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無知ゆえ牧野富太郎という植物学者も、来年の朝ドラのモデルだとも知らず読んだ作品。
小説としてはダラダラと退屈で、肝心の牧野氏も人としては最後まで好きにはなれなかった。
金持ちに生まれ育って自分の代で家を潰し、大借金をして家族に迷惑をかけてまで、好きな植物研究に一生を捧げた男。
自信家で、頑固、権威に逆らいながら、自分の気に入らない人間(南方熊楠)には辛口、周りのことには頓着せず、ただ植物のことだけ。大研究者なのでしょうが、残念ながら私には全く魅力的には映りませんでした。
それでもその時々で手を差し伸べてくれた人々がいたことが幸いだったのでしょう。
納得できたのは、
「学問は学問することそのものに意義がある」
「人生は、誰と出逢うかだ」
この言葉でした。
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明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。
小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相(フロラ)を明らかにする」ことを志し、上京。東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。
私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなり……。
4分の3ぐらいまでは我慢したのですが、いくら私が植物好きといっても、あそこまでいっちゃうと学術的過ぎて小説としての面白みに欠けるというか。
まかてさんの小説は「ボタニカ」前の「白光」あたりから史実が優先され偉人伝に近い感じになってきているような気がしてならない。「類」までは好きだったんだけど・・・。大浦おけいにしても、まかてさんは最近実在した人を取り上げた作品が多い。
また日本初のイコン画家となるた山下りんの生涯を追った「白光」にも登場した、宣教師ニコライ。彼は日本にロシア正教を伝道した聖職者だが「ボタニカ」にも出てくる。ロシア正教は他のキリスト教の宗派よりも日本の文化や伝統を敬い尊んだとあり見直していた私。でもプーチンのウクライナ侵攻でロシア正教会との関りが深いと知り落胆している。
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主人公の熱意や信念、行動力、業績には感心するが、その過程で実家を食いつぶすなど、周囲の人々への迷惑を全く省みない行状や行動様式には感情移入しにくいものがある。
こういう人でないと並外れた業績を残すことができないのかも知れないとも思ったりするが。
昭和天皇から国の宝と言われた場面は、とはいえ、深い感慨を禁じえないものであった。
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幕末から昭和32年まで生きた、植物学者・牧野富太郎を主人公にした小説……だが、真の主人公はその奥様2人なのかもしれないと思えた。とにかく奥さんが逞しい。奥様方の金策があってこそ、牧野富太郎は植物学に打ち込めたのだろう…という印象を受ける小説だった。
幕末から現代に繋がる時代の小説に定評のある著者。この時代の空気を吸いたくなったら、また読み返そうと思う。
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日本の植物分類学の父といわれる「牧野富太郎」の生涯。
(2023年のNHK朝ドラで取り上げられるが、本書とドラマの原作とは別)
首尾一貫、富太郎の植物への愛と情熱がひたすらに書かれている。
賢すぎて学校が退屈で、それより野山に出て採集したほうがよいと小学校を卒業しないまま己の道を突き進む。
一生を植物に捧げ、研究成果や発表も素晴らしい数をもたらした。
でも、
それ以外は尊敬できる面がない人なのだ。
裕福な家に育ち、金銭感覚はゼロ。
借金に借金をかさねても、学問のためだとさらに金を使う。
家族ができても家に留まることがない。
最初の妻とは顔もあわせない。若い女を孕ませて、そっちにのりかえても金だけは送ってこさせる。
病で子どもを亡くしたのに、また子を作ってはひもじい生活。
援助をしてくれた恩人にも約束を反故にする。
こんなにひどい人間なのに、植物への探究心に、人たらしなのか、慕う人も多かったらしい。
素晴らしい面を差し引いても不快にしか感じなかった私には理解できない世界だった。
これだけ専門知識を書かれているのに、本書に植物の絵が表紙と中のタイトルページの2点しかないのにも違和感。
各章ごとに1点でも挿絵くらいあったら、もっとイメージを膨らませられたと思う。
(こだわりの牧野博士がお許しになるはずない!という意見が出そうだな、とも思うが。)
朝井かまてさんの「類」を読んだが、ドラマチックに話を膨らませるでもなく淡々と悶々と時間が経過していくのが、息苦しく感じられた。
朝ドラではフィクションとして描かれ、神木隆之介さんが演じるそう。
胸糞悪いところはバッサリ切られて美談になりそうなのかな…?
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周りの人達とお互いに理解しあえない悲しさがあまりにもくっきりと映し出されていて素晴らしい もう少し相手を思いやる事ができたらと思うけれど叶わないのが残念
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なかなか読みにくい。植物学者の一生だが、内容が頭に入ってこず何度も読み返す必要があった。 この作者は初めて読んだけど、他の本もこんな感じなのかなぁ? 植物に関する描写ももう少し深い方がいい気がする。
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昭和の世代ならほぼ名前は周知の牧野富太郎の伝記。
著者はボリュームのある丹念な調べと、そこに生きているかのような生き生きとした筆致の朝井まかてさん。
両親を早く亡くし、一時は造り酒屋も営んだ大きな商家、岸屋の一粒種として生まれ、祖父の後妻で血縁こそないものの、その全てで愛されてきた牧野富太郎。
幼い頃から山に歩き植物たちと遊んだ彼は、より正確なもの、新しいもの、世界に通じる膨大な智慧に憧れ、次々と高価な本や、顕微鏡など欲しいものは全て取り寄せた。
その生き方は長じてもなお一層止まることなく、もはや学校では新しく知ることがなかった。
学校から離れても、校長から子供らに教えて欲しいと教員もこなす。
その智は広くはてしなく羽ばたく。
帝大の学生でもない彼は、当時の教授に認められ研究室の出入りを許される。
次々と自費出版をするが、その反面実家は、、、。
大学に籍をおかないものが目覚ましい活躍を見せ、実績を残すと、あとは妬みが生まれ、何度も研究室から追い出されることも。
最後まで一歩も引かない研究の徒である牧野富太郎。
常に貧乏との追いかけっこだった。
この本は功績だけにとどまらず、植物学、ボタニカに魅せられた彼の研究と実生活のアンバランスさや私生活にも大いに目を向けて、面白い作品になっている。
長い作品だが、機会があれば。
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牧野富太郎の伝記小説.
奇人変人と言われながらその業績の素晴らしさ.草や樹々に語りかける富太郎の姿が初めから最後まで貫かれていて見事だ.ただ周りにいる人々特に妻や子供たちは大変だったろうと思うが,彼らが富太郎を恨むことなく支えているのはよほど捨ておけない魅力があったのだろう.
富太郎の植物誌にかける情熱にお腹いっぱいになった.
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牧野富太郎さん、高知に縁があって名前を知っていて、牧野植物園にも行ったことがあるけれど、こんなにも破天荒な人であり人生だとは知らなかった。
どうにも好々爺で物静かなイメージだったけど、土佐弁でいごっそうと呼ばれる生粋の土佐人。
新幹線や旅行用の飛行機なんてないだろう時代に日本全国の縦断がすごい!
独学の絵の才もすごい!
お金の使い方や人への態度など思うところはあれど、何かに夢中になれる人は偉大。大義を成した人。
そしてそんな破天荒な牧野さんを支えた壽衛さんや猶さん、家族友人もすごい。
作中で出てきた南方熊楠さん、牧野さんときちんとした出会いがなかっただけに、どんな人か気になりました。
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「日本植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎氏の
生涯を描く作品です。
命名した植物はなんと1500以上あると言われて
います。つまりそれだけの新種を発見している
ということです。
時代小説の大家である著者らしく、明治・大正
・昭和を生き抜いた主人公の生きた時代の目線
で書かれている文章も高尚で素晴らしいです。
ちなみに2023年度上期の朝の連続テレビ小説の
主人公は牧野富太郎氏だそうです。
神木隆之介君が演じるとか。
しかし原作は本作品ではないです。それでも波
乱に満ちた牧野氏の人生がどう描かれるのかが
楽しみなる一冊です。
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2023年度前期朝ドラ「らんまん」のモデルということで読んでみた。
在野の植物学者・牧野富太郎。
小学校中退。学歴なし学位なし留学経験もなし。その富太郎が膨大で精密な標本作りで東京帝国大学の教授たちを感心させ植物学教室に出入りを許され、貴重な学術書や資料などを自由に閲覧させてもらって植物雑誌や図鑑を次々自費出版。
その後も研究を続ける傍ら、東京帝国大学助手から講師へ、そして理学博士学位取得まで上り詰める。
名前を付けた植物は二千五百以上。
…と独学だけでここまで上り詰めたものすごい人なのだが。
他の方々のレビューにあるように、主人公に対しての好感共感は全くなかった。
主人公に対してだけなら☆一つも無いのだが、家族や周囲の人々のフォローに対しての評価、そしてこの良くも悪くもおおらかな時代ならではの彼の功績に対して☆三つとした。
『学問には金がかかる』
この言葉が終始染み渡る話だった。
富太郎の『学問』のために先祖代々築いてきた実家の身代を潰し、俸給三十円の助手時代に三万以上の借金を抱える。
それでも『なんとかなるろう』と植物採集と出版は止めない。
ここまで来ると、富太郎のしていることは『学問』なのか道楽なのか分からなくなってくる。
結果『なんとか』してくれたのは周囲の人々で富太郎本人ではない。彼の功績があってとはいえるけれど。
特に最初の妻・猶(なお)は可哀想で仕方なかった。富太郎に妻として見られたことなど一度もなく、夫婦生活というものがあったのかどうかも分からない。ただ彼の尻拭いをさせられるためだけの結婚で、あげく若い妻に乗り換えられて離縁。
再婚して幸せになれたようだけれど、その後も折に触れて富太郎一家を支援しているのだからもう何というか、いやはや。
二番目の妻・スエは猶に言わせれば『誇りをもってあなたを支えた』らしいが、心労祟って五十代で死去。
東京帝大の矢田部や村田は富太郎にとっては意地悪に見えるようだが、言い方はともかく内容は至極当然だった。
また三万もの借金を清算してくれた上に、富太郎の標本を引き取って植物研究所を作ろうとまで言ってくれた池長孟(はじめ)とも最終的には決別してしまう。
『ガラスの仮面』の月影先生が言うように、天才はその才能のためだけにしか生きられない人なんだろうなと思う。他の人の気持ちとか一般常識とか世渡りとか、そういうことにまで気持ちが及ばない。
例えば妻子に植物採集や標本作りの手伝いをしてもらうとか、自分のしている研究について熱く語るとか、そういう場面が見られれば良かったのだが、自分の『学問』については家族には一切話さずどこに行くかも言わずに出かけて、借金やらお金の算段やらそういう面倒事だけ家族に押し付ける。
それでスエが死に際の朦朧としている中で『新種のササにな、お前の名をつけたぞ』と言われても「ああ、これで長年の私の苦労が報われた」となるだろうか。そもそもそれがどれほど素晴らしいことかを伝えていないのだから本人には分からないだろう。時代とはいえ死んで最敬礼されてもな��と思ってしまう。
『捨てる神あれば拾うてくれる神がある』という通り、どれほど困窮していてもどこからか手を差し伸べてくれる人がいるのだから、きっと富太郎にはそうせずにいられない魅力があったのだろう。
残念ながらこの作品ではそれが感じられなかったが。
朝ドラは富太郎の人生をモチーフにしたフィクションということで、多分歴代朝ドラのように夫婦愛を全面に出した物語になるのだろうが、この作品を読んでしまうと素直に受け取れないかも知れない。
これだけ好き勝手していたのだから、94歳まで生きられたのも頷ける。
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何かを成し遂げる人は、こういうところがあるのだろうけど、身内には絶対欲しくない。
このての人が小説の主人公となると、いろいろ破綻してるけどチャーミングなところがあるので、周囲の人に感情移入できるのだけど、全くできない。
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鴎外一族を描いた「類」がとても良かったので、おお、今度は牧野富太郎か!ととても楽しみにして読み出した。日本植物学の父にして、画家も顔負けの精密な植物画の描き手。どんな天才ぶりが語られるのか。
いやもうこれは、期待通りに面白かったが、それ以上に困惑しました。読み進めるにつれ、牧野富太郎ってこんな人だったの?いくら天才とはいえ、これはちょっとあんまりじゃないの?というエピソードのオンパレード。金銭感覚ゼロ、研究のためだけでなく、上等なものを好み、湯水のようにお金を使い、名家であった実家を食いつぶす。その後は借金に次ぐ借金。最初の妻は気に入らず東京で別の女性を迎え(これが二人ともできすぎた人なんだよなあ)、世事は一切妻にまかせてしたいことだけをする。十三人もできた子どものうち育ったのは七人、妻の早世も含めて遠因は(これはごく控えめな言い方)貧乏でしょう。はっきり書かれないけど女性問題も多々あったようだ。脚色もあるだろうが、どちらかというと現実より穏やかにしてあるようだ。ほんと、牧野富太郎ってこんな人だったの。
著者の筆は、牧野の人間性を肯定も否定もせず、ただひたすらに植物の姿を正しく記録に残そうとした姿を描き出していく。共感はし難いけど、牧野にとってはこういう道しかなかったのかもしれないなあという気がしてくる。今やまずこういう人は現れないだろう。道徳の教科書には載らない偉人。小説の力で生き生きと目の前に浮かんできた。
オマケ
牧野富太郎、来年朝ドラでするんだってね。主演は神木隆之介だってね。おそらく純粋な学者として描かれるんだろうけど、数々の困ったエピソードはどう処理されるんだろうか。莫大な借金はまあいいとして(良くないが)、最初の妻への仕打ちとか、次々子どもが死ぬくらいの貧乏暮らしなのに、知らん顔して長期間家を空け、自分は贅沢しちゃってたこととか。でもまあ神木隆之介マジックですべて浄化されるんだろうなあ。
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面白かった!朝ドラで牧野富太郎が扱われるのがますます楽しみになりました。
当時は体系的に日本の植物をまとめたものがなかったので、日本人の知識も限られていた、というのが新鮮でした。だから、古典の挿し絵に当時は日本にあるはずのない植物の絵を書いてしまったり…。
植物の知識というものが、多くの人の植物の採取や研究によって積み上げられてきたのだな、ということがよくわかりました。
牧野富太郎が本当に勉強好きな人で、先生として働いたときの話がすごくよかった。あんな先生がいたら勉強も楽しくなるわ。
ただ、この勉強好きが災いともなり、大学に行く暇があったら、自分の研究をしたい、という選択のために後々学歴のなさに苦労します。
大学側と衝突してロシアに行こうかと計画して、函館在住経験のある函館弁を話すロシア人司祭のところまで行く行動力もすごい。
たまたま森鴎外ファミリーを見かけたときの、まるで芸能人を見かけたときのように、セレブな空気感の違いに臆する牧野富太郎の反応も面白かった。ドラマにも森鴎外出してほしいなぁ。
牧野富太郎の写真を見ると素敵な笑顔で写ってる物が多いですが、ご本人が写真に写るのが好きだったというエピソードも出てきます。
全体を通して、勉強のために借金まみれになって、家族に迷惑をかけたり、夜逃げしたりという話が多いです。
夫にはしたくないタイプ。
でも、彼は周りの人にはとても恵まれていたんだなと。
家族や池長孟など、助けてくれる人が沢山います。
ドラマ化するときは、最初の奥さんは伊藤沙莉さん、二番目の奥さんは趣里さんが良いと思いました!(勝手にキャスティング笑)
図書館やインターネットで何でも調べられたり、写真を撮るのも簡単な時代のありがたさを感じます。牧野富太郎は自費で本の購入などもしたけど、今の時代に生まれていたらどうだったのかなぁ。ネットで何でも買いまくって結局は借金まみれになる人のような気もします。