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最高。
本を注文するニューヨーク在住の女性脚本家と、本を送るロンドンの古本店勤務の男性(ときどき同僚や奥さんも)との、1949年から約20年間続いた往復書簡。
ユーモアのセンスに溢れ、高まる感情をリズムよく言葉に乗せ、照れながら感謝を述べる女性。そんな女性の本への深い愛情と少しの悲しみをしっかり受け止め、おだやかに親しみをこめて返事をしたためる男性の言葉、ふたりの想いがどうしようもなくいとおしい。
こんなに楽しくて温かいやりとりがあるだろうか。手紙が終わったとたん、自分のことのようにさみしくなった。そのくらい、読書中の幸せの高揚具合がたまらない。
中高生のとき、手紙が流行っていた。「手紙が流行っていた」!なんて素敵な時代だったんだ!30歳くらいのとき、中学時代の私との手紙のやりとりを全部とってある友人の家で一緒に読み返したら、おもしろくてなつかしくて、どっちの感情でも涙がちょちょぎれた。
今の時代の若人の交流だって、いろいろと良いこともあるんだろうけども。少なくとも手紙は良い。とても、良い。
この本が最初に出たのは1972年だが、私が何年か前にある人から受け取って持っていた古いのは、80年発売の新装版。今年、増補版となって文庫が発売され、読むしかないなと迷わず買った。温かくて、なつかしい。本の最後にある後日談の温かさと私の古い本のなつかしさが、なんとなく、重なった。
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ロンドンの古書店に勤める男性と、ニューヨーク在住の女性脚本家が、本の購入を介して二十年にわたり交わされた手紙。
ただの書簡集でありながら、世界中で愛され、舞台にもなり、繰り返し出版・上演されるほど人気。
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へレーンの冗談がきついようで実は愛情が深く、可愛らしい。最後が突然すぎて驚く。へレーンの古本への愛着が文字越しに伝わってくる。自身は脚本で生計を立てているという境遇については、どのように感じていたんだろう、と思う。
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イギリスとアメリカ。
20年にわたる大西洋を越えた往復書簡集。
こういう結末はちょっと予感があった。
前の持ち主が愛読したところが自然と開けるような本が好き。
余白にある書き込みが好き。
見返しにサインをしてほしかったのに。
主人公の、本の愛し方が伝わってきてドキドキする台詞がたくさん。
内容を知りたいんじゃない。
そのお話が載った、その唯一無二の本という個体が経てきた出会いの数々を手中に収めようとするような感覚がとても素敵だった。
誰それの挿絵の版で。
朗読するとバッハのフーガのようだった。
こうした内容に対する表現だけでなく、本の装丁に関する描写も、とても美しくてうっとりしてしまう。
書簡のやりとりが進むにつれて「様」を省くようになり、愛称で呼ぶようになり、会いたいと思うようになり、という変化がいい。読者にもいつの間にか、登場人物の人となりや生活環境、職業や家族構成が分かってくる仕掛けになっている。それぞれの家族の生老病死、移住や政権交代、それに伴う生活の変化など、さまざまな出来事の、その内容が時代を感じさせるものばかり。
各国の食糧事情に話が及んで、改めて日付の意味に気付かされる。
「イギリスへ行かなくても、イギリス文学はここにある」という、末尾に近いところに出てくる筆者の台詞が、全てを物語っているみたい。
そうだよね、その気持ち分かる、と心から頷いてしまった。
訳者である江藤淳さんの解説にあった言葉の中で「うたかたのように消えていく書物への嫌悪感を持ちつつ、テレビの脚本も書いて生活を立てていることの羞恥と反撥」という表現があって思わず立ち止まった。
表現者の苦悩をつい漏らしてしまう相手が、信頼できる古書店の店員だったということにとても共感したから。
巻末エッセイの辻山良雄さんの言葉も印象的だった。
本を売る人の立場で、まだ見ぬ読者に対して「自分の顧客の本棚に責任を持っている」という台詞。
「商いの規模や利便性ではなく、お客さんと心の通ったコミュニケーション」、それが商売のあるべき姿、というフレーズに拍手を送りたくなってしまった。
あんまり懐古主義的な理想論を振りかざすのは控えたいけれど、こと文章や音楽のやりとりについては、、、いや、本当は家具や服や食べ物でもそうなんだろうけれど、、、やっぱりマニュアル通りの「ヨゴレ書き込みアリ」かどうかだけではない、美しさや愛おしさを分かり合える人とやりとりする、そのやりとり自体にも価値があるんだよ、などとつい、イタズラにコトバを連ねたくなってしまう。
1949年から1969年。
この書簡のやりとりから数十年が経って、数秒でやりとりできるメールが主流となり、検索してワンクリックで欲しいものが手に入りクレジット決済、ということが普通になった。
でも、この頃のやりとりと同じことが今も行われている、そういう関係もちゃんとまだ生き残っている場所がちゃんとあるし、きっとこれからもそうだよ!と声を大にして���いたい気持ちになった。
この本棚も、このレコード棚も、今風なモノも加えるならこのiTunesの中身も、それぞれ「お世話になった人」の顔が思い浮かぶ。
書簡も、メールも、捨てられない。
それが人生の醍醐味。
・・・じゃない?
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最初の方はへレーンからの手紙は言い方などキツく感じて(冗談で書いてるとしても)苦手だなと思ったけれど、読み進めるうちに、食料などを送ったり、フランクの家族や同僚も気遣ったり、ヘレーンの為人が見えてきてからは、ふたりの交流に温かい気持ちになった。
最後はそうなるんだろうなと予想はついていたものの、突然の幕切れに悲しくなる。
私は当時の時代背景やイギリス文学に疎いので、詳しかったらもっとこの本の世界観を堪能できたんだろうなと思う。
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ロンドンの古書店勤務のフランクとニューヨークの脚本家のへレーン、そして徐々に2人の周りの人々との友好関係が、古本の購入を通じて深まっていくのが、本当に心温まる書簡集(これが実話とはなんてすばらしい!)。
お恥ずかしながら、注文されるイギリスの古本をほとんど知らなかったものの、丁寧で優雅、ちょっとお茶目な手紙の文体が素敵で、上質な気持ちになりながら読み進めた。
20年の文通の間に、消息不明になる人や亡くなる人もいて、人と人とが心を通わせられる時間の儚さ、それゆえのかけがえなさについて、思いを巡らせずにはいられない。
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手紙を書き、ポストに投函して、返事が来るのを待つ。
その時間がとても楽しかったことを思い出した。
イギリス人の古書店員とアメリカ人女性の20年にわたる交流。
字だけのやりとりが、こんなにも暖かく、思いやりに溢れていて、なにより楽しいのは、「待つ時間」があるからかもしれないなと思った。
お手紙って、ステキ。
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人生初メルカリで手にした本が
ロンドンの古本屋と愛書家の20年にわたる書簡集……。
これまでの私は古本に関して少し遠慮してたけど、
古本と手紙って悪くないって思わせてくれるお話でした。
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手紙のやりとりなんて、今時の若者たちにしたら信じられないかも。友達に連絡するのも何かを注文するのも全てスマホで済ませられる時代だしね。「チャリング・クロス街84番地」の時代はそうじゃなかった。ニューヨーク住まいのアメリカ人女性がロンドンの古書店に欲しい本を依頼する一通の手紙から始まった長い長いやりとり。女性が古書店の担当者と実際に会うことは最後まで無かったけれど、2人の間には特別な友情が生まれたと思う。ニューヨーク住まいの女性の書く手紙はアメリカ人らしい砕けたユーモアに溢れていて、対するロンドンの古書店の担当者の書く手紙にはイギリス人らしい礼儀正しさが溢れているのが面白い。彼の周囲の人たちもとてもいい。手紙って個性が出るのよね。
このニューヨークの女性、へレーンハンフ(Helene Hanff)さんはWikipedia にも出てくるくらい有名な作家として生涯を終えた。彼女の書いた本も読んでみたくなる。
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アメリカ人ライターのヘレン・ハンフが英国の古書店と第二次大戦後から20年にわたってやりとりした書簡集。増補部分の書評に「アメリカ人の率直さが英国人の慎ましさを突き破った」というようなことが書いてあったが、確かに気質的に書店員フランク・ドイル氏側に近い一読者としては「ちゃんと私が頼んだ本を探してくださってるの?」なんて書面で見たら度肝を抜かれそう。
だがそんな手紙と同時に、戦後の物不足を心配したヘレンがハムだの卵だのを送り、店と顧客の関係を超えた信頼関係が築かれていく様子が手に取るようにわかる。最初は名前を明かさなかったフランク。店に手紙の写しを保存しなくてはいけないので個人的なことは書かないつもりだったが、だんだん人情味が出てきるところなど、今で言えばメールのccを外してジョークを交えた私信を交わし始めるといったところか。更には隣のおばさん、他の店員、妻や娘までも文通の輪に入ってくるのだからヘレンの文章力と、それを超えた人間力みたいなものの凄さよ。しかもそれと同時に、フランクが亡くなるまでも、その後も対面での交流はなかったというのだから面白い。
古書のタイトルが飛び交って置いてきぼりを喰らうかと思ったけれど、こんな風に芋づる式に本を読んでみたいなあという羨ましい気持ちがつのった。簡潔なやりとりで、さらっと読める。
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古書店とお客さま、イギリスとアメリカのひとが本の取り寄せから文通のようになり、周りがだんだんと関わるようになっていきます。そのやりとりが一冊の本となる事で、最後には誰もが知るひとになってしまうというお話。冗談を織り交ぜるやりとりに、ついつい笑みがこぼれます。こういう手紙の交換は携帯が普及した今しなくなりましたが、していた頃もこんな上手な言葉は思い付かなかったなと思いながら読みました。メールでもできるようになりたいものです。
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若き貧乏作家であったへレンハンフが欲しい古書を求めるためにロンドンにある古書専門店に手配依頼をしたところから始まる書簡の往復集。
始めは完全にビジネスの手紙ばかりだが、ヘレンが出す注文の手紙は明るくユーモアに富んでおり、だんだん返事をする店側の態度もビジネスライクなものから友人への手紙に変わっていく。
顧客とこのように親密な間柄になるというのは実際は弊害もあるだろうが、商売の原点というか本質を垣間見えると思う。
現代はあまりにもビジネスの先にいる個人が見えず、楽だけどつまらなくなりすぎたなと思う。
日常の生活の中でこんな風に友人と呼べる存在が出来れば素敵だなと思う。
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インテリとインテリの会話のような物。
海外の文学や著者の名前がポンポン出てくるけど、注釈がしっかりしているので、特につっかかることなく読める。
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実際に会ったこともないのに20年近く往復書簡が続く関係性、現代では稀に聞くこともなく、二人のユーモア溢れるやりとりが素敵で、羨ましくなってしまいます。
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ニューヨーク在住の女性脚本家・へレーンとロンドンの古書店に勤務する男性・フランクの往復書簡。やりとりを重ねていくにつれ、単にお客さんと本屋さんというだけの関係ではなくなり、食べ物に困った本屋の人々へ物資を送ったり、手紙の表現がくだけてきたり、フランク以外の従業員やフランクの家族とも文通が始まったりと、クリック一つで本が買える現代では考えられない交流が描かれる。
本の中に出てくる「乾燥卵の缶詰」一体どんな食べ物なのか気になる…。卵まで乾燥しておかなければならないとは、よほど食糧事情が大変な時代だったのだろう。
へレーンとマークス社の人たち、手紙のやりとりだけではなく、ぜひ会ってみてほしかったなあ。