紙の本
人口学・人類学をベースに現状を理解する
2023/02/22 09:42
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投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族の形態をベースにして、教育・宗教、人の指向などを類型化しつつ、すぐには変わらなさそうなポイントと変化してゆく部分をとらえて、現在の世界の解釈や理解を進める。
高等教育が各国の分断を進めている、日本は国力の維持を諦めている、現在の民主主義は一定の範囲の人の中で外部を排除して成り立っているなど、いろいろな刺激のある論が展開されている。
それらの理解や解釈の上で、ではどうしてゆくべきなのかは、価値中立の立場で論じる著者の直接の言及範囲ではなく、各人が考えるべきこととなっている。
日本語版のあとがき部分は、上巻のはじめの部分同様、2022年に書かれているので、原著版にはない、2017年以降のうごきへの補足がされている。
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上巻はだいぶ体力の要る読書だったが、そのおかげで下巻はすんなりと理解できた。
アメリカ、フランス、イギリス、中国、ドイツ、ロシア、日本など、異なる家族形態や宗教、教育がたどってきた歴史をもとに、現在を読み解いている。
個人的に興味深かったのは、教育、特に高等教育が不平等主義を後押ししているという現象。識字が課題となる初等教育の普及段階では、教育が平等主義とつながっているが、高等教育になればなるほど、当然のことではあるが格差が広がる。民主制は指導者が必要だから、エリートも必要なわけだが、経済格差と教育格差がリンクして議論されている日本でも、まさにこの部分を直視して問題の落としどころをさぐらねばならないのだろうと思う。
もう一つ面白かったのは、同性婚の法的承認がなされ、女性の社会的ステータスが高い国ほど出生率が高い、という相関関係があるという事実。女性のステータスに関しては、社会的システムの整備など十分想像できる結果だが、同性婚については個人的には新たな視点で勉強になった。
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下意識、無意識を分析することから、なぜ今日の世界が形作られたかを読み解き、その洞察は難解だがとても惹きつけられるものであった。
日本は父系社会であり、女性の地位が低いことや内向きの習俗に囚われているかぎり、衰退の末路を辿るという筆者の主張には、近年の政治・経済・教育の劣化を見る限り納得がいく。
日本版あとがきに書かれている著者のメッセージが響いた。"アングロサクソン世界の動向、とくに米国の動向が今後の日本にとって最大のリスクになる"
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いやー難しいけど面白い!
伝統的な家族形態,初等教育,高等教育が政治システムや国の在り方までの起源となり,様々な「敵」をなぜ作るのか,なぜ必要悪なのか?
こんなにも説明ができるものなのかと感嘆.
最終的にどんな国家のシステムも否定しない,かつ変化の途上とするのは,読後の満足感にはつながらないけど,世界を公平に見る,と言う原点に思い至らずにはいられない.
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文化人類学から世界経済や社会の動向を捉えようとする意欲作。ところどころ、論理が飛躍しすぎているようにも思ったが、著者の広範な知識には驚嘆させられた。ところどころノーベル経済学賞に批判的なところが面白い。著者がフランス人の視点から記述していることが本書の魅力の一つと思う。とにかく読むのに時間がかかった。。。
16章の日本の記述は最も興味深かった。少子化は本当に深刻な問題で、その回復のモデルはロシアにあるのかもしれない。移民に頼らず、自国の技術、エンジニアを大切にして、ユニークな日本の伝統・文化・治安が守られることを願いたい。