紙の本
忍び寄る怖さ
2023/04/02 16:40
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
淡々として平易ではあるが底の見えない不気味さ.仄暗さを湛えた語り口.文体が大変に良い。自分自身のものだと信じて疑わなかった生活.家族が突然にすり替わったら という、SF ファンタジーなストーリー設定を非常に自然に表現している。テーマである「満月」の扱いも大変に巧みである。
紙の本
ホラーと不思議とロマン。
2022/04/05 11:31
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
月とその光はいつも人類に不思議な力を及ぼしてきた。
月の夜に自分の全てが入れ替わってしまったか……?
月の光に導かれて、別の世界を夢見る女性。
満月の夜に以上に能力を高め、新月には生命力を極端に低下させる伝染病が実在する世界の異様な近未来。
なんと豊かな文章、心躍らせる創造世界。
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3つの話のうち、タイトルになっている残月記の話は、たんたんと書かれていて最初苦痛だったが徐々に話に飲み込まれていった。
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月は美しい、美しいからこそ怖い。
暗闇の中で足元を照らす、そして暗闇の中に心を映す。照らしたいもの、照らしたくないもの、どちらも月の前では無力だ。
月の光に紡がれてここではないどこかにある、妖しく美しい世界へと導かれてしまった。
不思議な世界の企みにうかうかと足を踏み入れたら、もう戻ることはできないのだろう。小田雅久仁の名前が月に刻まれた。
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月景石が一番わけわからなくて面白かったです。最後の描写なんてとくによかったです。ゾクっとしました。
表題作は好みの問題かと思いますが、説明が多くあまり手がすすまなかった。
日本が独裁政治になった流れも、未曾有の災害がきっかけとなったならば海外諸国が黙っているとも思えず、そんなに簡単に独裁政治体制になれるのかな?と疑問に。
ファンタジーにしてももう少し説得させてほしかったなあと。
恋愛要素についても、なぜこの二人がこんなに相思相愛なのか、この二人でなきゃいけない理由みたいなものがイマイチつかめなかった。
でも月の世界の描写、月鯨など引き込まれる場面もたくさんありました。
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夢と現実の狭間で、月世界を訪うパラレルワールドを綴ったハイファンタジー中短3編
自らの意思で自在に移動できるわけではないようだ…
月の影響を受け身体が侵される感染症「月昂」に罹患した主人公の生き様を近未来日本で描いた表題作他、月の静謐な美しさと過酷な真実の対比が纏う独特のダークな世界観に魅了される重厚な作品です
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帯コメントが豪華だったってだけで、作者も知らず、完全にジャケ買いしました。
結果、表題作、良かった〜!
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Amazonの紹介より
近未来の日本、悪名高き独裁政治下。
世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描ききった表題作ほか、二作収録。
「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力が構築した異世界。
足を踏み入れたら最後、イメージの渦に吞み込まれ、もう現実には戻れない――。
最も新刊が待たれた作家、飛躍の一作!
「もしも月が〇〇だったら」という発想のもと、月にまつわる三つの物語でしたが、「恐怖」の一言だけでは言い表せない様々な要素が詰まっていて楽しめました。
あるときは異世界ファンタジー?、あるときは恋愛?などジャンルの枠に嵌まらない独特な「ワールド」がありました。
作者の脳内を見ているかのようでした。
ただ、個人的には読みづらかったです。
文章の表現が難しいだけでなく、1ページにぎっしりと文字が羅列しているため、なかなか世界観に近寄り難かったかなと思いました。
新たな「月」の見解に、絶対忘れることはないだろうと思いました。フィクションではありますが、豊かな発想力に脱帽でした。決して良い終わり方というわけではなく、後味の悪さや不気味さなどが入り混じった終わり方なので、複雑な気持ちにさせられました。
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近未来小説。
月昂という感染症にかかると満月の夜に死ぬ確率が高くなる...。
前半は面白い話でもなかったのだが、後半から事件性が出てきて盛り上がり、最後は悲哀で終わる。
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月って、不気味だ。
どこまでも追いかけてくるなあと、小さい頃私も考えたことがある。
鏡の向こうの世界、夢の中の世界が実は現実なのだと考えてみたこと、月を見ると獰猛になる種類の人間がいると考えてみたことも。
3つのお話。
もしかしたら現実にもあるんじゃないかと、少しだけ思ってしまった。
これから月を見るとこの作品のことが頭をよぎるかもしれない。
細かなところまで想像力が働いていた。まさに「底知れぬ想像力」。
ファンタジーにしては本当にあまりに緻密で、「残月記」の話は途中でちょっとお腹いっぱいになってしまった。
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表題作は、月に向かって吠える「狼男」が「グラディエーター」の戦士として戦うような不思議な味わい。それでいて、緻密で神秘的な描写に溢れるダークファンタジー。で、最後は美しくも哀しい「愛」の話だった。
現代のコロナ禍にヒントを得たのではと思われる「月昂」という感染性伝染病がベースになっているところがいかにもな感じ。
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うーん…難しかった…パラレルワールド?ファンタジー?全部独立した話なの?私の読解力では理解しきれなかった…月が不気味な存在っていうのはちょっと分かったけど、難しかった…
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今まで月に対して抱いていたイメージ(夜道を明るく優しく照らしてくれるもの)が覆ってしまった。冷たく薄ぼんやりと世界を照らす月。その裏には何を抱えているのか分からない不気味さ。
1作目の「そして月がふりかえる」は、一番現実的な設定から始まるので、余計に怖さを感じた。一瞬で、自分の立場が変わってしまう世界になる恐怖。家族が家族でなくなる怖さ。3作の中で一番怖いかもしれない。
表題作は、残酷な世界だけど、現代とは完全な別世界の話だから、それほど怖さは感じない。冬芽と瑠香の愛の物語として読んだ。誰にも知られず彫刻を作り続ける冬芽の生きる力と、世界を愛する心が、胸に沁みる。
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SFです。月にまつわる3編。好みは大きく分かれる作品だと思う。
個人的に「そして月がふりかえる」が好きだった。中島敦の「山月記」にどことなく似ている。
小田雅久仁さんは初だが、文章の想像力がすごいと思った。
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三篇とも面白かったが、尻上がりに完成度が高くなっていった。
特に最後の「残月記」の近未来感がリアルでゾクゾクした。
コロナ禍と一党独裁政権に自発的に隷属しそうな現代の空気を小説の背景に据えているところ、小説はこうでなくっちゃ!
現代の「誰か」を想像出来そうな下條拓という独裁者。現代に通じる恐ろしさだからこそ、ファンタジーなのにリアル。
月昂というウイルスによる感染症はメタファーだ。こんな悲しい感染症を創作した作者の想像力と知性に感服した。