紙の本
もってる
2022/01/03 18:35
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投稿者:マー君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
指揮者藤岡幸夫氏の指揮者になるまでのエッセイ。
一言で言ってもってる。才能だけではなく周りの人の支えがないと指揮者にはなれないなと思う。小澤さんもそうだし、佐渡さんもそうだと思う。
でも、それはもってるだけではなく掴んで離さなかった人だからこそなのだと思う。
エッセイを読みながら、その中で紹介されている曲をふむふむと言いながら聴くのも良いかも。
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幼少期のエピソード、日本を代表する名指揮者との想い出、修業時代の失敗談から、演奏会に行く服装、拍手のタイミング、名曲に隠された秘密、作品解釈まで、関西フィル首席指揮者による興味深い話が満載のパワフルエッセイ。
あの自信はどこから来るのだろうっていうくらいマイペースなエッセイ。初心者をクラシック演奏会に誘うにはこれくらい書いていたら,行く人が増えるかも。
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日本ではクラッシック音楽の敷居が高いと思われている例として、楽章間で拍手をしてはいけないというルールはないという話は最近ネットでも見かけたような気がする。ヨーロッパでは、もし拍手が来たとしても、新規のお客が来てくれたと喜ぶという見方にはなるほどと思う。シベリウスのAndanteは通常の意味よりも遅めだとか、「新世界より」や「未完成」に、ブラームスが音を変えた箇所があって、そのまま演奏されているだとか、ショスタコーヴィチの交響曲第5番と第6番の続きだとする考え方とか、なかなか面白い話が読めた。
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BSテレ東で土曜の朝にやっている「エンター・ザ・ミュージック」という番組の司会者で、指揮者である著者が、自らが英国で指揮者デビューするまでの生い立ちと、その中で著者が出会った音楽、その作曲家のエピソード、こぼれ話的なものを紹介するという本。
この番組は2014年10月から放送を開始したというのに、この番組に出会ったのがつい先月で、この司会者の人も全く知らなかったけど、そこでのマーラーの「巨人」の解説が面白かったのと、今音楽の勉強をしているので、毎週観てみようと思った。まだ3回しか観てないけど、まあ面白い。そして、なんか藤岡さんという人は偉そうで、ほんとならこういう人おれ苦手なはずなんだけど、その偉そうさも嫌ではない感じが不思議な魅力があり、気になったので図書館で蔵書検索してみると、あった。のでせっかくなので読んでみた。
どうやったらこんなすごい(?、というのもまだすごさを実感したわけではないから分からないけど、絶対すごい人なんだと思う)指揮者が育つのか、というのを知るということが、音楽自体の話よりも興味を持ってしまう。生意気な高校生当時の写真、とか大学時代にヨットをやる、とか、ディスコに通うとか、彼女を作って云々みたいな話を読むと、こういうのがザ・バブル、という感じでバブルでイケイケだった人がおじさんになった感、というのが滲み出てる感じが腑に落ちる。でもやっぱりこれだけ音楽の世界に入れるというのは幼少時からの教育というのがものすごい。ってちゃんと書いてある訳ではないけど、実はピアノをずっとやっているとか。大学生になって夢を諦めかけているとき、「さすがに両親は僕の様子を見て心配するようになり、偶然パーティーでお会いした渡邉暁雄先生に、息子をテストしていただけないか、と頼んだのです。」(p.66)って、大学生になってまで親が出てくるなんて…、という、やっぱり一流の音楽家になるのは親との二人三脚型なのか??そもそも音楽に興味を持つ環境、というのが意識しなければ出来ない環境なのかもしれないし…??とか、いろいろ考えてしまった。ご本人は言わないけれど、最後になぜか考古学の人が推薦文?を書いているが、そこでいかに「父方・母方とも学芸に秀でた家系」(p.190)であることが詳らかになってしまうという、ここでなんか幻滅してしまい、この部分は蛇足なんじゃないかなあと思ったりする。ちなみにこの渡邉先生という人からの最後のレッスンの言葉が印象的。「指揮者なんて商売は、仕事柄いろんなことを言われる。でもキミは、決して人の悪口を言っちゃいけないよ。悪口は人間だけでなく音楽を汚くする。キミは悪口を言われる側の人間になりなさい」(p.119)という。いい言葉。一流の人というのは人間も出来ているという。
というのがこの本というより藤岡さんについてこの本を読みながら思ってしまったことなのだけれど、それでも海外での話、楽譜を機内持ち込み出来ずに預けたら荷物が出てこず、ブカレストで一泊することになり、英語を話せない「タクシーの運ちゃん」と意気投合して、この運ちゃんの家に遊びに行き、その親交を続けるという、この人自身のこういう魅力があるというのはすごい。まるで「たかのてるこ」状態だなあと思��た。
音楽の話。マーラーの「巨人」の放送を見た時にも、「巨人」っていうのは日本人が勝手につけた名前で海外の人は知らない、という話を聞いたが、それに関連して「日本人は独自の素晴らしい題名をつけるのが得意なようで(小説や映画でも多くみられます)、エルガーの人気曲『威風堂々』も日本だけのタイトルです。原題の『Pomp and circumstance』は、シェークスピアの『オセロ』の台詞からとられていて日本語に訳しようがなく、日本人が勝手に『威風堂々』というタイトルをつけたのです。(略)冒頭の作曲者の指定はallegro con molto fuoco(すごい炎のように速く)で、堂々とはまったく違う音楽!僕はすごいスピードで指揮をします」(p.39)だそうだ。オセロからだったんだ!pomp and circumstanceは知ってたけど、オセロから、ってのを知らなかった。忘れていたのか?すごいスピードの威風堂々って聞いてみたいなあ。他に聞いてみたい曲は、フィンランドの作曲家、シベリウスの交響曲第5番。第3楽章は「ホルンが雄大な美しいテーマを奏ではじめます(ちなみにポップスでこの旋律を使った曲がヒットしています)。この旋律がC dur(ハ長調)に転調するところは、振っていて必ず鳥肌が立つ最高に気持ちのよい店長のひとつです。」(p.101)って絶対聴いてみたい!(そしたらyoutubeにちょうどこの曲を番組で取り上げたのがあった!)あとは「ボレロ」のラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」。ピアノの連弾曲だったのに「あまりに素晴らしい作品なので、ラヴェル自身が、発表した翌年にこの組曲をそのまま管弦楽に編曲したのですが、これがまた素晴らしい!削ぎ落とされた小編成のオーケストラで、見事に色彩豊かで華やかな世界が拡がるのです。(略)『妖精の園』で王子が眠り姫に口づけする場面では、毎回その音楽の美しさに鳥肌が立つ」(p.137)だそうだから、やっぱり音楽の専門家が鳥肌が立つような曲ってどんな曲なんだろうか、と思うと体験してみたい。
最後に、この本はコロナ禍で書かれた、割と最近の本だけれど、「東京にいるとわかりづらいですが、日本のクラシック界を全国的にみると、段々と衰退しはじめているように感じます。コロナ禍はそれを一気に加速させるのでは?と危惧しています。(略)日本ではとくに楽章間の拍手にうるさかったりして、クラシックが高尚になりすぎているように感じます。」(p.185)ということだそうで、どこに書いてあったのかメモを忘れてしまったが、ヨーロッパでは普段クラシックを聴いてる訳ではないけど月1回くらいはコンサートに行きます、みたいな人が割といて、その人たちによってクラシックは支えられているらしい。確かに日本ではそういうのないのかな。コンサートに行く人はコアな人、っていうイメージが。おれも演劇だけじゃなくて、クラシックとか、あるいは能とか?音楽を体験するということをやっていきたいなあと思った。
「日本でクラシックの裾野を拡げる」(p.181)という「天命」があるという著者の想いがすごい伝わる、気軽に読める本。最後には「おすすめCD」の紹介もある。(22/08/08)