紙の本
アメリカのイタコ?
2022/06/01 19:15
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去の歴史を呼びだす交霊会、アメリカやイギリスの映画やドラマで、よく金を持っていそうな男女が輪になってお祈りするシーンが登場する(ポアロのドラマで最近みかけた)、そうすると、そのうちの一人が憑依して過去の人がのり移る、日本にもこっくりさんとか、イタコとかあるもんな
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第1章 過去の霊を呼び出す
第2章 初期のネクロマンシー
第3章 啓蒙主義とロマン主義ゴシックの暗闇
第4章 ヴィクトリア朝とスピリチュアリズム、交霊会の誕生
第5章 戦争とウィジャ―二〇世紀のスピリチュアリズム
第6章 交霊会はどれほど世界的か?
第7章 現代の交霊会
第8章 (なぜ)交霊会は必要なのか?
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19世紀ヨーロッパを風靡した交霊会。古代のネクロマンシーにそのルーツを探しつつ、啓蒙主義や産業革命の裏でメスメリズムからスピリチュアリズム、神智学が生まれ、さまざまなスターが生まれた世紀末と現在に至るまでの影響を通覧できる一冊。
まず装幀がめっちゃ可愛くて物欲を刺激された。帯も含めた配色がツボで、口絵ページのパープルもポップ。まさしく、いまドラマで交霊会のシーンがあったら小道具に使われそうなキッチュ感あるデザイン。
ヴィクトリア朝の心霊ブームに関してはそこそこ読んできたので、メインとなる18〜19世紀のエピソードは見知ったものも多かったのだが、「ネクロマンシーと交霊術は似て非なるもの」としながらも、バビロニアのネクロマンシーから始めてエドワード・ケリーを経由し、メスメリズム以降の心霊ビジネスに接続する語り口はスッキリしていてわかりやすかった。オカルトのポップ化って考古学の発展とも関連してるしな。
占い師や霊媒師は昔から女性の職業とされ、下級出身の人間が上流階級に入り込むチャンスでもあった。だから、霊媒自体に社会階級の転覆というイメージがついてくるのだろう。交霊会の原型となる「テーブルラッピング」で有名になったフォックス姉妹は、奴隷解放論者に支持されていたという。神智学協会2代目会長のアニー・ベサントが急進的なフェミニストだったことは、富山太佳夫の『シャーロック・ホームズの世紀末』で知った。また、本書によると現代のヴードゥー教はLGBTQの人びとに寄り添う教義を打ちだしているという。
西洋におけるスピリチュアリズムはキリスト教に対するカウンターカルチャーでもあり、心が傷ついた人やマイノリティの心の拠りどころにもなれば、搾取や詐欺の温床にもなってきた。この両義性について本書では最後にさらりと触れられるだけなのだけど、歴史を追って交霊会を求めた〈時代の心理〉を見ていくことで、近代から現代まで続いているカルトや似非科学の問題の輪郭がなぞれるようになると思う。