紙の本
見える手
2021/12/29 14:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
工業化の産物である大企業という制度的形態や大量生産と大量流通を統合した大規模統合企業の誕生に伴う市場の「見えざる手」から管理の「見える手」へのアメリカ経営史を解かり易く論じた書。
投稿元:
レビューを見る
アメリカにおける企業形態の変化、発展の歴史をコンパクトにまとめたもの。
第一期は、18世紀後半の国民経済の形成から1840年代まで。家族的事業として行われていたものが専門化が進んだ時期。
第二期は、第一次世界大戦まで。新技術が輸送、生産、流通の過程を変革し、近代的に統合された複数事業単位企業の生成を促した。
ミドルマネジメントとトップマネジメント、中央本社と職能部など、管理組織の構造や機能について、分かりやすく整理されている。
第三期は、1920年代から今日(本書の書かれたのは1978年)に至る時期で、複数事業単位企業がほとんどすべての経済部門に出現し、巨大で非人格的な経営者企業がアメリカ経済のほとんどの部門で支配的になってきた、とする。
執筆時点の頃は、多国籍企業の巨大化、国際化が進行し、経済規模では中小国家をも凌ぐと言われた時期になるが、それらについて触れられていないし、当然ながらグローバル化以降についてもそうだが、「企業経営」の在り方を考える上で、参考になる視点を与えてくれると思う。
投稿元:
レビューを見る
アメリカの大企業の前では、市場は「神の見えざる手」ではなく、経営者のマネジメントによる「目に見える手」によって支配されているんだそうな。
そして大企業を支えるのは管理組織であり、組織は戦略に従う。こうした「経営者資本主義」から、未来は「ステークホルダー資本主義」に移行していくという。それは生産力に対する市場の限界が見えたことで。やっぱり「見えざる手」の影響を受けている事実を突きつけられたから。
企業の生存目的は株主に奉仕するのではなく、ステークホルダーに奉仕するっていうけど、ステークホルダーは誰がどうやって決めるのかね。
投稿元:
レビューを見る
経営史の大家による、アメリカでの企業組織の展開をまとめた書籍。『組織は戦略に従う』で紹介されたGMやデュポンなどにみられる事業部制組織が、米国でどのような条件や状況のもと成立したのか展開されており、『組織は〜』を補完する本として私は読みました。
地理的に巨大な国内市場や大量消費社会の到来による量的な市場の拡大のもと、需給予測を行い巨大な官僚的組織を運営するために適した形として、単純な組織から機能別、事業別の組織が作りあげられる。この辺りの展開は見事だと思う。
後書きにもあるように、企業の管理職、経営層に着目し、雇用される労働者にはスポットが当たらないのがチャンドラー経営史。その辺は各人が複合的に考えられれば良いのかと。