紙の本
巨星と言うに相応しい
2022/12/04 15:38
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前漢と後漢にはさまれた王朝「新」。新から後漢にいたる動乱のなか、平等を至上とし人心を集め、やがて光武帝とともに天下泰平に貢献した人「馬援」の生涯。
前漢時代冷遇された家の四男坊で、優秀な兄たちと違い官途につかず、牧畜で財をなします。
蓄財は自分のためではなく、人のためを貫くすがすがしさ。
疾風怒濤の展開に読む手が止まりませんでした。
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後漢光武帝の功臣の一人、馬援が主人公の小説。歴史の空隙を埋める描写と、独特の人物解釈が面白い。もう結構な年齢のはずなのだけど、コンスタントに新作出るのは凄い。
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宮城谷昌光氏はファン作家の一人だ。中国の時代小説は多彩な人物が登場し夢中になって読み耽る癖がついていると我ながら驚いてしまう。もう一人北方謙三氏もファンの一人でもある。本書の主人公は又思わぬ方向に人生が変わり嬉しくなっちゃうな
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中国の後漢の時代、馬家の四男の末っ子として産まれ育った馬援という男の一代記。
歴史の中で埋もれてしまってはいたが、こうして宮城谷先生の小説となって現れてきてそして今を生きる人間に熱い感情を抱かせてくれる。歴史小説とはなんて尊いモノでしょうか。人間は戦いと誇りや見栄や権力、思想に突き動かされて歴史を構築してきたというのがわかる。反乱軍も裏返せば独立軍と、そう言うように。
得のある愛すべき人間像の一代記はある意味、おとぎ話のように成功譚として描かれやすいけれど、馬援は死後、その扱いは宜しくなかった。歴史の奥深さは勝者側からの視線で描かれ続けていることだ。
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優秀な兄達のもとで生まれ育ち、早々に学問の道を諦めた主人公、馬援は、牧畜に青春を懸けた。
平等に重きをおき、広く慕われた彼は、やがて光武帝へと仕えるまでになる。
戦争や軍事に関心はないが、人ではなく動物と心を通わせることで成長していった馬援に親近感を抱き、読み進めた。古代中国をあつかった物語にしては読みやすく、特に前半の牧畜の部分や農民たちの想いを掬い取る部分は、農家である自分には自分ごととして読めた。
三国志の前の時代、さらに混沌を極める戦乱の時代の話なので、男くさい展開かと予想していたが、3分の1を残してようやく明確な主人を選ぶ(年は40代になった頃)馬援。軍功や昇進に関心がなく、人々の暮らしや動物たちを心から好いているのが伝わってきた。
なんとなく、中国における優秀な人というのは、論語をしっかり勉強したお堅い人のことをいうイメージだった。だが、こういう本を読んで思うのは、しっかり勉強した上で、大きな局面で自分をしっかり持った行動をできる人をいうのだろうと思った。これだけ大きな国で、天下に関わろうとするとき、学問の力だけではどうにもならないことが必ずある。馬援はそれを牛馬から習い、身につけたからこそ、運命が彼を巻き込み始めたときに迷わず進めたのだろう。
私が酪農を経験する前なら、馬援の前半の物語は綺麗事に聞こえたかもしれないが、動物を養う人間はこうなるよなあと納得するおもいだった。生き物という言葉の通じないものに向き合って始めて学べる謙虚さがある。
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馬援も後半生の劉秀に使えて以降は有名だが前半生はほぼ知られていない……それを掘り起こし丁寧に物語にした作者の力量は流石と言うしかない!
非常に面白い作品でした(^^)/
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2023.03.12
宮城谷先生のファンとしては期待値が高すぎたのか、読後感は正直いまひとう。
馬援は結局何がしたかったのかが読み取れなかったからでしょう。
勉強とか全部放りだすことが許されたのは、「おぼっちゃま」だったから「末っ子」だったからでしょ。という皮肉な見方から離れられなかった。
そして、最後は劉秀について兵を率いる、官位は受けるって、浅薄な言い方だけど、結局、自分も立身出世主義者だったんでしょ。みたいな意地悪な気持ちから離れられない。
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光武帝(劉秀)下の将軍の馬援を描く中国歴史小説。
「草原の風」で光武帝を描いているが、「呉漢」や本作の様に外から見た方が、光武帝のすごさがわかるような気がします。
「呉漢」に続いて後漢名臣伝という感じです。
それにしても同じ時代を描くのに主人公によって視点が変わる引出の多さには驚きますし、資料も無いような馬援の若い時代が清々しくに描かれていて、主人公の公平な性格も気持ちよく読むことができました。
劉秀に臣従してからは急ぎ足ですが、「矍鑠」の褒辞のもとになったエピソードはもう少し詳細に描いてほしかったし、妻子についてもう少し深掘りしてほしかったです。
特に後漢の第2代明帝の皇后となった娘について気になります。
それでも、久しぶりの古代中国に十分堪能しました。
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英雄と言うと豪胆な人物という印象があるけど、本当の英雄はこの馬援のような、民の為に自分の力を尽くす人のことを言うのでしょう。争ったり、競ったりするのが嫌いな人間を本当に勇気づけてくれます。
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綸言(りんげん)汗の如しと言って、天子の詔は一度でると取り消せない。天子でなくとも、人の言葉もあなじである。
馬援の発言で、後世の人が引用するのは、馬援が初めて劉秀(光武帝)に謁見した時に述べた言葉である。
当今の世、独り君、臣を択ぶのみに非ず。
臣も亦、君を選ぶ。