紙の本
十代前半層におススメ。
2023/08/12 16:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族のこと、からだのこと、人間関係のこと、
それぞれにそれとどう向き合えばいいのか、どう伝えたらいいのか、もやもやしている。
確かに、家族も含めて他のひとには理解してもらえないと思ってしまう年頃。
金継ぎ、漆に出逢い、惹かれていく。
そこで、出逢い、お互いを知り、成長していくさわやかな物語。
京都が舞台。
今の子どもたちの気持ちをよくとらえている。
それぞれが金継ぎに見出した魅力から、自分をとりまく状況を見つめ、次に進む力を得ていくところが秀逸。
素敵な話だった。
紙の本
『ぼくたちはまだ出逢っていない』
2023/03/21 19:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
陸(りく)はイギリス人の父、日本人の母を持つ中学3年生
美雨(みう)は母の再婚相手の家で暮らす中学2年生
同級生からのいじめに悩む陸と、家庭に居場所がないと感じる美羽
それぞれにアイデンティティを探してさまよう2人を「漆」がつなぎ……
《京都を舞台に、伝統工芸の「漆」「金継ぎ」を扱いながら、子どもたちを取り巻く社会問題をも描いた青春小説。》──出版社サイトより
章ごとに陸と美雨、それぞれの視点で交互に語られる全23章
各章がさほど長くないので、テンポよく物語が進行して読みやすい
・いつだって、おれはそばにいる
・ありのままを受け入れ、傷ついたその姿に美を見出す。
・たとえどんなにバラバラに見えるピースでも、ひとつになると、こんなに美しい姿に生まれ変わることができるんだよ。
まわりのことばを素直にうけとめる中学生の瑞々しい感性がすがすがしい
《伝統技法「金継ぎ」に彩られた出会いと修復の物語》──帯の紹介文
YAで定評のあるポプラ社teens' best selectionsレーベルから、2022年10月刊
投稿元:
レビューを見る
いじめに悩むミックスルーツの陸、そんな陸の心の拠り所である樹、母の再婚によりできた新たな「家族」に居場所を見つけられない美雨。
それぞれがそれぞれの形の傷を持つ「ぼくたち」を繋ぐのは『金継ぎ』でした。
最近でこそ、オシャレでサステナブルな趣味としてスポットが当たることも増えてきましたが、やはりまだまだ渋いイメージのある「金継ぎ」。
そこに中学生を掛け合わせるという、なかなかに特殊な角度から切り込んだ作品でしたが、伝統工芸の奥深さに爽やかさと甘酸っぱさが薫る良作だと思います。振り返れば首を違えるほど思春期が遠のいた大人には、そこに一滴の寂寥感も加わってしまうほどに「可能性」というものの眩しさも感じました。
壊れたカケラを繋ぎ、修復した傷に美を見出す日本独自の精神を、人と人、自分自身に照らし合わせる構図も、児童書としてかなり効果的な表現で、子どもたちの胸に刺さりやすそう。
金継ぎというものの存在を理解して表紙を見ると、なるほどと思わせるデザインになっていて素敵です。
何年か前に国際平和デーの式典で、国連事務総長が日本の金継ぎを引き合いに出し、世界で起こる紛争による亀裂を埋めるためにその理念を用いようと言っていました。そんな風にも表現できる伝統技巧を日本人として誇る気持ちも育ってほしい。
ルビしっかりめで、ストーリーや文章は小学校高学年からイケるかなと感じますが、実物の金継ぎ作品を見たことのない子は想像だけでは実像に結びつきづらいかも。個人持ちのタブレットで調べさせてもおもしろそうです。
天平堂も衣川さんも実在のモデルがあるようで、漆のことや後継者問題と一緒に、中学生にはその辺まで興味を派生させてほしいと思います。
投稿元:
レビューを見る
「ペイン、ペイン、ゴー アウェイ」
痛いの痛いの飛んでいけ。
金継ぎ。ただ壊れたものを元に戻すだけではない。そこに継ぐ人の想いや美意識など学校加わり美しく生まれ変わる。
漆の深さを知る。
国宝、神社仏閣、文化財など、漆が使われているものばかり。
しかし、漆農家は、高齢化していて、後継がいない。
いつか夢中になれるものに出会いたい。
「心が動くかどうか?動いたらそれを信じて進むだけ。」
小菅センパイが、「また病気になるかもと不安」と言った時の美雨の返し。
「大丈夫です。壊れたら、私がなおします」
強い。
安心する。
不安なモヤモヤが飛ぶ言葉。
呼び継ぎ、欠けたところによく似た他のかけらを継ぐ。しかも美しく。
バラバラに見えるピースでもひとつになると美しい姿に生まれ変わる。
家族も同じかもしれない。
ずっと3人で仲良くしていてほしい。
読後よく見たら、表紙が金継ぎになっていて納得、感動。
再婚家族と金継ぎをうまくつないでいて、良書。
投稿元:
レビューを見る
母の再婚を機に京都に引っ越してきた中2の美雨は
新しい家族にも街にもまだ馴染めない。そんな中、出会ったのは骨董屋の美しい器だった。
イギリス人の父を持ち、その見た目からいじめにあっている中3の陸。そんな彼が惹かれたものは「漆」だった。
「金継ぎ」と「漆」に心奪われる中学生たちの物語。
投稿元:
レビューを見る
さくさく読めて、面白かった。
中3の陸と樹(と大也)、中2の美雨。自分とは何か、家族と友情と金継ぎの話。
美雨は金継ぎに出会ったことで、家族との関係や人との縁を考えるきっかけとなった。
陸と樹の進路といじめと友情。
どこで3人が出会うのかとおもいきや、漆がきっかけでこの3人が繋がった。
投稿元:
レビューを見る
金継ぎに魅せられた中学生の美雨と漆に心を奪われた中学生の陸を軸に物語が展開していく。
それぞれ家庭や家族形態からくる問題を抱えている。
漆と言うと触るとかぶれるもの、という子どもの頃からのイメージしかなかった。
金継ぎについても具体的には知らなかった。
漆の樹液を採取された後の木に思いを馳せ、そこに自分の境遇を重ねてしまう陸。
痛みを知る者だけが感じることができる情景かもしれない。
中学生が主人公だが全体に静かに物語が進んでいく。
京都の古い町並みも懐かしい京都弁から浮かんでくる。
陸の親友の樹も含め、問題を抱えながらも前へ進もうとする中学生の姿が爽やかで読み応えがあった。
投稿元:
レビューを見る
思っていたよりがっつり漆の話だった…。表紙とタイトルからは想像できなかったけど、途中で表紙に金継ぎが表されているのを発見。素敵なデザイン。
壊れても修復できる。修復したからこその美しさがある。最後、三人が笑っててよかった。
投稿元:
レビューを見る
児童書。
親の再婚、引っ越し、闘病、いじめ…登場人物の中学生がそれぞれ悩みを抱える中、「金継ぎ」が三人をつなぎ合わせ、乗り越えていく。
日本の伝統工芸である漆、金継ぎというものをテーマにもってきたところがよかった。
古いものを大切にすると同時に、新たなものも生み出す感覚は、確かに人間関係にも大事だなと思った。
投稿元:
レビューを見る
クラスメートに執拗な暴力をふるわれている中3の陸
イギリス人の父、英会話の幼児教室講師の母、人懐っこい弟、家族との暮らしはあたたかい
そして、陸の輪郭を描いてくれる親友の樹がいる
再婚した母と、再婚相手の住む京都に引っ越してきた中2の美雨
とつぜん出来た義父と1つ年上の兄に気をつかうばかりで馴染むことが出来ない
学校ではサッカー部エースの兄の妹として目立たないよう息をひそめて過ごしている
美雨は月の金継ぎをほどこされた器と出逢い、陸は漆と出逢い、樹は一緒に歩いてくれる女の子と親友を通して出逢う
○自分も『世界!ニッポンに行きたい人応援団』のファンで金継ぎの回見てました。ので、金継ぎの物語と聞いて思いだしていたら、よもやよもやでした。作家さんが素敵と出逢うと物語が生まれちゃうのか
○最初、静かな冷たい息をひそめるような物語の始まりだったのが、「出逢って」から目線が前を強く向いて、陸も美雨もわだかまりを振り払うように歩き出した
○迷っても間違っても壊れても、というメッセージが届くといいな
投稿元:
レビューを見る
金継ぎの、「割れたものを割れた形も尊重して修理する」という伝統技能が、傷ついた心が元通りになる姿に抽象化されるのは使い古された表現であると感じます。
金継ぎは金継ぎだから美しい、で良いと思うんですよね。もっとストイックに金継ぎの世界を表現してくれて良かったんじゃないかと思ってしまいます。
漆を採取する時、木に畏敬の念を持つのはわかります。でもそれを自分に当てはめて抽象化するのが鼻白む。漆が傷つくのと人間が傷つくのは違いすぎるよ。
批判から垂れ流しましたが、金継ぎをテーマにした小説は初めて読んだので、少女が京都の街で器に出会う様や、骨董作品の表現をうっとりと楽しませていただきました。金継ぎの世界をもっと読みたいなぁ〜。