自然と平和と人のあり方を考えた
2023/06/15 23:40
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投稿者:くり坊 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アイヌの木彫り、ある事件、人の繋がりを軸に、時間軸が交差しながら話が進んでいく。ストーリーも秀逸だが、アイヌの世界観がうまく絡んで良い。アイヌは自然を敬い、愛し、SDGsな文化である。弱いから虐げられたという人もいるけど、弱いから虐げられて良いはずも無い。ロシアがウクライナに侵攻してしてけしからん、という風になっているけれど、その昔の和人だってアイヌを侵略したわけで、勝手に作ったルールを押しつけ、あげくに自然を破壊している。そして、原発の問題も絡んでくる。何かがあれば、ダメ出しするけれど、その恩恵に甘えていたとは棚上げで、人間というのはつくづくどうしようもないと思う。心に残った言葉を1つだけ記すと、「人の罪を罰するのは神の仕事、人にできるのは許すことだけ」。自然、ひいては地球を守るために、世界が一致団結で平和になることを祈る。
またまたこの作家を見直しました。
2021/03/30 12:55
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
またまたこの作家を見直しました。単なる暴力作家と思い読まずに来たが、まず975:『沈黙の森』(2012)で見方を変え、991:『雪炎』(2017)でこの作家の本当の姿を見た気がしたが、本作に至ってその深さに驚いた次第。もともと動物の描き方が巧い作家だとは感じていたが、本作では北海道の豊かな自然とその中で生きる動物達を絡めてアイヌの自然観、自然との共生の哲学を見事に描き出してる手腕に拍手でした。知里幸恵の『アイヌ神謡集』を巧みに挿入してることにも好感が持てました。
蛇足乍ら、人がバタバタと死んでいく作家というイメージも一新でした。本作でも1人は死ぬけどあくまでも予期せぬ事故死でした。また、主人公が何処か捩じれた精神・哲学を持ってるのも一つの特徴に思えていたが、本作の登場人物達は少々変わってはいるが、あくまでも基本は素直で生真面目さが勝る程度であるのも意外でした。いよいよ、著者の真の哲学が押し出されて来たのかな。益々期待大です。
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
アイヌの木彫り職人の敬蔵に弟子入りした尾崎雅比古は屈斜路湖近くに移り住み、敬蔵の木彫りの技術を学ぶ。雅比古は敬蔵が彫るヒグマ、狼、フクロウ等の作品に宿る生命力に感動する。敬蔵の孫娘の悠とも打ち解け雅比古の移住生活は順調に進む。しかし雅比古には人には言えない過去を抱えていた。その過去とは、また雅比古が敬蔵の弟子になった理由は?
アイヌの血を引く敬蔵、雅比古、悠が家族として生まれ変わったことに何故か感動した。
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絵画を見ているかのように色彩豊かな大自然が広がった。人は大切な人のために変われる。強くなれるし優しくなれる。アイヌの情熱が教えてくれた。
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読みやすいし、ストーリーも面白かった。
幻想的な場面もイメージしやすかった。
たいていは、その状況を理解させたいばかりにくどい説明となる本が多いが、この馳さんの本はちょうど良かった。
アイヌの苦悩や魅力、福島の話と考えさせられるとても良い機会となった。
最後の展開は少し冷めたが。
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アイヌの地で暮らす木彫り作家の敬蔵と孫娘の悠。
そこにやってきた尾崎という若い男。
アイヌが和人(わじん)から虐げられ搾取された歴史と現在も残る差別、また東日本大震災、原発事故で傷ついた人々の苦しみと怒り、それらが登場人物たちに重くのしかかっているのだが、この3人は触れ合うことで少しずつ変化していく。
読むほどに、北海道の自然と敬蔵の生き様に惹きつけられる気がする。
祈りと許し、とても心に残る作品でした。
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木彫りを通してアイヌの文化と言いますか、アイヌ魂を感じられるのが興味深く読みました。登場人物も魅力的ですし、展開も面白い。終わり方もいいです。
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アイヌとは縁もゆかりもなかった人たちが、木彫りを生業とするアイヌとの生活を通して自らの生き方を見つめ直していくのがおもしろかった。
展開が読めなくてドキドキするけど、登場人物たちがみんな不器用で、でも心があたたかくて、ホッとする。
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「はんかくさい」あほらしいとか、ばかくさいという意味以外にみずくさい、もどかしい時に使う言葉らしい。
決して人を罵倒するときに使う言葉ではなく、親しみと優しさが込められた言葉。
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この世界は、とてもシンプルにできている。
北の大自然に囲まれたアイヌの思想が美しいのは、そのためだと思う。文中、山が合わない人は海を好む、とあったがまさにその通りだと思った。
出し抜いてのしあがって生きていく競争社会で、削られてしまう人間の本質を取り戻す手がかりだと思った。
「罪は神がさばく、人はただゆるすだけ」心に残る言葉だった
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羆もアイヌも迫害される謂われなど無い。
元々先に住んでいたのは私たちでは無いのだから。
唯一の被爆国であることを忘れて、原子力発電を止めないことも含めて、改めて人間の愚かさを感じさせる。
そんな中でも、心優しく生きる主人公たちの愛のお話です。
数少ない人にオススメしたくなる本でした。
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若かりし頃友達と北海道旅行に行きアイヌの木彫りのお土産を買ったことを思い出しました。
熊に襲われたときはドキドキでした。敬蔵、悠、雅比古みな無事で良かった 最後の10ページほどは泣けました。良かったです。
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アイヌの老若男女血縁者3人が夫々の経緯から一緒に生活をする中、個々の想い、罪の償いで離れ離れとなるもお互いの気持ちとアイヌ魂を深めて心を通じ合い最後は、一緒に暮らすハッピーエンドで親族の繋がりを描く
北海道の屈斜路に住む無骨でアイヌ魂を継承する平野敬蔵は、若い頃酒に呑まれアイヌの生活スタイルから周りと上手く渡り合えず妹、娘と出て行かれ1人暮らしの中、娘夫婦の残された孫娘の悠を引き取り木彫りを生業として一緒に暮らす。悠はアイヌである事から虐められて育つ生活から高校その先は家を出てアイヌ差別の無い生活を望む。そんな2人の生活に突然、雅比古と言う東京から来た青年が訪れて木彫りの弟子を願い、通いでの3人の生活が始まる。雅比古は、東北震災で母を亡くし東京で福島原発問題に不条理に憤りを持つ2人と知り合い東電社長を拉致するも意に反して殺してしまう。雅比古は自首する前に母の兄と思われる敬蔵に会いに行くも自分もアイヌの血が流れる確信を持つに連れ真剣に敬蔵の弟子となり継承したい気持ちが募る。最後は、逃げる共謀者を説得して共に捕まり5年の勤めを終えて敬蔵の待つ屈斜路に戻る。そこには、北大生となり卒業後は、あれだけ嫌っていた屈斜路に戻ると言う悠も居る。
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人それぞれが抱える悩み、主観的にも客観的にもその悩みの大小など分からなくなるほどに圧倒的な存在感のある自然の雄大さがとにかく美しかったです。
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頑固な祖父と反抗的な孫。
あー先が読めるぞ。些細なことで孫が生意気なこと言って、爺ちゃんが怒鳴って、何日も口を聞かないとか…はいはい、幾度となく読みましたよこの展開…と思ってましたが大間違いでした。
頑固ではあるけどいつも悠のことを想ってる敬造、アイヌや敬蔵を嫌いだといいながらも感謝の気持ちを忘れない悠。言葉が足りなくともお互いが心の奥で想い合う所が、あぁ・・リアルな家族の形だなぁと感じた。
人は人を裁けないー。
雅比古は本当にはんかくさい事をしたけども、その答えに辿り着けたから”捕まるまで逃げる”のではなく”自首”を選んだのだろう。
最初から最後まで、3人が大好きでした。