紙の本
戦火に散ったポーランド女性将校の家族史
2023/04/12 21:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは良い本だ。カティンの森でソ連に虐殺されたポーランド人将校1万人余の中にただ一人女性がいた。ポーランドの英雄ムシニツキ将軍の娘でありパイロットであったヤニナであった。著者は大変な熱心さでヤニナの生涯をポーランド、ロシア、カティンまで足を運び調べ上げた。あの広い大地を行くだけでも大変な手間がかかる。その結果妹もナチスに虐殺され、兄はフランスに妹の夫はイギリスで戦闘に加わったことを明らかにする。2次大戦でポーランドはドイツとロシアの侵攻で亡国し、国民の5人に1人は死んだと言われている。T.スナイダーの「ブラッドランド」の通りなのだ。2005年ヤニナの頭蓋骨が65年ぶりに故郷の村に還リ埋葬される時に集まった村人達はみな涙した。長い年月を思うとその場面はは誠に胸に迫る。丹念に各地を取材した著者の奮闘を讃えたいと思う。
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ポーランドの歴史に触れると共に、その惨状を知ることは知るべきことだと思う(なかったことにはできないこと)。ただ、非常に胸が痛くなった。今のロシア・ウクライナ戦争を考えると歴史を繰り返してしまっている。スターリンがプーチンに変わって。本の話に戻るが、そもそも独ソ戦争なわけで、その2か国から侵略され惨殺されるポーランド。当たり前のことだが、戦争はあってはならないことということを思い知らされる。そこで唯一の女性飛行士(戦闘員)として戦争に参加したヤニナ。そして妹も・・。決して彼女たちの人生をなかったことにしてはならない。無駄にしてはならない。知ることができてよかったと思う。
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カティンの森事件:2万2千とも2万5仙人ともいわれるソ連の捕虜となったポーランド人将校らが大量殺戮された事件
遺体はすべてドイツ製の弾丸で頭を打ちぬかれる・遺体のr手を結んでいた縄はソ連製
ヤニナ・レヴァンドフスカ:ポーランド空軍所属・女性パイロット
1933-45年、ドイツとソビエト連邦により死に追いやられた人の数・推計1400万
ブラッドランド
ポーランド=中欧の不死鳥
ヤニナ・レヴァンドフスカは私であり、あなたであるかもしれない
カティン問題は、人民共和国への忠誠の忖度
「つに今日、カティンが終わった」
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歴史の狭間、カティンの森の虐殺の犠牲者の唯一の女性、バイロットの生涯を追いかけるスケールの大きなノンフィクション。
ソ連とドイツの間、歴史に翻弄されるポーランドを舞台としたノンフィクション。
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カティンの森事件の唯一の女性の生い立ちをたどるノンフィクション。ポーランドで有名な将軍側の父親であるヤニナの生涯を追うことは、ポーランドの近現代史を知ることであった。
第二次世界大戦以降のソ連(ロシア)と東欧諸国の長く深い対立へとつながっているのだと感じだ。
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2023.12.3市立図書館
「戦争は女の顔をしていない」や「同志少女よ敵を撃て」など、独ソ戦のころに取材した作品の芋づるが伸びていった先にあり、読みたいと思っていた。図書館の順番がやっと回ってきたけど、年末のこのタイミングで読めるだろうか…
けっきょく年末年始はまったく手もつけられなかったけど、いよいよ返却期限が迫って手にとったらあっというまに夢中になって、すぐ読み終えた。
独ソ戦とその後の世界情勢の中で長らく埋もれていた「カティンの森事件」でただ一人女性として巻き込まれたポーランドの飛行士ヤニナ・レヴァンドフスカの足跡をたどる数度の取材旅行と、それによって次第にわかってきる彼女と彼女の家族のたどった運命はあまりにドラマチックすぎて、まさに事実は小説より奇なりと感じた。いままでは漠然としていた「ポーランド」という国と人々のさまざまな点と点が繋がり線と線が立体化して、解像度がぐぐっとあがった気がするし、ロシアのウクライナ侵攻もまたこの独ソ戦の延長線上にある(あとがきに引かれているウクライナ市民の言葉)ということも、すごく腑に落ちた。
10歳でテレビ番組の子ども特派員として(今にして思えば)崩壊目前のソ連を訪問/取材したというのが原体験になって、ノンフィクション作家の歩みを進めている著者自身も興味深く、前にちょっと話題になったときにはスルーしてしまった「グッバイ、レニングラード」も今度読んでみたいと思う。