紙の本
食欲を激しく刺激される小説
2020/12/21 23:03
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
カルミネ・アバーテ「海と山のオムレツ」読了。南イタリアの小村で育った作家が少年・青年を経て今に至るまでの思い出を数々の美味しい料理と共に振り返る自伝的な連作短編小説。父親との交流の種になったオリーブ、いつの時代も辛い過去を焼き尽くしてくれた唐辛子、食欲がバチバチに刺激される一冊。
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南イタリア カラブリア州出身で、アルバニア系移民のルーツを持つ著者の、料理とそれにまつわる記憶を元にしたエッセイ。幼少期に祖母と海辺で食べたオムレツサンドや、結婚式に出席したときに食べた郷土料理の数々などのいかにも美味しそうな料理と、それを一緒に食べた人たちとの幸福な時間の記憶がキラキラと輝いている。
オスマン・トルコ帝国の侵攻から逃れて船でアルバニアから逃れてきた人たちがイタリアで独自の文化を守っていることも知らなかった。
十分な収入を得られないために、故郷を離れ、ドイツに出稼ぎに行く人も多いようだ。郷愁にさいなまれながらも職を求めてイタリアやドイツの各地を転々とする姿にたくましさを感じた。家族や故郷、そして食事。自分の中に自らの根っことなるような記憶が確かにあれば、見失わずにすむのかな。
シチリア島を舞台にした映画「ニューシネマパラダイス」が大好きな私。フィレンツェ郊外で暮らしている日本人のチホさんのブログも好きで読んでいるのだけれど、チホさんの旦那さんのご出身がやはり南イタリアのプーリア州で、夏に帰省された際に海辺や小さな町の写真をupしてくださるので、私自身は南イタリアにはまだ行ったことがないけれど、なんとなく雰囲気を思い浮かべることができた。
美しい景色を見て、美味しい料理を味わうために、いつか南イタリアにも行ってみたい。
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どれもこれも美味しそうで、生唾物です。温かさや匂いや味が、著者の思い出と共に伝わってくる。美味しそうで幸せそうで、あまりにもいい話で、まるで童話のようだった。
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大蒜とオリーブオイル、様々な火をふくほど辛い唐辛子。畑でとれたじゃが芋に、毎年つぶす豚。
あまりにおいしそうな料理の数々と家族の伝統、村のこと、労働者としてでた外国でのこと、恋人との人生の描写。
食べることは生きること
"足し算の"人生における、どんどん豊かになる(食品添加物なんて不要な)味覚。
"アルベリアのシェフ"の人柄、その料理に心底心惹かれる。
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イタリア南部の村で生まれ育った著者の自伝的短編集。どれにも美味しそうな料理や果物、飲み物が関わり、さすが食の国イタリアと思わないわけにいかない。それも高級なレストランではなく、母親や祖母の作る家庭料理だったり、地元の食材だったり、裕福とは言えない村の人々の豊かな暮らしがうかがえ、家族の愛情あふれる日々も素晴らしい。
心温まるものが残る。
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おいしい小説。特に辛いもの(唐辛子)好きには堪らない。
南イタリア・カラブリア出身の著者(1954年生まれ)
の自伝的短編集。様々な人に出会って成長していく主人公の淡々とした成長物語。ドラマティックなことは
そんなに起こらないけれど読んでいて心が落ち着く。
父親がドイツに出稼ぎに行き寂しい思いをしたり
友達と悪ふざけをしたり、少し年上の友人から
書物を借りたり、ありふれた体験とともにあるのは
その土地の材料で母親たちが作ってくれる料理。
それがすごくおいしそう!料理の描写は個人的に
江國香織さんを彷彿とさせました。
1960年代のイタリアの貧しい村では
父親たちはドイツに出稼ぎに行き家族でドイツに
移住することもある、ということを知りました。
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翻訳を読むのは苦手だけど、美味しそうな南イタリアの郷土料理の描写に釣られてするする読めた。その地方で話される少数言語や、仕事がなくて出稼ぎをせざるを得ない環境についても勉強になった。
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一人の男の話
お話ごとに少しずつ大きく成長し父になる
それぞれの過程での変化もあり
主人公と父の対比もあり
なにより食事が美味しそう
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イタリアの作家カルミネ・アバーテの短編集。
著者の生い立ちとともに多くの料理が語られる。ドイツに出稼ぎに行く父、オリーブオイルの収穫、そして地元の辛い唐辛子を使った料理など。
イタリアの料理はいろいろ調べ作ってきたとおもうのだがまあまだ知らな料理があるんだなぁと思いました。また著者が日本料理なども食べているのでびっくり。料理がちゃんとでてくるのは豚の角煮でした。豚のロースト(アリスタ)だって美味しいとおもうけどね。サルシッチャもいいんじゃない。クヌーデルはあまり好みでないのにえらく褒めていたので美味しいクヌーデルたべてみたいですね。小説としては佳作といったところ。
美味しいものに寄りかかって人は生きるってとこかな?
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胃が痛くて食欲が出ないので、食欲出そうな本を。
少しずつ読もう。タルディレットとか、サルディッラとか分からないのを調べつつ。確かに「生唾なしには読めない。」ほど美味しそう。「トスカーナの休日」といい、「食べて祈って恋をして」といい、イタリアって美味しそう。明日の朝はオムレツ焼いてサンドウィッチを作ろうか。
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なんとも美味と郷愁と家族愛にあふれ、読んでいて心も舌も満足できる、ワタクシ好みど真ん中の本!
南イタリア・カラブリア州の小村出身の著者が、幼少のころばあちゃんに作ってもらったオムレツサンドウィッチに始まり、半生を彩った土地土地の美味を振り返る。結婚式の饗宴、恋しい父の出稼ぎ先ドイツで出会う新味、恋人との出会い…そして家族は新しい形になって続いていく。イタリア料理のことはそこそこ知ってるつもりだったけど、昔オスマン帝国に追われて故郷を捨てた「アルバニア系」の料理はしらなかった。唐辛子や肉加工品を多用し、野菜や果物と組み合わされるマンマの、また出張シェフのお料理の見事さ。
「しっかり食べるのよ。食費を削っては駄目」
「広い世界は、パンの酵母よりはるかに酸っぱい」
「大切なのは、自分たちの土地の味に、新たな味を加えていくことだ。根っこの部分に郷里の味があるかぎり、べつの場所で暮らしていても、その土くれの香りは失われない」
食の至言が惜しげもなく詰まっている。田舎を後にし、恋しがりながら別の地で生きるものとして大いに共感!
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美味しそうな料理が次から次へと幸せな匂いと共にせまってくるような感じ。料理を通して筆者の幼少期からの思い出などがその土地や家族・多くの出会った人たちを語っている。読んでいてとても気持ちよかった。
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イタリアの小さな村で育ち、村では珍しく大学を出た主人公と食にまつわる小説。途中で読むのやめちゃった。
美味しそうではあるものの、私には淡々としていて少しつまらなく感じた。イタリア人が読んだら眉唾なんだろう。
イタリア人はドイツに出稼ぎに行くなど、知らないこともあり、勉強になった。
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最初の「海と山のオムレツ」のエピソードから始まって,作者が成長し環境や家族とのかかわり方も変わってくる中,要所要所でふるさとの味アルベリア料理が登場し影響している。
アルベリアのシェフが伝統的アルベリア料理の味を守りながら,郷愁なんて退屈なだけと見切っているのが面白い。
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著者の出会ってきた数々の料理と、出会ってきた人々。滋味深い自伝的短編集だ。
ひたすらうまそう…イタリアの料理食べたい…と思いながら読みました笑
しかしただ料理の思い出に限らず、著者はイタリアの中でも少数言語アルバレシュ語を話して育ち、小学校に入って初めてイタリア語に触れ、16歳で初めて教科書以外の本を読む。そういった、作家としての著者の片鱗にも触れられる。
著者に限らずアルバニア系イタリア人としての生き様に触れられるところも見どころである。
味覚は子どもの頃に形成されるというが、生まれ育った地元、母の作る料理、家族で囲む賑やかで幸福な食卓、地元を離れてドイツで仕事をするようになった著者はそういった思い出から郷愁を抱いたりもする。
私も同じ日本国内でも、やっぱり地元の味じゃないと物足りないだろうなあと思うのでうんうん、と頷きながら読んだ。あっ、でも水がおいしいところには住みたいかも…本書でも水の大切さと脅威について書かれてましたが。
故郷の味に郷愁を抱く著者と、郷愁なんて抱くもんじゃないよ、世界を味わいなさいという著者がドイツで出会ったひとの言葉が染みる。
著者の生まれ育った南イタリア、カルブリア州の小村では、一部の有力者が安い給料で雇用するため、著者を大学までやるために著者の父親はドイツへ出稼ぎに行くのだが、著者は父親が大好きで出稼ぎに行くたびに寂しい思いをする。
ちょっと本筋とはずれるけど、著者が生まれたのが1954年なので、多分著者の父親が出稼ぎに出てる時期ってドイツが東西に分かれてるころでは…?西はともかく東は豊かではなかったのでは…ドイツのどの辺りにいたんだろうとちょっと気になりました(いろいろ地名が書いてあったかもしれないけど海外の地理に疎いもので…)。
さて、目次はさながらフルコースのメニュー表といった装丁で、始まりからどんな美味しい物語があるのだろうとワクワクさせられます。
個人的には、圧倒的に表題作で前菜の「海と山のオムレツ」が大好きです。
海と山のオムレツは著者のおばあちゃんの創作料理なのですが、
「ピガードで採れたオリーブオイルに、うちの雌鳥の卵を五、六個、腸詰めの大きな塊、あまり辛すぎないサルデッラを大さじ二杯、オイル漬けのマグロを一切れ、赤玉葱一個、パセリ、それに胡椒と塩を少々。…まず腸詰めと玉葱を刻み、大きな器の縁に卵をこつんとぶつけて割り入れ、そこにすべての材料を加え、フォークを使って驚くほどのスピードでかき混ぜる。フライパンにひいた脂がぱちぱちと音を立てはじめるのを待って、祖母は混ぜた材料を丁寧にあける…」
しかもそうやって作ったオムレツをシュティプラと呼ばれる焼きたての柔らかなパンに挟むんですよ。
もうめちゃくちゃ美味しそうでしょ!
食べてみたい。
次点で「アルベリアのシェフと婚礼の宴」。料理の美味しそうな描写と宴の賑やかさはもちろん、アルベリアのシェフの作る料理への愛情と郷愁を、著者の文章からひしひしと(その後の短編でも)感じられるからです。
訳者あとがきによると、本書の��題をそのまま訳すと「婚礼の宴と、そのほかの味覚」となるそうですが、そこをあえて「海と山のオムレツ」と題するところが素晴らしいと思いました。