紙の本
ラストシーンは圧巻
2023/09/18 08:27
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投稿者:yino - この投稿者のレビュー一覧を見る
直接的な被災者により、生活や人生そのものを破壊してしまったあの災害は「災厄」と表現される。町は物理的に復興しても、人の心は元に戻れない。人生の閉塞感は被災者であろうとなかろうと誰にでも付きまとう。人生の様々な場面を後悔と共に振り返りながらも、どこか自分事として腹落ちしていなかった(ように見える)主人公が、感受性の強さから悲劇を引き起こした友人から毒を受け、少し前向きな心境となるラストには、心を揺さぶられました。
紙の本
防波堤は人の心まで守ってくれない。
2023/03/10 22:03
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投稿者:みつる - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの災害はたくさんのものを奪っていきました。
復興しつつあると言っても、人の心は
そう簡単には癒されません。
大勢のうちのひとりにすぎなくても
そのひとりは誰かのかけがえのないひとり。
防波堤を見つめる主人公の描写が何度も出てきますが、
この防波堤ができあがったからといって
あの災害の記憶が思い出されるだけなのかもしれません。
何を守ってくれる防波堤なのか、
主人公の心は守ってくれない。
言いようのない辛さと、それでも懸命に生きる人々の姿が描かれています。
風化しつつある今、もう一度、今度は自分の身に降りかかるかもしれないという警鐘を鳴らしてくれるような作品でした。
紙の本
心にしみる
2023/02/26 21:02
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投稿者:まさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災で命を奪われなかったものの、その後に生きていく男性が味わう苦悩をリアルな表現によって描く物語です。心にしみます。
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最後の終わり方がすごく好き
2023/01/20 18:24
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投稿者:moon - この投稿者のレビュー一覧を見る
心の機敏とともに巧みな風景描写が素晴らしい。あの日、普通の日常がいっぺんに失われた。災厄を境に元に戻ろうと四苦八苦しても、もはや元とはいったいなんなのか。もがけばもがくほど、遠ざかっているけれど、新しい日常もきっとそんなに悪くないと思わせてくれる。震災文学としてだけでなく人間ドラマとしても描かれているのが良かった。家族や仕事仲間、元妻など人の微妙な心情はいかんともしがたい歯がゆさがある。
また個人的に、一人親方(植木職人)として個人事業主の大変さもかかれているのも良かったです。一人一人いろんな仕事があって、いろんな復興の仕方がある。最後の終わり方がすごく好きです。鬱屈とした思考からの開放感があった。
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芥川賞受賞作。
時系列がバラバラに出てきて、だんだんと主人公たちの人生やこれまでの事情がわかってくる構成が純文学っぽいのかな。読み心地の良い文章で面白かった。
内容的には暗くて、ほんと生きていくのは大変だ…と思う。でも続きが読みたいと思うのがすごい。
「俺にしても死ぬ順番を待つ大行列のひとりに過ぎない。生きている間にどうにか飯を食って啓太を育てるだけだ。」p.142
が印象的な箇所だった。
必死に働いて、ご飯を食べて息子を育てるためだけに生きている主人公。他に何も楽しみはないのかな…。
家で本を読む楽しみがある私は、震災の影響も受けずに病気にも苦しまずに、良いご身分で主人公たちの生活を覗いた気分になった…。
でも震災も病気もいつ自分に襲いかかるかわからないものだから、生きるのってほんと大変だな…という感想。
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芥川賞候補作
本が出版される前なので、新潮2022年12月で読む。
東日本大震災は、被災地で暮らす人々の生活を大きく変えた。
震災に見舞われたひとりの中年男性が、正面から震災後に向き合う話。
亘理町の姿、そこに暮らす人々。
かつての生活と、いま。
荒地は、かつて人々が住んでいた場所。
物語に直接重苦しいことが書かれているのではないが、物語の中に通奏低音のように重苦しさ、辛さが流れている。
かなり重い。
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色で表すなら、くすんだ灰色。
どんよりして重くて、まるでコンクリートのような。
震災と、残された人々、そして主人公の感じ方、生き方、そのものだと感じました。
色んな人やものを震災やその後で失った人たちのどうしようもない、行き場のない気持ちが静かにじんわりと伝わってくるのは、今まで読んだことのない不思議な感覚でした。
重い話なのに途中で投げ出さず最後まで読めたのは、そこに震災を経験した人のリアルな欠片が散りばめられていたからかも知れません。
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東日本大震災に関わる物語だが、当時の衝撃的な表現というよりも、災害後にさまざまな環境に置かれている人がそれぞれ自分たちの状況下で苦しんでいる描写がどれもリアルでじわじわと苦しくなるような作品。
宮城に住んでいるのであらゆる人物の言動が身近な人のそれと重なり、読むのに時間がかかった。
主人公の祐治が一生懸命というよりは没頭して他のことを何も考えられなくするように仕事に打ち込む姿は、大きなものを失いながらも必死に生きてきた大人達が想像されたし、そんな祐治の姿を横目に大人しく生きる息子の啓太は、震災後、必死に生きる大人に配慮しながら生きなければならなかった子どもたちを想起させた。
他にも、災害や病を自分への報いと捉える人や、かつての故郷に思いを馳せ続けたい人。どれもがリアルで痛々しかったが、この本を読んでもらうことで、震災を知らない人にもここにいる人たちの思いを知ってもらいたい。12年前のそれだけではなく、その後もずっと、さまざまな形でそれは尾を引いている。
祐治が啓太と親子らしい(と祐治が納得できる)会話ができるようになるためにはもう少し時間が必要かもしれないと思ったが、この荒地の家族の幸せを心から願いたい。
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#荒地の家族
#佐藤厚志
23/1/19出版
第168回芥川賞受賞作ということもあるけど、
生まれ故郷が被災した東日本大震災が関係する小説だから読んでみたい
止むことのない渇きと痛み、とはどんなものなんだろう?
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
#読みたい本
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震災は誰のせいでもないが、当たり前の様に生活をしていた環境が奪われ、家族を奪われた人もいる
決して元の生活には戻れない
だが、生きていられるだけ幸せなのか、そう信じて前を向いて生きていかなければいけない
絶対に生きていれば、良いこともあると信じて!
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家族の日常から色々な人との関わりが見えてくる。
震災で変わってしまった街、でもそこで生き続ける人たちの思いや考えなど、震災があったから感じること、思うことがあるのかもしれません。
知ってる地名が出てきたりして、親近感わきました。
同じ東北で同じ震災を経験したから伝わるもの、感じるものがありました。
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実際に東日本大震災を経験していたら感想が出るのかもしれない。わたしじゃ想像力が追いつかなかった、暗い感じがする作品でした。
大切にすべきものは仕事じゃない、というメッセージがあったように思いました。
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「象の皮膚」でも感じたけれど、主人公の心情が淡々と綴られていく様や明確な最後や劇的な展開はないのだけれど、辛い現状も過去もすべて引っ提げたそのまま続いていくという現実がしみじみと突き刺さる。
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逢隈、鳥の海、仙台、なじみのある土地、震災を経験した身として、あの日を思い出さずにはいられない。震災風化
への抵抗。確かに、来月で12年になるが、深い悲しみを背負って生きていかなければならない人は数えきれない。ノンフィクションとも思える心の葛藤や情景。海の様子、死者への報い、つらい言葉ばかりが連なる。震災を忘れないような手段は写真ばかりではない。
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大切な人を失った後も生きていくことのせつなさを感じる。震災が奪ったものは人だけでなく住む場所、景色などいろいろあるのだろう。実際に体験した人ならではの表現だと思った。