになったころ、読むのを止めてしまった恒川さん、久しぶりに読みました。カタカナよりはでしたが、恒川さんのような作風はむつかしいですね。いつまでも『夜市』を期待してはいけないのでしょうが。
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アキという子が出てくる話は、始め老婆の家は戸締まりしていなかったのにラストは鍵が掛かっていたのが、老婆からアキへの【ここにはお前の居場所はもうない】という強いメッセージ性が感じられて切ない話だなと思った。他の話もテンポよく読めておもしろかった。
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登場人物が少しずつ被さる5つの短編。
どうも乗れませんでした。
元々ホラーには興味が無い私がしばしば恒川さんのノスタルジック・ホラーに手を出すのは、どこか懐かしく美しいノスタルジック要素の為。この作品は私の好きなそういった要素が少なく、ホラーまたは(同じく私があまり手を出さない)サスペンス色が強く、どうにも乗り切れず。。。。
出来が悪いとは思いませんが、個人的嗜好に沿わず・・・・。