電子書籍
倫理的な抵抗を
2022/08/03 10:18
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:魚太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の帯には「なぜ、いつも頭から腐るのか!?」とあるのだが、これは少しピント外れである。この言い方だと、何か健全なものがあらかじめあってそれが頭から腐り始めるという印象を与えるが、事実はそうではないということがこの本を読めば理解できる。実態は、すでに腐っているものを社会が(選挙で)選んでいるのであり、選ぶ主体の有権者の多くが思考停止して、根腐りしているのである。「このような選択をする社会とはどういうものなのか」という問いにも、本書は切り込んで考察している。「日本の多くの有権者は各政党がどんな政策を掲げているのかロクに見ていない」という調査結果には信憑性がある。「とどのつまり民主制とは多数派獲得競争を原理とするもの」であり、その術に長けたものが政治的権力を掌握する。これは民主制そのものが持つ本源的な危険性であり、結果として衆愚制に至っているのは必然であると考えられる。この現状を踏まえたうえで、「今日本人が問われているのは、各人がそれぞれの持ち場で、その持ち場が本質的に要求することをどれほど真剣にやり遂げられるか、ということ」であると著者は述べる。そこからの倫理的抵抗である。心に沁みる。
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このタイトルは読みたくなりますよね
最後の第五章は抜群に面白かったです
自分のこれまで持ってなかった視点からの考察には
なるほど、と唸らされ認識を深めるのにためになった
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2012年~2022年初頭くらいまで(一部自民党55年体制の話もあり)の、10年間の日本の政治について分析された一冊(帯の「なぜいつも頭(トップ)から腐るのか」のインパクト大)。本書では、2012年に自民党が大勝してからこれまで続く政治体制(安倍晋三総理→菅義偉総理→岸田文雄総理)を「2012年体制」と表現して、2012体制が行ったアベノミクスや安全保障問題、コロナ対策などが著者の解釈で分析される。ここ10年くらいの日本の政治の本質を知りたい人にオススメ。
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白井聡さんの新書。
深堀TVの番組見て手に取った本。戦後からの日本政治の流れを大枠で把握する意味でもすごくわかりやすかった。
インデックスは以下
序章 すべての道は統治崩壊に通ず - 私たちはどこに立っているのか?
第1章 2012年体制とは何か? - 腐敗はかくして加速した
第2章 2012年体制の経済政策 - アベノミクスからアベノリベラリズムへ
第3章 2012年体制の外交・安保保障Ⅰ - 戦後史から位置付ける
第4章 2012年体制の外交・安保保障Ⅱ - 「冷戦秩序」幻想は崩壊した
第5章 2012年体制と市民社会 - 命令拒絶は倫理的行為である
あとがき
著者は、2012年から始まった安部政権以降の政権を「2012年体制」と呼び、「政権」ではなく構造的な「体制」だと論じる。たしかに、その後の菅・岸田政権も、結局は安倍政権のコピーでしかない。岸田氏は宏池会なのでちょっと違う路線に見えるが、安部政権時代の官僚をそのまま登用しており、方針にたいした違いはない。安倍政権以上に方向性が定まっていないし。就任してから約1年間、ほぼ何もやってないもんな、この人。。
この本を読んだ数日前に安部氏は殺害された。
そして、現在のメディア(・・と言っても私はテレビは見ていないが)は安倍礼賛を繰り返しているらしい。おそらく神格化され、過去の実績(政策の是非、森友・加計、桜を見る会などの問題)を正当に評価する者はマスメディアではほぼ居なく(居られなく)なるだろう。
この本に書かれている2012年体制で行われていたことは、日本をさらに「劣化」させた。元々劣化してたので、さらに止めを刺した、と言えなくはない。そして、著者もこの本で何度も語っているが、これは「安倍晋三」個人の問題ではない。この2012年体制は「現象」に過ぎず、本当の原因は一番最後の章で語られている、国民自身の「劣化」にある。それは、古くは小泉政権から始まり、2012年体制でも実施した「B層マーケティング」が結実した姿なのかもしれない。
しかし、5章に書かれてる日経ビジネス(2021年12月27日号)の分析結果は衝撃的だったな・・安部氏の殺害を「民主主義の危機」とか言ってる人がいるが、そもそも日本は民主主義国家ではない、ということをはっきり示してる。選挙とかやる以前の問題だわ。。
その分析を裏付けるように、このレビューを書いてる2日前に行われた参議院選挙は、当初の予定通り「自民党の圧勝」だった。多くの国民は、「バカ」のまま、「現状維持(国家として下降し続けること)」を選んだわけだ。
私は、宮台真司氏の影響もあり、「加速主義」の立場を取る。
今の政治含めた日本社会で既存権力(既得権益)を壊すことなど出来ないし、落ちるところまで落ちるしか改善する方法はないと思う。その過程で多くの弱い人が悲惨な目に合うから、著者の白井氏はこういった本で少しでもその痛みを和らげようとしているのは理解するし尊敬もする。「明日」を「今日」よりほんの少しでもマシにしようとする努力を、私も怠ろうとは思わない。
しかし、崩壊は避けられないと思う。
だが、崩壊したその先に「希望」があ���と思う。
社会が崩壊すれば人が輝く。出来るだけ早い方が良い。そうなれば、それだけ早く回復できるのだから。
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あの悲劇的な事件があった今こそ、情緒を排して安倍政権とは何だったのかを冷静に問わなければならない。今までずっと政治に関して薄々感じてきた違和感が鮮やかかつ冷静に描かれており、日本国民必読の書である。が、しかしこれを読んで「そうだそうだ、確かに安倍政権は何の成果もなかったし、寧ろ世の中は劣化した」と共感できる知性を持っている人は残念ながら少数派だろう。これも長年に亘る愚民化政策の成果であり、自民党の思い描いた通りの結果になっている。もう後戻りできないところまで行ってしまっているようにも感じる。非常に残念だ。
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政治にあまり詳しくない私でも非常にわかりやすかった。特段、どちらのスタンスという訳ではないが、一方の意見だけ聞くと全体が見えないのだと思う。
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政治の事は分からない自分にも読みやすくはあった。が、感情的な意見が多く、冷静な分析とは言い難い。まぁ安倍批判したい人達は諸手を挙げて楽しんでそうだ。
中立的な自分としては、じゃあどうするのか、今後どうすべきか、にもっとページを割いて欲しかった。
改善案なき批判はいつ見てもみっともない
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本書は、この10年近く日本政治の低迷·転落を概括的に論じたもので、その間の政治の中心には自民党が鎮座しており、うち7年は安倍政権が施政を行った。そしてその結果、内外政は大きく劣化したと述べている。
凶弾に倒れたが、安倍元首相が言っていた「あの悪夢(民主党の)のような時代に戻って良いのですか?」には、ずっと引っ掛かっていた。
この何十年も基本的に自民党が政権を握っていて、政治も経済等自民党がそのシステムを構築·運用してきた結果、バブル崩壊から全く浮上出来ず、技術立国や経済大国等恥ずかしくて言えない国になってしまっているのが実体だ。
彼の合言葉となっていた、アベノミクスやその手法である「3本の矢」についても、殆ど成果が出ていなかったように思うし(円安誘導で輸出企業を中心に株価が上昇してはいるが)、何しろ実質賃金が下がり格差が拡大してしまっている。
外交では、2019年ウラジオストクでの会談後には、安倍氏は「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」「ゴールまで、ウラジーミル、二人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」と宣ったと言う。
北方領土4島一括返還を国内で言っていたのに、いつの間にか2島返還に舵を切り、プーチンと会談にのぞんだが、「両国の関係改善のために、対米従属関係を見直す用意があるか」と言う主旨のことを言われ、答えられなかったと言う。
それはそうだよな。だって米国大統領選挙戦期間中に安倍氏は米国を訪れ、勝者が決まっていないため、ヒラリー・クリントン氏とトランプ氏の両方を訪ねようとしたところ、日本の外交官から「トランプが勝つわけがないので、 クリントンのところにだけ行けば大丈夫」と言われ、トランプ氏には会わずにクリントン氏のみに挨拶して帰った。しかし結果はトランプ氏が勝ってしまう。外務官僚をどやしつけ、慌てふためいて就任前のトランプ氏のもとにゴルフクラブを持って参上した。そしてオバマ氏からは「大統領はまだ俺なんだけど」と不快を表明されたようだ。
米国は重要なパートナーであることは間違いないが、一国の総理大臣がこれではね。
それでも人気があった。その秘訣とやらも分かったような気がする。
マーケティングを行い、IQが比較的低くかつ政権を何となく支持する人口の最大のボリュームゾーンであるB層の心を掴むのに長けていたのだ。例えば吉本と蜜月。また自民党とは真逆のリベラルな価値観を謳うフレーズを使ったキャンペーン、子供たちとのコラボ広告、若年層に人気のサブカルとのコラボ等を行い、巧く票を取っていたようだ。18歳からの選挙権も自民党から唐突に提案されたようだが、どうやらこの辺りから来ているようだ。
主張や実績をよく見て、考えて投票すべきだな。
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不正で、無能で、腐敗していた二〇一一体制(安倍、菅政権)について、その問題を克明に顕にしている。ここから日本はどう立ち直るべきなのか。
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本書には、安倍晋三がとにかく嫌い、それでも支持されているのは衆愚政治に飼い慣らされた国民が馬鹿だから、という前提がまず存在する。
その上で、データやナラティブでそれを裏付ける。正しいだろうなというものもあれば、指揮権密約(自衛隊は有事に米軍の指揮下に入る)や日本が米国に高く評価されるために北朝鮮や中国との安定を望んでいないという類の、ちょっとあり得ない主張も裏付けとして示される。
また、最近躍進中の維新に対しても、間違った政策や主張なのに印象操作で得票を伸ばしているとの評価。その大阪県政の最大の失政は突出したコロナ死亡率だという。気になって少し調べてみると、高い死亡率は事実のようだが、「世帯収入が低い、失業率が高い、小売り・郵送・飲食業の労働者数が多い(朝日新聞)」、「若者と高齢者の生活圏が近い(読売新聞)」などの指摘があり、社会的要因もあるようだ。
その一方で、鳩山政権への評価は高く、維新以外の野党への批判は存在しない。また、何より残念なのは、望ましい政治体制や処方箋についての提言もない。
読書を通じて、そういう見方もできるのかと新鮮な感覚を覚えた一方、主張があまりにも一面的で、自己の主張と反する政治体制となっていることを国民の無知に帰していて、小馬鹿にされた一国民の私としては、あまり気持ちのよい読書ではなかった。
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この本が出版された時はまだ安倍さん生きてたんだとしみじみする。ロシアとウクライナの戦争はもう始まってたんだ。長い。そうこうしてるうちにイスラエルとパレスチナの戦争も始まって。
ついていけない。
安倍さんが亡くなっても、菅さんから岸田さんに変わっても腐敗は続く。前からの蓄積の上に新たなものも加わり、もう堕ちるところまで堕ちないとダメなのかもしれない。その底はどこなのか。まだ底ではないのか。
政権支持率が最低になっている今、何かが変わる兆しがあるのだろうか。国民の鬱屈が爆発する時は来るのだろうか。耐えに耐えて沈みに沈んでいくのだろうか。