紙の本
長いシリーズだが、ますます内容は充実。
2021/07/29 14:44
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
神田の袋物屋・三島屋の白黒の間での百物語も語られ聞き捨てられて、もう7作目。6作目から、聞き手は、おちかの従兄弟で三島屋の次男富次郎が引き継ぎ、なんとなくだが雰囲気が変わった気がする。いちばん大きな変化は、絵心のある富次郎が、語られた話を墨絵で描くことで封じ込め、それで聞捨てとする新スタイル。最後に何を書くべきなのかを悩むシーンが実は好きです。
そして、語り手が女性から男性に変わったことに合わせたように、語り手のキャラクターも変化した。...いや、そのように思えるのは、富次郎による人物描写が物語に色濃く反映しているからかも。
本作では、第一話では、美丈夫なお武家様。二話目は、特上にうまい団子屋のおみよ。団子にそっくりな丸顔の少女だが、気立てが良く、富次郎は憎からず思ってたんじゃあないかなぁ。そして、表題作は、白地の藍染の浴衣に頭の髷を隠すように置き手ぬぐいをした鯔背(いなせ)な老人。いずれの物語にも、聞き手富次郎の語り手に対する憧れや親しみのような感情が読み取れ、怖いはずの百物語を暖かく読み心地の安らかなものにしてくれていました。
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印象的な挿絵
2021/06/20 06:08
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
読むのが本当にもったいないと思わせるシリーズ。今回は三つの話。なんでもこの次の八之続の前編のような位置付けとのこと。今回特徴的に感じたのは挿絵。いつもより多めで、どれもその場面にピッタリで、まるで富次郎が描いたように思い、印象的でした。一つ目の『火焔太鼓』が面白かったです。結末に意外性は感じませんでしたが、火焔太鼓の発想が好きです。三つ目の話の冒頭のおちかの嬉しい話には、こちらまで何だか涙が出ます。最後の不気味な会話。これがどう次につながるのか、ますます目が離せないシリーズです!
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慟哭の巻
2022/04/05 16:40
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
一話と二話は悲痛。
「火焔太鼓」
もしかして…そう最悪の予想をしたら案の定、それ以上に酷い真実。
爺がそれを知らずに大往生したのがせめてもの救い。
美丈夫とよし
食べ盛りの少年と料理上手の嫂だった二人、確かに家族だった二人はもう会うことはないのだろう。
会うとしても次の代替わりが済んで全てが流れ去ってひび割れるほど乾ききってからの話になると思う。
辛い話だが語り手の美丈夫の人柄が物語を後味が良くないものにしなかった。
主様とお地蔵様の絵…なんとも切なくて泣いてしまった。
「一途の念」
不幸な夫婦とその子たちの物語。お夏の夫を思う気持ちが奇跡を起こした。その奇跡の果ての悲劇。
宿屋の後妻と蝋燭問屋の旦那の自然体の悪魔ぶりが寒々しい。
「魂手形」
後妻二態というべきか。
木賃宿の後妻・お竹さんがカッコいい!
青葉屋の後妻は…
おちかのおめでたになんで富次郎が倒れるのか、そこは不自然に感じた。
富次郎の前に現れた例の商人。
この会話、次巻に繋がるのだろうか。
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富次郎、新しい聞き手としてがんばってるね。
最初の火焔太鼓はなかなかの衝撃だった。
まさか、そんな、、、
一途の念、切なすぎる。夏の想いが、その深さが、、、
人でなし旦那にはバチがあたってしまえ!おみよちゃん、どうか幸せに!
魂手形、まずはおちかのおめでたいニュースが嬉しい。
そして、持ち込まれた百物語、人の思いの不可思議さ。
きっとみくん、がんばったね。
それにしても、あの最後のあの存在。
今後、何かをしかけてくるのかな。誰も、辛い思いをしないでほしい。
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なんだか富次郎が畠中恵の書く「若旦那」に思えてきた。富次郎がおちかの後釜になったときは違和感しかなかったけど、本作でようやく馴染んできた気がする。
このシリーズは分厚く読み応えもありで、出版される度に楽しみにしているのに、なぜか本作は薄い300ページもないではないか!なぜだ!と残念に思っていたのだけど、そこは宮部さん、少し厚みが減ろうとも三作ともとても良かった。
とくにタイトルとなっている「魂手形」は新しい語りで良かった!
水面が怖いけど切ないし、お竹がまた良い。
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シリーズ第7弾。
聞き手が富次郎に代わり、元来の性格からなのか、どこか語られる話も不思議さの中に優しさが感じられる。
聞き手を卒業し、嫁いだおちかのその後も折に触れ語られていくのも読者としては嬉しい。
富次郎の百物語も怪しげな雰囲気を醸しているし、次巻はどうなるのか楽しみである。
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魂手形。三島屋の皆のおちかを思いやる心根に涙が流れます。心の闇を打ち消すのではなく抱えたまま強く生きていくおちか。
魂手形の章は痛快なお話でした。たまにはこんな話をお願いします。小旦那、西瓜の食べ過ぎでお腹こわさなかったかしら?
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三島屋さんの変わり百物語。
聞き手は嫁にいったおちかさんから代わって従兄弟の富次郎さん。
今回は三話。どの話も切なくて、それでも温かいものが残る。
タイトルの魂手形は読み応えあり、泣きたくなる様な場面もあった。
おちかさんを含め、三島屋さんの筒が無い日常が続く様にと願いたくなる。
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三島屋第七弾。「火焔太鼓」「一途の念」「魂手形」三編収録。
はーーー。
三編ともよかった・・・。
「魂手形」のひんやりした感じがたまらなく怖く切ない。
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序
第一話 火炎太鼓 第二話 一途の念 第三話 魂手形
少しずつ富次郎さんが黒白の間に馴染んできた気がするなぁと、のんびり読んでいたらやっぱり不思議で、ほんのり怖かった。
人の気持の行くところには何かがあって、そこには何かが残るのだろうろ思う。
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今回の物語のひきが、早く続きが読みたくて仕方ない‼
おちか…が心配ですが、富次郎の変化も気になります。
火焔太鼓、柳之介の末路とよしの覚悟が切なかった。
一途の念、おみよの母の人生が辛かった、おみよがもうでてこないのか、富次郎と何か縁がありそうだと思ったのに。
魂手形、お竹の人柄がとても好き…お竹と吉富の関係が微笑ましい。
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三島屋変調百物語 第七弾。
大好きなこのシリーズ。季節的に“百物語”を読むのにピッタリだなぁと、悦に入りながら堪能させて頂きました。
今回はいつもより少なめの三話構成です。
どの話も、ゾッとするような怖さ、人の業の恐ろしさ、心の弱さ、そして哀しさと温かさが絶妙な塩梅で配分された読み応えのある話でした。
第一話「火焔太鼓」に登場する“よし”と、第三話「魂手形」に登場する“お竹”は何か通ずるものがある気がします。二人とも、見た目はアレですが、強くて清らかでとても優しい素敵な女性ですよね。
聞き手が、“陰”なおちかから“陽”の富次郎に引き継がれ、明るい感じになったかなと思いきや、終盤で影を落とすような展開になって、せっかくおちかの慶事があったのにちょいと不安です。続きが気になるところです。
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おちかの時より富次郎の話の方が明るい感じがする。やっぱり聞き手に合わせてくるのかな。変化があって良いと思う。
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三島屋シリーズ7作目だって!
ちゃんと全部読んでると思う。
聞き手がおちかから富次郎に代わってまた心機一転しているけど、おちかのことも出てくるし、趣向が違う話し手からの1話でできてるからこれだけ続いてても飽きないのがすごいよね
人間の深い闇の部分とか出てくるけど、人情ものもあったり、ちょっとあやかしっぽいのもあったりで、やっぱり宮部さんは時代ものが好きだな
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三島屋の変わり百物語、第七弾。富次郎が聞く念と情の物語り。
第一話 火焔太鼓・・・美丈夫の武士が語る、火を制する太鼓の話。
山にある沼のぬし様の御力を込めた神器。ぬし様とは?
重度の火傷を負った兄は嫂と共に彼女の実家へ。そして・・・。
第二話 一途の念・・・おっかさんがやっと楽になれる!と叫んだ
屋台の串団子売りの娘の打ち明け話。夫婦の幸せはほんの一瞬。
病んだ夫と4人の子。母の苦しみと、愛が起こした変異とは。
第三話 魂手形・・・鯔背な老人が語る、生家の木賃宿での出来事。
15歳の頃、お盆の時期に滞在した客の真の生業と連れの正体。
彼の代わりにおいらが手伝う。和魂となって昇天させるために!
初夏から初秋までの季節の移ろいの中で、語られる物語り。
御家を、領民を、家族を守りたい、念と、家族の心情の切なさ。
病床の夫と子たちを守るための、念は、正気と共に失われる。
現世で彷徨う亡魂をあの世へ送ってやりたい、念を知った情けの心。
異形の存在、一途の心の不可思議な力、亡魂のための行動。
それらを、語って捨てたい。語ることで微笑みを取り戻す。
寿命を知り今のうちに語っておきたい。
語る者の念も込められていて、どれも切ない話です。
だが、慈しむ存在もある。嫂、夫婦の過去を知る元・仲居頭、
そして義母。彼らの姿が三島屋への語りへの導きなのかもしれない。
特に、吉富の義母・お竹が良かったです。
いいおふくろさん、いい女。そんなお竹に影響された吉富の、
あまりに違う水面さんの義母への怒りが、あんな破天荒な行動を
起こした素因の一つなのかもしれないです。
胆の据えたお勝とおしまがいることにより、聞き手としての
場数を踏みつつある富次郎ですが、おちかと自分を比べる様子は
まだ、少々心許ない感じ。話によっては手が震えているし。
頑張れ、小旦那!
ーーーここから少しネタバレーーー
おちかのおめでたに浮かれる三島屋の面々だが、
富次郎の前に、あの男が現れる。
この世の業を集めるという覚悟。守ること。そして、絵。
富次郎自身の行く末に、希望という道があることを願います。