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ベルリンに堕ちる闇 みんなのレビュー
- サイモン・スカロウ (著), 北野 寿美枝 (訳)
- 税込価格:1,562円(14pt)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2021/11/17
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文庫
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紙の本
ベルリンに堕ちる闇
2021/12/26 08:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
元レーシングドライバーのシェンク警部のチームが殺人者を追い詰めていく展開でしたが、普段の捜査ではなくナチスドイツ政権下での犯罪捜査というところが面白かったです。シリーズにはなりにくい作品でしたが、ちょっと変わっていて読みごたえがありました。
紙の本
英国人作家による独歴史・警察小説新シリーズ!
2021/12/23 22:24
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
1939年第二次世界大戦開戦直後、クリスマスが近い12月のベルリン。ナチ党幹部の元女優の妻殺害事件が発生する。被害者はゲッベルスの元愛人であり、また、生前の行状に問題があった。党内派閥間の摩擦を引き起こし、また、党の対面を損ねることなく事件を解決し犯人をつきとめるべく、クリポ刑事警察の警部補ホルスト・シェンケは、ゲシュタポ局長ハインリッヒ・ミュラーから事件の捜査を命じられる。事件は連続殺人事件の様相を示す。灯火管制下の闇、雪によって狡猾に証拠を残さない犯人像の手掛かりに乏しく、一方でミュラーからプレッシャーがかかり、シェンケは毎日が崖っぷち。それを恋人カリンとの逢瀬が癒してくれる。そこに危うく難を逃れた女性の証言を得て事件解決の糸口を得ることになるが、彼女はユダヤ人であった。彼女をナチから守りつつ犯人を追い詰めていくシェンケ、しかし誤認逮捕であることが判明、窮地に追い込まれるが土壇場の大逆転劇で一機に事件は解決を見る。
犯人と思しき人物の数は限られ、また、現場検証、地取り、尋問といった地道な捜査手法が中心で事件を解決に導く種明かしもない。しかし、戦争中の暗闇のベルリン、しかもナチスが支配している時代の雰囲気がサスペンスの不気味さを増している。またカナリス(カリンの叔父)、ミュラー、ハイドリヒといった実在の人物を登場させ、シェンケが対峙するという設定も本当らしさを印象付けている。
ゲシュタポとクリポはハイドリヒ長官の国家保安本部直属の警察組織となっていたのだが、シェンケは自らの信条によってナチ党に入党していない。ナチ社会では不利な立場にあるが、その刑事としての有能さ、またの派閥にも属さないということがかえってこの事件を調査するのに適任ということで白羽の矢が立った。貴族の出自で、ドイツの英雄ともてはやされた元レーシングドライバーだったが、事故で引退、警察に入ったという経歴。東部戦線では何千人という人間が戦争で殺されているのに、ベルリンでは殺人犯を逮捕しなければならない現実に疑問を感じながらも、自己の良心・職業倫理に忠実に職務を遂行する真面目な「アーリア人」だ。
本書は歴史小説を書いてきた著者初のミステリ。ドイツではない英国作家が描いたナチ第三帝国下の警察小説は初だろう。綿密なリサーチに裏打ちされた時代の雰囲気も相俟って評価され、「シェンケ・シリーズ」として第二作が予定されている。「犯罪者どもが動かしている国で刑事である価値は何だろう?これまで、自分が正しいと思うことをし、法を執行することに打ち込んできた。でもそんなことをしてなんになるだろう。善良な人間でありたいが、ミュラーやハイドリヒのような連中に仕えながら善良でいられるだろうか?」と独白し悩むシェンケを、恋人カリン、また、信頼できるクリポの仲間、そして「土壇場の大逆転劇」の立役者で、神学の博士号を持つ元ゲシュタポ軍曹で警察官シェンケに親近感を抱くオットー・リーブヴィッツが不思議な関係のバディとして支え、物語は展開していくだろう。
訳者はあとがき最後で「なぞかけ」をしている。本作は1940年から41年にかけて、ベルリンで実際に遭ったシリアル・キラーSバーンマーダラーS-Bahn Murdererから着想を得ており、著者は作品のなかでその「におわせ」をしているという。以下ネタバレ!この実話の映画化名「ブラックアウト」(2014)が本書原題と同じということかと思ったら、最後の最後に答えがあった。シェンケがハイドリヒと「手打ち」をした嘘の事件解決報道をした新聞を列車で読んでいた時、その記事を覗き見し新聞をシェンケからもらった人物が答え。
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