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宮廷女房という生き方
2023/11/12 17:09
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤原道長が、その権力の完成に近づいていた11世紀初め、亡き一条帝の中宮、そして後一条帝の母后として後宮の主であった彰子に仕える三人の女房がいた。
紫式部の娘、賢子と和泉式部の娘、小式部、そして中将の君だ。
そろって19歳という、当時としてはそろそろ若さを卒業して、中堅どころに差し掛かるというお年頃。年齢の近い道長の息子たちと、恋をささやきながらも、後宮や政の行方にもアンテナを張っている、結構神経を使う立場の彼女たち。
そんな三人に持ち込まれた難題は、とりかえばや物語そのままの状態に陥っている道長の息子小若君と、娘六の君をなんとか本来の姿に戻してもらいたいというものだった。
著者の『桜小町 宮中の花』が、謎多き小町の生涯に、新たな光を当ててくれたのが新鮮で面白く、同じ宮中ものの本作を手に取って見た。
当時の宮廷女房というものは、華やかなばかりではなく、その身分はかなり不安定で、雇い主の権勢次第で、どう転ぶかわからないのが実情だ。高貴な家柄の子息たちと恋はしても、妻に迎えられることはハードルが高く、子をもうけても寺に入れざるをえなかったり、乳母に任せきりで宮仕えを続けなければならなかったりで、苦しい立場に立たされることがほとんどだった。
ましてや、仕える主人が権勢の座から滑り落ちたが最後、女房たちはバラバラになって、その後の人生はどうなったかわからなくなってしまう。数々の歌集に選ばれた和歌だけが、その生涯の輝きの一端を伝えてくれるに過ぎない、彼女たち女房という存在は、奈良朝や平安初期に堂々とその存在を誇示した女官たちとは、明らかに異質なものと言わざるを得ない。
賢子たちの生きた時代は、后に上がる家柄と、それに仕える家柄がはっきり分かれてしまい、前者は入内のその日まで、邸内奥深くに暮らし、場合によっては身内の男性にさえ顔を見せないこともあった。
一方、賢子たちのような中流以下の家柄では、無位無官で、それぞれの権門の娘たちに仕え、さほど男性の出入りが厳しくなかった後宮で、男性貴族たちに素顔をさらしながら、日々を過ごすのが当たり前だった。
今なら、男性に顔をさらすのは当然のように思われているが、当時ではどうしても后たちとは違って、軽く見られる存在だったのは否めない。よほど上手く身を処さないと、一時の遊び相手で終わり、出産時に命を落とす・・・という末路を辿る例がいかに多かったかは、はっきりした記録にも残らないだけに、余計にその数が思いやられる。
これらの事情を踏まえて本作を読むと、現代的なお仕事ガールの物語の背後には、まったく違った彼女たちの顔が見え隠れする。六の君や敦良親王に、その身分に相応しい心構えを指南する賢子は、百年前の小野小町と同じ女房ではあるが、その本質は時代の動きと密接に連動して、明らかに別のものに変わっていると思う。
賢子
2021/06/30 19:48
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
永井路子さんの、藤原道長・倫子夫妻を描いた「この世をば」、道長と明子の息子能信を描いた「望みしは何ぞ」が愛読書なので、聞き覚えのある名前が多く楽しめました。道長・倫子の娘彰子に仕える紫式部の娘賢子、和泉式部の娘小式部、中将の君3人娘の活躍が面白かったです。解説で中将の君の本名やその後がほのめかされていて驚きました。この後とんでもない悲劇が起こるはずですが、その直前で物語は終わっています。続きがあるのかどうかも気になります。
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