紙の本
頭を使うことの大切さを学べる1冊です
2022/01/06 14:14
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
環境倫理をテーマに、環境問題をどう考えるのが適切なのかを、現役大学教授の著者が説いた1冊です。
当書を読むことで、物事を考える際には知恵を用い、しっかりと頭を使わないと意味をなさないことを学べます。さながら、実際に大学に入学してそこで勉強することで、得られるものの考え方を、当書は提供しています。ちくまプリマ―新書にピッタリの内容になっています。
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どちらかといえば環境問題を意識して日々の生活行動をしてきた自覚がある。
しかし本書の中で「環境教育によって、環境に優しい消費をするよう促されているが、環境を守るには「消費の仕方」ではなく「生産の仕方」を改めるべき。問題解決を消費者のエコな選択に委ねるのは間違っている。それは消費者に環境問題の責任を過剰に分配している。」という旨の記述があり、ハッとさせられた。
消費者行動にももちろん意味はあるだろうが、そこまで責任を感じて行動する必要は無いのかも知れない。
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エコな暮らしをすれば環境問題は解決するのか:
「地球温暖化」が話題にされていなかった時代があった
地球にやさしくなるためには
個人の倫理から社会の倫理へ
環境倫理学の三つの基本主張
自然の生存権
世代間倫理
地球全体主義
社会倫理としての環境倫理
科学技術の進むべき方向
まだ生まれていない人たちの幸せを考える必要があるのか:
「将来世代に配慮する」とはどういうことか
将来世代に配慮しないとどうなるのか
世代間倫理は常識的なのか
資源問題よりもゴミ問題が重要
ゴミ生成の不等式
長く使える製品をつくるべき
放射性廃棄物は最悪のゴミだ
映画『100000年後の安全』の内容
将来の人たちの幸せを考えた意思決定をすべき
映画でわかる公害の構図
地球温暖化はなぜ止められないのか:
地球環境問題は分配の問題
分配の公平性をめぐって
クッキーをどう分配すれば公平か
無限の資源を前提とした答え
CO2排出量の削減方法
産業界に甘く、消費者に負担を強いる政策
解決のための社会的アクションを抑制する傾向
成功した環境条約
生物種の絶滅を防がなければならない理由は何か:
トキを絶滅から守るのは何のためか
「生物多様性」という言葉の登場
なぜ「自然」ではまずいのか
なぜbiodiversityという言葉を使うのか
biodiversityと「生物多様性」の違い
diversityはなぜ大事なのか
六回目の大量絶滅
生物種の絶滅を防ぐのは将来世代のためでもある
動物倫理との対立
外来種対策について
増えすぎた生きものをめぐって
環境倫理と動物倫理の協働の道
つくられた自然は偽物か:
欅の木が切られた話
開発とミティゲーション
自然再生とは
自然の価値論
保全と保存
アメリカの環境倫理学の大問題
自然再生に対する評価の変化
良い自然再生と悪い自然再生
アメリカの環境倫理学のバイブル
都市生活は地球環境にとって悪いのか:
環境問題にはいろいろある
環境とは何か
環境の範囲
環境問題とは何か
今や「身のまわり」とは「都市環境」だ
都市と持続可能性
都市における自然
都市のアメニティ
都市の魅力を探す「アメニティマップ」
学校をあらためて見てみよう
まちづくり活動としての「アメニティマップづくり」
私たちができる環境保全活動
「都市の環境倫理」のすすめ
古地図を見ながらまちあるき
なぜ古い建物を残さなければならないのか:
日本の家の寿命が短い理由
ジェイコブズの都市計画批判
混合一次用途と小さな街区
古い建物
密集
古くて安い建物が若者には必要だ
古い建物は新しく作れない
建て替えよりも中古物件の流通を
中古物件でお店を開く
景観を変えないまちづくり
環境を守るために何ができるのか:
環境保全を仕事にする
NGO・NPOとは何か
環境NPOにかかわる
日本のナショナル・トラスト
イギリスのナショナル・トラスト
政治や社会に関心をもち、意見を言う
場所に関心をもち、発信する/未来市長になる
南方熊楠の神社合併反対運動
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〇個人から社会のこと、現在から遠い未来のことを考えるきっかけになった。
〇ニュースや関連情報を、“環境倫理”のいくつもの視点で見ていこうと思った。
●環境倫理とは
“環境”は“身のまわり”と言い換えることができる。それに“べき”や“するな”という規範的な価値判断をする。
環境問題に対応できる社会システムを下支えする。
その具体的な中身を考えるのが環境倫理学
●エコな暮らしをすれば環境問題は解決するか
個人の意識や我慢では解決しない。
社会が変えることが解決への道筋
・自然の生存権
人間中心主義と非人間中心主義
「自然保護を法律で義務づけなければいけない」
・世代間倫理
持続可能な開発。フューチャーデザイン
「政治の仕組みに将来世代への配慮をくみこまなくてはいけない」
・地球全体主義
宇宙船地球号
「地球の有限性という観点から経済活動の自由を制約する必要がある」
●科学技術の進むべき方向
能率と効率の間
●まだ生まれていない人たちの幸せを考える必要があるか
私たち自身が「将来世代に配慮しない政策」のツケを払わされている。
資源問題よりもゴミ問題が重要。現在の経済システムや技術で処理出来ない廃棄物が生み出され続けている。
「ゴミは、使用期間を過ぎたのに耐用期間を保っている物質」
…プラスチックごみ、放射性廃棄物
●地球温暖化はなぜ止められないのか
“環境正義”
倫理学における正義の意は“公平性”
産業界に甘く、消費者に負担を強いる政策
グリーンウォッシング
「一人一人の心がけが大切」←日本では個人倫理で対応しようとする姿勢が強い
※一人一人主義では世の中は少しも変わらない
社会アクションが必要
●成功した環境条約
「モントリオール議定書」…オゾンホールは2050年までに回復すると見込まれている
●生物種の絶滅を防がなければならない理由は何か
「生物多様性」
biodiversity 生きものの賑わい
六回目の大量絶滅
←①過去に例がないほどの極端な気候の変化が見られ②過去に例がないほどのCO2が蓄積したかことが原因だと思われ③そのCO 2 の増加は人間活動のせい
←人間の責任が問われる
「動物倫理」…感覚を有する動物の福祉や権利を尊重する
外来種対策、増えすぎた生きもの対策における矛盾
●環境倫理と動物倫理の協働の道
自然・野生、食、農業・畜産業
命題“肉食を減らすべき”
「動物倫理」的には
工場畜産と呼ばれる畜産業が動物の福祉や権利を著しく損ねていると批判している
「環境倫理」的には
食肉の大量生産、家畜の飼料の資源効率の低さ。
食料分波の不公平
←問題解決に向けた協働に目が向けられている
●つくられた自然は偽物か
開発とミティゲーション(緩和)
…開発に伴う環境悪化を防ぐための対策の一つとして、「自然への悪影響をさけたり、や���らげたりする」
①回避 開発の中止
②最小化 開発面積の縮小
③代償 別の場所で自然を守ったり、あらたに回復させたりすることで悪影響の埋め合わせをする
×代償ミティゲーションが自然再生として宣伝されていないか
保全(人間が手を入れながら守ること)と保存(人間が手をつけないで守ること)
良い自然再生と悪い自然再生
●アメリカの環境倫理学のバイブル
アルド・レオポルド『野生のうたが聞こえる』
●都市生活は地球環境にとって悪いのか
環境とは…
自然環境、インフラ環境、経済環境、社会環境、文化環境
環境問題とは…
汚染問題、自然問題、アメニティ問題
都市と持続可能性
アメニティマップをつくる
私たちのできる換気保全活動
●なぜ古い建物を残さなければならないのか
日本人の新築好き
…日本の家屋の平均寿命は25年
…木造の建物、スクラップ&ビルド
ジェイコブズの都市計画批判
「輝く都市」コルビルジェ
「田園都市」ハワード
←都市には農村とは違う魅力がある
「多様性」仕事、性別、年齢、年収など、様々な属性を持つ人々が楽しく暮らす場所
←「輝く都市」と「田園都市」の「自分たちが考える理想的な都市をつくる」という発想に間違いがないか。
①混合一次用途
オフィスも工場も住宅も娯楽も学校も混在しているほうがいい
②小さな街区
様々な時代の建物が混在していることで、異なる経済収益が上げられる
③古い建物
古い建物≠ノスタルジー
古い建物=賃料が安い。若い人も入居できる。
④密集
人が多いことが都市の資産
既存の建物に新しい価値を想像する
●景観を変えないまちづくり
そんなに変えないということを条例にした町:真鶴町
●環境を守るために何ができるのか
環境保全を仕事にする
環境NPO に関わる
ナショナル・トラスト
「開発されそうな土地、破壊されそうな建物を、先に買い取ることによって守る仕組み」
政治や社会に関心を持ち、意見を言う
・住民投票、選挙、パブリックコメント
場所に関心をもち、発信する
「未来市長」になる
※社会的アクションをおこす
●南方熊楠の神社合併反対運動
生態学
エコロジー
明治の鎮守の森の伐採
個人的なものでは無く公共的にもの
●おわりに
環境倫理を考えることは、原始時代に戻ることではなく、これからの社会のあり方・自分の暮らしを考えること
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・環境破壊の責任は消費者ではなく生産者にある
・一人ひとりの心がけ、ではなく社会を変えるアクションを行うことが環境を守ることに繋がる
昨今よくSDGsが話題に上るが、やってもほとんど意味のないことをSDGsと称して高らかにアピールする人も増えている。そんな人たちにこそ読んで欲しい本。「一人ひとりができることを」では意味がないと断言していて、環境問題に対して今まで抱えていたモヤモヤを取っ払ってくれる。本当に持続可能な社会を目指すなら、この一冊で終わらず関連書籍にもあたり、正しい教養を身に付けていく必要がある。
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はじめて学ぶ環境倫理 ─未来のために「しくみ」を問う。吉永 明弘先生の著書。環境問題、地球温暖化、生物多様性、環境倫理、持続可能性。一つ一つのキーワードを見聞きする機会は増えていても、環境問題、地球温暖化、生物多様性、環境倫理、持続可能性という言葉の本当の意味を理解している人は少ないと思う。環境問題、地球温暖化、生物多様性、環境倫理、持続可能性はどれも未来のためのしくみを作るためにはなくてはならないもの。環境倫理を学ぶのに子供も大人も老いも若きも関係ない。人類みんなで考えるべき問題。
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すごくわかりやすい。文章が明晰で中身がスッと入ってくる。
環境問題に対して個人でアプローチするのももちろん大事だが、政府を中心に社会全体が実践できるように法などを整備することが大切だという考えは、なるほどと思った。自助努力で終わりにするのではなく、公助の部分を促していたのは、納得せざるを得ない。
そう考えると、ビニール袋有料化はプラスチックごみを減らす政策として即しているといえる。
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「エコ生活で環境はよくなるか?つくられた自然は偽物か?なぜ生物多様性が大切なのか?身近な環境の改変から地球の未来に関わる問題まで、考えるヒントを示します。」
目次
第1章 エコな暮らしをすれば環境問題は解決するのか
第2章 まだ生まれていない人たちの幸せを考える必要があるのか
第3章 地球温暖化はなぜ止められないのか
第4章 生物種の絶滅を防がなければならない理由は何か
第5章 つくられた自然は偽物か
第6章 都市生活は地球環境にとって悪いのか
第7章 なぜ古い建物を残さなければならないのか
第8章 環境を守るために何ができるのか
著者等紹介
吉永明弘[ヨシナガアキヒロ]
1976年生まれ。2006年千葉大学大学院社会文化科学研究科修了。現在、法政大学人間環境学部教授。専門は環境倫理学