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淡々とした論説の流れだったから、あまり感情も起伏せずに読み進め、データに裏付けされた組織論、あるいは自己啓発本程度に思ったが間違い。いや、そう言えば口絵のライフタペストリやコミニケーションソーシャルグラフで予感はあった。久々に読む最強の本、と稚拙に一言で表現するが、まさにそう。
アリストテレスを引き「幸せ」を定義した後、幸せな組織をウェアラブル端末で分析し、組織論を解説する。フロー状態を体系化したチクセントミハイ教授との共同研究との事、先ずこの導入で一気に引き込まれてしまう。
幸せな組織とは。①人と人とのつながりが均等であり特定の人に集中していないこと② 5分間会話が多いこと③会話中に体がよく動くこと④発言権が平等であること、こうした事がデータで裏付けられていく。
同じように、個人の知的能力を測るIQに対し、集団的知能の概念について。集団的知能が高いグループには①他者の感情を汲み取る能力が高い人が多いと集団レベルに影響②チーム内の会話における発言間の平等性③女性比率の高さ、等も解説される。しかも、ここまでいっておいて更に、データなど過去の事と更に先にいく。秀逸なのは、読者を全く置き去りにしない事。それなのに、どんどん飛躍する。
心の資本ヒーローと言う考え方。HEROという、ホープ、エフィカシー、レジリエンス、オプティミズム、これらが重要となる事。エフェクチュエーションとコーゼーション。サラリーマンはコーゼーションで理屈から。成功した起業家は、許容できる損失からスタートする。自らが持つ資源が増えれば行動できる範囲も変わる。行動しなければわからないことが多い不確実な状況で行動すれば、新たな人とのつながり情報や知識や経験が得られるから。最近、酒の席で友人とまさにこの話をしていた。AI化が進めば、コーゼーション的思考は無用化する。主張が、よく分かる。
平等論について。格差のある状態は何の理由もなくごくありふれた自然の結果だと言うこと。全く同額の所持金からスタートし、配分のためのルールも平等なシミュレーションで、結果として大きな不平等が生じる。その後、エントロピー増大の法則を解説。
極め付けは、易経。2000年以上前に書かれたこの古典は、変化の書であり、64個の極めて体系的に構成されたパターンによって、二進法の基礎になったと。易とコンピュータ両方に二進法が使われているのは偶然ではなく、17世紀に中国に渡った宣教師がこの書物を持ち帰り、当時、二進法を独自に考えていたライプニッツの目に留まることになった。ライプニッツにより二進法は体系化され、コンピュータや情報技術の発展になくてはならないものになっていった。咸臨丸。咸は001 110 臨は110 000 易では陰0陽1により、二進法を表現する。咸臨丸は、このパターン言語を使っていた。面白い。
これでも十分だが、最後の最後に、憲法草案まで書いている。一体何者?論理と知識が同時に満たされる読書体験。
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未来は予測できるものではなく、変化は起きるものとしてその変化を機会に変えられるよう柔軟な生き方を身に着けたいよね、というお話。
著者の過去の取り組み事例などは本書の主題とは異なるがデータの取り方や扱い方の参考になった。
他人にいい影響を与えながら生きたいなぁ。
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◯多くの企業では、以下の4つの統制を導入してきた。
(1) 計画に従ってPDCAをまわす
(2) 仕事を標準化し、横展開する
(3) 当事者が誤った判断を下すことを内部統制により防止する
(4) 従順な人を安く雇い、設備に投資する
(49p)
◯今日のオペレーションに、明日のための的確なデータ創生の視点を入れなければいけない(202p)
◯ここで一番だめなのは「私はブランコ屋なのに、鉄棒をやらされて困っている」と過去を引きずることだ。(219p)
◯変化を機会に変える行為が「幸せ」である(276p)
★「実験と学習」という、デザイン思考とか、アジャイルの考え方が見直されているが、これまでの、効率しか考えない、非効率が罪のような考え方の方が、特殊な、高度成長期の成功体験に引きずられた、一過性のものだったのかもしれない。
★今でも「標準化と横展開」が有効であることは言うまでもない。ただそれを盲信して思考停止になるのは避けたい。深化と探索、Googleの20%ルール。
★この本が独特なのは、変化に対応するために「幸せ」を追求している点。幸せは状態でなく行為なのだ。意識的に共感と敬意を示そう、楽観的なものの見方は鍛えられる、という提案に共感した。
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相変わらず、抽象的なネタを定量的に分析されていて、まず視点が従来にない、という点が痛快に面白い。
そういった意味では、前作ほどのインパクトはなく、ただただ「あぁ、ブラッシュアップされてるなー」と感心するにとどまる。
途中、教育にまで話が発散していくが「結果による処遇の不平等」に関する論は非常に興味深い。エントロピー増大を当てはめるアプローチは、著者らしいアナロジーの提示だったと思い、ワクワクしながら読むことが出来た。
ただ、個人的には最後の1/3くらいは不要かな、と思った。が、本書の意図からすると必要だったのでしょう。
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あ、面白かったです。たくさん、思うところがあり、付箋を沢山つけました。もう一度読みたいです。タイムリーに出会えたかもしれません。
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著者の講演を聞いて手にした本です。お話も平明で力強かったですが、文章で読むとさらにその印象は強まりました。理系研究者の語る「幸福論」は、まるで方程式を立てて、それを解いているような気持ち良さがあります。また、それが抽象論ではなく徹底して具体であるのは、実証実験とデータを重ねて行くスタイルにもあると思います。読みながら4年前にに読んだアレックス・ペントランドの「ソーシャル物理学」を思い出しました。本書は「ソーシャル物理学」の半径を身の回り3メートルにメッシュした、いわば「ハピネス物理学」です。しかし、著者の論理的な主張のその手前で、アメリカの下院議員ジョン・ルイスの「民主主義とは状態ではない。民主主義とは行為である。」という言葉から語る「幸せとは状態ではない。幸せとは行為である。」という力強いアンセムがなによりも刺さりました。Happinessという状態からHappingという動詞へ。ってことは「Happing物理学」か…。FINE、HOPE、だけでなく、とにかくいっぱいフレーズ、メモしました。
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1〜2週間に1冊は本を読みたいと思っているが、この本はやたらと時間がかかった。小さい文字で324ページはなかなかヘビー。内容的にも「ウェアラブル端末やスマホの登場で、幸せを科学的に測定可能になった」ということをベースにその結果を説明してくれればよいものを、自己の研究成果や上記と直接関係のない思いが散りばめられており、読みにくかった。
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少し読んでは考え、少し読んでは考えることがある本でした。
良いチームを作りたい方、予測できない世界を生きることに
不安を感じている方におすすめです。
とても良い本だったので長めの紹介文になっています。
科学、特に統計学は人々に予測する力を与えてくれました。
深層学習は過去のデータから最適な組み合わせを見つけてくれます。
幸せに働く人が多いチームでは売上が良いことを示しつつ、
幸せに働くチームが"どのような行動をしているか"を、
ウェアラブルデバイスから得られたデータを基に分析します。
一方で私たちを取り巻く環境は、大きな技術の切り替わりだけでなく、
ほんの小さなきっかけですらSNSで共有され、不連続な予測不能の未来を
紡いでいきます。
このような予測不能の世界では、急峻なニーズの変化、
企業の部門撤退や倒産に翻弄され不幸を感じる境遇に
直面することも少なくないと思います。
こんな予測できない時代に私たちはどう生きるのか。
そのヒントが3000年以上前に体系立てられた易経にあると筆者は言います。
易経はごく最近まで広く学ばれ、先の見えない世界を駆け抜けた明治時代にも
重宝されていた考え方です。
変化を多角的な視点で受け止め、行動し、学び続ける方法を示してくれる易経は、
本来、日本人が一生をかけて鍛錬した"道"は学び続ける精神(武道、茶道など)として
根付いてきた考え方だと言います。
変化とうまく付き合い、幸せに生きるコツを教えてもらえる1冊でした。